民医連新聞

2003年9月15日

全日本民医連第35期 第3回評議員会ひらく

次期総会までに全ての事業所・職場で受療権を守る具体的な実践を

 八月二三日、東京・平和と労働センターで、全日本民医連第三五期第三回評議員会を開催。七六人の評議員および予備評議員、理事らが参加し、評議員会議案、決算・会計監査報告のほか、「事業所割会費改定案」「役員選出手続きに関する規定改定案」を全会一致で採択しました。

 あいさつで肥田泰会長は、前日の結成五〇周年記念集会・レセプションの成功と『いつでも元気』誌の五万部突破 を報告。「ひき続き、この月間で三〇〇万の共同組織をめざすこと、三六回総会までの残された課題の解決に向け大いに討論を」と呼びかけました。  理事会報告で長瀬事務局長は「評議員会議案を発表後、二六県連から討議報告が寄せられ、全体として積極的に受け止められ、すでに具体化も始まっている」 とのべ、議案の補強修正も含めて報告を行いました。

 評議員の発言から

 討論では三五人が発言。

 熊本からは水俣土石流災害への支援のお礼とともに「五月の川辺川利水訴訟高裁判決で勝訴し、国の控訴も断念させた」、宮城から「宮城北部地震に続き、一 〇年来の大冷害が受診控えやメンタルの疾患につながるおそれがある」と報告が。

 戦争反対・平和のとりくみでは「イラク戦争反対の運動から人文字、原爆ドームを囲むなど活動が大きく広がった」(広島)、「原爆症認定集団訴訟を支援す る会に参加し、医師は原爆症、他の職種は制度の学習をすすめている」(千葉)の発言。

 安全性では「医療評価受審の意義を徹底的に議論し、職場の再点検にむけ医局からアピールを出した」(兵庫)、「病院の機能評価項目を参考に、診療所の医 療活動評価表を作成し、各ブロックに実施の提起をした」(東京)の発言。

 また、議案で強調された「住民、患者さんの苦難に寄り添い、具体的な受療権を守るとりくみ」に関連し、「国保の一部負担金の減免を滞納者にも認める制度 を豊見城市で適用させ県内に波及も」(沖縄)、「在宅酸素の患者訪問をもとに県交渉を行い、県が事例を公募することに」(長野)をはじめ、「福井など全国 の先進事例に刺激され、自県連でもとりくみを始めた」との発言も続きました。

受療権を守るとりくみ ―評議員の発言から

北海道
中断患者さんフォロー大作戦
井上久美子評議員

 連続する医療改悪のなか、勤医協中央病院でも、患者数が減少しています。最近はサラリーマン本人や家族の受診中断が目立ちます。また、手遅れの患者さんが救急搬入されてくる例も目立つように感じます。

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患者さんに気軽になんでも相談してもらおうと「無料相談日」をアピールすることに(東京・羽村相互診療所)

 法人内の他病院などではすでに患者訪問をすすめており、そこからも慢性疾患患者さんの受診手控えの実態などが明らかになっています。

 そこで中央病院としても「受療権を守ろう」と職員に呼びかけ、外来受診を中断している患者さんへフォロー活動を行うことにしました。休診日の午後を使 い、訪問や電話かけで、まず「受診できない」「受診しない」理由をつかみ、患者さんの命と健康を守る方法と病院自身の改善点など課題を明らかにしよう、と 考えています。

 当病院と近接診療所で、五月以降受診を中断している患者さんをリストアップ(最終受診日が今年二月~四月)したところ、三〇〇〇人を超える患者さんの名 前があがりました。この人たちを、職場が担当している地域(一五のまちづくりグループ)別に割り振り、対応することにしました。

 また、窓口での支払いが困難な患者さんに対して、支払いを免除する公益減免制度の活用も積極的にすすめるため、制度紹介のパンフレットも新たに作成する ことになりました。

※八月二九日、中断患者フォローにとりくみました。医師七人を含む職員一三〇人以上が参加し、計三四五件の訪問・電話で、一一七件対話ができました。「発 作時は子どもの薬を飲んでがまんしていた」喘息の女性、「立つのもたいへん」な八八歳の男性などを、受診や介護につなげました。

東京
「信頼に応えよう」青年SWが決意新た
前沢淑子評議員

 東京でも深刻さを痛感する事例が多発しています。

「消えた患者さん」…ある診療所では、入院が必要になった患者さんを、タクシーで病院に送り出しました。ところが、送ったはずの病院に患者さんは来ず、行方不明になってしまいました。

 二、三日後になって探していた職員が発見、事情をきいたところ「お金がないので入院できない」と姿を隠したことが分かりました。すぐに入院・治療できるように対応しました。

 「地域の最後のよりどころとして」…運送会社で働く四〇代男性が激しい腹痛と高熱で、柳原病院にやって来ました。国保料が払えず、資格書しかもっていなかったため、受診の一〇日前から具合が悪かったのに市販薬でがまんし「こらえきれなくなり受診した」とのこと。

 経営していた会社が数年前に倒産、借金があり、運送の給料はその返済に。日給制のため無理を重ねて事故をおこし、その弁済がさらに給料から引かれ、国保料を払う余裕もなくなっていました。

 県連新聞の取材で、その患者さんがどうして柳原病院にかけこんだのかもわかってきました。小さいころ住んでいた 柳原地域では、柳原病院は評判だったこと、そして、いまもそこに住む叔母に、お金も保険証もない事情を話すと「柳原病院ならきっと相談にのってくれる」と 言われたのです。

 この患者さんの相談を担当した青年SWは、病院の経営のことも気にかかり、「医療費は気にしないで受診して下さ い」と言えずに悩んでいましたが、「最後のよりどころ」として病院が地域から信頼されていることを知り、「民医連のSWとしては、これからがはじまり。何 かあったときに相談してもらえるよう、連絡をとりつづけよう」と決意を新たにしました。

愛知
マル福元にもどせ「リンリン作戦」
矢吹賢評議員

 名古屋では三月市議会で、高齢者医療費助成制度(通称マル福)の改悪が反対運動を無視して決まりました。その内 容は、対象者を「身体障害者・寝たきり老人・痴呆性老人で、非課税世帯」に狭め、それ以外の非課税世帯を対象外にするものです。八月実施で、一一万人あっ た対象者が三万人に縮小されます。

 南生協病院の社保平和委員会は「黙っているわけにいかない」と、「リンリン作戦」を提案しました。同院の「マル 福」所持者一四〇〇人に全職員で電話しようというもの。目的は、「マル福」を継続できる事由に該当しないかどうか聞き取ることと、継続できない人からも生 活の実情を聞き取り、市政に届け「マル福」を元どおりにさせる運動につなげることです。

 現場からは「見ず知らずの人に電話できない」「収入を立ち入っては聞けない」と不安の声もありましたが、学習会 や職責者の意思統一でのりきって開始。七月末で八〇〇件にかけ終えました。電話では様子がわからなかった人や、極端に収入が少なく心配な人の訪問にもとり くんでいます。

 少額の国民年金のみで暮らす人が多く、八月の医療費支払いが困難と訴える人も多く、職員の怒りに。

 状態を聞き取り「マル福」の継続ができた人も多数です。経済的なことをきちんと聞くことの重要性も学びました。いま対象外になった人の状況をまとめ、対市交渉を行う準備をしています。

(民医連新聞 第1316号 2003年9月15日)

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