くすりの話

2023年9月29日

くすりの話 更年期障害

執筆/山下 恵里(京都民医連中央病院・薬剤師)
監修/金田 早苗(全日本民医連薬剤委員会・薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた質問に薬剤師がお答えします。
 今回の質問は更年期障害についてです。

 女性の更年期は、閉経の前後5年の約10年間を指します。日本人女性の平均的な閉経年齢は50~51歳と言われており、更年期は45~55歳ごろとなります。ただし閉経の年齢は個人差が大きく、40代前半に迎える方もいれば、50代後半の方もいます。
 閉経にともなって卵巣の働きが衰え、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が大きく揺らぎながら減少します。ホルモンバランスの乱れから自律神経の調節がうまく働かなくなるなど、心身にさまざまな症状があらわれます。これに加えて、加齢にともなう身体的な変化や心理的な要因、家庭や職場環境などの社会的な要因が複合的に組み合わさって、「更年期障害」と呼ばれる状態になります。
 更年期障害の症状は多岐にわたり、肩こりや疲れやすさ、頭痛やのぼせなどの身体的な症状、気分が沈んだりイライラするなどの精神的な症状があります。医療機関では十分な問診を行った上で生活習慣の改善や心理療法を試み、それでも改善しない場合に薬物療法を行います。

薬物療法の種類

 薬物療法は主に以下の3つに分類されます。一部の漢方薬を除き、健康保険が適用されます。
①ホルモン補充療法(HRT)
 ホルモン補充療法は、減少したエストロゲンを補うことで更年期障害の症状を改善します。エストロゲンには女性の健康を守る働きがあるため、更年期障害の症状を緩和するだけでなく、骨粗しょう症の予防や皮膚機能の改善などにも効果があります。内服薬のほか、貼り薬や塗り薬もあります。
 副作用としては、不正出血や乳房痛、胃のむかつきや吐き気などが挙げられます。ごくまれに血栓症を引き起こすことがあります。
 またエストロゲン製剤を半年以上使うと、子宮内膜が増え続けて、子宮体がんのリスクが高まることが知られています。そのため、通常は黄体ホルモン製剤を併用して、子宮内膜の増殖を抑えます。
②漢方薬
 更年期障害の症状に対して、体全体の調子を整える漢方薬が有効なことも多くあります。特に当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸は「婦人科三大処方」と呼ばれ、よく用いられます。
③向精神薬
 気分の落ち込みや不安感が強い場合は、抗うつ剤や安定剤などの向精神薬を使用することもあります。

更年期は折り返し地点

 女性の平均寿命が80代後半の日本では、更年期は人生の折り返し地点です。医師とよく話し合いながら最適な治療法を見つけて、上手に乗り越えていきましょう。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2023.10 No.383

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