声明・見解

2008年8月22日

【声明2008.08.22】福島県立大野病院事件の福島地裁判決にあたって

2008年8月22日
全日本民主医療機関連合会
会長  鈴木 篤

 福島県立大野病院における医療事故で亡くなられた患者様ならびにご遺族の皆様に、あらためてお悔やみ申し上げます。

 8月20日、福島県立大野病院事件に対し、福島地裁は業務上過失致死、医師法21条違反いずれも被告加藤医師の無罪判決を言い渡しました。

 今回の事件は、逮捕・起訴に至る経過からして異常事態といえるものでした。医療事故に対して刑事裁判がそぐわないこと、根本的な解決に結びつかないことがあらためて浮き彫りになりました。判決は妥当であり、検察には控訴しないことを望みます。

 この事件を通して、患者・家族への対応や補償の問題、再発防止のための事故調査と報告書の作成のありかたなど、当該病院のみならず医療界および国民全体で考えていくべき課題が提起されました。

 不幸にも医療事故が起こった場合に、患者・家族への誠実な対応と原因究明・再発防止がなに よりも重要です。私たちは再三にわたり厚労省に対して「医療事故を取り扱う公正中立な第三者機関」の設置を要望してきました。そこでは(1)医療機関・患 者双方から相談を受け付ける相談窓口、(2)被害者の救済制度の創設、(3)裁判外での紛争処理機関の設置、(4)医療事故を調査し公開し原因究明・再発 防止に役立てる機関の設置、(5)自律した行政処分を行う機能の確立、の5点を求めています。早期実現のために、政府・厚労省はもとより、医療界あげて取 り組みを強化するときです。

 いま、絶対的な医師・看護師不足で労働強化が極限に達している中、医療事故問題が医療従事 者の士気を奪っています。その中で、この事件は医療従事者に大きな衝撃を与えました。地域中核病院から産科をはじめ危険度の高い医療を担う医師の撤退がす すみ、医師不足に拍車をかける結果となりました。抜本的な医師数増、労働条件の改善など医療供給体制充実の施策が求められています。

 今回の判決に際して、安心してかかれる地域医療供給体制の拡充と、医療事故問題の解決のための総合的な施策をあらためて要求するものです。

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