民医連新聞

2022年11月8日

10月から2割負担 「まさか自分が」 全国で戸惑いや怒りの声 後期高齢者医療制度

 10月1日から75歳以上の高齢者のうち、一定所得以上の人の医療費一部負担割合が1割から2割に引き上げられました。住民税課税所得が年28万円以上で、かつ年金収入やその他の所得(収入から必要経費などを控除した額)の合計が単身世帯で200万円以上、複数世帯で320万円以上の人が対象(表1)。同制度の被保険者の約2割、370万人が影響を受ける大改悪です。(多田重正記者)

 いま、全国で2割化を「知らなかった」「自分が対象になるとは思わなかった」などの声があがりはじめています。
 東京都在住のAさんは、ことし83歳。同い年の夫と2人で暮らしています。主な収入は年金で、Aさんと夫の分を合わせても年間約300万円のため、2割負担になるとは考えていませんでした。
 ところが、生活をささえるためにしていた夫のアルバイト収入(月5万円)があったため、2割負担に該当。届いた保険証を見て、Aさんはびっくり。
 Aさんには不整脈があり、定期通院や検査を控えるわけにはいきません。10月に入って初めての受診時は、治療費の領収書を見て「検査がなくてほっとした」とAさん。夫にも持病があり、今後の医療費負担を考えると不安が。話を聞いた東京ほくと医療生協の森松伸治さん(事務)は、「生活費をやりくりするために努力した結果が2割負担ですよ」と憤ります。
 福岡では、9月に「かぶせものがとれた」と75歳男性が歯科に来院。かぶせもの以外に歯周病もあったため、続けて通院していましたが、「10月から2割になるので、その前に終わらせて」と要望され、歯周病の処置完了前に通院を終了。必要な医療を受ける権利が、萎縮させられています。

さらなる対象拡大の危険も

 政府は2割化の目的について、「少子高齢化で増え続ける現役世代の医療費負担を軽減するため」と説明していますが、事実は違います。政府が見込む2割化の給付削減効果は、年間1880億円。影響を受ける高齢者1人あたり約5万円の負担増です。一方、現役世代の保険料軽減は一人あたり年間約700円。ひと月約60円です。被用者保険の場合、保険料は使用者と折半のため、労働者の負担軽減はわずか月約30円にすぎません。
 最大のねらいは公費の削減(削減額980億円)。自公政権は、コロナ禍で受診できない患者が続出し、多数の在宅死の原因になった社会保障予算抑制策を、反省なくすすめています。さらに問題なのは、後期高齢者医療制度の改悪が、今回の2割化で終わりそうにないことです。財政制度等審議会の建議「歴史の転換点における財政運営」(今年5月)は、「年齢に関わらない公平な給付率(患者負担割合)を目指すのが本来の姿」「患者負担の在り方については、今後とも不断の見直しが必要」としています。しかも昨年夏に成立した後期高齢者医療制度2割化法は、政令で2割負担の所得基準を定めるしくみにしました。国会審議なしに、2割負担の対象がさらに拡大する危険があります。

実態を明らかにして2割化中止の運動を

 2割化による一部負担増加分を3000円以下とする負担軽減策も実施されていますが、2025年9月末までの3年間だけ。しかも医療機関を複数受診している場合、3000円を超過した分の払い戻しを受けるためには、市区町村に届け出る必要があります。
 年金受給額は下がり続け、物価高が家計を襲うなかでの2割化は、高齢者の生活をさらに深刻な状況にします。
 全日本民医連は負担軽減制度を患者・地域住民に周知するとともに、75歳以上の2割化による実態を明らかにして、2割化を中止させるため、全国の加盟事業所、県連などに向けてアンケート活動を提起しています。(通達第ア―246号、10月19日)

(民医連新聞 第1771号 2022年11月7日)

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