民医連新聞

2022年12月6日

相談室日誌 連載531 子どもの生活と自立ささえるヤングケアラーの事例から

 Aさんは90代で要介護1。二男夫婦と中学3年生の孫娘、中学1年生の孫息子と同居し、認知症があり、デイサービスを週2回利用しています。介護は、関係が悪い二男の妻はできない状況で、二男は食事の世話を、孫たちはオムツ交換や入浴介助などを担ってきました。そんななか、デイサービスの利用料金の滞納が続き、休止することになりました。
 その約1年後、二男の妻が脳梗塞で入院し、同時期に孫娘が進学で寮生活をすることになりました。そのため、Aさんの介護は孫息子が担い、夜間の睡眠がとれず、毎日学校の保健室で寝るようになりました。学校側は、孫息子が介護のために学校生活に支障をきたしていることと学費などの未払いの問題などがあったものの、以前から二男夫婦と連携がとりにくい状態で、気になる家庭という認識でした。
 Aさん世帯を支援するにあたり、二男の同意のもと、重層的支援体制整備事業(2021年4月の社会福祉法の改正により創設)で、社会福祉協議会にコーディネートを依頼。専門職で支援検討会議を行い、(1)Aさんは施設入所、(2)孫たちは奨学金などを受け、望む学校生活を送ること、(3)二男世帯の困窮状況の整理などを行うことで役割分担しました。(1)は地域包括支援センターが、(2)は学校やスクールソーシャルワーカーと社協が、(3)は生活困窮者支援を行う事業者と社協が支援することになりました。
 現在、Aさんは施設入所し、長男が養護者となっています。孫たちも介護から離れたことと、学費などの解決で、学校生活に集中できるようになりました。残された二男世帯の困窮については、支援継続中です。
 今年の4月に厚生労働省から「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル」が周知されたところです。
 「家族だから(介護をすることは)当たり前だと思っていた」「学校は奨学金を借りても卒業したい。卒業後、就職して返していく」という孫たちの生の声を聴き、“子どもらしい生活を送る権利″をどう社会が守っていけばいいのか? また、貧困の連鎖を防止するために、子どもの将来の自立をどう後押しできるのか? 考えさせられる事例でした。
 包括=高齢者の支援という枠にとらわれず、多機関と連携しながらワンストップで受け止め、つながり続ける支援を続けていきたいと思います。

(民医連新聞 第1773号 2022年12月5日・19日合併号)

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