声明・見解

2021年8月17日

【声明2021.08.03】緊急事態宣言の延長・拡大、まん延防止等重点措置の拡大にあたって 最大の試練に際して、最悪の事態を防ぐために

2021年8月3日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛

 8月2日、政府は緊急事態宣言地域を東京、沖縄に加えて、埼玉、千葉、神奈川、大阪にも拡大、加えて、北海道、石川、京都、兵庫、福岡にまん延防止等重点措置を発した(いずれも8月31日まで)。度重なる緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の対策が効果を発揮せず、特に上記の都道府県ではこれまでで最も多い新規感染者数が報告されるなど、過去最悪の事態となっている。東京都では、各医療機関に対し、通常医療を縮小してのコロナ病床の拡大が要請されるなど、医療崩壊の予兆が現れ始めている。
 感染力が非常に強いデルタ株への置き換わりにより、新規感染者数が爆発的に増加し、年齢が若い世代、特に40~50代といった未だワクチン接種率が低い、働き盛りの世代での重症者の増加が顕著である。そして、「重症」予備軍となる、酸素投与を要する中等症患者の激増で病床ひっ迫が引き起こされている。
 同時に夏休み、連休、お盆、五輪開催による人の移動で全国に感染が拡がっている。現時点でそれほど感染が拡大していない地域でも、この間の変化をみれば、近日中にこれまで経験したことのない診療ひっ迫が襲ってくることは間違いない。
 ワクチン接種は政府の失策に足を引っ張られつつも、関係者の懸命な努力で少しずつは進んでいるが、全人口比でみれば2回接種完了割合は7月末の段階で28%弱であり、集団免疫を云々出来る段階には程遠い到達である。
 加えて、開始から10日が過ぎた東京オリンピックでは、既に選手と関係者から278人の陽性者を出し、その感染対策のずさんさが明らかになっているとともに、沿道の人だかりや声援にも表れているように、強行開催そのものが、国民の感染対策への構えを緩める深刻な負のメッセージになっていることはもはや疑いようが無い。

 現在日本は、政府分科会が指摘しているように、新型コロナウィルス感染症への対応開始以来、最大の試練に直面していると認識すべきである。

 こうした状況にもかかわらず、菅総理からは事態打開のための説得力ある提案や、全国民が危機感を共有出来るようなメッセージは皆無である。それどころか、高齢者のワクチン接種が進み、この層の感染者が減少していることを殊更に強調し、感染者が若い世代に多いことを理由に、あたかも重症者がそれほど増えないかのような印象を発信しているようにさえ見える。この先もこうした失政が繰り返される危惧は拭えず、このままでは、国内では医療崩壊、世界に対しては五輪開催を通じての感染の世界的拡大、という最悪の事態に陥る危険が現実化してきている。

 私たちは、医療者として、直面しているこの試練に際し、政府に対して、全ての「いのち」を守る決意と方針を明確に示すことを強く求めるものである。

政府への緊急要望

  1. 国民が危機感を共有できるよう、政府は態度を改め、いのちを第一にする姿勢を明確にし、総理自身がその意を真摯に発信すること。
  2. 五輪を即刻中止し、五輪に配置されている医療者や公衆衛生の関係者を感染対策の現場に戻すこと。併せて、圧倒的に不足しているPCR検査を早急に拡大すること。
  3. 国内で暮らす全ての人々を守るために、十分な財政補償に万全を尽くしいのちと暮らしを支え抜くこと。とりわけ長期の自粛に追い込まれている中小の店舗への支援を早急に実施すること。それを前提に人出の抑制のため、一層の有効な手立てを講じる事。
  4. 通常診療への抑制を防ぎ、平時であれば救えたいのちを失う事がないよう、医療提供体制の整備を、政府と自治体が地域の医療関係者と話し合い責任を持って確立すること。その為にも、政府が医療機関、介護事業所、保険薬局等が万全を期して対応できるための財政支援を行うこと。
  5. 在宅や宿泊施設での療養を余儀なくされている感染者が、公正に治療が受けられるよう、適切な診療基準の整備や体制確保を図ると同時に、重症化予防が期待される薬剤の使用など、入院治療との格差が無いような措置を講じること。
  6. 国内開発への支援強化を含めて、ワクチン供給を抜本的に改善させること。

以上

PDF版

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ