事業所のある風景

2023年1月16日

民医連事業所のある風景 大阪/耳原総合病院 地域連携を力に、地域に求められる急性期病院へ

 大和川を挟んで大阪市に隣接する堺市は、100数基からなる百舌鳥古墳群があり、昔から海外交易の拠点として繁栄した人口約82万人の政令指定都市です。世界最大級の墳墓である仁徳天皇陵から西へ約1㎞に耳原総合病院は位置します。
 1950年に民家の2階を間借りして耳原実費診療所としてスタートしました。急性期医療を中心にとりくむ386床の病院です。
 97年末に前倒産という経営危機、2000年にセラチア菌院内感染という法人の存続が危ぶまれる2つの出来事に直面しました。全国からの22億円を超える資金援助をはじめ、全役職員、共同組織の総力で経営再建にとりくみ、四半世紀を経て21年度に債務超過を解消しました。

顔のみえる地域連携で地域医療を守る

 12年に地域医療支援病院を取得、13年にサポートセンターを立ち上げました。地域の医療機関からの紹介窓口を簡素化し、紹介しやすい病院として積極的な受け入れをしています。開業医向けの疾患学習会や地域の関係機関との定期的な会合を開催し、日常的に開業医訪問をして顔の見える関係づくりをしています。これらを通じて開業医と良好な関係を築くことができ、医師会との関係も深まり毎月700件を超える紹介患者が来院します。コロナ第2波が落ち着いたころには開業医訪問をして、コロナ禍で減った紹介患者が回復し、紹介先に苦慮していた開業医からも喜ばれました。コロナ病床の運用でも、顔の見える関係のおかげで、アフターコロナ患者の転送をスムーズに行うことができ、新たなコロナ患者の受け入れに大きく貢献しました。
 「断らない救急」を掲げ、救急車の受け入れ件数は年間6000件を超え、さらに増加傾向です。まずは受け入れ初療を行い、状態に応じて入院もしくは後方病院への転送のトリアージ機能を発揮する、ここでも地域との連携強化が生きています。救急隊との症例検討会などに定期的にとりくみ、信頼関係を築きながら救急患者を受け入れています。コロナ禍で現場の看護師が救急搬送口にメッセージボードを設置して、救急隊と励まし合いながら感染拡大の波を乗り越えたことは貴重な経験となりました。

人の心を豊かにするホスピタルアートを力に

 15年の病院建設では、「地域のシンボル」となるために、地域住民の希望の芽として育まれてきた歴史と、心にほっと希望のあかりが灯ることを祈る思いをホスピタルアートで表現しました。モニュメントや壁画での表現にとどまらず、環境音楽を流したり、ダンスや朗読会、絵本や映像作品を作成したり多彩なとりくみをしています。コロナ禍で不要不急の外出自粛が呼びかけられていたころ、閉塞した気分を晴らそうと空の写真を院内に掲示しました。定期的に手作りのお菓子の配布や演奏会などで職員を癒やしてくれます。金曜の昼には「ひかりの子ラジオ」で職員や入院患者からのリクエスト曲を流し、楽しませてくれています。人の心を豊かにするアートは、「無差別・平等の医療」を実践する大きな可能性を秘めています。
耳原総合病院 事務長 吉本 和人)

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