民医連事業所のある風景 鳥取 わかさ生協診療所(若桜さくらの郷) 「住み慣れた地域で最期まで暮らす」を支える、複合型施設の挑戦
若桜さくらの郷は、鳥取県と兵庫県の県境に位置する若桜町にあり、人口は2700人で高齢化率は50%、面積の95%が山林で、冬は1mを超える積雪がある一方、町の中心部は城下町・宿場町として栄えた歴史情緒ある町並みが特徴的です。
1994年に本家医院(個人医院)を引き継ぐ形でわかさ生協診療所が開設され、それ以降は医療活動だけでなく、高齢化がすすむ地域の実情に合わせてデイケア、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーションや訪問リハビリテーションなどのサービスを地域で展開してきました。
45年が経過した建物の老朽化に伴い、2024年4月、わかさ生協診療所・せいきょう訪問看護ステーションすずらん若桜・住宅型有料老人ホームさくらの郷・定期巡回随時対応型訪問介護看護ひまわり・デイサービスさくら・若桜居宅介護支援事業所の六つの事業活動を行う、鳥取医療生協初の複合型施設として、自治体や議会の支えもいただきながらオープンしました。
地域には診療所が2軒、デイサービスも2軒と医療・介護の資源が乏しいなかで、自治体や他事業所とも連携を密にし、組合員・地域住民の「住み慣れた地域で安心して暮らし続けたい」の願いに応える医療・介護活動を行っています。
私たちの医療・介護活動の特徴
私たちの医療・介護活動の特徴の一つは、複合型施設としての強みを生かした連携にあります。一つの建物に六つの事業が集まっているため、情報共有がしやすく、普段のちょっとした相談から治療や介護に関する相談まで、気軽にできることが大きな力になっています。また新たに住まいの提供を開始したことで、自宅では暮らせない方に老人ホームに入ってケアを提供できたり、訪問系事業にとっても「何かあったら老人ホームに」という安心感につながっています。
もう一つの強みとしては、行政や町内の事業者とも連携が密にできていることがあります。地域からの依頼を断らずに受けるなかで、「困ったら医療生協さんに」と自治体からの信頼を得ているほか、健診分野で情報共有や声かけなど自治体と連携した受診促進のとりくみ、地域の専門職との困難事例や見守りの情報交換などを行っています。連携の力で、地域住民の「住み慣れた若桜町で安心して暮らし続ける」を支えています。
“オール若桜”でとりくむ民医連らしい地域包括ケアをめざして
わかさ生協診療所は、前身である本家医院の「町民のための医療を継続してくれるのは生協しかない」という思いを引き継いだ医師、看護師など諸先輩のとりくみが、現在の若桜さくらの郷のとりくみに結びついています。すべての町民、組合員が住み慣れた地域で安心して最期まで暮らすための、事業所と行政・地域が連携した「オール若桜」でのとりくみは、まさに民医連のめざす無差別・平等の地域包括ケアだと感じています。地域的にも経営的にも厳しい環境下ですが、若桜でがんばる職員を誇りに、組合員・地域住民の「やっぱり若桜がええでな~」の願いに応えていきたいと思います。
(わかさ生協診療所 事務長 是枝清一)
- 記事関連ワード
- 事業所のある風景
