民医連新聞

2021年10月19日

民医連奨学生に聞く! 他職種と信頼築きやすい民医連でともに患者に寄り添う医療を 沖縄民医連 安室鈴奈さん(5年生)

 なぜ、民医連の奨学生になったのか―。全国の薬学奨学生に聞く3回目は、沖縄民医連の奨学生・安室鈴奈(れいな)さんです。(丸山いぶき記者)

 安室さんは宮崎県にある大学で学ぶ5年生です。4月末から地元・沖縄県に帰省し、「ふるさと実習」中です。薬局実習を終え、民医連外の病院で実習しています(9月末当時)。「周りの実習生に比べると、宮崎は比較的新型コロナウイルス感染者が少なく、オンライン授業も一時的だったので、恵まれていると感じる。オンラインではやはり先生との意思疎通がうまくいかない」と安室さん。特に、右も左もわからないまま、コロナ禍をひとりでたたかわなければならなかった1~2年生を気遣います。「民医連なら定期的に他県の薬学生とも顔を合わせられる。知っている先輩が1~2人いるだけで心強い。私も力になりたい」と話します。

■専門を超えた学びの大切さ

 子どもの頃、小児喘息(ぜんそく)で通院していたこともあり、医師や看護師などの医療従事者に対して、漠然とした憧れを抱いていた安室さん。その思いは小学4年生の時、いとこが薬学部に合格したことを機に、「薬剤師」という夢になりました。
 沖縄民医連の奨学生になったのは1年生の時、学生のうちから医師・看護師をめざす学生と交流でき、他県にいても沖縄出身者とつながれることに魅力を感じたからでした。3年生の春休みに参加した沖縄協同病院の見学では、ふだん入れない分娩(ぶんべん)室や調理室の裏側も見学。案内してくれた薬局長の声かけに二つ返事で学生を招き入れる他職種の姿を見て、ふだんからの顔の見える関係、信頼関係づくりの重要性を感じました。
 「先日、夏の企画で医師や看護師志望の学生とさまざまな視点で討論をした。いっしょに仕事をするのが楽しみになった」と、学年や学部を超えた交流がモチベーションにつながっています。
 同企画では、沖縄協同病院のSWから生活保護申請や高額療養費制度、無料低額診療事業も学びました。病院実習で、ホームレス状態から警察対応により救急搬送された、うっ血性心不全の患者を担当した安室さんは、「退院後のサポートも含めたチーム医療をより実感できた」と有意義な学びをふり返りました。「患者さんは、お金の問題があればますます不安。薬剤師も制度を知っていれば、ファーストコンタクトで利用をすすめて、治療に専念してもらえる。医師や看護師に言えなかったことを薬剤師に話す人もいると聞く。患者に寄り添える医療従事者になりたい」と話します。

■苦しむ人に目を向ける政治を

 全日本民医連のDVD「いのちに寄り添うコロナ禍の1年」も視聴し、「医療崩壊はすでに起きていると感じた」と話します。薬局実習で担当した白内障の患者は、6月に続き7月にも手術3日前からさす目薬をもらいに来局。手術が延期になったからでした。「予定していた手術が延びれば、不安な期間も延び、治療に臨む気持ちも変わる。コロナ患者を受け入れて病院が赤字になる矛盾、コロナ病床にあてた分、ほかの病床が減って本来受けられる医療が受けられないことは、本来あってはならない。コロナの経験を生かした医療提供体制を」と語ります。
 最近、気になるのは政治の行方です。報道が過熱していた自民党総裁選に関して、「誰が? よりも、総裁になった後に何をするかが重要」と安室さん。生活困窮者、倒産する会社、失業者、ひとり親世帯、そしてコロナの受け入れを迫られる医療従事者、病院に対して、「ただ、がんばれ! ではなくトータルケアを。政治家にはもっと深いところまで見てもらいたい。日本には国民皆保険をはじめ、すばらしい制度があるのに、少し視点を変えれば苦しんでいる人がいる。そういう人に目を向けてほしい」と話します。

■チーム医療の担い手に

 卒業を1年半後に控え、いよいよ医療従事者になる実感が生まれています。「まずは学んだ知識をしっかりと定着させ、現場に立ったときにチームの一員として、より精度の高い適切な医療を提供できる人材になりたい」と話します。奨学生になった頃に考えていた「地域に根ざし、在宅でも活躍したい」との思いは、より明確なビジョンに発展しています。病院には抗菌薬や栄養、DMATなどの専門薬剤師資格を持つ薬剤師がいることを知り、そうした専門資格をとりたいと考えています。「まずは、沖縄協同病院で入院患者に寄り添える薬剤師に。ゆくゆくは在宅、退院後のフォローアップを」と意気込みます。
 「コロナ禍で歯がゆい思いもするけれど、逆にラッキー、とプラスに捉えたい」と前を向きます。

(民医連新聞 第1747号 2021年10月18日)

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