民医連新聞

2023年4月4日

いのちと健康・暮らしを守る 地方自治を私たちの手で

 わがまちで、医療・福祉の現場の声を届け、共同組織とともに、いのちと健康・暮らしを守る地方自治を実現しよう―。民医連は4月の統一地方選挙を絶好の機会と捉え、各地で奮闘しています。


医師・看護師らが訴える 「カジノより医療・福祉を」

 【大阪発】淀川勤労者厚生協会では、医師有志が診察室で患者に「カジノより医療・福祉・子育てを!」と訴える、西淀川・淀川健康友の会発行の「健康の友」号外などを手渡しています。
 3月16日、同法人・のざと診療所の落合甲太医師の外来では、「私もカジノは絶対反対!」と応じる80代女性の姿が。別の男性(80代)からは、故沓脱(くつぬぎ)タケ子医師(民医連出身の元参議院議員)の話題も出て、励まされました。「コロナ禍で、あらためて健康友の会の存在がありがたかった」と落合さん。ワクチン予約や健診受診、健康づくりを支援した友の会が、コロナ禍の「困った」に応えてきたことを強調します。
 室料差額を徴収しない入院費用の安さに感激する声や、比較的若い人が受診する夜間診療では、電気代の値上げで事業に大打撃を受けているという中小企業の社長の悲鳴も聞きました。「こんな社会で、ようカジノとか言うわ」と憤る落合さん。同号外では、病床や保健所・保健師を削減し「全国一の死者数」を出した大阪の実態や、「カジノやめたらできる」国民健康保険料や介護保険料の引き下げ、18歳までの医療費完全無料化などに必要な予算も知らせています。
 西淀病院の看護部長・小玉裕加子さんは、「私たちはコロナ禍でいのちの選別も経験して、悔しい思いもした。一方で社会の仕組みのなかで、大変な状況に陥っている患者さん、地域の人が増えている。職員には社会にも目を向けてほしい」と話します。看護部では職員の投票行動につなげようと、そんな社会の事実が詰まった全日本民医連の第2回評議員会方針第1章(情勢)の学習に力を入れています。「この事実を知ったら、心揺さぶられへんか!? と問いたい。誰が私たちの要求を実現してくれるのか。まずは選挙に行こう」と小玉さんは訴えます。(丸山いぶき記者)


健康に暮らせるまち 地域の医療・介護要求掲げ

 【山梨発】山梨では全国に先駆けて1月に県知事選挙が行われ、知事選としては初めて市民と野党の共闘が実現した画期的なたたかいとなりました。山梨民医連は、市民と野党の共闘の実現に努力してきた、これまでの活動が実を結んだものと歓迎し、統一候補と医療・介護分野の政策協定を結び、ともにたたかいました。
 ひきつづく4月の県議選では、職員の代表として4期16年間、医療・介護現場の声を議会に届けてきた民医連出身の県議が引退し、その議席を引き継ぐべく、県連事務局の職員が立候補します。県都の甲府市議選では、元甲府共立病院の職員が3期目をめざします。
 山梨民医連はこの一連の選挙を、健康で暮らし続けられるまちづくりをすすめる重要な機会と位置づけ、地域の医療・介護要求を掲げとりくみます。
 山梨ではコロナ7・8波の際、行政から介護事業所に対し、陽性になった入所者の「留め置き」を前提とした対応が求められる事態があり、急きょ県内の高齢者施設を対象にアンケートを実施し、実態を調査しました。「保健所の指示でケアマネが陽性者の対応を行った。何の補償もない」「入院先が決まらず施設で対応したが、容体が悪化し亡くなった。もっと早く医療機関につながっていればと無念」「受け入れ態勢を整えてほしい」などの声と、どの施設も感染対策の費用が、経営をひっ迫させていることがわかりました。
 75歳以上の医療費窓口負担2割化アンケートには、「医療にかかるためにこれ以上生活費を削るのは限界」など、悲痛な声が寄せられました。
 こうした医療・介護現場の声に耳を傾け、ケア労働者、患者・利用者の苦難に寄り添い、その解決のためにがんばる議員を一人でも増やすことが、私たちが生き生きと働き、誰もが必要な医療や介護を安心して受けられる社会をつくる条件である、と肝に銘じてがんばる決意です。(今井拓、山梨民医連・事務)


「選挙に行こう」 幸せをつかむために

 【福岡発】親仁会青年委員会は、青年ジャンボリー実行委員会、平和アクションプラン推進委員会、労働組合青年部と青年担当役職者、労働組合役員など多職種で構成しています。毎月の委員会では、新入職員交流企画や青年運動交流集会の企画・運営、2023年10月に迎える法人創立60年社史編さん委員会など、民医連・親仁会の歴史を学び、青年活動の相互交流や経験交流、活動の支援などを続けています。青年運動を通じて、民医連の重要な視点である多職種協働を体現する機会にもなっています。
 親仁会が5期10年続けているアンケート結果においても、20~30代の青年の投票率が低い現状が続いています。
 今回の統一地方選挙では、投票行動に結びつくように、各委員会で投票を呼びかけるチラシ、ポスター作成を呼びかけています。自らが主体的に主権者意識を発信し、症例から学び、身近な地域の課題を考えるなど、民医連のチラシも活用しながら、学習をすすめていくことも呼びかけています。
 青年JB実行委員会の投票呼びかけポスターでは、「あなたの『一』票で変えよう」、その一票のありなしが「幸せ」になるのか、「辛い」になるのかを問いかけます。青年委員会のポスターは「♯投票にいくばい!」とダッシュしてアピール。青年委員会の委員長は「子どもが安心して暮らせる社会、子育てしやすい環境にしてほしい」と訴えます。労働組合の委員長は「まずは、選挙に行ってほしい。その上で、今の世の中のことを考えて投票行動をしてほしい」とし、平和アクションプラン推進委員は「政府が誘導する世代間対立による分断をなくしたい。微力だが、無力じゃない」。
 青年たちのとりくみを通じて、先輩職員も巻き込みながら、地方から岸田政権にNO、軍事費増額NOの声を突きつけるとりくみにしたいと意気込みます。(浦田修、親仁会・理学療法士)


地域から民主主義を立て直す

 昨年、杉並区長に当選した岸本聡子さん(本紙1月2日号登場)の活動をささえる内田聖子さんに、地方選挙と自治の意義について聞きました。(稲原真一記者)

 私たちはあまりに国民とかけ離れた日本の政治から、生活に身近な地方自治にこそ希望を感じ、地域から民主主義を立て直すことが必要だと考えました。岸本さんはヨーロッパで革新的な地方自治を学び研究していましたから、その経験を実践する機会と捉え、区長選に立候補してくれました。
 地方自治は民主主義の学校と言われるように、地域生活の課題が政治に直結しています。私はそうした声を聴き、行政と市民の橋渡しをしていますが本当に難しい。行政内のジェンダーの壁やハラスメント問題、さらに区政は国や都の新自由主義的な政策のしばりを受け、思うように動けないことも多いのです。最終的には国を変える必要がありますが、そのためにも恐れずに国や都にものを言える自治体(フィアレスシティ)をつくることが必要です。
 区長選で杉並に突然変化が起きたわけではなく、それ以前の20年間に区政を変える住民運動を続けてきた結果です。これからは日常的に地域でつながり、課題も共有できるコミュニティーをたくさんつくることが、大切だと感じます。住民からも地域のための提案を自治体にすることで、対決型ではない自治や政治的関心、民主主義が育つのだと思います。
 今の日本は、大変な人ほど声が出せない社会です。その声を聴くのは本来行政の役割ですが、現場職員にも自己責任論がまん延しています。だからこそ医療や福祉など、人が生きていく営みをささえるみなさんの声は、本当に大切です。現場の実態や声を、多くの人に伝えてほしい。そしてケア労働者の待遇を良くし、そこで雇用も生み出す。そういうケアを大切にする社会を、地方からいっしょにつくっていきましょう。

内田聖子さん
岸本聡子事務所ソシアルサトコズ事務局長
アジア太平洋資料センター共同代表

(民医連新聞 第1780号 2023年4月3日)

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