民医連新聞

2003年9月15日

安心・安全の医療をもとめて(13) 千葉健生病院 小児科

小児病棟の安全は 保護者の力も借りて

 千葉健生病院の小児科病棟(六~八床・内科と混合)では、色いろな場面で、患児の保護者から協力を受けながら誤注射や転落などの事故を防ぐ工夫をしています。病棟主任の林真紀さんにききました。

 同病棟では、小児科の点滴・注射にあたり、使用する注射薬の説明カード※を保護者といっしょに確認することにしています。カードは点滴が終わるまでその まま、輸液ポンプに下げておきます(写真)。

 一昨年からはじめたこの毎回の確認作業、きっかけは注射ミスでした。幸い命に別状なかったものの、患児がアナ フィキラシーを発症して初めてミスに気付いたという事例です。当時の手順は「患児のベッドサイドで名前を確認→施行」というもので、ミスの発生が調剤の段 階だったのか、施行する患児を間違えたのか、明らかにできませんでした。

 ただでさえ感染症の入院が多い小児科では、ほとんどの患児に抗生物質などの点滴注射の指示が出ます。また、入退院が頻繁で、さらに病棟内でのベッドの移動も多いなど、「他の病棟に比べて、注射事故の危険度は高いです」と、林さん。

 「小児に対する注射ミスを防ぐにはどうすれば?」と、病棟のチーム会議で議論し、現行の手順に改善しました。

 医師の指示に従って準備した薬剤の説明カードを、調剤した注射薬や針・ディスポとともにベッドサイドまで持って ゆきます。患児の名前と使用する薬剤名を声に出して(その場にいれば、保護者とも)確認し、施行します。一患者一トレイで調剤~持ち運びを徹底すること で、薬剤の取り違えも防いでいます。 

 ぜん息などでくりかえして入院する患児の保護者からは「変わりましたね」「ていねいに対応してくれて、うれしい」などという声がスタッフにかけられるようになりました。

 「説明や作業に時間はとられることになりましたが、この方法だとスタッフの側にも安心感があります」と、林さん。「間違えていない自信がもてます。これまでもミスのないつもりでやってきましたが、その『自信』が『思いこみではない』という証になります」。

「転落防止」や「点滴もれ」にも応用して

 この保護者向けの説明カードの方式は、転落事故防止や点滴もれの発見にも、ひと役かっています。

 つきそいの保護者にむけて、点滴時の観察のポイントを外来スタッフを中心に考案しました。「点滴部位を痛がったり、異常に機嫌が悪い/点滴部位や周辺の腫れ/点滴している手足の爪・皮膚の色」など…。

 転落事故についてはまた、何歳児で、どういう場合に起きやすいか、入院時、保護者に読んでもらうことにしまし た。意外にも、保護者が側にいるときに起きやすいこと(転落防止柵をはずし、一瞬患児に背を向けたときに)なども紹介。こうしてから毎月のように起こって いた転落は目に見えて減りました。


 

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輸液ポンプにつけられた薬剤の説明カード。なおこの文章は、「薬品名/商品名/何の目的で使用するものか、どんな副作用の可能性があるか/どういう頻度・注射方法で使用するのか」が医師の手で、誰にでもわかりやすい内容に書かれています。

(民医連新聞 第1316号 2003年9月15日)

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