副作用モニター情報〈667〉 DPP‐4阻害剤による爪障害
Tリンパ球はいくつもの種類があり、なかでもヘルパーT細胞(Th)は古くから知られていたTh1とTh2だけでなく、近年になってTh17など新たな種類が確認されています。Th17細胞にはDPP‐4(ジペプチヂルペプチダーゼ‐4)が多く発現しており、今回は、糖尿病に対して使ったDPP‐4阻害剤がTh17に影響を与えたと考えられる症例を紹介します。
症例:60歳代後半の男性。体重49kg。糖尿病などで通院中。
併用薬:アスピリン腸溶錠100mg、エナラプリル錠5mg、セリプロロール錠100mg、アロプリノール錠100mg、 ボグリボースOD錠0.2mg
発症6年前:DPP‐4阻害剤リナグリプチン錠5mg服用開始。
発症1カ月前:血糖値上昇を理由にテネリグリプチン錠20mgへ変更。
発症日:「薬のせいか分からないけど数本爪が伸びないし、ひびが入ってきている」と訴えあり。DPP‐4阻害剤による可能性があると薬剤師から医師へ情報提供を実施。
発症2カ月後:テネリグリプチンを中止しメトホルミン錠750mg/分3に変更となったが、服薬中断。
発症3カ月後:「6年間服用して問題なかったから」と本人の強い希望でリナグリプチン再開。
発症3.5カ月後:爪がひび割れて出血し痛むようになったため、リナグリプチン中止。
発症4カ月後:爪の痛みはなくなり、イプラグリフロジン錠25mg開始。
発症1年4カ月後:爪のひび割れ改善。
発症2年4カ月後:爪は綺麗になり少し伸びてきた。
爪は、爪母にあるケラチノサイト(角化細胞)がケラチンを合成、それが角質化することで形成されます。爪の障害が発生する乾癬という疾患では、Th17の過剰な活動が原因と考えられています。
角化細胞を活性化するインターロイキン22(IL‐22)をTh17が産生しており、本症例はDPP‐4阻害剤がTh17の活性を低下させ、その結果、爪の成長を阻害したのかもしれません。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1862号 2026年10月19日号)
- 記事関連ワード
- 副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)
