民医連新聞

2022年12月6日

感染症法改定案 罰則より人的体制と財政支援を 大阪・耳原総合病院の河原林院長が参考人発言

 11月18日、参議院厚生労働委員会は、新型コロナ感染時に病床の確保や医療が提供できない医療機関に罰則を設ける、感染症法等改定案の参考人質疑を行い、大阪・耳原総合病院院長の河原林正敏さんが立憲民主党と日本共産党の参考人として出席しました。発言の概要を紹介します。

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 当院は「断らない救急」を病院の方針とし、年間6000件前後の救急搬送を受け入れています。コロナ禍での診療は、第1波の時から地域医療支援病院として新型コロナ患者を受け入れてきました。

■パンデミックは災害

 大阪で感染状況が極めて厳しくなったのは第4波で、入院患者数は確保病床数を瞬く間にオーバーしました。重症者も急増し、コロナ以外の重症者を受け入れる病床が不足し、通常の医療を制限せざるを得ない状況になり、「パンデミックはまさしく災害」だと感じました。第7波では職員の感染で診療に大きく影響が出ました。8月の1カ月間で予定入院数は前年同月と比較し、1割減少、全身麻酔の手術件数は2割近く減少しました。通常の医療の制限は患者が医療を受ける権利を大きく損なうことになり、2年半以上続く新型コロナ対応のなかで、職員のストレスや疲弊も継続し、限界に達していることを日々感じています。

■通常医療が崩壊しないよう

 感染症改正法について、まず協定締結のプロセスでは、施設上の制約、人的体制や専門性など個々の病院の事情、地域での状況に十分配慮しながらすすめてほしいと思います。新型コロナ患者の受け入れには、個室での管理、個人防護具など感染対策を行いながら、高齢者など介護を要する患者や認知症患者にも対応するため人手がかかります。病床を1床増やせば、少なくとも2床程度は閉鎖しないと、看護体制は維持できなくなります。医療の確保は、人的体制の確保の視点が必要です。
 感染症の受け入れを増やすためには、病床の閉鎖が必要になり、通常の医療に影響が出てきます。通常医療も重要というのが医療従事者の率直な思いです。通常医療の制限に具体的な指針が示されることはなく、医療機関の判断に任されてきたのが実情です。診療制限のあり方に一定の基準を設けてほしいと思います。
 また、協定を結んだのち、万が一受け入れたくても受け入れられない状況が生じた際に、柔軟に対応できる余地を残してもらいたいと思います。義務化で勧告・指示に従わなければ指定取り消しなどの罰則が課されるとなると、対応能力を超える感染症を、救急医療や通常医療を大きく制限してでも受け入れざるを得ません。このことは即、地域医療の崩壊につながると危惧しています。
 財政支援について、改正案では、初動対応を行う協定医療機関に対する支援が示されています。急性期医療は病床稼働を上げないと経営的に成り立たない構造にあります。新型コロナ診療に対する補助を縮小する方針が示されていますが、新興感染症に立ち向かっていくにあたり、安心して感染症を受け入れることができる財政支援をお願いしたいと考えます。

■現実を見据えた政策に

 当院は地域に根づいた急性期病院、社会医療法人、地域医療支援病院としての役割をしっかり果たしていきたいと考えています。新型コロナ第7波までに起こったさまざまな現実を見据え、政策に生かしてもらいたいと思います。
 そして、感染症とたたかい続ける医療・介護従事者の心を折るようなことだけは、絶対に避けてもらいたいと切に願っています。

(民医連新聞 第1773号 2022年12月5日・19日合併号)

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