声明・見解

2023年9月19日

【要望書2023.09.19】新型コロナウイルス感染症5類移行後の医療提供体制の確保及び公的支援の継続と受療権の保障を求める要望書

2023年9月19日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様
厚生労働大臣 武見 敬三 様

全日本民主医療機関連合会
会長 増田  剛

 国は5月8日より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けを5類に変更したが、現在第6~8波に匹敵するような感染拡大期を招いている。3年以上に渡りコロナ禍で医療提供体制や財政措置等において多くの混乱をもたらしたこと、7万4千人を超える尊いいのちを失ったことへの反省・総括もないままに、財政補償を大幅に縮小または打ち切り、感染対策の責任を行政から医療機関に転嫁させたことがその原因である。
全日本民医連は、国の事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について」(令和5年5月16日最終改正)に関して厚生労働省からヒヤリング(2023年7月6日)を受けたが、都道府県による受け止めは様々で、相応しい対応が行われていないことが明らかになった。
 第9波に入ったといわれる感染拡大の現状は、国民、医療機関、介護事業所等にとって最悪の事態となりかねない状況である。
 肺炎になった感染患者が入院までに時間がかかり過ぎ、急速な悪化で翌日亡くなられた事例や、高齢者施設でのいわゆる「留め置き」も発生している。5月8日以降は医療機関が入院調整をすることになったが、機能しているとはとても言えない実態がある。全国各地でクラスターが発生しており、診療縮小や救急搬送困難事例の急増など一般医療の逼迫状況が見られ、医療介護従事者の疲弊、退職も続いている。加えて、財政支援を絶たれた医療介護事業所は、物価高騰も相まって、かつてない程の困難な経営環境に晒されている。適切な公的支援が無ければ、事業継続を断念せざるを得ない事業所が多発することもあり得る。
 こうした状況を踏まえ、全日本民医連は、新型コロナウイルス感染症の特性にあった医療提供体制を確保し、全ての国民が安心して医療が受けられること、医療介護従事者のいのちと健康を守ることを目指し、以下要望する。

一、3年以上に及ぶコロナ禍の医療提供体制、財政措置等について、詳細な総括を示し、「移行計画」の意義と内容を見直すこと。

一、5月8日以降、現在に至る感染拡大の原因について分析し、国民へのリスクコミュニケーシヨンを強化するとともに、正確な感染状況を把握・公表し、行政による入院調整を再開すること。

一、資格証明書や短期保険証対象など、自己負担が困難な低所得者層の受療権を保障するために、特別な配慮を行うよう都道府県を指導すること。加えて、治療上の必要があり、患者が希望しない場合は、差額ベッド料金徴収の対象外であるということをあらためて周知し、各医療機関に指導・徹底すること。

一、極めて伝搬性が強い新型コロナウイルス感染症への医療介護事業所での対応は、5類移行後も大きく変わることはない、という見地に立ち、(スクリーニングを含めた)感染診断(PCR、抗原など)、個人防護具や必要な施設改修などの費用を公費で助成すること。併せて、経口抗ウイルス薬の公費適応を継続すること。

一、新型コロナウイルス感染症診療へ対応する医療介護事業所への財政支援は、国民のいのちと健康を守り抜く上でも必要な措置であり継続することが強く求められる。病床確保料、診療報酬の特例加算等を10月以降も継続するとともに、移行期間も含め、感染拡大時の医療介護事業所への減収補填を行うこと。加えて、「みなし重点」の取り扱いについて国として整備すること。

一、暫定的診療報酬措置を経て、2024年度診療報酬改定で新型コロナウイルス感染症対応を組み込んだ新たな診療報酬への移行にあたって、入院・外来ともに基本報酬の引き上げを行うこと。

一、都道府県が特別に認めた場合は9月まで可能としている「臨時の医療施設(高齢者や妊婦のための宿泊療養施設など)」の取扱いについて、感染拡大の状況を踏まえ継続すること。

一、受診・相談センターによる電話相談や#7119(消防)、#8000(小児)、救急アプリ等を活用した相談体制について強化を図るとともに、抗原検査キットによる自己検査や解熱剤の準備などについて、国民にわかりやすく周知し、必要な財政支援を行うこと。

一、感染症対策を強化するために保健所機能の再構築を行うこと。

以 上

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