民医連新聞

2004年6月7日

「へぇ~」じゃなく「えぇ~っ!」~無駄じゃない国政の知識をアナタに~

「春からいきなり暑かったから、季節感ゼロ! 今何月よ?」なんて言ってませんか? 今は6月、来月は7月、参議院選挙がありますね。では、今号は 「へぇ~」じゃなく思わず「えぇ~っ!」と言ってしまいそうな情報を、特集します。トリビア(無駄な知識)もおもしろいけど、「非トリビア」にだってスゴ いものがあります。あなたはいくつ「えぇ~っ」を言いましたか?

 給与明細…支給額から引かれている税金や保険料の中でも、高いのが「年金保険料」。昨年、ボーナスからも徴収されるようになった痛みは記憶にも新しい。

年金の積立金は年金給付以外に使われている

株で大損、6兆円

 ところが…この年金の積立金が株式などへの投資で、6兆円もの欠損を出していたことが昨年判明。さらに、年金の給付以外に5兆6000億円が使われたことも、今年3月明らかになった。
 グリーンピア(保養地)や福祉施設の建設費などに約2兆円。そこに天下った高級官僚の報酬に10億円余(02年度)。年金事務費の名目で1兆円余 (98~02年度)。これには社会保険庁長官の交際費、公用車の購入費、職員の外国旅費なども含まれる。また、保険料未納の女優で問題になったCMに昨年 度は10億円余。
 老後の生活保障になれば、と国民が真面目に支払っている年金保険料をこんな風に運用していいのか? 坂口厚労大臣は「損をしたから責任を取れといわれても、取りようがない」と答弁した。
 こういった運用を許可する法律は7年前につくられた「財政構造改革の推進に関する特別措置法」(自民、社民、さきがけの各党が賛成)だ。おまけに法律に は「03年度まで」と期限があったのに、小泉内閣が新法をつくり、継続させてしまった(「平成16年度における財政運営のための公債発行の特例等に関する 法律」自民、公明両党が賛成)。
 「年金制度を維持させなければならないから」と今国会で、保険料をさらに引き上げ、給付削減を強行しようとする政府、見直すことは他にあるのでは?

アメリカ国債、お買いあげNo.1は日本である

昨年だけで14兆円分

 世界で一番アメリカ国債を買っているのは日本政府だ。最近1年ほど(03年1~11月)で、日本政府は1283 億ドル、日本円で約14兆円を購入。政府・民間あわせ6398億ドル(約73兆円)を保有している(民間というのは主に銀行、国内で貸し渋りながら、アメ リカ国債は買ってあげている)。1538億ドルで2位のイギリス、1484億ドルで3位の中国をダントツで引き離す1位だ(04年3月・米財務省)。

 アメリカでは、財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」が増大。埋め合わせに外国から借金(国債を売る)しているが、その相手国は主に日本なのだ。

売れない国債、 買ってたの

 驚くのは、このことは日本政府がアメリカに寄付したも同然だということ。買ったアメリカ国債は売れないのだ。売れば、その値は暴落する。手持ちのアメリカ国債の価格が落ち、さらにそれがドル相場の暴落まで招きかねず、日本には二重の大損の危険がある。
 2月4日の参院予算委員会で、大門議員(共産党)にアメリカ経済の悪化の原因を質問された政府は、原因の一つに「戦争」をあげた。戦争で悪くなったアメ リカ経済を、日本が尻ぬぐい、という構図が浮かぶ。日本政府は04年度予算でアメリカ国債の購入資金となる「外国為替資金証券」の上限額を、前年度の倍の 79兆円から140兆円に一気に引き上げた。

国際社会で「イラク戦争支持」は少数派だ

 イラク戦争を支持し、自衛隊の派兵まで行っている小泉首相。「国際社会が支持した」とよく口にするが、それは大きく事実に反している。

不支持50億、 支持12億

 実際は…支持した国は49カ国(米政府調べ)。国連加盟国が191カ国だから、世界で圧倒的に多いのはイラク戦 争を支持しない国の方だった。人口では支持12億人と不支持50億人の計算になる。本当は、日本は「国際社会が支持しなかった」イラク戦争に、賛成した数 少ない国なのだ。

日本は義務のない金を在日米軍に毎年出している

今年は2441億円

 日本にアメリカの軍隊がいるのを知らない人はいないと思う。でもその在日米軍に、日本政府が支払う義務のない費 用を出していることは知っているだろうか? どの法律を探しても、そんな条項はない。むしろ、日米安保条約にともなう地位協定には「日本国で合衆国軍隊を 維持することにともなうすべての経費」は、「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」(24条)とある。
 この予算は1978年から出現、「なぜこんな金を出すのか?」と追及された当時の金丸信防衛庁長官は「思いやりの精神」と答えた。以来この予算は「思い やり予算」と呼ばれる。米兵のタキシード、野球場、体育館、家族住宅にいたるまで、私たちの税金が注ぎ込まれている。
 2004年度は、2441億円。開始年度の62億円の40数倍に(グラフ)。これは不況で苦しむ中小企業向け予算・中小企業対策費の1.4倍だ。日本の国民だってもっと「思いやり」が欲しい。

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[2004年度「思いやり予算」の内訳]

1430億円…米軍基地従業員の給与、各種手当や社会保険料、米軍が貸与する制服費などの労務費
258億円…在日米軍が使用した電気、ガス、上下水道などの水道光熱費
749億円…イラク戦争に参加した横須賀基地の空母キティホーク戦闘群などに。地球規模の軍事作戦をささえる施設の強化・基地施設の建設費
 4億円…厚木基地の空母艦載機が硫黄島で実施する夜間離着陸訓練(NLP)費用

1食の費用は 豚丼7杯分

 ちなみに、NLP訓練費に含まれる給食費2400万円は1食あたり2157円。「某店の豚丼を7杯食べておつり がくる」と計算したA記者は悔し涙を流した。また「思いやり予算」とは別に、沖縄での新基地建設費(SACO関係経費)などにも266億円が出される。ま さに「いたれりつくせり」だ。

日本の「憲法改正」はアメリカからの指示だった

 「憲法改正」を急ごうとする日本政府。「憲法は押しつけられたものだから」といった理由をあげる。しかし、「改正」こそアメリカの圧力によるものだ。
 日本国憲法ができた直後に、アメリカではこんな趣旨の報告書が出されていた。「日本に20万~30万の軍隊をつくらせ、日本列島と米軍基地の防衛にあた らせることが望ましい。それには憲法修正が必要だが、国際世論が反対するはず。すぐの実現は難しい。だから、日本が軍隊を持つことを認める方向で『憲法改 正』にむけた調査を行い、日本の軍隊の橋渡しになるような警察隊をつくることが適当」(1948年5月ロイヤル米陸軍長官「覚え書き」)
 1957年、憲法調査会が政府に置かれ「憲法はおしつけられたかどうか」で膨大な議論をした。結論は「押しつけられたかどうかはわからない」。そして、 当時の関係者が亡くなった今になって再開されたのが2000年からの憲法調査会だ。「憲法がおしつけられたかどうか検証しよう」という。「1950年代に わからなかったことが、なぜ今わかるのか?」という疑問の声もあがっている。これもまた、アーミテージ米国務副長官のレポートから始まっている。
 「押しつけ」られているのは、日本国憲法の平和原則をターゲットにした「改憲」だった。

(民医連新聞 第1333号 2004年6月7日)

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