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民医連新聞

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副作用モニター情報〈642〉デュロキセチンによる抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)

 デュロキセチンはSNRIに分類される抗うつ剤で、うつ病のほかに糖尿病性神経障害、慢性腰痛症に伴う疼痛に適用を有し、ひろく使用されています。
 今回はデュロキセチンの副作用でSIADHに陥った症例を紹介します。

症例)80代女性 体重34kg
 他薬で効果なく、慢性腰痛症にデュロキセチン20mg開始。
開始7日目 食欲不振あり。
開始14日目 めまいによるふらつきで倒れ救急搬送。全身倦怠感の訴えあり、低ナトリウム血症の診断で入院。Na値115mEq/L、ヴィーンF輸液+10%塩化ナトリウム注にて電解質補正。デュロキセチン中止。
中止1日目 リン、カリウムも低下(IP値1.0mEq/L、K値2.9mEq/L、Na値119mEq/L)。
 輸液にKCL、リン酸Na補正液追加。
中止2日目 Na値129mEq/L
中止6日目 Na値136mEq/L、K値3.8mEq/L
 Na値、K値正常範囲内となり退院。

 SIADHは、低ナトリウム血症にもかかわらず抗利尿ホルモンであるバソプレシンによる水の再吸収が持続している病態です。緩徐に進行すると自覚症状を認めませんが、今回の症例のように急速に進行した場合には、倦怠感、食欲低下、脳浮腫による意識障害などの症状を呈することが多く、死に至ることもあります。
 薬剤性SIADHの誘因として、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗精神病薬、抗がん剤などがよく知られています。リスク因子としては、(1)高齢、(2)女性、(3)サイアザイド系利尿薬の併用、(4)低体重、(5)精神疾患、(6)低ナトリウム血症の既往などが報告されています。今回は3因子が該当しています。
 発症中央値8日と報告されており、7日目の食欲不振時には低ナトリウム血症が進行していた可能性もあります。血清Na濃度が115mEq/Lを下回ると、意識消失、痙攣、昏睡が生じ、危険です。デュロキセチンの中止が適切になされた症例です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

副作用モニター情報履歴一覧

(民医連新聞 第1834号 2025年8月4日号)