副作用モニター情報〈654〉バンコマイシンとタゾピペの併用による腎障害
バンコマイシン(以下、VCM)は、MRSAなどの耐性菌に有効なグリコペプチド系抗菌薬、タゾピペ(以下、TAZ/PIPC)は緑膿菌を含む広域な菌に有効なβ‐ラクタム系抗菌薬です。
医療関連感染の重症例に対して、両剤を併用するケースは少なくないと予想されます。
今回は、VCMとTAZ/PIPCの併用による急性腎障害の副作用が報告されたので紹介します。
症例) 70代男性、腹腔鏡下大腸がんの手術施行
術後2日目 手術部位感染疑いで、TAZ/PIPC4.5g/日開始
術後5日目 VCM1.25g1日2回開始
術後7日目 VCMトラフ値57.6μg/mLと高値
Cre:3.34mg/dL 薬剤性の急性腎障害疑いにてVCM中止
その後もVCMトラフ値高値が遷延
術後17日目 VCMトラフ値は正常範囲へ
術後22日目 Cre:2.29mg/dLと腎障害が遷延
VCMによる腎障害の発症機序として、酸化ストレスによる急性尿細管壊死などがあげられており、その発症頻度は5~20%と報告されています。リスク因子は、1日総投与量4g以上、トラフ値20μg/mL以上、投与期間、他の腎毒性を有する薬剤との併用などが知られています。
一方、TAZ/PIPC単独による腎障害は少ないとされていますが、2014年以降、欧米を中心にVCMとTAZ/PIPCの併用療法における急性腎障害に関する観察研究やメタアナリシスが多数報告されています。
これらのことから、VCMとTAZ/PIPCの併用は、VCM単独やVCMと他剤との併用に比べて、急性腎障害の発現リスクを有意に高める可能性があります。また、急性腎障害の副作用は可逆的と考えられていますが、今回の症例のように、回復に時間を要する場合もあるようです。
VCMとTAZ/PIPCを併用する際には、腎障害の発現に十分注意しましょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1849号 2026年4月6日号)
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