声明・見解

2008年7月18日

【声明2008.07.18】人間の尊厳が守られていない「人体の不思議展」の中止を求める

2008年7月18日
全日本民主医療機関連合会
会 長 鈴木 篤

 

 2002年以降、全国で「人体の不思議展」が開催されています。プラスティネーションとい う技術で遺体そのものを標本として展示しており、各地では毎回多くの人が訪れています。この展示会の端緒となったのは、1995年に日本解剖学会100周 年企画として開催された「人体の世界」です。現在行われている「人体の不思議展」は、その性格が大きく変質しているものと考えざるを得ません。一つひとつ の展示について十分な解説や、人体標本を展示する上での必要な配慮がなされておらず、教育的意義が大きいとは思えません。さらに、以下の問題があると考え ます。

1.人間の尊厳が守られていない
 遺体への冒涜は人間の尊厳をないがしろにするものです。「人体の不思議展」では、遺体が不必要にポーズをとらされているなど興味本位の見世物として扱わ れているように思えます。また、入場料を徴収し、会場に臓器をモチーフとした土産物を販売する売店も設置されるなど、明らかに遺体が営利目的のために使わ れています。

2.自らの意思にもとづいた献体か、きわめて不明確である
 標本について「遺体は生前の意思により献体されたものである」と紹介されていますが、意思確認の内容がきわめて不明確です。日本では、「医学及び歯学の 教育のための献体に関する法律」によって献体について定められていますが、これはあくまでも医科・歯科大学などの教育に関する法律で、一般市民に有料で公 開されることを想定したものではありません。このような展示方法で多くの観客の目に曝されることまで同意を得ていたかどうかは、はっきりしていません。し かも母体と胎児の標本があり、どのような手続きを経て献体の意思確認がされているのか、大いに疑問が残ります。

3.標本に外国人の遺体を利用している
 死体解剖保存法に照らして考えると、このような展示に日本人の遺体を使用することは、国内では認められていません。日本の展示会で使われている標本は、 外国人の遺体を利用し、中国の工場で製造されているとのことです。主催団体は、遺体の提供・処理などの過程を明らかにすべきです。

 以上のように、「人体の不思議展」が含んでいる問題は、人道上・医療倫理上、看過できるものではありません。「人体の不思議展に疑問を持つ会」などが問 題点を指摘し、国内外の批判が高まる中で少なくない団体等の抗議の声をうけ、日本医師会・日本看護協会・日本歯科医師会などをはじめ、各地の教育委員会な ど後援をとりやめる団体が出ています。しかし、後援を続けている団体も数多く存在します。
 日本解剖学会、日本医師会など、かつて協賛してきた団体は、医の倫理に照らして、今日開催されている「人体の不思議展」について是非見解を表明し、態度を明らかにされることを期待します。
 また、新聞社・テレビ局、各自治体・教育委員会などは、本展示には人道的・倫理的に多くの問題があることを認識され、興業を目的としたこのような展示会の開催・後援について再考するよう要望します。
 人間の尊厳が守られていない重大な問題をもつ「人体の不思議展」は中止すべきです。

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