副作用モニター情報〈640〉 ルビプロストン(アミティーザカプセル)の呼吸困難
ルビプロストン(本薬)は小腸の2型クロライドチャネルを活性化し、腸管内への水分泌を促進して排便を促す薬剤です。今回は、本薬服用後に呼吸困難を発症した症例を紹介します。
【症例】20代女性
開始日:便秘症に対し、本薬24μg1日2回とセンノシドが頓用で処方される。
開始4日後:「2回目の服用から息苦しさを感じ始め、服用を継続するごとに呼吸困難が増強し、6回目には吐き気や冷や汗も出現した」と訴えがあり本薬中止、センノシドで排便コントロール。
中止8日後:センノシド1回2錠では効きすぎたため、酸化マグネシウム錠250mg1回2錠1日2回が処方された。その後は体調の異変なく排便コントロールも良好となった。
本薬の呼吸困難は、国内臨床試験で1.6~2.4%、添付文書では1~5%未満の頻度で報告されています。米国FDAの処方情報では、「警告および注意」の項に記載されています。主な症状は「胸部圧迫感」や「息切れ」で、多くは初回投与30~60分以内に急性に発現します。通常、数時間で消失しますが、再投与で再発の可能性があります。多くは非重篤ですが、QOLに影響し治療中止に至る場合もあります。
機序は未解明ですが、本薬の代謝物が、肺の上皮細胞にある嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)を刺激することが一因とされます。CFTRは塩化物イオン(Cl−)の分泌・吸収を調節しており、この刺激によって肺胞上皮でのCl−イオン分泌が促進されます。その結果、二次的な水分流入が生じて肺胞内に分泌物が蓄積し、正常なガス交換と肺の機械的機能が妨げられるため、呼吸困難や頻呼吸などの症状が誘発されると推察されています。
悪心や下痢より頻度は低いものの、稀にアナフィラキシーの一症状として現れるため注意が必要です。初回投与時に、呼吸困難の可能性、特徴的な発現時期や症状を患者へ事前に情報提供することが重要です。症状が出た際は、軽快しても自己判断で再開せず、速やかに医師などへ相談することが肝要です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1832号 2025年7月7日号)
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