副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2021年11月2日

副作用モニター情報〈564〉 フェブキソスタットによる心不全の悪化

 フェブキソスタット(商品名:フェブリク錠®)による心不全の悪化が報告されました。

症例)80代後半、女性
 尿酸値が13.6mg/dlに上昇したため、炭酸水素ナトリウムが処方された。フェブキソスタットを使ってほしいと家族の強い希望があり、心不全を悪化させる危険があることを十分に説明したうえでフェブキソスタットに変更。開始前のNT-preBNPは6000pg/ml前後(基準値は125未満。900以上になると心不全の可能性が高く、値が高いほど危険)、開始12日後9439pg/ml、4週間後15238pg/mlに上昇。フェブキソスタットの影響があ
ったと判断され中止。中止4週間後に6824pg/mlに低下。
 尿酸値については、開始12日後13.1mg/dl、中止4週間後13.3mg/dl。

* * *

 2017年11月、FDA(米国食品医薬品局)は、武田薬品に実施させたCARES試験の結果においてアロプリノールと比べフェブキソスタットの総死亡と心血管死のリスクが高かったことから、フェブキソスタット本薬の安全性評価を開始することを公表し、2019年2月に添付文書改訂にて心血管死について注意喚起を行いました。
 一方で、英国Dundee大学のIsla S.Mackenzie氏らは、重症心血管疾患を有する患者が対象から除外されていることや非盲検試験という違いはあるものの、EMA(欧州医薬品庁)の要望により市販後の安全性を再確認するためのFAST試験を行い、約6000人の痛風患者を中央値で4年間追跡。「フェブキソスタットの心血管イベントに対する安全性はアロプリノールに劣らなかった」と2020年9月に『Lancet』誌で報告しました。
 さまざまな議論が交わされているフェブキソスタットですが、今回の症例のように実際に心不全の指標が悪化したケースが報告されています。統計学的には心血管系疾患の発生についてアロプリノールと差がないとしても、個々の症例では心不全の悪化の可能性があることを念頭に入れておきましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

(民医連新聞 第1748号 2021年11月1日)

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