くすりの話

2024年4月30日

くすりの話 歯科受診と薬

執筆/堀 和子(保健共同企画ふくい、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

 読者のみなさんから寄せられた質問に薬剤師がお答えします。
 今回は歯科受診と薬についてです。

 歯科を受診した際に「お薬手帳を見せてください」と言われて驚いたことはありませんか。安全に歯科治療を行うためには、患者さんが服用している薬の情報は欠かせません。薬には飲み薬だけでなく、外用薬や注射剤も含まれます。
 今回は「歯科受診と薬」と題して、医科で処方される薬のうち、歯科治療の上で「特に注意が必要な薬」と、「歯科でよく処方される薬」について述べます。

<特に注意が必要な薬>

① 骨粗鬆症の薬
 骨粗鬆症の治療薬の一部(ビスホスホネート製剤、抗RANKL抗体、抗スクレロスチン抗体など)に注意が必要です。これらの薬は骨の代謝を抑制し、骨からのカルシウム流出を防ぎます。同時に新しい骨や組織をつくる機能も抑制されるため、口腔内での細菌の感染から「顎骨壊死」などを起こす可能性があります。
 骨粗鬆症の薬の服用をやめるデメリットと、口腔内の副作用リスクなどを総合的に勘案し、医科と歯科が連携して治療方針を決定します。
② 抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)
 血流をよくして血栓(血の塊)ができないようにする薬を飲んでいる場合、出血すると血が止まりにくくなることがあります。出血を伴う歯科治療を行う際には、止血剤の使用や縫合処置など、より適切な止血処置が必要になります。
 この場合も医科と歯科が連携しながら治療を進めていきます。自己判断で薬を中止したり継続したりせずに、必ず医師の指示に従ってください。

<歯科でよく処方される薬>

① 解熱鎮痛薬
 口腔内の痛みや炎症を抑えるために、解熱鎮痛薬が処方されます。内科や整形外科などで痛み止めをもらっている患者さんは、薬が重複する可能性があります。飲み合わせなどに注意が必要です。
② 抗生剤
 歯肉の炎症を鎮めたり、抜歯などの処置を行った後の化膿止めとして、抗生剤が処方されることがあります。一つの例ですが、「セフジニル」という抗生剤は、貧血の治療などに使われる「鉄剤」と一緒に服用すると、吸収率が10分の1まで落ちてしまいます。これらは3時間以上あけて服用する必要があります。
 分からないことや不安なことがありましたら、お気軽に医師や薬剤師にご相談ください。

「顎骨壊死」とは、ある種の医薬品、局所(顎付近)への放射線治療、抜歯などの歯科処置、口腔内の不衛生などの条件が重なった場合、顎の骨に炎症が生じ、さらに壊死すること

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2024.5 No.390

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