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民医連医療

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民医連事業所のある風景 神奈川・京町診療所 30年前の夢を次の世代へ ~組合員とともに歩んだ診療所移転の挑戦~

 今年春、京町診療所は新たな場所で診療を開始した。老朽化施設の更新というだけであれば、移転はもっと容易だったかもしれない。しかし京町診療所は30年前、組合員と職員が力を合わせて築き上げた診療所だった。その歴史が大きかったからこそ、今回の移転では組合員との合意形成に多くの時間と対話を重ねることになった。
 診療所の原点は1990年代半ばにさかのぼる。当時、地域で「身近な場所に安心して通える診療所が欲しい」という声が高まり、診療所建設の検討が始まった。建設実現のためにとりくまれたのが「サンサン運動」だ。組合員3千人、出資金3千万円を目標に、組合員と職員が地域を歩き加入・増資を呼びかけた。全市から100人を超える仲間が集まり、地域訪問や対話を重ねて建設が実現した。1998年に開設し、多くの組合員にとって「自分たちの力でつくった診療所」だった。その後、診療所は地域医療の拠点として発展。医療活動だけでなく、健康まつりや健康チェック、食事会などを通じて、組合員同士のつながりを育んできた。組合員から「いのちの砦」「安心して相談できる場所」として親しまれ、地域の健康づくりやまちづくりを支える役割を果たしてきた。一方で、開設から四半世紀が経ち、建物の老朽化や感染対策の限界、診療機能拡充の難しさなどが大きな課題に。コロナ禍では、限られたスペースでのトリアージや動線分離に苦労し、今後の医療活動を考えるうえで施設更新は必須の課題となった。さらに患者数や組合員数の減少もすすみ、新たな地域とのつながりづくりも求められていた。
 しかし、移転の必要性を理解しながらも、組合員の不安は小さくなかった。「今まで歩いて通えたのに通院はどうなるのか」「組合員活動は続けられるのか」「組合員ルームはどうなるのか」といった声があい次いだ。説明会では「結論ありきではないか」という厳しい意見も出された。診療所は単なる建物ではなく、自分たちの運動の成果そのものだからである。そこで、計画段階から組合員との共同を重視した。組合員代表と職員によるリニューアルプロジェクトを立ち上げ、「医療」「介護」「保健予防」「地域分析・組合員運動」の四つのチームで議論を重ねた。説明会や支部での報告、現地見学会、地域訪問、ニュースの発行などを通じて、できる限り情報を共有し対話を続けた。議論のなかで確認されたのは、「通院中の患者さんを誰も取り残さない」という姿勢だった。送迎体制の整備や活動拠点の継続なども重要課題として位置づけた。
 そして始まったのが「ニューサンサン運動」だ。名称にはサンサン運動への敬意と継承の思いを込めた。新たな地域とのつながりづくりのため、健康チェックや訪問活動、加入・増資の呼びかけなどを積み重ね、新しい診療所を地域に根づかせるとりくみが続いている。30年前のサンサン運動が診療所開設の原動力となったように、ニューサンサン運動もまた、新しい診療所の未来を支えるとりくみとして現在進行形で続いている。移転と建物の完成は一つの到達点ではあるが、建物をつくることが目標ではない。組合員を増やし、地域とのつながりを広げ、「健康で明るいまちづくり」の拠点として育てていくことが目標である。場所は変わっても、組合員と職員が共同で築いてきた歴史は変わらない。30年前の夢を受け継いだ、京町診療所の次の30年づくりは、今まさに始まったばかりである。
京町診療所 事務長 田中忠雄)