MIN-IRENトピックス

2024年9月27日

第46期第1回評議員会方針

2024年8月24日 全日本民医連第46期第1回評議員会

はじめに

第1章 総会後の情勢の特徴
 第1節 能登半島地震の復旧・復興の現状と遅れ
 第2節 悪化する市民生活の現実と縮まるいのち・くらし
 第3節 大軍拡のため、社会保障を変質、解体する岸田政権

第2章 地域のいのちとくらしを守るため、かけがえのない民医連の事業と経営を守り抜こう
 第1節 医科法人の2023年度決算結果~経営悪化と資金流出構造の継続
 第2節 2024年度第1四半期の経営状況
 第3節 事業と経営を守り抜くための当面の実践課題

第3章 ジェンダー平等、ケアの視点で、いのち優先の社会・ゆたかな医療・介護のために予算を使う政治への大転換を実現しよう
 第1節 社会保障抑制政策からの転換をめざして
 第2節 憲法を守り生かし、平和と人権を守ろう
 第3節 能登半島地震からの復旧・復興活動
 第4節 すべてのとりくみを共同組織とともに
 第5節 総選挙でいのち優先の社会へ転換を

おわりに

はじめに

 2月22~24日に沖縄県で開催した第46回定期総会から、6カ月が経過しました。総会運動方針の学習は全県連でとりくまれ、3つのスローガン、「非戦」や「ケアの倫理」への共感、DVDに紹介された各県連の活動を学び合う機会となっています。また、平和や憲法、ジェンダー、LGBTQなど人権保障の到達、多職種連携や職場づくり、心理的安全性、メンタルヘルスなど、さまざまな学びもひろがっています。ひきつづき、総会運動方針の学習を力に「高い倫理観と変革の視点」を育む活動にとりくみましょう。
 総会から半年、平和と人権を守る大きな変化が生まれています。
 6月7日、全日本民医連は結成71年を迎えました。創立70周年事業の一環で呼びかけた「憲法九条の碑を事業所につくろう」のとりくみで、各地に9条の碑がつくられています。
 6月23日に第213国会が終わりましたが、憲法審査会は会期中に改憲原案をつくることができず、戦争する国づくりをすすめてきた安倍元首相に続き、岸田首相がめざした任期中の改憲実現を事実上、不可能に追い込みました。
 7月3日、最高裁判所は優生保護法被害者国家賠償請求訴訟で、旧優生保護法は、憲法13条の幸福追求権、14条1項の法の下の平等に違反する著しい人権侵害であり違憲であること、除斥期間についても「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できない」、「除斥期間の適用は、権利の濫用として許されない」と断じ、国に賠償を命じました。立ち上がった当事者の運動によって切り開かれた、勝利判決です。
 全国の県連、法人・事業所、共同組織の仲間のみなさん。
 第2回評議員会までの半年間は、たたかいを強め、地域要求にこたえ、持続可能な民医連の事業と経営を力を合わせてつくり出す重要な時期です。
 第1回評議員会は、全会一致で①46回総会以降の情勢の特徴を共有し、第2回評議員会へ向かう方針を決定、②決算の承認、③46期の選挙管理委員を選出しました。
 第1回評議員会方針をすべての県連、法人・事業所で共同組織とともに具体化し、旺盛に実践をすすめていきましょう。

第1章 総会後の情勢の特徴

 46期運動方針は、平和と人権保障、いのちをめぐる世界と日本の情勢を、いっそう拡大する格差と貧困、戦争する国づくりによるさらなる社会保障の切りすての面から指摘し、人間の尊厳を断固守り、ジェンダー平等・ケアの視点で「非戦・人権・くらし」を高く掲げて、平和で公正な社会の実現に向け、大きく前進しようと呼びかけました。
 第1章では、総会後の6カ月間、この視点で強調すべき点に絞って情勢の特徴を確認します。

第1節 能登半島地震の復旧・復興の現状と遅れ

 2024年1月1日に発生した能登半島地震から、7月1日で半年がたちました。いまなおライフラインの復旧や被災家屋の解体撤去がすすまず、先が見通せないことへの被災者の不安と怒りがひろがっています。国は緊急に抜本的な支援策を集中し、人権の立場で復旧をすすめるべきです。
 6月27日現在で石川県が公表している死者数は281人(うち災害関連死52人)になっています。
 住宅被害は全壊8053棟、半壊1万6746棟に達し、公費解体は、2万865棟の申請数に対し、着手数は2601棟、完了は911棟で、約4%にとどまっており、震災直後から大きく変わっていない状態が続いています。手続きがすすまない最大の要因は、行政改革で公務員が削減された結果、圧倒的な人員不足を招いたことです。災害救助法で設置期間が7日間とされている避難所に、少なくとも2220人が、いまもなお避難生活を余儀なくされています。迅速な復旧、復興策と、被災者の生活再建の支援が十分でないことを示しています。仮設住宅は、市町が県に要望した6810戸のうち4943戸(約73%)が完成し、3951戸に入居しています。被害が特に大きかった奥能登4市町の高齢化比率は50%前後で、2人に1人が65歳以上の高齢者であり、民間の賃貸住宅も少なく、今後の住宅再建には大きな課題を抱えています。早急な公共住宅の建設が求められており、業者を県内外から集め、強力に推進する責任が国にはあります。
 医療・介護も厳しい状況が続いています。人手不足と入院患者の減少で6月末現在、奥能登4市町の4公立病院の病床は、地震前の538床から、半分以下の240床に縮小しています。46カ所の高齢者施設のうち稼働中は30施設、診療所は26カ所のうち、4カ所が休止となっています。施設の損壊や停電・断水の影響で、2月までに約2000人の入院患者や高齢者施設入所者らが、県内外の施設や病院に搬送されていますが、いまも多くが、避難先にとどまっていると推測されます。
 高齢者など、支援を要する被災者が在宅に取り残され、災害関連死も増えています。医療費・介護費の減免の継続、医療・介護事業所への財政支援も含めた支援、仮設住宅入居者や、全壊を含め壊れた家に住み続けている人への食料などの支援物資の提供、避難所への炊き出しの実施など、いのちを守るために、実情に合わせた緊急対策をすすめることが必要です。
 石川県は、東日本大震災などを受けて指摘された備蓄や耐震化の遅れ、被害想定などを見直さず、能登の地震活動の活発化のもとでも変えませんでした。このことも復旧の遅れに影響したことは否めません。日本のどこでも、同規模の地震が起こる可能性があります。すべての自治体で実態の把握と改善を求めることも必要です。
 志賀原発のトラブルの全貌は、いまだ隠蔽(いんぺい)され、公開されていません。ほとんどの道路が寸断、陥没し、被災・事故の際の対策や避難計画が非現実的なものと露呈しても、原子力規制委員会は、見直しをしないとの態度です。
 1975年に関西電力・中部電力・北陸電力によって、能登半島地震の震源近くに建設が予定されていた「珠洲(すず)原発」の建設計画は、住民の運動により2003年に凍結させました。「珠洲原発」を止めた運動が、多くのいのちを救いました。
 今回の地震で、珠洲から輪島にかけて、あちこちで海底の岩が水面から1~2メートル上まで隆起し、そこに原発があれば、取水口破損、配管破損、漏水などで冷却不能となり、核燃料の融解事故となったと専門家は指摘しています。また珠洲市高屋は、住宅の大半が壊れ、陸路も海路も閉ざされ、孤立状態に陥りました。もし「珠洲原発」が存在し、重大な事故となっていれば、隠れる家屋も、防護する物も、避難するすべもないなかで住民は被ばくし続け、状況によっては東海や近畿など、大都市を含む広範囲に放射性物質が拡散する可能性もありました。
 能登半島地震は、「珠洲に原発がなくて本当に良かった」、「地震の巣窟に日本の原発が立ち並んでいる現実を転換し原発ゼロを実現すべきこと」を教えています。東京電力福島第一原発の過酷事故から13年しかたっていません。「原発回帰」に突きすすんでいる岸田政権へ、ストップをかけていきましょう。

 

第2節 悪化する市民生活の現実と縮まるいのち・くらし

(1)政府の無策によってひろがる生業(なりわい)の危機

 ロシアによるウクライナへの侵略、円安、異常気象などのもと、食料品、ガソリン、電気などの急騰、止まらない物価高、実質賃金の24カ月連続の減少など、政府の無策が生活困窮をひろげ、くらしのゆとりを奪い続けています。
 大企業の内部留保は過去最高を更新(600兆円、財務省発表)する一方で、企業倒産は2年連続増加。直近では11年ぶりに1カ月で1000件を超え、4分の3を中小企業が占めています。その要因は、コロナ禍のゼロゼロ融資の返済への行き詰まり、物価高騰、人手不足、賃上げによる人件費上昇、税や社会保険料などの負担増による滞納増加と、税務署や年金事務所などによる強引な差し押さえによるものです。

(2)生活困窮といのちの危機のひろがり

 2023年度の生活保護申請は4年連続増加。7月に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」では「生活が苦しい」との回答が59・6%にのぼっています。NPO法人「キッズドア」による困窮する子育て世帯1800余りの世帯へのアンケート調査でも、家計の状況を去年と比較すると「とても厳しくなった」77%、「やや厳しくなった」21%と、98%の世帯が家計の悪化を実感し、夏休みは「なくてよい」13%、「今より短い方がよい」47%と、60%が短縮や廃止を希望しています。その理由として「子どもが家にいることで生活費がかかる」「子どもの昼食を準備する手間や時間がかかる」「夏休みの特別な体験をさせる経済的な余裕がない」といった回答が、上位を占めています。
 こうした状況のもとで、所得の再分配機能として公正な税制、社会保障の機能強化が求められています。しかし、国保料や介護保険料を上げ続けるなど、自助・共助による全世代型社会保障路線で、権利としての社会保障の危機ともいえる事態がひろがっています。
 3月19日に公表した2023年の経済的事由による手遅れ死亡事例調査では、22都道府県から48の死亡事例が報告されました。受診前に無保険だった事例は22件(46%)でした。保険料が払えず、無保険だった70代男性は、2年前にすい臓がんと診断されていました。家族が保険料を負担し短期保険証の発行を受け、抗がん剤治療を開始しましたが、1回5万円の負担金を継続して支払えないため、1回で治療を断念しました。その後、再度無保険になり、衰弱しているところを発見され、救急搬送、がんは末期の状態でした。国民健康保険証などの保険証を所持していた事例が24件(49%)あり、そのうち、がんと診断され、治療を勧められた80代男性は、後期高齢者医療の一部負担が2倍になった人でした。「入院になれば(医療費が)高額になる」など「保険証を所持していても窓口負担などが理由で受診できない」と治療をあきらめていました。

(3)行政ぐるみで行われてきた違法な桐生市の生活保護行政

 群馬県桐生市で違法・不当な生活保護行政事件が発覚しました。「生活保護費1日1000円の分割窓口支給」、「ハローワークに行った証明がないと保護費を支給しない」など、生活保護の抑制を極端にすすめる行政ぐるみの対応が明らかになりました。群馬民医連、全日本民医連も参加し、「桐生市生活保護違法事件全国調査団」を結成し、調査をすすめた結果、市の保護開始率の異常な低さ(却下率、取り下げ率の異常な高さ)、母子世帯、稼働年齢層の保護率の大幅な減少などが明らかとなり、家計簿の提出強要、無理な就労支援(ハローワークへの毎日の通所など)、窓口への警察OBの計画的配置など不当かつ不適切な対応、扶養照会で仕送りの事実がないにもかかわらず収入があったと認定し申請を却下、保護費の分割支給で満額を支給していないなど、違法な保護行政が浮き彫りになりました。2005年の市の行財政改革方針は「自己責任、自己負担の大原則」「扶助費などを中心に削減」と明記しており、今回の事件が生活保護担当部署などの思いつきではなく、市の目標として、組織的に実施されてきた可能性が高いと思慮されます。
 46期運動方針第1章第1節では、安倍政権以降すすめられた「大企業が利益を上げれば、やがてその富が国民に届くというトリクルダウン理論ですすめられた経済政策で、徹底的に大企業の負担軽減ともうけの拡大をはかる一方、国民生活の生活困窮を放置し、社会保障・社会福祉を削減した」と記述しました。新自由主義的政策推進と生活保護制度改悪は一体の流れにあります。

第3節 大軍拡のため、社会保障を変質、解体する岸田政権

(1)深刻な医療・介護事業所の経営状況と2024年度診療報酬・介護報酬の改定

 第46回総会は、特別決議「診療報酬・介護報酬の再改定と医師増員の実現に向けて、地域から声をあげよう」を決議しました。医療機関、介護事業所の経営状況は、かつてない困難に直面しています。長引くコロナ禍で医療・介護現場は疲弊(ひへい)し、異常な物価高騰の進行もあり、医療・介護経営の基盤は揺らぎ、医療崩壊・介護崩壊といえる状況が生まれています。特に医薬品の供給困難は、実に3年以上も続き、必要な治療が行き届かない状況とその対応に、多くの労力が割かれています。このような状況下で、2024年度診療報酬改定において、10月から後発医薬品のある先発医薬品を使用した場合に、特別負担金が発生する「長期収載品の選定療養」の実施が予定されており、さらなる医薬品供給の混乱が予想されます。また今後、診療報酬上で選定療養が拡大する恐れがあるなどの問題をはらんでいます。
 2023年度の医療機関の倒産は、55件(病院3、診療所28、歯科24)と過去最多となっています(帝国データバンク調査)。2024年度診療報酬改定は、改定財源のほとんどが賃上げ対応に用いられ、引き上げられた食事療養費の基準も、費用増で、厳しい病院経営の改善には結びつきません。また、看護配置7対1病棟の「重症度、医療・看護必要度」の見直しや地域包括医療病棟の創設により、医師の働き方改革の始まりとともに、地域の救急医療体制や急性期入院医療の再編など、困難をもたらす可能性も懸念されます。診療所でも「高血圧、糖尿病、脂質異常症」の特定疾患療養管理料からの除外による収入への大きな影響や、在宅介護4サービス(訪問介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応サービス、介護予防訪問リハビリテーション)の大幅引き下げなど、在宅医療や介護事業の困難の拡大は、患者・利用者が在宅で安心して過ごす場を奪い、生活をささえる医療・介護体制に深刻な影響をおよぼすことになります。民医連の事業所も診療体制の縮小、看護師不足による病床制限をはじめ、人材確保に困難をきたす状況が生まれており、深刻な経営状況にさらに追い打ちをかけています。
 介護分野でも、2023年度の休廃業は過去最高の510件でしたが、2024年1~6月の介護事業所倒産は81件(訪問介護40件)と過去最高のペースで発生しています。特に基本報酬を大きく削減された訪問介護では、事業断念も増加しています(東京商工リサーチ発表)。
 山梨民医連が、県内174の訪問介護事業所を対象に実施した改定の影響調査では、89事業所から回答が寄せられ、「訪問介護の報酬改定で経営環境がどう変わるか」という質問に「悪化する」と答えた事業所が52・8%と半数以上を占め、「事業継続が難しくなる」と回答した事業所が30・3%、人材は80・5%が「充足していない」と答え、報酬の引き下げが経営を圧迫し、人材確保にも影響がおよんでいるとしています。
 すべての医療・介護従事者が安心して働ける社会、ケアが何より大切にされる社会への転換へ向け、深刻な社会問題として実態を地域に知らせ、運動を現場から強めていくことが必要です。

(2)経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)の社会保障改革方針の特徴

(大軍拡財政捻出のために社会保障費の大幅削減)

 総会運動方針は、「異次元の大軍拡をまかなう社会保障の削減、大増税、国民負担増、そして生活破壊」と岸田政権の施策を特徴づけしました。岸田内閣が6月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針2024)」は、財政健全化の名のもと、医療・介護など社会保障の全面改悪を打ち出し、物価高騰にあえぐ国民の生活・営業の困難に追い打ちをかけるものです。一方で、敵基地攻撃能力の保有をはじめとする「防衛力強化」の継続や、4月の日米首脳会談で合意した「日米同盟強化」の推進を宣言し、それにかかわる歳出は「計画的に拡充する」としています。財政健全化を強調しつつ、5年間で43兆円の大軍拡を堅持するための「歳出改革」で、最大の標的が社会保障費となっています。

(負担増と医療提供体制、医師偏在対策の促進)

 「骨太方針」は、2023年に閣議決定した全世代型社会保障「改革工程」を「着実に推進する」としています。「改革工程」には、高齢者の医療費窓口負担引き上げ、都道府県内統一化の名による国保料(税)の値上げ、介護保険の利用料2割負担の対象拡大、「要介護1・2」の生活援助の保険給付外しなど、国民負担増と給付削減のメニューが並べられています。児童手当拡充の財源として、2026年度から「子ども・子育て支援金」の名で現役世代の社会保険料を引き上げることも明記しました。
 医療・介護サービスの提供体制の項目では、「病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る」としています。同時に医師の偏在の是正について、同様に2024年末までに総合的なパッケージを策定すると明記。具体的には、地域枠の活用、大学病院からの医師の派遣、総合的な診療能力を有する医師の養成、リカレント教育の実施など、必要な人材を確保するためのとりくみ、経済的インセンティブによる偏在是正(これまでの財政制度等審議会の建議においては、診療報酬の単価を医師過剰地域で引き下げ、不足地域で引き上げることなどがあげられてきた)、医師少数区域などでの勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大などの手法を組み合わせたとりくみをあげています。また、2027年度以降の医学部定員適正化(定数の削減)の検討を、速やかに行うと明記しました。
 まさに、2024年の年内が医療提供体制の制度改革を決めていく重要な時期となります。

(民間保険と保険外併用療養のセット活用で格差医療、混合診療化)

 医療改革の方針の創薬力の強化など、ヘルスケアの促進に「イノベーションの進展を踏まえた医療や医薬品を早期に活用できるように民間保険の活用も含めた保険外併用療養費制度の在り方の検討を進める」と記載されました。それは、医療技術の進歩にあわせて医療保険の給付範囲を拡大せず、保険外併用療養費制度と、民間保険でまかなうという、混合診療の導入につながる危険な考えです。経済格差により平等に医療を受ける権利を奪い、健康権を侵害することは、認められません。すでに混合介護が認められている介護保険では、「深刻化するビジネスケアラーへの対応も念頭に、介護保険外サービスの利用促進のため、自治体の柔軟な運用、適切なサービス選択や信頼性向上に向けた環境整備を図る」とされ、ビジネスケアラーのサービスには、介護保険の給付はしないとしています。

(3)憲法違反の軍事国家づくりに突きすすむ岸田政権

 2014年に第二次安倍政権が憲法9条の解釈を変更し「集団的自衛権の行使」を容認した閣議決定から、10年がたちました。日本への攻撃時に限定していた自衛隊の武力行使が、「アメリカなど日本と密接な関係にある他国が攻撃された場合にも可能」と拡大されました。それ以降の10年間、憲法違反の戦争する国づくりが強行されてきました。
 先の国会では、防衛省設置法改定(自衛隊の統合作戦司令部がアメリカ軍と連携し、共同作戦に対処できるようにするもの。自衛隊が他国の軍隊の指揮下で武力行使することは、自衛のための必要最小限度の範囲を超える憲法違反)、次期戦闘機共同開発条約(イギリス・イタリアとの次期戦闘機を共同開発・生産・輸出するための政府間の機関を設立し、殺傷兵器である次期戦闘機の第三国への輸出を解禁し、憲法の平和原則を根底から覆す)、経済安全保障法(経済活動と科学技術研究を国の安全保障の柱とし、軍事と一体の統制を行う。機微な情報を扱う個人の情報は国が調査できる)、食料・農業・農村基本法改定(食料自給率の回復・向上を放棄するとともに、輸入が途絶されるなど不測の事態が発生した場合、米、麦の増産、作付け転嫁で花の農家にイモをつくらせることなどを、罰則つきで強制できる戦時食糧法を含む)、地方自治法改定(大規模な災害、感染症のまん延などの際に国民の安全に重大な影響をおよぼすと政府が判断した場合に閣議決定で自治体に指示し、国に従う義務を課せるように国の指示権を確立。憲法が明記する地方自治、住民自治を否定、戦前の中央集権的な体制とする。辺野古の基地建設の強行という強権的なやり方が国の指示権として全国的に実施できる)など、戦時体制とも言える法律などが数を力に強行採択されました。
 2024年4月の日米首脳会談「合意」では、政府が有事とみなせば自衛隊が韓国軍といっしょに米軍の指揮下に入り、戦争へ参加することを約束。6月3日には九州地方知事会議で、政府より台湾有事の際、先島(さきしま)諸島の5市町村の住民の本土への避難先が示され、来年2月までに空港からの輸送計画、実際の担当市町村の明確化、宿泊、飲食の備蓄など、避難初期約1カ月間についての計画策定が指示されました。

(4)民主主義も地方自治も踏みにじる沖縄での辺野古新基地建設の強行、米兵の性的暴行事件の隠蔽

 2023年12月28日、政府は辺野古新基地建設をめぐって玉城デニー知事から権限をとりあげ、辺野古の埋め立てを強行する「代執行」を決定。県知事選挙・国政選挙、県民投票で、何度も示されてきた「辺野古に米軍基地はつくらせない」との県民の民意を無視し、米軍辺野古新基地建設を強行しています。
 こうしたなか、2024年6月に地元メディアの報道によって、代執行4日前に、米兵による16歳未満の少女に対する誘拐・性的暴行という重大犯罪が発生していたにもかかわらず、日本政府は沖縄県に通報しなかったことが明らかになりました。その後の沖縄県議会で、2023年以降、米兵による性的暴行事件は4件発生していたにもかかわらず、すべて通報されていなかったことも判明。沖縄県議会は、日本政府とアメリカ政府へ、日米地位協定の見直しも含めた要請と抗議文を、全会一致で決議しました。
 現在の米兵犯罪の通報制度は、1995年に発生した当時小学生の少女に対する米兵による性的暴行事件の結果、沖縄県民の抑えることのできない怒りとたたかいによって、日米両政府が県民に約束し、つくられたものです。米兵の犯罪を迅速に関係自治体へ通報することは、県民のいのちと尊厳を守るための最低限の対応です。その約束を勝手に反故(ほご)にし、性的暴行事件を隠蔽した岸田政権には、日本の政府である資格はありません。また、発覚までの期間、代執行、日米首脳会談、沖縄県会議員選挙など、大軍拡と南西諸島の再軍備を強行していく、重要な日程が続きました。今回の隠蔽が、大軍拡と再軍備に反対する、県民の声のひろがりを避ける意図であったことが、強く疑われます。

(5)旧優生保護法国賠訴訟・最高裁大法廷判決をめぐって

 7月3日、最高裁判所大法廷は、旧優生保護法の規定を憲法違反と判断し、国の賠償責任を認めるとともに、「除斥期間」規定について旧優生保護法の被害者には適用しないという画期的な判決を示しました。
 憲法判断において判決は、「不良な子孫の淘汰」を目的に特定の障害がある人への不妊手術をすすめた旧優生保護法は、「立法当時の社会状況をいかに勘案したとしても正当とはいえない」と指摘し、「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」(個人の尊厳と人格の尊重)を保障する憲法第13条、平等原則を定めた第14条1項に反するとしました。最高裁が個々の法律を違憲と判断したケースはこれまでに13例ありましたが、立法時点から違憲と明示したのは初めてです。
 最大の争点だった「除斥期間」については、20年という期間の経過によって賠償請求権が消滅し、国が賠償責任を免れるとすることは「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない」「信義則に反し、権利の濫用として許されない」とのべ、これまでの判例を変更し、国に賠償責任があると断じました。
 最高裁判決を受け、岸田首相は被害者らに直接謝罪し「政府の責任はきわめて重大」とのべ、全閣僚メンバーで構成する対策本部を設置しました。また、超党派で構成された議員連盟が秋の臨時国会に向けて新たな救済法制定の作業をすすめています。
 原告当事者を含むすべての被害者・家族の尊厳の回復と救済をはかる法的措置を急がなくてはなりません。同時に、旧優生保護法が現行憲法下で制定され、半世紀近くにわたって社会に障害者差別を植え付けながら不妊手術が続けられ、法改定後も被害者が放置されてきたことに対する深い検証と総括を行うことが、憲法に違反して人権を侵害する立法行為の再発防止と、国民の中に刷り込まれた優生思想の払拭と障害にかかわる現行法規の欠格条項の修正を実現する上で不可欠です。民医連としてひきつづき国に要請します。
 全日本民医連の「旧優生保護法下における強制不妊手術問題に対する見解」をくり返し学ぶことが大切です。障害者をはじめとする当事者との連携を強め、共同のいとなみの発展につなげていきましょう。

(6)個人の尊厳、ジェンダー平等、多様性の尊重をめぐって

 2024年3月、「同性婚が認められていないのは違憲」とする高裁判決(札幌)が初めて出されました。同年6月、日本経済団体連合会(経団連)は、「夫婦同氏(姓)制度を改め、希望すれば、不自由なく、自らの姓を自身で選択することができる制度の早期実現を政府に求める提言」を発表。経団連の調査でも82%が「『選択的夫婦別姓』を導入し、本人が選べる選択肢を増やした方が良い」となっています。4月に開催された東京レインボープライドには27万人が参加し、全日本民医連SOGIEコミュニティもブースを出展しました。
 世界経済フォーラムが2024年6月12日に発表したジェンダー・ギャップ指数で、日本は118位(146カ国中)でした。日本が女性差別撤廃条約に批准し、7月25日で39年となりましたが、人権侵害を受けた個人が国連に訴えることを可能とする選択議定書をいまだ留保していることが、性差別解消を遅らせています。
 2024年3月に開かれた国連女性の地位委員会では、男女賃金格差をはじめ、ケアワーカーの待遇改善がテーマとなりました。女性が多く働く看護・介護・保育などの処遇改善は、国際的には性差別解消の課題として勧告されていますが、国の『女性活躍・男女共同参画の重点方針2024』では、「医療・介護・福祉における賃上げ」をあげているものの、これまでの施策の範囲内です。
 「離婚後の共同親権」が、多くの当事者たちの反対のなか導入されました。全日本民医連も声明(2024年3月11日付)を出し、子どもの権利を中心とした親権の確立、緊急的な医療行為については双方の同意を必要としないことなどを求めました。虐待・DVの被害継続の懸念も深刻です。ひきつづき、制度の見直しを求めていきます。

第2章 地域のいのちとくらしを守るため、かけがえのない民医連の事業と経営を守り抜こう

 46期運動方針は、「民医連医科法人の経営はかつて経験したことのない経営危機に直面している」と提起しました。その上で、民医連綱領に掲げる私たちの目標をあらためて確認し、とりくみをすすめること、リアルな経営認識の重要性、経営改善に向けて今までの延長線でない思い切った実践が求められていること、そのために重視する課題などを確認しました。
 全日本民医連はこの間、「緊急県連経営委員長会議」(1月)、「診療報酬対応交流集会」(5月)、「経営困難打開に向けた検討集会」(8月)を開催し、改善の方向を探るとりくみを行ってきました。また、2024年6月の全日本民医連理事会では、「経営危機を克服し、地域医療を守り抜くために 今こそオール地域でたたかいの前進を」の方針を決定し、まさに「たたかいと対応」を一体のものとして、総力をあげて困難打開に立ち向かうこととしています。
 しかし、現時点の経営状況に好転の兆しは見えていません。地協・県連・法人・事業所も、次々と積み重なる困難な課題への対応に追われながらも、なんとか改善策を見いだそうともがいているという状況であり、展望を見いだすには至っていません。
 あらためて、経営問題は緊急かつ重大な当面の最重点課題であることを意思統一し、事態にふさわしい、集中したとりくみをすすめましょう。

第1節 医科法人の2023年度決算結果~経営悪化と資金流出構造の継続

 2023年度決算(140医科法人合計)は、償却前経常利益(※)で予算比66・2%(コロナ補助金を除くと33・8%)と大幅な未達成となりました。
 同利益予算未達成の法人は、66・2%(88法人)、償却前経常利益がマイナスとなり、大幅な資金流出構造に陥っている法人が13・2%(18法人)です。償却前経常利益率3%未満が39・7%(54法人)となるなど、全体として資金流出構造が継続しており、想定された以上の厳しい結果です。すべての事業で利益の大幅悪化がみられ、事業活動の見直し、再編、戦略の立て直しが求められています。
 とりわけ、病院(143)の赤字および必要利益との乖離(かいり)は深刻です。収益予算未達成病院は83%で、償却前経常利益マイナス27・9%(39病院)、同利益率3%未満47・9%(67病院。前年24・4%、35病院)と、従来の延長線を脱しておらず、改善は見られません。償却前経常利益で予算を達成している病院は35・3%(49病院)あるものの、予算利益そのものが「必要利益」を大きく下回っている病院が多数です。病院合計の償却前経常利益率は、予算そのものが3・8%と本来の必要利益にはほど遠い水準で、決算結果は2・1%しかありません。病院の経営構造転換による必要利益確保を、早急に実現することが求められます。強い決意とスピード感を持った実践をすすめましょう。
 医科診療所も、10年単位でみると利益率が大幅に低下しています。病院の赤字を診療所など、その他の事業所の利益でカバーすることはできなくなっています。医科診療所(482)の2023年決算結果は、厳しいものとなっています。償却前経常利益がマイナスとなっている診療所が26・6%(124診療所)もあり、約4割が償却前経常利益率で5%に届いていません。
 訪問看護ステーション(231)でも、償却前経常利益マイナスが33%(73事業所)、ヘルパーステーション(64)も同マイナス59・4%(38事業所)、すべての事業所が償却前経常利益率で3%未満です。老人保健施設(38)は、44・7%(17法人)が償却前経常利益マイナスであり、存続の危機にあるといえます。
 2023年期末の月商倍率1倍以下は3法人となっていますが、月商倍率1倍以上で資金は大丈夫と考える一面的認識は、極めて危険であり注意が必要です。2023年度の大幅な資金流出構造(現預金減少法人55%、77法人)をはじめとして、自法人の資金の内容を正確に認識しなければなりません。経営を総合的に捉える力量が求められます。
 コロナ融資(2025年度以降返済開始)での資金増となっていることを正確に認識し、返済計画を含めた中長期的資金見通しを持っていなければなりません。コロナ緊急融資を除くと、月商倍率0・7以下は21法人で、そのうち0・5以下16法人、0・4以下14法人、マイナスは8法人あります。
 賞与以外の短期資金借入残高(貸借対照表の流動負債)のある31法人は、当座貸し越しなど(借りて返してをくり返している資金)で経営を維持しており、金融機関の対応次第で常に危機に陥るリスクを抱えていることを十分に認識し、早急に抜本的改善の方針を確立することが必要です。
 生協法人出資金は、前年に続いて減少(総額の1・4%減)しています。減少した法人は67・1%(55法人)です。協同基金も減少している法人が52・3%(23法人)となっています。

※償却前経常利益…経常利益と減価償却費(リース除く)の合計。簡便的に資金の獲得力を表す。これがマイナスということは、日々の医療活動で資金が流出(減っている)とみることができる。安定的経営を維持するためにはおおむね収益比で7~8%以上が必要。

第2節 2024年度第1四半期の経営状況

 2024年度予算は大半の法人で「必要利益」に届かなかった予算編成ですが、第1四半期の実績は、その予算にすら到達できなかった法人が大半となっています。診療報酬改定の影響では、増収しつつも支出増加で減益、もしくは利益が横ばいの傾向で、構造転換の決断と対策なしに、資金的危機の打開、必要利益の確保は困難な状況が見込まれます。2024年度のとりくみでの予算達成は必須であり、最低限の課題です。何より早い段階の予算差の分析と対策が大切です。

第3節 事業と経営を守り抜くための当面の実践課題

(1)経営の現状を総合的に認識し、中長期計画・経営計画を確立し、全職員の経営をすすめよう

 地域包括ケア時代に対応する、何らかの転換が求められています。地域分析を踏まえた医療構想の再構築、リポジショニング、中長期経営計画の確立をなんとしてもやり抜くことが必要です。中長期計画、経営戦略の確立は、経営トップの最大の任務であり、担当者任せのようなとりくみでは、全職員参加の経営の強みを生かすことはできません。全日本民医連理事会、地協運営委員会が各県連の課題を把握し、支援を強めていきます。
 留意する事項として、自法人の経営実態を正確に数値で認識することが不十分な傾向を、改善することが必要です。自己認識の弱さがあると、抜本的で科学的対策を打つことができません。運動方針、経営委員長会議の問題提起などを踏まえた自己点検、予算との差異と要因、掲げた予算利益と本来の必要利益との乖離の認識、分析と対策などに、着実にとりくむことが必要です。とりわけ、2024年度の第1四半期の予算差異の分析、赤字の主要な原因を明確にすること、その上で改善の具体策を持つことが大切です。
 病院では、民医連病院(黒字病院)との各種データ比較検討は必須の課題です。こうした点を踏まえて議論を尽くし、上半期中の経営構造転換の方針確立を行い、2025年度以降の利益確保を実現しましょう。
 経営改善の基本は、医療・介護活動で、地域の矛盾と要求に積極的にこたえることです。地域要求を掴み、患者ニーズに「断らず」にこたえきれているところは堅調(2022年、2023年)ですが、従来の延長線上のとりくみにとどまり、変化をつくれない病院は、ジリ貧(徐々に貧しくなっていくこと)となり、未来を失いかねない状況ともなっています。
 看護体制不足、夜勤可能者の不足などによる病床制限なども生まれています。看護体制の後退は、医療活動および経営に重大な影響を与えます。2024年の民医連の看護師受入数は911人と、10年ぶりに1000人を切るなど、深刻な状況です。人口減少やコロナ禍での医療状況の変化により、看護学校の入学者数も激減しています。法人・事業所全体の重要課題と位置づけて、トップ集団が状況を共有し適正配置や人材確保、働き続けられる職場づくりなど、責任を持ち、総合的な対応をすすめましょう。また、国や自治体に働きかけながら、採用試験の早期対応、中高校生・低学年対策の強化など、力を合わせて確保にとりくみましょう。
 労働組合への経営認識の共有が、不十分となっている法人も見られます。民主的管理運営の基礎は、情報の公開・共有と説明責任を果たすことです。職員・共同組織・労働組合とは、「患者・利用者を守る、職員の雇用と生活を守る、経営を守る」の3点での深い意思統一が求められます。全職員の声を大切にし、とりわけ労働組合との協力・協同のとりくみを、経営困難打開に向けていっそう強化することが必要です。

(2)オール地域でのたたかいの意義と私たちに求められるとりくみ

 私たちが直面している困難にひるむことなく、民医連綱領の実現という大きな目標に向かって力を合わせることが、今ほど重要な時はありません。そのための出発点は、まず、自らの経営実態を「リアル」に捉えることです。そして、「変革の立場」で自法人の改善・改革と制度改善のたたかいをすすめ、「オール地域」の視点で、地域の医療・介護を守り抜く強い決意を固め、たたかいを、現場、地域から起こしましょう。
 日本全国の医療機関、介護事業所の経営が危機にひんし、地域の人びとのくらしは大変な苦境にあります。たたかいは対応、対応もたたかいです。「たたかいと対応」どちらが欠けても前進はありません。
 第3章に提起している運動課題の重点を総合的に具体化するとともに、「地域医療を守り抜く」の一点での運動を飛躍させましょう。地域の医療機関・介護事業所でも、私たちと共通の「怒り」や「やるせなさ」が渦巻いています。一つひとつの課題を大切にし、社会保障制度、政治のあり方を変えていく力としなければなりません。あらゆる機会を見逃さず、現場の実態を伝え、多様な立場の人びと(県知事・市長、地域医療機関・介護事業所、共同組織・地域住民、広範な社会的運動など)に、共感と連帯をひろげましょう。

(3)民医連の連帯と団結の力を発揮すること

 全日本・地協・県連における経営問題把握と、連帯したとりくみの強化をはかりましょう。

 県連理事会で、医科法人、社会福祉法人、保険薬局法人を含めて経営状況を把握し、困難に陥る前に手だてをはかれるよう、また、改善の教訓の普及など、経営論議を重視しましょう。そのために、県連事務局長は経営委員長と協力して、理事会へ県連内の法人の経営状況と課題を提起し、認識の一致と方針を確立しましょう。県連経営員会ミニマムにもとづく経営委員会の運営、基礎的な経営資料の月次での集約と分析などの整備は前提です。すでに法人単独で打開が難しい状況もあります。法人を越えた再編などの検討には、県連の役割が極めて重要となっています。そのためにも、県連経営委員会の体制機能強化をはかる必要があります。体制強化などの具体化を早急にすすめましょう。全日本民医連理事会・経営部、地協運営委員会・経営委員会も危機感を持って、困難に対応できる体制、機能の強化をはかります。
 経営危機対応は、通常の経営改善のとりくみと同列ではありません。スピード感を持って何らかの打開策を決断・確立し、効果的な対策を実行しなければなりません(46期運動方針)。
 46期の折り返しを迎える、第2回評議員会までの半年間は、極めて重要な時期となります。
 民医連の「連帯と団結」の力を発揮し、困難打開をすすめましょう。

第3章 ジェンダー平等、ケアの視点で、いのち優先の社会・ゆたかな医療・介護のために予算を使う政治への大転換を実現しよう

 第2回評議員会までの期間は、来年1月からの通常国会へ向け、2025年度予算編成が行われる重要な期間です。安全・安心の医療と介護の実現のため、国は、すべてのケア労働者の処遇改善を実施し、診療報酬・介護報酬の大幅な再改定で、ゆとりある人員、事業と経営の安定をはかる責任があります。それは、「健康で働きつづけられる職場づくり」によるヘルスケアが継続する上で、欠かせないものです。この時期に学びを力に、声をあげ、国に要求を届けましょう。
 全国で「戦争でなくケアを」の声が高まり、診療報酬・介護報酬の再改定や医師増員、ナース・アクション、介護ウエーブなどの運動はいっそう重要となっています。「ケアの倫理」は暴力に訴えない倫理であり、「非戦」につながります。私たちは、ケア実践から学んだ価値や態度を基準にして、そこに民主主義が機能しているのかを問うていく必要があります。
 第1回評議員会は、この期間に力を集中して強める運動課題を提起します。

第1節 社会保障抑制政策からの転換をめざして

(1)診療報酬・介護報酬の再改定をめざす運動をオール地域のとりくみに

 診療報酬・介護報酬の再改定は、社会保障抑制政策の根本を転換する課題です。医師増員、職員を守り分断を克服するすべてのケア労働者の処遇改善、医療提供体制の維持、深刻な困難にある地域の医療機関・介護事業所の事業と経営の安定など、どの課題をとっても、再改定をすることでこそ実現させられるものです。患者・利用者の負担増ストップの運動とともに、「経営危機を克服し、地域医療を守り抜くために 今こそオール地域でたたかいの前進を」(第5回理事会決定)の全面的な実践をすすめ、実態をひろく知らせ、地域住民の運動にしていきましょう。
 「医療・社会保障の拡充で、いのちとくらし、人権を守る政治へ転換を」をメインスローガンに、「医療・介護・福祉に国の予算を増やせ! いのちまもる9・26総行動」が東京・日比谷野外音楽堂で開催されます。多くの医療・介護団体、医療・介護従事者、市民と連帯し、運動の飛躍としましょう。共同組織にも呼びかけ、すべての都道府県から大規模な参加で成功させましょう。全国いっせい行動として、事業所のある地域で、宣伝行動、訪問行動などにとりくみましょう。

(2)医療・介護崩壊を防ぐため医師増員、ケア労働者の増員をめざす運動

1)3月末をめざし「医療崩壊を防ぐための医師増員を求める請願署名」の目標(医師5万筆・医学生1万筆)をやり上げましょう。

 情勢を踏まえ、署名期間は2025年3月末まで延長されました。基幹病院や医師会との懇談は、大阪・島根・愛媛・徳島・宮崎・鹿児島・沖縄などで実施され、足を踏み出すことで確実に変化をつくり出しています。宮崎では学生自治会と懇談を行い、署名への協力を呼びかけ、医学生が学内で100筆近い署名を集約しました。沖縄では、行政・大学病院・県立病院・民間病院・医師会をはじめ、看護協会や薬剤師会にも呼びかけ、オール沖縄で「医療者増員を求めるシンポジウム」開催に向けて準備をすすめています。問題意識を共有できれば、大きな運動につながる可能性があることは間違いありません。
 政府は、将来の必要医師数に関して、来年夏に結論を出すことを予定しています。医師の働き方改革では、時間外労働の上限は過労死水準であり、例外の特例水準では過労死ラインの約2倍の時間外労働が認められたままスタートしました。まさにせめぎ合いの情勢です。「全国民を対象としたWEB署名」も開始されます。全日本民医連医師増員を求める署名推進本部の体制を強化し、運動を推進します。

 診療報酬の再改定を求める運動と統一してとりくみ、ジェンダー平等・ケアの視点と人権を守る視点を貫いて、未来の医療を担う医学生とともに運動を発展させていきましょう。

2)ナース・アクションのとりくみ

 「全ての看護職員の処遇改善を求める請願」、「高等教育無償化を求める請願」を5月28日に国会へ提出しました。与野党54人の国会議員から賛同を得るなど、国を動かしつつあります。
 今後のとりくみとして、①「高等教育無償化を求める請願署名」の継続、②「看護学生全国アンケート調査」への協力推進、③「診療報酬・介護報酬の再改定をめざすたたかい」との合流をすすめます。
 北海道民医連は諸団体と連携し、ナース・アクション総行動として、道保健福祉部との懇談や全会派に対する申し入れを行い、道議会における全会一致での「将来にわたり安全安心な医療介護制度の提供を求める国に対しての意見書」可決につながりました。山梨民医連では県議会ウオッチャー(傍聴)を継続し、より多くの職員が参加できる機会をつくっています。ひきつづき、国や自治体が看護師確保と育成に責任を持つよう求め、都道府県の保健医療計画や地域医療介護総合確保基金の活用状況について、確認しましょう。
 10月27~28日「憲法でアクション!! ケアこそ未来を切り拓く」をテーマに、第16回全日本民医連看護介護活動研究交流集会を熊本で開催します。ケア実践は、憲法13条の「個人の尊重」、24条の「個人の尊厳」など、民主主義の根源的価値をささえる大切な営みです。「ケアの倫理」を深める貴重な機会として、多くの参加で成功させましょう。

3)ケア労働者が安心して働ける政策への予算増額を

 民医連の70年は、ケア労働者が働き続けられるための制度を獲得してきた歴史でもあります(『民医連医療』7月号「特集・働く職員と子どもたちを支える民医連の保育」)。現在も各地の院内保育所は医療・介護従事者をささえています。診療報酬・介護報酬の再改定とともに、院内保育所の整備なども含め、医療・介護・保育を担うケア労働者の雇用を守り、疲弊せず安心して働ける政策への予算増額を求めていきます。

(3)新型コロナウイルス感染症の流行から医療と介護、いのちを守るとりくみ

 新型コロナウイルスの5類移行に伴い、公的補助が3月末に終了しました。しかし、全国的に感染がひろがり、医療機関、高齢者施設での集団感染のひろがり、救急車、救急医療へのひっ迫も始まっています。また、高額の自己負担により、検査や診療を控える事態もひろがっています。
 医療・介護事業所への必要な財政支援、検査、治療、投薬、ワクチンなどへの緊急的な公費補助など、要望をまとめて政府、自治体に届け、実現を求めていきます。

(4)健康権を守る運動の重点

1)マイナ保険証強要と現行の健康保険証廃止ストップの大運動

 健康保険証を廃止しないよう求める自治体からの意見書は、6月末現在で、34都道府県の173自治体にのぼっています。保険証廃止は受診へのアクセスを阻害し、国際人権規約にも違反する重大な人権侵害であり、国民皆保険制度を根幹から崩す大問題です。ひきつづき現行の「健康保険証を残して」の訴えと署名をひろげ、撤回を求めます。
 今、政府による誤った広報で「マイナ保険証がなければ受診できなくなるのでは」と誤解と不安がひろがっています。受診控えに繋がらないよう、外来などに相談コーナーを設置しましょう。有効期限までは今の健康保険証が使用できること、保険者が発行する資格確認書で従来通り受診できることを、患者、利用者、共同組織、地域住民にひろく伝えましょう。
 自治体キャラバンや独自の自治体要請行動を強め、自治体から国に対し「現行の保険証を残すこと」「保険証廃止を延期すること」などの意見書を上げるよう要請しましょう。

2)2023年経済的事由による手遅れ死亡事例調査結果の全県での記者会見を

 すべての県連で、2023年経済的事由による手遅れ死亡事例調査結果の記者会見を実施しましょう。高額な国民健康保険料の負担によって無保険になってしまう実態、窓口負担のために受診控えが起きている現状、生活保護制度や雇用を取り巻く問題など、いのちと暮らしが脅かされている現状を明らかにしながら、無料低額診療事業(以下、無低診)をひろく知らせる機会としても訴えることが重要です。

3)後期高齢者医療費2割負担実施後の高齢者の生活実態を明らかにし、制度改善を求めるとりくみ

 2024年10月、後期高齢者医療制度の窓口医療費2割負担導入から2年が経過、2025年10月には配慮措置による負担軽減が終了します。物価高騰などの影響もあり、受診は継続しても健診を受けない、食事を減らす、その他の生活費を抑えて我慢するといったことが、ひろがっています。
 全日本民医連として、事例やアンケート調査にとりくみ、負担を元に戻させること、来年の配慮措置終了の延期や窓口負担の軽減、新たに2割負担の対象をひろげさせないなどの運動をすすめます。

4)生活保護、国民健康保険、外国人医療、子ども医療費の改善、自治体キャラバンを中心とした県単位の運動の強化

〇生活保護を権利とし、いのちのとりで裁判の早期解決を求める最高裁あて全国統一署名のとりくみ

 国が2013年4月から3年間かけて、生活扶助基準(生活保護基準のうち生活費部分)を平均6・5%、最大10%(年間削減額670億円)引き下げを強行しました。この引き下げが違憲・違法であると全国でたたかわれている「いのちのとりで裁判」は、地裁17件、高裁を含め18件が、生活扶助費減額処分の取り消しを認める原告勝訴判決になっています。旧優生保護法の裁判にも学び、最高裁に向けた統一署名に全力でとりくむことが提起され、生活保護を本当の権利にし、早期の解決を求めていく運動が始まりました。全日本民医連は目標を明確にし、とりくみをすすめていきます。

〇誰もが払える国民健康保険料の引き下げを

 国民健康保険料が、今年度さらに値上げされました。手遅れ死亡事例でも明らかなように、今でも高すぎる国保料が滞納を引き起こし、無保険になって受診できない事態が起きています。中央社保協が提起する国保改善大運動(①国に対する「国保の国庫負担増額を求める」意見書採択運動、②都道府県に対する「国保の都道府県の独自補助」の拡充運動、③市町村に対する「一般会計からの法定外繰入の拡大、積み立てられた基金・剰余金、国保パンフの国保要望書10項目」の活用、④「国保料が高すぎる」国保改善オンライン署名)にとりくみます。

〇外国人医療の改善

 外国人医療費の問題では、厚生労働省と出入国管理庁に向けた要請行動を行います。無料低額診療事業制度の拡充を求める厚労省要請を継続します。

〇子ども医療費無料化へ向けて

 子ども医療全国ネットが呼びかける、リスタートした「国の制度として18歳までの医療費窓口負担を無料に」の署名にとりくみます。

〇全県で自治体キャラバン行動にとりくもう

 以上のとりくみを具体化する上で、全県連で自治体キャラバンを位置づけ、自治体に要求を届けましょう。また職場でも気になる患者の事例などを出し合い、制度の改善や拡充の必要性も検討し、要望として持ち寄って、医師、看護師をはじめ、多くの職員が参加できるように工夫しましょう。

(5)介護保険制度の抜本的改善へ向けて

 2024年度介護報酬改定が実施され、訪問介護の基本報酬引き下げと、物価高騰に見合わない不十分な改定率に、怒りがひろがり続けています。昨秋からとりくんできた介護請願署名は、民医連として18万4000筆を集約し、国会に提出しました。地域の訪問介護事業所を対象とした、実態調査・記者会見などが各地でとりくまれており、訪問介護の基本報酬引き下げ撤回などを求める意見書を採択した自治体も増えています。
 「ミサイルではなくケアを!」を大きく掲げ、介護する人、受ける人がともに大切される介護保険制度への転換、「人権としてのケア」の実現をめざし、現場、地域から声をあげていきましょう。介護職員の低賃金状態が解消されない根本に、ケアは家庭内で女性が行う無償の労働であり、職業化しても家計の補助労働に過ぎないとみなす根深い考え方があります。ジェンダー平等の実現をめざす視点からも介護ウエーブ(ケアウエーブ)をすすめていきましょう。

1)介護保険をめぐる動向と当面の課題

 現在、2025年度予算編成作業が開始されています。年末に政府予算案が閣議決定され、来年の通常国会に提案、年度内成立という流れになります。介護報酬の引き上げ(2025年度臨時改定)、介護保険制度の改善、大幅な処遇改善に必要な予算計上を求めていく必要があります。訪問介護については、次期改定を待つことなく、2024年度補正予算のなかで、基本報酬引き下げ分を早急に補てんさせることも必要です。
 第9期介護保険料(基準額)の全国平均は6225円でした。8000円、9000円台の自治体もあり、高齢者の保険料負担は限界です。制度の大幅な改善と、支払い可能な保険料を設定する上で、保険財政における国庫負担割合の引き上げが不可欠との認識がひろがっています。
 来年からは、利用料2割負担の対象拡大、ケアプランの有料化など、「先送り」にさせた改悪案の審議も開始されます。出足早く、検討中止を求める世論をひろげましょう。

2)「3つの丸ごとウエーブ」で新たな請願署名をひろげよう

 7月から、新たな介護署名のとりくみがスタートしています。請願項目は、①社会保障費の大幅増額と、国庫負担の引き上げによる介護保険制度の抜本改善、②訪問介護基本報酬の引き下げ撤回と報酬全体の底上げをはかる臨時改定の実施、③新たな給付削減・負担増の検討中止、④全額国庫負担によるすべての介護従事者の給与の全産業平均水準への速やかな引き上げの4点です。今秋の臨時国会、来年の通常国会での提出を予定しています。「民医連丸ごと」「地域丸ごと」「ケア丸ごと」の3つのウエーブを推進し、法人内の全事業所、共同組織、地域の介護事業者、障害・保育の関係団体などにひろげていきましょう。
 秋以降、都道府県・市町村議会が開会されます。事業所支援など、自治体独自施策の実施、報酬・制度改善を国に求める意見書の採択など、地域社保協と連携し、自治体に対する働きかけを強めていきましょう。

3)介護保険証の廃止を許さない

 厚生労働省は7月、現行の介護保険証を廃止し、医療保険証と同様、マイナンバーカードと一体化する方向性を新たに示しました。介護を受ける権利の重大な侵害であり、カードの保管・更新手続きに対応せざるを得ない介護事業所に過大なリスクを負わせるものです。保険証の存続を求める声を現場からひろげていきましょう。

(6)保険でより良い歯科医療を求める請願署名

 「保険でより良い歯科医療を」の運動は、この間、治療の保険適用範囲の拡大など少しずつ前進し、重要なとりくみとなっています。今回の署名の請願項目は、「お金の心配をせず、安心して歯科医療が受けられるよう、窓口負担割合を下げて下さい」「健康保険で受けられる歯科治療の範囲をひろげてください」「歯科医療の充実に必要な国の予算を大幅に増やしてください」の3点です。特に、窓口負担割合の引き下げを早急に行うよう求めていくことは重要です。民医連では20万筆を目標に、社保運動の重点課題の一つとして全国でとりくみ、「保険でよい歯科医療を」全国連絡会として、診療報酬改定の議論が始まる2025年6月の通常国会開催中に署名を提出します。

(7)PFAS問題のとりくみを全国で強めよう

 6月、全日本民医連PFAS問題委員会が発足しました。PFAS汚染が全国にひろがるなかで、住民の健康不安はひろがっています。住民の健康不安にこたえていく市民運動づくりと一体に、とりくみを強めていきます。9月14日には、第一回全国交流集会を実施します。とりくみが始まっていない県連も含めて、全県連からの参加をすすめましょう。各地の実践を全国に普及していきます。

 

第2節 憲法を守り生かし、平和と人権を守ろう

(1)憲法を守り、生かす運動

 2022年の参議院選挙の結果、改憲に必要な3分の2の議席を確保した改憲勢力は、「憲法改正に向かう黄金の3年間を迎えた」と豪語しました。こうしたなかでも私たちは、第46回総会まで3回の総会運動方針で、「憲法を守り、生かすたたかいを一義的にすすめよう」とコロナ禍にあってもいのちの平等をめざし、戦争させないことこそが医療・介護にとってもっとも大切なことと、全国各地で草の根のとりくみをすすめ、市民とともに憲法を守り抜いてきました。
 人権を守る多様な課題の学習と行動を強めていきましょう。とりわけこの時期は、旧優生保護法の最高裁違憲判決を受け、2万5000人とも言われる被害者に対しての国の謝罪、被害者全員の救済へ向けた立法措置、差別を生み出さない社会へと前進するために、さらに運動をすすめていきましょう。あらためて新入職員を含め、「旧優生保護下における強制不妊手術問題に対する見解」を学び合うことを呼びかけます。
 改憲をさせず、憲法を守り生かす活動は、ひきつづき最重点の課題です。総会運動方針の学習、憲法の学習を行いながら、さらに憲法署名の輪をひろげていきましょう。職員、共同組織、地域の「九条の会」など市民運動と連帯し、全国に9条の碑づくり運動をすすめていきましょう。

(2)被爆80年へ、平和で核兵器のない世界をめざして

 ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン政権は核演習や核威嚇(いかく)を行い、アメリカをはじめNATO(北大西洋条約機構)諸国も「核抑止力」の拡大・強化を唱えるなど、核をめぐる情勢は重大です。ガザ攻撃を行うイスラエルは核保有国です。核軍縮の交渉も困難な状況にあります。こうした平和への逆流を乗り越え、戦争も核兵器もない世界を実現していくことが、人類の生命と健康を破壊する一切の戦争政策に反対し、核兵器をなくす運動に参加することを綱領に掲げる私たちの責務です。核兵器禁止条約への賛同が世界の多数派となり、国内でも条約への参加を求める意見書を採択した自治体は全体の約4割に達しており、政治的立場の違いを超えてひろがっています。
 全日本民医連は、8月6日、9日、全国から1953人が広島、長崎に集い、また現場から核兵器廃絶、平和な世界へと非戦を掲げて行動しました。
 来年は被爆80年です。被爆80年に向け、ヒロシマ・ナガサキの被爆の実相をひろめ、核兵器の非人道性を告発しましょう。日本政府に対し、核兵器禁止条約の批准、締約国会議へのオブザーバーとしての参加を求め、平和の波を起こしていくとりくみを全県連、事業所ですすめていきましょう。
 原水爆禁止2024年世界大会成果に学び、被爆者とともに、すべての事業所で、被爆の実相を学び、ひろげましょう。
 全日本民医連は、「核兵器廃絶日本NGO連絡会」に参加しました。核兵器廃絶のために活動する国内のさまざまな団体と活動を推進していきます。
 第6回理事会で「第46期全日本民医連平和アクションプラン」を決定しました。すべての県連で討議し、楽しく、ゆたかで、育ち合える民医連の平和活動をつくり上げていきましょう。

(3)ビキニ被災者支援

 アメリカが太平洋・ビキニ環礁で行った核実験(1954年)で、日本の数多くのマグロ漁船が被災したビキニ事件から70年を迎えましたが、アメリカと日本政府が隠してきたビキニ被ばくの実相が明らかとなり、現在、ビキニ被ばく国賠訴訟と船員訴訟が高知、東京の両地裁で行われています。
 全日本民医連は、高知民医連と連帯し、全国署名をはじめこの裁判を支援するとともに、ビキニ被ばくの実相を明らかにすることを政府に求め、被害者救済の運動を強めます。

(4)原発ゼロ、福島への連帯

 原発ゼロは、東日本大震災と能登半島地震の最大の教訓です。岸田政権の原発回帰政策を止めるため、原発をなくす全国連絡会に結集し運動を強めます。国のエネルギー基本計画の見直しがすすめられるなか、老朽原発の再稼働反対など地元の運動をすすめていきましょう。  原発事故は国策としてすすめてきた国の責任です。6・17判決を正す全国行動にとりくみます。地元同意のないまま強行されたALPS処理水の海洋放出から1年が経過しました。ひきつづき福島と連帯し、海洋放出ストップへ向けとりくみをすすめていきましょう。

(5)沖縄をはじめ全国の基地強化の中止を求めて

1)辺野古支援連帯行動

 ひきつづき沖縄のたたかいに連帯し、第53、54次の行動にとりくみます。

2)基地強化の中止を求めて

 岸田政権の安保3文書の閣議決定の強行のもと戦争する国へ、自衛隊基地の強化、オスプレイの飛行拡大も含めて米軍との合同訓練の拡大強化が全国ですすんでいます。各県の平和委員会など平和団体、基地強化に反対する市民団体と共同して基地強化の中止を求める運動を強めていきましょう。

(6)ウクライナ・ガザへの連帯、支援

 戦争は、絶対に始めてはならない。これがウクライナ、ガザの教訓です。紛争の地で、毎日起こっていることは、絶対にあってはならない、人間の尊厳を踏みにじり続ける行為です。国際支援団体、NGOと協力してひきつづき支援を強めていきます。

第3節 能登半島地震からの復旧・復興活動

 能登半島地震の復旧・復興は、全国の課題として位置づけ、石川民医連、共同組織と連帯し、以下の課題を具体化していきます。

(1)奥能登被災地における被災者の生活再建と健康を守るとりくみ

 仮設住宅入居者の健康の管理、住環境、孤立を生まない環境整備や集会所の設置など健康を守る課題、水光熱費など生活費用の増大の実態と要求に沿う支援を、全国災対連やNPO、住民組織と連帯してとりくんでいきます。
 全日本民医連として、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などこの間の被災地でのとりくみを交流し、能登半島地震の被災地が抱える課題と今後に起こり得る問題に対応するために、MMAT委員会は11月末に被災地懇談会を開催します。

(2)社会生活のインフラである医療や介護の復旧に関して

 社会生活のインフラである医療や介護が十分にその機能を取り戻してこそ、能登全域の復興に展望が開けます。被災した能登地域の医療・介護事業者への財政的支援を、国と自治体に求めていきます。
また、金沢以南で被災者の広域避難をささえている事業所の奮闘に応えるべく、受け入れ要請時と同様の柔軟な対応を行政に求めていきます。金沢以南の被災地や広域避難者、1・5次避難所への避難者は、高齢単身者も多く、支援からこぼれ落ちることがないよう、実態把握、情報収集を自治体に求め、可能な支援活動を検討していきます。
 すべての被災者、避難者が気兼ねなく医療・介護を利用できるよう、窓口自己負担免除適用対象の拡大と期間の延長なども求めていきます。

(3)中長期的な能登半島地震からの復旧・復興に関して

 石川県は6月、「石川県創造的復興プラン」を策定、発表しました。内容の検証は今後すすめていく必要がありますが、計画期間は、石川県成長戦略の目標年次の2032年度末までです。過去の大規模災害でくり返されてきた惨事便乗型の復興や、困難を抱える人が取り残されていくようなことがないよう、被災地の経験を生かしながら、計画を注視し、運動を強めていく必要があります。医療・介護・まちづくりの視点から、積極的な要望を、県に寄せられるよう検討していきます。

(4)次の大規模災害に備えて

 8月8日16時42分に日向灘で発生したマグニチュード7・1、宮崎県日南市で震度6弱などを記録、「南海トラフ地震臨時情報による巨大地震注意情報」の発出や首都圏で頻発する震度5前後の地震、東北、関東を襲った巨大台風の接近、線状降水帯をともなう記録的豪雨などが続いています。
 避難所の環境や復旧の遅れについて検証し、避難者の権利を守る視点から、次の大規模災害に向けた課題を運動にしています。各県連においてもBCP(事業継続計画)の見直しなどに生かせるよう、MMATなどでの検討をすすめていきます。能登半島地震で被災をした自治体は、大規模災害の発生を見据え被災した街の復旧方法を決めておく「事前復興計画」の策定がされていませんでした。全国の自治体の2022年7月現在の計画策定のとりくみは、65%が着手していると報告され、全国的にもとりくみが遅れている状況です。災害発生時の復興事業をすすめる重要な計画であり、各自治体のとりくみ状況などを確認し、必要な要請を行うことも重要です。これまでの大規模災害の被害者の支援を他団体と協力して継続していきましょう。さらに根本的には自治体の災害への対応能力が、この間の市町村合併などで自治体窓口の縮小、職員の削減、人口減少による自治体財政規模の縮小などにより弱くなっており、国や県への要請が必要です。大規模災害時に対策が十分に機能する体制を求めることが必要です。

第4節 すべてのとりくみを共同組織とともに

(1)事業・経営・運動すべての面で共同組織とともにとりくみをすすめよう

 評議員会方針をもとに、県連・法人・事業所として共同組織と事業・経営・運動のすべての面で協議をすすめ、諸課題をともに打開していく意思統一をはかりましよう。
 コロナ禍を経て、物価高騰、さらに2024年の診療報酬・介護報酬改定を受け、地域医療、介護を守るとりくみは待ったなしです。医療機関や介護施設・事業所だけの努力では立ち向えません。今こそ、共同組織の仲間をよりどころとし、直面している医療・介護をめぐる問題を伝え、いのち・くらしを守るために、医療・介護、社会保障拡充に国や自治体の予算を回すよう、地域から大きな運動にしていきましょう。
 地域には、生活困難を抱え、受診を中断したり、はじめから受診を控えて我慢したりしている人もいます。食事にも事欠き、各地の食料支援は長蛇の列ができています。そうした私たちがまだつながれていない、地域の人たちが、受診するのを待つのではなく、私たちからつながることが求められています。地域へ出て、共同組織と協力して「1職場1アウトリーチ」にとりくみましょう。コロナ禍前に行っていた「青空健康相談」のように、気軽に相談できる場として、地域の困りごとにアウトリーチする〝地域のしゃべり場〟を具体化しましょう。

(2)共同組織の強化・拡大

1)第16回共同組織活動交流集会in岡山の成功を

 今集会は「地域の中からつながり広げ、平和・いのち・人権が大切にされる世界へ~あらたな担い手とともに、誰ひとり取り残さないまちづくりを~」をテーマに9月29~30日、岡山で開催します。共同組織活動交流全国連絡会と岡山民医連の共同組織の仲間が力を合わせ、2000人のみなさんを迎える準備をすすめています。コロナ禍により対面での交流が制限され、2018年の横浜集会以来、実に6年ぶりの対面での交流集会となります。久しぶりの対面集会に多くの期待が寄せられている反面、急速な物価・宿泊費の高騰で、従来のように参加者を送り出すことが厳しくなっている現状もうかがえます。現地参加をさらにひろげるとともに、オンライン配信(1日目のみ)も行います。まちづくりや担い手づくり、共同組織の輪をひろげる実践・ヒントが満載の学びの場です。多くの参加者で集会を成功させ、各地のとりくみに生かし、「共同組織拡大強化月間」を飛躍させる力にしましょう。

2)共同組織拡大強化月間の目標をやりあげよう

 理事会は「共同組織強化アピール」を発表しました。共同組織拡大強化月間は、全日本民医連として10~11月(一部9月から)に設定します。9月は第16回共同組織活動交流集会を成功させ、月間に向けた準備をする期間とします。月間期間中、目標を明らかにして、全職員と共同組織構成員が参加し、いっしょに大いに地域に足を踏み出し、地域の要求、困りごともつかみながら、仲間増やしにとりくみましょう。後継者養成など、この間の懸案の課題について、共同組織とともに検討していきます。
 『いつでも元気』の月間期間中の5万部回復と早期の6万部達成をめざし、具体的な拡大目標を掲げましょう。特に職員読者比率5割を達成し、すでに5割を超えている県連はさらなる目標を掲げましょう。

第5節 総選挙でいのち優先の社会へ転換を

 46期運動方針は「軍事大国化と新自由主義の継続か、それとも憲法にもとづき平和と人権・いのちが輝く社会への転換か、日本におけるこのたたかいは今後もいっそうの激しさをともなって続く」とし、「平和と人権保障の発展という世界的な流れからみても、日本にとって大局的には憲法が生きる社会への転換期、変革期にあり、今の政治と国民のくらしとの矛盾はいよいよ限界点に達しており、この政治が続く限り問題を解決することはできません。憲法を守り生かす国民的な共同の運動を大きく前進させることが決定的に重要であり、そこにこそ未来への展望があります」と呼びかけました。先の東京都知事選挙、鹿児島県知事選挙など、結果は残念でしたが、一人ひとりの市民が声をあげる新しい運動がひろがり続けています。
 8月14日、岸田総理は突然9月の自民党総裁選挙に立候補しないと会見しました。世論に追い詰められたなかでの事実上の退陣表明です。直後に行われた共同通信の世論調査でも、「退陣は当然」が66・8%となっています。また岸田首相の退陣が、派閥政治資金パーティー裏金事件からの信頼回復のきっかけに「ならない」との回答は78%にのぼっています。自民党は総裁選で支持率の上昇をもくろんでおり、マスコミも過剰に次期首相候補者を取り上げています。しかし裏金問題は企業団体献金に依存している自民党が組織的に行った問題です。自民党のなかで誰が次の総理になったとしてもその本質は変わりません。
 日本の軍事大国化の動きが強まるなか、軍拡のために社会保障が削減されています。「一切の戦争政策に反対する」ことを綱領に掲げ、憲法に掲げる基本的人権が尊重される社会をめざす私たちは、いのち優先の社会へ転換していくために政権そのものを交代することが必要です。

(1)民医連の総選挙要求の活用

 ひろく地域に出て、医師増員やナース・アクション、介護ウエーブ、保険で良い歯科医療や、診療報酬・介護報酬の改善など、医療・介護を守り拡充する運動を訴えましょう。そして患者・利用者、共同組織、地域の医療機関や介護施設・事業所とともに、軍拡、大企業優先の政治の転換をめざすとりくみを強めます。いのち・くらしを守る民医連としての「総選挙要求(第1次案)」を県連、法人・事業所で学び、自分たちの選挙要求、国や自治体へ要望事項などを話し合いましょう。

(2)小選挙区でのとりくみ

 総選挙では、小選挙区での野党の共闘が重要です。民医連の総選挙要求、市民連合の要望を土台に、各地域の要求も加えながら、地元の各政党事務所や現職・予定候補者との懇談などに、県連として早くからとりくみましょう。ジェンダー平等、マイノリティーの人権が守られ、子どもも若者も、現役世代も高齢者も、安心してゆたかにくらせる政治への転換を実現するために、地域でさまざまな運動にとりくんでいる団体や個人とも、民医連の総選挙要求で懇談して、一致できる要求を明らかにしながら、ともに総選挙に臨みましょう。

おわりに

 2024年6月23日、79回目の沖縄「慰霊の日」戦没者追悼式で、朗読した宮古高校3年生の仲間友佑さんは、「これから」の最後に訴えました。

 それでも世界はまだ繰り返してる 七十九年の祈りでさえも まだ足りない というのなら それでも変わらないというのなら もっともっとこれからも 僕らが祈りを繋ぎ続けよう 限りない平和のために 僕ら自身のために 紡ぐ平和が いつか世界のためになる そう信じて

 この訴えは、平和でいのちとケアがなにより大切にされる社会、一人ひとりの職員が輝き、健康で働きつづけられる社会、そして民医連の綱領を実現していく私たちの決意と同じではないでしょうか。
 第46回総会スローガンにはこの決意が込められています。
〇平和的生存権・人間の尊厳を守る立場で、国連憲章・国際法に反する暴力・戦争を止めるために行動しよう
〇大軍拡を止め、多様性の尊重・ジェンダー平等といのち第一の政治を実現するために、共同組織とともに地域から人権・公正の波を起こそう
〇70年の歴史を力に、「ケアの倫理」を深め、「2つの柱」の全面実践で、「人権の砦」たる民医連事業所を守り、発展させよう

 第1回評議員会方針は、46期の折り返しに向かう第2回評議員会までの半年間の活動について、情勢と到達点を踏まえて、重点課題を提起しました。
 すべての県連・法人・事業所で学び、実践をすすめていきましょう。理事会は先頭に立ち、奮闘していきます。

 

                                                                         以  上

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