全日本民医連第47回定期総会運動方針案
第47回総会スローガン(案)
- 憲法公布80年、地域から、共同組織とともに「非戦・人権・くらし」を掲げ、大軍拡を阻止し、人権としての社会保障・国民皆保険制度を維持・発展させよう
- ケアの倫理の学びを力に、自己責任論と排外主義に対峙し、公正でジェンダー平等と多様性が尊重される社会と民医連をめざし対話・行動しよう
- 国の責任でケア労働者の処遇の改善と医師増員を実現し、私たちの総合力で医療・介護事業所の経営を守りぬくとともに、医療・介護の担い手の確保と育成で前進を勝ち取ろう
【 目 次 】
第1章 2020年代の中間点に立って
第1節 「新しい危機的なフェーズ」に入った世界と日本
第2節 「医療・介護活動の2つの柱」提起から10年
第3節 コロナ禍を越えて
第2章 47期を取り巻く情勢の特徴~いのち・憲法・民医連綱領の視点で変革を~
第1節 高市自民党・日本維新の会の連立政権の危険性に抗(こう)して
第2節 戦争と分断に抗(こう)して地球規模の変化に合流を
第3章 46期の概要と47期の各分野のとりくみ
第1節 一人ひとりの尊厳を大切にする医療・介護活動の発展を
第2節 共同をひろげ、平和とくらしを守り、人権としての社会保障へ前進を
第3節 高い倫理観と変革の視点を育む職員の確保・育成の前進を
第4節 医学対活動を飛躍させるとともに、時代にふさわしい民医連の医師集団づくりをすすめよう
第5節 岐路に立つ民医連経営、「たたかいと対応」の前進で医療経営構造の転換を
第6節 私たちのあらゆる活動のパートナー、共同組織の前進を
第7節 民医連(全国組織)の強みを生かし、より良い運営に向けて
はじめに
非戦・人権・くらしを旗印に、ケアの倫理を深め、人間の尊厳をまもろう、ジェンダー平等と多様性の尊重、民医連事業所を守り発展させようと運動方針を練りあげた46回総会から2年が経過しました。
この2年間、我が国の医療・介護事業所にもたらされた深刻で異常な経営危機のなか、私たちはそれぞれの民医連事業所の経営を守るために大変な努力をしてきました。そしてそれは、わが国の医療・介護界をあげての大きなたたかいを起こすなかですすめられました。一人ひとりの職員が署名にとりくみ、県連・法人はコロナ禍でつながった多くの事業所に呼びかけ、各病院団体と対話をし、国や自治体に働きかけてきました。いまだ経営危機は深刻に継続していますが、「まちの病院・診療所、介護事業所をまもれ」という世論は政府を不十分ながらも動かすまでになっています。
私たちの医療・介護の現場と地域では、経済格差、不十分な年金制度などによって、医療・介護に十分にアクセスできない人びと、どうにか受診はできていても必要な検査や治療を我慢している人びとが増え続けています。さらには、生活保護制度など権利としての制度利用に際して、行政当局からそれを阻まれ、あるいは剥(はく)奪(だつ)されるような論外の人権侵害も目のあたりにしてきました。障害者、外国籍、性的マイノリティなど、さまざまな周縁化された人びとの医療や介護へのアクセスにも深刻な困難が変わらずつきまとっています。誰も置き去りにしない私たち民医連事業所の存在、そこに働く私たち民医連職員の存在が、そのような不条理に対する防波堤、支援とたたかいの拠点になっています。
コロナ禍のジレンマのなかで悩みぬいた私たちが「ケアの倫理」と出会い、この2年間その学びと語らいを深めるなかで見つけてきたのは、一人ひとりの人権、尊厳を守るうえでのケアの大切さと力であり、それを損なったり、無視をするケアレスな制度や政策は、ケア重視に変えていかなくてはならないということでした。民医連に限らず医療・介護関連の事業所の大部分に共通するさまざまな困難は、低く抑えられてきた診療報酬・介護報酬と強く関係しており、そのおおもとには、軍備増強には聖域のように財政出動しながら、社会保障を「コスト」として削減する政治、医療・介護福祉系エッセンシャルワーカーの社会的位置づけの低さなどがあります。
政府と経済産業界が一体となって軍需産業に力をいれ、排外主義的な発言を公然と行う政党が議席を伸ばし、新たな自・維政権は、外交上の緊張を高めており、もはや戦前とも認識されうる状況です。
急速に差別と排除、自己責任論が強さを増しているように見える混(こん)とんとした今の社会ですが、「ケアの倫理カフェ」で学び考えた視座をもって、いのちと人権という灯(あか)りを掲げて対話をすすめれば、地域には、まっすぐに人権にむきあう出会いがあり、まっとうな市民社会を形成する力が存在しています。被団協のノーベル平和賞受賞、旧優生保護法下強制不妊手術訴訟の最高裁での完全勝利など、平和と人権をめぐる画期的な出来事があいつぎ、また選択的夫婦別姓や同性婚、ジェンダー平等などの人権にかかわる市民のとりくみのひろがりと一定の司法判断が行われたこの2年間の前むきな変化は、国連および世界各地で、差別と排除、軍備増強をすすめる勢力に対して、包摂と連帯、非戦非暴力をもとめて行動している人びとのエネルギーとつながっています。
わたしたちは、その地域での対話、市民社会とのかかわりとつながりをつくりながら、日々の医療・介護実践やソーシャルアクションを通じて、仲間を増やし、育ちあい、自らの医療・介護の質を高め続け、現在の深刻な危機をはらむ情勢、経営や人手不足などの主体的な困難を乗り越えていかなければならない重大な局面に立っています。民医連という組織自身にも、多様性やジェンダーバランス、世代間を超える知恵と行動の結集など、従来の延長線を超えるような変化、進化が求められています。
今、民医連綱領ととともに、日本国憲法と国際基準の人権を学び深めることが非常に重要です。その学びを力に、共同組織の仲間とともに、地域のなかで人権保障の連帯と協同の輪をひろげながら、なんとしても戦争を起こさせず、いのちと健康と尊厳を守り、事業所を守り、私たち医療・介護福祉従事者の処遇を改善し、一人ひとりが大切にされ、民医連事業所と職員がいきいきと活躍する2年間にしていきましょう。
総会の任務は以下の3点です。
①情勢認識を一致させ、46期の到達、教訓を学び合い、47期の方針を確立する
②47期方針の先頭に立つ役員を選出する
③46期決算、47期予算を決定する
平和的生存権、人権が鋭く問われ続ける沖縄での総会からのバトンを受け、健康権のたたかいの草わけとして歴史に輝く岩手での総会です。おおいに経験と知恵を持ち寄り、明日の民医連を開く総会にしましょう。
第1章 2020年代の中間点に立って
2020年2月第44回熊本総会で、私たちは2010年の綱領改定からの10年をふり返り、2020年代に民医連がすすむべき道筋を明らかにしました。環境課題などSDGsとも共鳴しつつ、人権に関する国際的規範の進展や核兵器禁止条約の成立(2017年)などに確信を持ち平和課題にとりくむこと、SDHの視座で「医療・介護活動の2つの柱」を深化させ、社会保障改悪に抗すること、無差別・平等の地域包括ケアの構築に主体的にかかわる姿勢で、自らの経営課題の克服に挑むこと、そして、その実践を担う職員育成を変革の視点で推進することなどを提起しました。
その後、2020年からの新型コロナウイルス(COVID19)による歴史的なパンデミックや、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻、2023年10月からのイスラエルによるガザ地区でのジェノサイド、2025年からの第二次トランプ政権(トランプ2・0)などを契機として、世界と日本の社会・政治は大きく揺るがされています。
2023年2月、全日本民医連は、第45期第2回評議員会で、以下のような認識を確認しました。「ロシアのウクライナ侵略戦争に端を発した世界的軍事緊張と、それを利用した大軍拡の推進、アベノミクス失政による日本経済の行き詰まり、国民負担を強いることでしか継続案をしめせない社会保障解体路線など、これ以上の平和と人権尊重の流れへの逆流、後退を許すならば、戦後、日本が何とか守り続けてきた、この国のありかたそのものが、瓦(が)解(かい)する危機に直面しています」。あれから3年、この状況はさらに悪化し、国民生活を圧迫しています。
加えて、ジェンダー平等や多様性の尊重などの課題でもともと遅れを取っていた日本は、人権諸条約に関する国連からの勧告に真摯にむき合おうとせず、世界水準に遠くおよばない状況に陥っています。排外主義(注1)のひろがりや世代間対立が懸念される昨今、世界の人権保障の到達に学び、「国際基準の人権」にもとづいて考え行動することが強く求められています。2026年は日本国憲法公布80周年となります。憲法が真に生きる社会に転換できるかどうか、大変重要な局面です。
2020年代の中間点に立った今、これまでとはフェーズの異なった事態に直面していることを自覚し、それにふさわしいとりくみを具体化することが求められます。
第1節 「新しい危機的なフェーズ」に入った世界と日本
(1)グローバル資本主義の暴走がもたらした問題
あくなき利潤の追求を基本原理とするグローバル資本主義の暴走は、社会に深刻な困難をもたらしています。気候危機の深刻化と経済格差の拡大は、これまで講じられてきたさまざまな対応策も有効な歯止めとはなっておらず、今や人間社会の持続可能性そのものが問われる限界的な局面を迎えています。
①ますます悪化する気候危機
地球温暖化によって世界規模で異常事態が進行しています。氷床の減少、サンゴの死滅、豪雨や大洪水、海面上昇による水没の危機に見舞われる島国や沿岸地域、大干ばつや広範囲の山火事、森林破壊と砂漠化、農作物被害と食糧不足、新興感染症発生リスクの増加など、その被害はひろがるばかりです。
こうした事態に対して、1990年代から国連気候変動枠組み条約締約国会議COP(198カ国・地域)での議論と対策がすすめられ、2015年のCOP21(パリ開催)では、「産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃より十分低く保ち、1・5℃に抑える努力を追求すること」を共通の目標として確認しました。その後、温室効果ガス削減・化石燃料の使用制限などの各国目標の実践が思ったようにすすまないなか、2021年IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断じ、国際社会にむけて、対策を促進させるよう呼びかけましたが、事態はむしろ逆行しているとも言えます。気候変動を「史上最大の詐欺」と発言したトランプ大統領のもとでアメリカは、昨年ブラジルで開催されたCOP30に参加せず、この運動でも分断を持ち込んでいます。目標値1・5℃を越えることはもはや避けられない状況です。
政治の責任を厳しく問いつつ、「気候正義」のムーブメントに連帯し、この課題へのとりくみを強化することが必要です。
②深刻な経済格差の拡大
国際NGOオックスファムによれば、現在最富裕層1%は下位95%が持つ富の合計よりも多くの富を保有する一方、36億人が貧困ライン以下の生活をおくっており、世界不平等研究所の報告によれば、世界の富のうち、上位10%が76%を所有し、下位50%の保有は2%にすぎないという状況です。
加えて、収入や教育機会、住環境など個々の社会経済的状況が健康格差に直結する実態がCOVID19の世界的パンデミックでより明らかになり、今や経済格差は人びとのいのちと健康を脅かす重大要因になっているといえます。
この間、OECDやG20などが主導した、新しい税制の国際的ルールの確立や、一部の国では富裕層に対する課税強化、付加価値税(消費税)の減税といった公正な税制の確立(課税正義)にむけた施策が模索されていますが、現状を大きく変えるには至っていません。
多くの専門家が指摘するように、処方せんは明らかであり、富裕層への適正な課税をどのように実現するのか、経済や社会のありかたへの模索と併せて、政治的な働きかけを強めていくことが求められます。
③人権、DEI(注2)に対するバックラッシュ(逆流、揺り戻し)
こうした状況を背景に、過激なナショナリズムのひろがりや、人種や国籍、性別などを理由にしたマイノリティへの差別・排斥も深刻になっています。欧米でも日本でも排外主義を主張する右派ポピュリズム政党の台頭が目立ち、中道の右・左派政党が議席を後退させているのが特徴です。どの国にも国民の厳しい生活実態がその背景にあります。
この流れは、人権や倫理の面で、戦後積み上げてきたさまざまな規範に深刻な脅威をおよぼしており、アメリカでは反DEI政策が強行され、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)や性の多様性など、人権問題で重大な逆流が生じています。
日本では、日々の生活苦の影響から、「社会的弱者」である高齢者や障害者、性的マイノリティー、外国人などが「国から補助を受けているのに対して、補助を受けられない自分たちは割を喰っている」と感じる意識が、特に若中年層の間で強くなっていること、そしてそのことが、外国人排斥や世代間対立などを掲げる政治勢力が支持を得るという状況につながっていることが指摘されています。
(2)平和と社会保障が戦後最大の危機に
MAGA(注3)を掲げ、トランプ2・0始動以降、自国ファーストの徹底化をはかるアメリカは、これまで積みあげられてきた国際ルールを踏みにじるふるまいを続けています。また、そんなアメリカに追(つい)随(ずい)してきた日本政治は、「タガが外れた」と称するにふさわしい状況に陥っており、平和と社会保障は危機に瀕しています。
①世界中で戦争の危機が高まっている
トランプ2・0のもと、昨年12月5日に発表された米国国家安全保障戦略(NSS2025)では、同盟国・友好国がアメリカに防衛負担を課し、意味の乏しい戦争にアメリカを巻き込んできたことを指摘したうえで、北大西洋条約機構(NATO)諸国の安全よりもアメリカの安全を第一にすることを強調し、ロシア・ウクライナ戦争終結への欧州各国の努力が足りないと非難しました。アメリカが当初と異なる立場を表明する状況に変化したことをもって、「モンロー主義(注4)」の再来とする言説もあり、南米への経済的・軍事的圧力もその文脈で語られることが多くなってきました。
今回のアメリカによるベネズエラ船撃沈や1月3日深夜の空爆・大統領拉致などは、理性による抑制が効かなくなっている証左とも見えます。世界はまた一歩危険な段階にすすんだといえます。
欧州各国は、こうしたアメリカを戒(いまし)めるどころか、ひきつづき欧州の安全保障の枠内に引き留めるために、この間各国で軍拡が進行しています。欧州連合(EU)のフォンデアライエン委員長は「安全で強靭な欧州をつくる」と意見表明し、NATO首脳会議は、加盟国が2035年までに軍事費を対GDP比5%に引き上げることを宣言しました。クロアチアが来年18年ぶりに徴兵制を再開、フランスでは25年ぶりに限定的な兵役が復活し、ドイツでも徴兵制復活が閣議決定されるなど、きな臭い状況が進行しています。
②「成長しない国」と「戦争する国づくり」
日本経済には長年の失政の影響が強く表れています。1990年代からの労働の自由化により大量の非正規労働者が生み出され、結婚・出産を希望しても経済的に叶わない状況が蔓延するなどの要因で少子化が急速に進行しました。加えて、国民の生活苦が一気にひろがる深刻な状況下で、アベノミクス「3本の矢」(大胆な金融緩和、機動的な財政出動、規制緩和などによる成長戦略)は経済成長も財政再建も、そして「トリクルダウン」も実現できず、国民の実質可処分所得は改善しませんでした。中央銀行(日銀)は「掟破り」とも言える財政資金調達(大量の国債購入)で政府の借金の肩代わりをし続け、国家予算の約4分の1を国債借り換え(返済)と利払いに充てざるを得ず、かつ借金総額が増え続けるという悪循環を引き起こしました。日本の国際的信用は低下し「成長しない国」として取り残されているというのが現状です。
国民の購買力を上げない限り経済の再生はあり得ません。そのためにも、安定した雇用環境の実現と賃上げ、そして公正な税制改革が欠かせません。
また、日本はアメリカにとって東アジア最大の軍事拠点と位置づけられ、日本政府もそれに応えて来ました。2014年の集団的自衛権容認の閣議決定、2015年の安保法制強行、2022年の安保3文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)改訂と、「戦争する国づくり」が着々とすすめられるなか、南西諸島に米軍・自衛隊共同戦力の拡大整備がすすめられ、「敵基地攻撃能力」を構想するなど、アメリカの戦争で日本が戦場と化すことが現実的懸念となっています。
軍拡内容は常軌を逸しており、防衛費対GDP比1%枠保持や殺傷兵器の生産・輸出禁止といった、長い間固く守られてきたルールは閣議決定のみで葬り去られました。加えて、首相が国是である非核三原則の見直しをほのめかし、政府高官が「核保有すべき」と発言するなど、唯一の戦争被爆国として断じて許し難い状況です。今や防衛費は「聖域」として青天井の様相(ようそう)を呈(てい)し、兵器産業は経済発展の重要なツールと位置づけられる事態です。
アメリカの戦争に巻き込まれた場合に戦場になるのはアメリカ本土ではなく日本です。そうした現実を見据えた外交と防衛のありかたを検討すべきであり、日米安保最優先の平和構想が現実の平和を遠ざける可能性を強めていることは明らかです。既に存在しているASEANを軸にした非軍事的な安全保障の枠組みを生かして、東アジアの平和の構築に臨んでいくことが求められます。
③社会保障理念の変質と国民皆保険制度の危機
その一方で、社会保障への攻撃は苛烈(かれつ)を極めています。1980年代から始まった系統的な医療費抑制政策は、1990年代には「橋本6大改革」として、「高コスト構造の是正」を目的に、公的給付の削減、受益者負担の強化がはかられました。1995年の社会保障制度審議会「95年勧告」では、「50年勧告」(注5)がしめした国家責任を曖昧にし、社会保障制度を「みんなでつくり、みんなでささえていくもの」と定義しました。2000年代には小泉構造改革で社会保障費自然増部分の容赦ない削減が断行され、「医療・介護崩壊」とも報じられた事態が各地でひろがり、2009年の政権交代の引き金になりました。
2012年に民主党、自民党、公明党により策定された社会保障制度改革推進法は「95年勧告」を実質的に法定化したものであり、「自助」と「自己責任」が原則で、それを「共助」(社会福祉)によってささえることを社会保障の基本骨格とし、憲法25条の立法改憲とも言える内容でした。同時に成立した改正消費税法では、消費税を社会保障の主要な財源にあてることを明記し、その後自民党政権はこの改正を盾に消費税減税に一切応じない態度を続けています。
民主党から政権を取り戻した第二次安倍内閣以降の自民党政権はこの路線を忠実にすすめ、2022年12月の全世代型社会保障構築会議報告では「社会保障は世代を超えたすべての人びとが連帯し、困難をわかち合い、未来の社会にむけて協力し合うためにある」と、社会保障における国の責任をしめすことなく「助け合いの仕組み」と再定義するかのような内容になっています。
これまで数かずの制度改悪に対して国民運動が立ちあがり、国民皆保険制度はかろうじてその体を保ち、「世界一」と称された日本の医療を維持してきました。しかしながら近年、タガが外れた政治の影響で、新しい質の困難に直面しています。超高齢社会の到来と医療技術の進歩などにより保険医療支出が増大することをもって、社会保障が国家財政の悪化の主因かのような言説が喧伝され、理念や人権を無視した社会保障抑制策が登場しています。もっとも困難な疾病を抱えた人に鞭打つような高額療養費制度の患者負担増や、適切な診療から遠ざけ、さらに国民の自己負担を大幅に増やすことにつながるOTC類似薬の保険外しなどはその典型です。加えて、くり返されてきた診療報酬・介護報酬の削減、円安と物価高騰で医療機関・介護事業所が深刻な経営難に陥っていることは重大であり、主要病院団体の幹部から「国民皆保険制度の維持が困難になるかもしれない」との発言が出るほど事態は深刻です。
また、少子化と長い間ケアとケア労働が低く評価されてきたことを背景に、近年、看護・介護従事者の養成が重大な危機に瀕しています。看護師養成課程(大学、専門学校含む)の受験者数が激減し、特に看護師専門学校(3年過程)の受験者数は2015年8万7217人から2024年には3万5728人に減少しており、定員割れや閉校するケースが増えています。介護労働者の処遇は他産業比較で月額マイナス8万3000円(2024年値)と劣悪な状況が放置され、介護需要が増加するにもかかわらず、実労働者数が増加しないという深刻さです。介護福祉士養成学校は5年間で30校が閉鎖し、新規入学者数は医学部医学科よりも少ない状況で、かつその半数は外国人留学生にささえられているのが実情です。
付け焼刃的な対応では到底解決できない事態であり、抜本的な政策転換が無ければ、この国の医療・介護のありかたそのものが大きく変わってしまうような局面と捉えなければなりません。 積みあげてきた、公的な医療・介護制度のこれ以上の後退を許さず、医療界・介護界と広範な国民各層が結束して、いのち第一の政治の実現にむけ行動する時です。
第2節 「医療・介護活動の2つの柱」提起から10年
2016年の第42回総会(福岡)で「医療・介護活動の2つの柱」(「2つの柱」)(●貧困と格差、超高齢社会に立ちむかう無差別・平等の医療・介護の実践、●安全、倫理、共同のいとなみを軸とした総合的な医療・介護の質の向上)が提起されて10年が経過しました。本格的な「地域包括ケア時代」を迎えるにあたり、いかなる医療・介護事業戦略モデルを、そして共同組織との協同をつくりあげるのか、という課題に直面するなかで「無差別・平等の地域包括ケア」実現をめざす私たちにとって日常の医療・介護実践の新しい旗印として進化させたものです。
(1)提起の背景となった「地域包括ケア」の進捗
地域包括ケアは2003年、2年後の介護保険法改正に際して「地域包括ケアシステム」として登場し、厚労省高齢者介護研究会の報告書「2015年の高齢者介護」のなかで国の政策方針として正式に提言されました。「団塊の世代」がすべて後期高齢者になる2025年をターゲット年と定め、厚労省によれば「要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしいくらしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制」という内容で構想されました。
ターゲット年を超えた今、同構想はどう評価されるべきなのでしょうか。2013年の社会保障制度国民会議報告書では、めざす地域包括ケアシステムのありかたとして、「QOLの維持・向上を目標として、住み慣れた地域で人生の最後まで、自分らしいくらしを続けることができる仕組み」であり、「医療サービスや介護サービスだけでなく、住まいや移動、食事、見守りなど生活全般にわたる支援を併せて考える」「人口減少社会における新しいまちづくりの問題として、医療・介護のサービス提供体制を考えていく」と表現されています。
しかし、2010年代なかばから地域医療構想にもとづく病床再編政策がすすめられるなか、地域包括ケアは「自助」「互助」を中心に据えたベッド削減の受け皿として位置づけられ、「病院から在宅へ」「医療から介護へ」「介護から市場・ボランティアへ」と患者・利用者を押し流すことで、国にとって低コスト・効率的な医療・介護提供体制の構築が2025年にむけてめざされるようになりました。
こうした経過のなかで現状を評価すれば、初期の構想との乖離は明らかです。今や多くの病院の存続が危ぶまれ、診療所すら無くなるような地域が今後増えることが予想されています。介護については、その労働環境と処遇の劣悪さから圧倒的な担い手不足が今後も続くとされており、国はそれを解消する術を提示できず、「保険あって介護なし」状況が常態化しています。人権としての住宅環境の整備も事実上放置されたままです。
次のターゲットは2040年です。65歳以上人口がピークを迎え、団塊の世代を中心に85歳以上人口が急増する15年間となります。地域での変化にアンテナを張りめぐらせ、連携を重視し、知恵を出し合い、人権の視点で地域包括ケアの充実にかかわっていくことが求められます。2020年代後半がそのスタートとなります。
(2)「2つの柱」の深化のために
「人権としての社会保障を制度として求めながら、現実の貧困と格差、超高齢化社会に立ちむかう民医連の事業所と共同組織の活動方向をより鮮明に打ち出す(第42回総会会長あいさつ)」ための重要な提起として位置づけた「2つの柱」は、その後の10年間、「無差別・平等」の医療・介護を実践し、質向上に挑み続けた民医連組織全体を牽引(けんいん)した旗印でした。
民医連はこの間、経済的事由による手遅れ死亡調査や『歯科酷書』で国民の窮状を告発し、無料低額診療事業や地域連携の積極的構築、フードパントリーの定期開催など、受療権保障と生活支援にとりくみました。さらには、共同組織と力を合わせ、地域のステークホルダー(利害関係者)とのさまざまな連帯を形成し、まちづくりでもその役割を積極的に果たしてきました。
そして、6年におよぶコロナ禍での実践を通じて、ケアとケア労働の価値を世に問うとともに、いのちのとりで裁判や「結婚の自由をすべての人に」訴訟、被ばく者運動など、当事者とともに基本的人権や個人の尊厳を守るたたかいに参加してきたこと、加えて、「旧優生保護法下における強制不妊手術問題に対する見解」のとりまとめと学習運動、人権と倫理センターの設立、SOGIEコミュニティとジェンダー委員会の発足と、それらを軸にした啓発活動などを通じて、人権論を深めてきたことは特筆すべき前進です。多くの職員が参加した42期の「憲法Café」、44期の「人権Café」、そして46期の「ケアの倫理Café」は、いずれもこの間に行われた学習実践です。
そうした経過のなかで、憲法13条(個人の尊重)や14条(法の下の平等)、24条(個人の尊厳と両性の平等)への理解を深めたことは、民医連の運動方針の発展にとっての画期となりました。そして私たちは、フェミニズムの視点を自覚的に取り込むに至り、「ケアの倫理」を総会スローガンに掲げるほどに、その認識を深めてきました。
フェミニズムは、いのちを産み育て、死を看取るというケア労働(再生産労働)(注6)がなぜ評価されないかという点について、家父長制と資本主義との関係性のなかで問い、ケア労働の公正な費用負担のありかた、「弱者が弱者のままで尊重される社会」を追求してきました。「ケアの倫理」はこれらの流れのなかで生まれ、組織や社会の持続可能性にもつながる視座です。
提起から10年たった「2つの柱」が、平和や社会保障が危機に瀕するなかで、地域連携やまちづくりの重要性がさらに増す激動の2020年代後半にむけて、どのように役割を果たし続けるのか、情勢の変化に応じて、「旗印」自体を進化(深化)させるという視点で、事業と運動をすすめていく必要があります。
第3節 コロナ禍を越えて
(1)コロナ禍の現状認識と教訓を今後に生かすために
新型コロナウイルスは世界で7億7000万人以上、日本で3000万人以上が感染し、死亡者は世界で700万人以上、日本で14万人以上と、その規模においても、「留め置き死」など社会全体におよぼした、さまざまな影響においても、世界史に残る巨大パンデミックとなりました。特にわが国においては、5類へ変更した2023年5月以後の1年間に3万2576人が、国からの補助金がほぼ無くなった2024年度1年間でも3万5865人が亡くなった(死因8位)事実を忘れてはなりません。
2020年からのコロナ禍は、日本社会全体に大きな影響をおよぼしました。民医連は当初より国民の受療権を守るため、70年の歴史で築きあげてきた力をフル活用することで、その存在意義をいかんなく発揮しました。「まず診る、援助する、何とかする」という思いですすめられたコロナ禍に対する実践の全体像については、44期に「とりくみの到達と課題」としてまとめ、第45回総会方針にまとまった記述を行いました。そのなかでは、分析の視点として●グローバル資本主義による環境破壊が新興感染症を産み出していること●日本の医療提供体制の弱点とケア労働者の劣悪な労働環境が露呈したこと●社会経済的状況が健康格差に直結する現実があること●新自由主義による自己責任論がまん延していること●年齢によるいのちの選別など臨床現場での倫理規範が侵害されたこと●政治に働きかけなければいのちを救えない現実があること、をあげ今後の活動に生かすことを提起しました。
現在もなお、同ウイルスによる感染者は発生し続けていますが、国の対応は補助金を含めて「平時」対応になっており、そうした点を踏まえて、今後の事業と運動を構築することが求められます。 岸田内閣のもとで2022年8月に開催された「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」で、ヒアリングに臨んだ尾身茂医師(対策分科会会長)と脇田隆字(たかじ)医師(アドバイザリーボード座長)が、保健所や研究所の人員体制拡充、感染検査体制の強化などを内容とした2010年新型インフルエンザ対策総括会議での提言が実行されなかったことに強く苦言を呈(てい)したように、コロナ禍全般を通じて、医療・介護・保健分野での最大の教訓をあげれば、「平時の余力を備えること」です。しかしながら、これまでのべてきたように、現政権はまるでコロナ禍などなかったかのように、逆行する政策を強行し続けています。
加えて、コロナ禍で経験した「理不尽な死亡」が、その後に大きく影響していることを重視しなければなりません。国民皆保険をうたうこの国で、治療希望があるにもかかわらず、医療に届かず死亡する事例が多発したこと、特に介護施設などでは、年齢や認知症の有無が治療を受けられるかどうかを左右したという事実は、これまで経験したことのない 新たな体験として日本国民の意識に刻み込まれました。その体験が、「失われた30年」につくりだされた自己責任論と、長期にわたる成長しない日本経済、先の見えない生活苦を背景に、「いのちの選別」という感覚を日本社会に生み出しているのではないかと懸念される現状があります。公党の国政選挙公約に「尊厳死の法制化」や「終末期医療の自己負担化」という政策が掲げられたことは、医療・介護従事者として断じて看過できないことです。人としての尊厳はどんな時でも尊重されるべき、という視点をひろめることが、WHOの提言(注7)も踏まえた次のパンデミックへの備えを確立し、国民皆保険制度を守る確かな力となります。
(2)2020年代後半、確信を持って歩みをすすめよう
これまでのべてきたように、世界と日本は「新しい危機的なフェーズ」に入ったと認識しなければなりません。2020年代後半にむけ、あらためて、第44回熊本総会で提起した「2020年代の4課題」(注8)の意味と意義を確認することが重要であり、私たちの事業と運動の軸として、日常の実践をこの視点で前にすすめることが必要です。
その原動力は民医連らしい人づくり、職員育成であり、それを可能にする方略は既に46期の活動で蓄積されています。国際基準の主権者教育が疎(おろそ)かにされてきた日本において、民医連の育成活動の意義がいっそう高まっています。
「ケアの倫理」を学び深めた私たち民医連が、4課題で目に見える成果を出すような実践を重ね、新しい質の前進を築くことができるかどうか、47期の大きなテーマです。
●平和、地球環境、人権を守る運動を現場から地域へ、そして世界に。
●健康格差の克服に挑む医療・介護の創造と社会保障制度の改善。
●生活と人生に寄り添う切れ目のない医療・介護の体系と方略づくり。
●高い倫理観と変革の視点を養う職員育成の前進。
第2章 47期を取り巻く情勢の特徴 ~いのち・憲法・民医連綱領の視点で変革を
第1章で触れたよう47期は世界と日本は平和と人権をめぐり、大きな岐路にたつ時期となります。この章では25年10月21日に発足した高市内閣(自・維政権)の政策の特徴点をつかみ、「いのち・憲法・民医連綱領の視点」で戦争する国づくりを止め、人権としての社会保障・医療と介護を充実させていくうえでの課題を中心にのべます。
第1節 高市自民党・日本維新の会の連立政権の危険性に抗(こう)して
(1)自公政権の終焉(しゅうえん)と自民党・日本維新の会の連立政権合意の内容
衆議院選挙、参議院選挙の結果、両院で自民党・公明党の与党は少数となりました。立憲主義を踏みにじり、長年にわたって国民生活に背をむけたまま、裏金政治を温存する政権に、有権者が明確にNOを突きつけたのは大きな成果です。参議院選挙で、市民連合から立憲各野党に共通政策と共闘の維持拡大が要請され32の1人区のうち17選挙区で「野党共闘」が実現、自民党の敗北につながりました。26年間続いた自民党・公明党の連立政権は終焉(しゅうえん)し、日本維新の会が自民党に閣外協力し、自民党と日本維新の会の連立政権が誕生しました。
連立政権発足にあたって両党が合意した「政権合意」は、この政権が戦争できる国をめざし、社会保障を大幅に削減する新自由主義的改革をさらにすすめ、外国人や異なる文化を持つ人びとへの敵意をあおり、排除しようとする「排外主義」につながる内容です。

(2)加速する戦争する国づくり
①戦争する国への準備
高市内閣は、2022年12月の岸田政権による安保三文書の閣議決定以後の、敵基地攻撃能力の保有、軍事費倍増などすすめられている戦争する国への準備を加速しています(図1)。
発足後ひと月足らずのあいだにトランプ大統領との対米公約として2025年の補正予算に防衛費のGDP比2%への増額の達成、2026年度中に「安保三文書の前倒し改定」を明言しました。改定の内容として財源の見通し、必要性の根拠もないままに防衛費のさらなる増額、「核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず」との「非核三原則」(注11)の見直し、殺傷兵器の輸出拡大、原子力潜水艦の導入などが含まれています。
高市首相は、昨年11月7日衆議院予算委員会で、台湾有事をめぐって「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態(注12)になりうるケースであると私は考える」と答弁しました。戦争放棄をうたった日本国憲法をじゅうりんし戦争につながる発言で、絶対に許されるものではありません。また、この高市首相の答弁はこれまでの政権が存立危機事態について「個別具体的な状況に即して情報を総合して判断する」としてきたものからも逸脱するものです。安保関連法(戦争法)の存立危機事態が政権によっていくらでも恣意(しい)的に認定される危険性を浮かびあがらせました。

(非核三原則の見直し・殺傷兵器の輸出解禁の動向)
近年、核共有論や核武装論など非核三原則を公然と否定する暴論が政治家によって主張され、12月18日には、政府首相補佐官が「日本は核兵器を保有すべき」、防衛大臣も「(核を保有することも含め)あらゆる選択肢を排除しない」とまで発言しました。歴代政府は、これまでこのような発言を許さず、発言者を更迭(こうてつ)してきました。しかし、非核三原則の見直しの必要性をくり返し主張してきた高市首相は、黙認したままです。三原則を堅持するとした政府の立場からその矛盾した態度は許されるものではありません。
昨年、自衛隊はアメリカ軍と共同で、アメリカが核兵器を使用するシナリオ想定した訓練を実施しました。この訓練は自衛隊からの要請によるものです。アメリカの「核の傘」(注13)、「核の抑止」に依存することが、アメリカの核戦争に日本が巻き込まれる危険性をひろげています。
非核三原則は、国権の最高機関である国会において「国是(こくぜ)」(国をあげて是と認められたもの、国家としての方針、国家行動の基本原則の意味〈広辞苑〉)とされてきたもので、内閣と与党だけで見直せるような軽がるしい原則ではありません。世論調査をみても、非核三原則堅持が69%(朝日25年5月)、不支持は8%と非核三原則の堅持を支持しており、非核三原則は唯一の被爆国として核兵器廃絶を訴えてきた平和国家日本として見直すべきではありません。また、平和憲法のもと日本は、武器の輸出を「武器輸出三原則」(注14)や政府統一の見解として事実上全面禁止としてきましたが、2014年第二次安倍政権の「防衛装備移転三原則」(注15)により、原則として認める方針に変えられてきました。今年の国会で、政府は安保三文書にもとづく防衛産業の維持を目的として、殺傷能力のある兵器の全面輸出解禁が可能となるよう「防衛装備移転三原則」の改定をめざしています。日本で生産されたパトリオットミサイルをアメリカ経由でウクライナへ迂回輸出するなどの計画も準備されるなど、日本が平和国家から戦争で儲(もう)ける「死の商人国家」になろうとしています。
(3)大軍拡と一体にすすめられる社会保障抑制策がもたらす「いのちの危機」
1)悪化する貧困と格差の拡大・健康悪化
①生活が苦しい58・9%、大変苦しいが19年以降で最大、生活保護申請数増加
厚生労働省が発表した2024年国民生活基礎調査では、生活が「苦しい」とした世帯は58・9%、大変苦しいと答えた層が28・0%と2019年以降の調査結果で最大となっています。国税庁の民間給与実態統計調査(2022年)では、年収200万円以下の労働者は非正規雇用を中心に約1150万人と18年連続で1000万人を超えたままです。
2025年の企業倒産は過去10年間で最大の7898件になりました。コロナ禍でのゼロゼロ融資返済、物価高騰、人手不足などが要因です。
18歳未満の日本の子どもの貧困率は11・5%(2021年時点)です。ひとり親世帯で、貧困率は44・5%(2021年)、ひとり親家庭の半数の子どもたちが貧困状態にあります。内閣府の2021年「子どもの貧困調査」では、世帯収入の水準や親の婚姻状況によって、子どもの学習・生活・心理など様ざまな面が影響を受けていること、収入のより低い世帯やひとり親世帯が親子ともに様ざまな困難に直面していることが明らかになっています。
生活保護の受給者は微減傾向にあるものの、2024年の年間申請数は25万6000件と急増しています。厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(2025年9月分概数)」によると、被保護者の実人員・世帯数は前年同月比で減少している一方で、新規申請件数は2万2488件(前年同月比3・0%増)、保護開始世帯数は1万9352世帯(前年同月比4・7%増)となっています。世帯の内訳は、高齢者世帯55・1%、単身世帯51・4%、障害者・傷病者世帯25・4%、その他世帯16・0%などです。
②経済的事由による手遅れ死亡調査2024結果
24年の調査は48件の事例を確認しました。生活困窮のうえに、高すぎる保険料だけでなく物価高騰、水光熱費の値上げなど追い打ちをかけ、いっそう医療へのアクセスを困難にしています。生活困窮の実態は、無職が半数を超え26件、非正規雇用9件、月の収入10万円未満の人が6割以上でそのうち何らかの負債を抱えた人が20件(うち保険料の滞納の人が17件)となっています(図2―①、②)。

そうした困窮のもと、何らかの理由で保険証のない事例が18件ありました(図3)。
受診状況は、受診できていない18件、治療中断15件と7割以上にのぼりました。正規の保険証であっても診察、投薬の一部負担金のため治療を控え、中断した事例が報告されています。

2)高市政権がすすめる医療費への歳出削減と国民皆保険制度を守る運動

今、日本の医療機関、介護事業所は史上最大の規模で倒産、廃業が続く異常な事態です(図4-①、②)。
地域の医療と介護を守れ、ケア労働者の処遇を改善せよ、医療・介護事業所への緊急の財政支援、診療報酬の大幅な引き上げ、介護報酬の前倒し改定などを掲げての医療・介護団体、地域住民による大規模な運動のなかで、2025年の補正予算での一定の財政支援、2026年診療報酬改定の引き上げ、介護報酬臨時改定を実現してきました。ひきつづき医療、介護の危機を防ぐに十分で、早期の支援が求められます。
高市政権は、大軍拡をすすめながら4兆円の医療費削減をねらいOTC類似薬の保険給付のありかたの見直し(保険はずし)、11万床の削減、高額療養費の負担増、高齢者の負担増などの検討をすすめています。
高額療養費制度の見直しは、患者団体も参加する「高額療養費制度のありかたに関する専門委員会」で「基本的な考え方」案をとりまとめてきました。昨年末の26年予算案編成において、高額療養費制度の見直しに伴う具体的な金額が明らかになりましたが、月額の負担増は7%以上、70歳未満の年収650~770万円の区分では月額38%もの負担増となっています(図5)。

月額の限度額は抑制されておらず、治療の中断、生活破壊につながるものです。
政府がすすめる高額療養費制度の見直しは、岸田内閣が「異次元の少子化対策」として打ち出した「こども未来戦略」および「加速化プラン」の財源の一部とすることを目的としています。
「こども未来戦略」および「加速化プラン」に必要とされる財源は、総額3・6兆円とされています。その内訳は、①これまでの既定予算の活用が1・5兆円、②医療・介護分野の歳出削減によって生み出す公費が1・1兆円、③不足分1兆円を「子ども・子育て支援金」として国民が新たに負担する保険料によって賄う、というものです。このうち「公費1・1兆円」は、高額療養費制度の見直しやOTC類似薬の自己負担増など、医療・介護分野における負担増によって捻出されるものであり、実態としては患者や利用者に負担を押しつけるものです。つまり、新たな公費による支援はなく、国民や患者の負担を別の政策にふりかえる、いわば「横流し」「流用」と言わざるをえない構造となっています。
高額療養費制度は、がんをはじめとする重い病気の治療を受ける人びとにとって、医療費負担からいのちと生活を守るための重要なセーフティネットです。その制度を切り崩し、少子化対策の財源に充てることは、社会保障の理念に反するものであり、深刻な影響をもたらします。高額療養費制度の見直しによる負担増を直ちに中止し、少子化対策の財源として、医療や介護の利用者、特に重い病気とたたかう患者の負担を増やす手法を断念し、誰もが安心してくらせる社会の実現にむけた政策転換を、強く求めるものです。
OTC類似薬の保険外しは、患者団体、医療関係者からの強い反対で一旦中止に追い込みましたが、12月19日、「OTC類似薬」について、子どもやがん、難病を抱えるなど、配慮が必要な慢性疾患を抱えている患者、入院患者、低所得者、医師が対象薬剤を医療上必要と認める患者は配慮を検討するとしながら、患者に追加負担を求める新たな仕組みとして「保険の枠組みには入れたうえで、別途の保険外負担(特別の料金)を求める仕組み」の創設をねらっています。具体的には薬価の4分の3をこれまで通りに保険適応とし、残る4分の1は「特別の料金」、自費として患者へ負担を求めるものです。今年の通常国会に法案提出、年度末からの実施をめざすとしました。
対象は、約1100品目(77成分)、湿布薬、アレルギー薬、胃腸薬、保湿剤などが予定され将来的に対象成分の範囲拡大、「特別の料金」の引き上げを検討していくとしています。合意文には、市販薬購入への移行を促すことで、実質的な患者自己負担の増加と医療機関への受診抑制効果も含めて、この改悪による国の負担する医療費削減効果は約900億円と試算されています。
また、すでに導入されている長期収載品の選定療養費についても約290億円の削減を目的として、現在は後発品との薬価差の4分の1とされている「特別の料金」を今後は2分の1に引き上げる方針がしめされています。

(3)介護保険制度の現状と制度見直しの動向
①介護保険の現状
2024年度の介護報酬改定は、引き上げを求める世論を背景に辛うじてプラス改定となったものの、物価や人件費の上昇に見合わない不十分な引き上げ幅にとどまりました。その結果、2024年の事業所の倒産件数、廃業・解散件数は784件と過去最多を記録しました。基本報酬が唯一引き下げられた訪問介護事業所はその7割近くを占めています。全国約2割の自治体が訪問介護事業所ゼロ(115町村)、もしくは残り1カ所(269市町村)となっており、一部の地域ではすでに介護崩壊とも言える状況が始まっています。現場の人手不足も深刻さを増しています。ヘルパーの有効求人倍率は12倍を超え、ケアマネジャーも不足が続き、事業所を閉鎖する事態がひろがっています。政府は2026年度25万人の介護職員が不足する需給見込みをしめしていますが、有効な対策は講じられていません。肝心の処遇改善もすすまず、2024年は全産業平均との給与差が月額8・3万円に拡大しています(前年は6・9万円)。共同通信社の調査(6~7月)では、自治体首長の97%が「介護保険サービスの提供体制の持続に危機感をもっている」と答え、その理由として72%の首長が「介護現場のささえ手不足」と回答しています。2025年8月からは、「療養型」「その他型」老健施設と「2型」介護医療院の多床室を対象に、月額8000円相当の室料徴収が開始されています。現在の介護保険は、利用者にとっては、あいつぐ負担増・給付削減の見直しがくり返されてきたことで「必要な介護を受けられない」、事業者にとっては、経営難と人手不足によって「必要と判断した介護を提供できない(地域の介護需要に応えられない)」という、公的サービスを保障する制度として、深刻な「機能不全」を起こしています。保険料を強制徴収(年金天引きが原則)されているにもかかわらず、必要な時に必要なサービスを利用できない現状に対して、「国家的保険詐欺」という批判がひろがっています。
②介護保険の見直しをめぐる動き
12月25日、厚労省の審議会(介護保険部会)の報告書がとりまとめられ、3年前に世論と運動の力で実施を先送りさせた「三大改悪」案のうち、「利用料2割負担の対象拡大」については、年内の決定を見送り、2026年にひきつづき検討する方針がしめされました。「ケアプランの有料化」は、現行のケアプランの有料化は実施されないことになりましたが、「住宅型」有料老人ホームに新たな相談支援の類型をつくり、利用者負担を求めるとしています。「要介護1、2の生活援助などの保険給付外し(総合事業への移行)」について今回は実施見送りとなりました。財務省は、「利用料の原則2割負担化」「要介護1、2の訪問介護・通所介護の総合事業への移行」など、さらなる給付削減・負担増をひきつづき提言しています。また経産省は保険適用外サービスを普及・拡大し、保険サービスと併用させる「混合介護」を本格的に推進しています。「介護の社会化」とは真逆の、「介護の再家族化」「介護の商品化」の流れが強められています。
(4)高市政権の危険な国づくりを体現する26年度予算案
26年度政府予算案は、一般会計122兆3092億円、国債費31兆2758億円で過去最大を更新しました。防衛費は初めて9兆円超、関連経費を含め10兆円規模に膨張し、兵器ローンや建設国債依存も拡大しています。一方、社会保障費は39兆559億円で物価上昇に追いつかず、医療・介護の給付削減や負担増、年金改定率の低水準、最低賃金引き上げの欠如など課題が残ります。企業支援や原発推進への重点配分とあいまって、防衛費の膨張が国民生活や社会保障を圧迫する予算構成となっています。税制改正大綱で、大軍拡財源として防衛特別所得税(仮称)を創設、2027年1月から徴収するとしました(表1)。

(5)人権をめぐるいくつかの課題
①女性差別撤廃委員会総括所見を反映しない日本
2024年10月、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)(注16)は、第9次日本報告審議総括所見を公表しました。女性の権利が侵害されている制度や社会システムの改善について多岐にわたり指摘。「フォローアップ項目」として4項目が2年以内に進捗報告を求められました(表2)。

そのほか、女性に対するあらゆる暴力・人権侵害の根絶、沖縄の米兵による性暴力、DVや性搾取をなくすための法改正、包括的性教育の実施、女性の低賃金解決のための施策などが指摘されています。また、日本は女性差別撤廃条約を1985年に批准しましたが、選択議定書が未批准のため(締約国189のうち115カ国が批准)、400の地方議会で早期批准を求める「意見書」が採択されています(25年末時点)。国の第6次男女共同参画基本計画案(注17)には、これらの内容が十分反映されておらず、総括所見の全面的な実現が求められます。
②多様性を尊重する社会へ
世界では、DEIの流れが大きくすすんでいます。日本では「TokyoPride2025」(注18)に約27万7000人が参加し、300社以上の企業や団体がスポンサーとして協賛。各地方でも同様のプライドパレードなどが、ひろがっています。また、「結婚の自由をすべての人に訴訟」がすすめられ、東京をはじめ5つの高裁で戸籍上同性の2人の法律婚が認められないのは憲法違反との判決が出されています。その後東京高裁が「合憲」との判決を出しましたが、司法が人権の砦の役割を放棄したと指摘され、日本弁護士連合会は、国に対し性別にかかわりなく婚姻できるよう民法など法令の改正を求める声明を出しました。アメリカのトランプ大統領がDEIを否定する政策を打ち出すなど、国内外で性の多様性を否定する潮流(ちょうりゅう)がみられ、SOGIEに関するとりくみをすすめることは重要となっています。
③旧優生保護法被害者の救済と、優生保護法問題の全面的解決を
2024年7月3日、最高裁大法廷は、旧優生保護法での強制不妊手術国賠訴訟に対して、旧優生保護法が立法当初から憲法違反(13条、14条1項)の法律であり、20年という期間の経過によって損害賠償請求権が消滅する除斥期間の規定は適用しないという画期的な判断をしめしました。最高裁判決を受けて、政府と原告・弁護団との間で和解合意書が調印され(その後全訴訟で和解成立)、旧優生保護法問題の全面的解決をめざす基本合意(注19)が結ばれました。この基本合意にもとづき、新たな補償法が国会で成立(2025年1月施行)、強制不妊手術、人工妊娠中絶を受けた約8万4000人が補償対象とされています。政府とのあいだでの定期協議、3つの作業部会(被害回復、人権教育・啓発、偏見差別の根絶)の活動がスタート。第三者委員会(研究者、被害当事者、支援者組織など)が設置され、旧優生保護法問題に対する国による本格的な検証作業も開始されました。
新たな補償法の認定件数が2025年11月現在1560件にとどまっており申請を増やしていくとりくみが必要です。
④いのちのとりで裁判、桐生市生活保護違法事件 権利としての生活保護を取り戻すために
いのちのとりで裁判(2013年から3回にわけ行われた史上最大の生活保護基準引き下げに対し、たたかわれた裁判(生活保護基準引下げ訴訟)は、2025年6月27日最高裁判所第三小法廷(宇賀克也裁判長)で、この生活保護基準引き下げを理由とする保護変更決定処分は違法であるとして、各処分の取り消しを認める画期的な判決を勝ち取りました。
判決は、生活保護法8条1項にもとづく厚生労働大臣の生活保護基準設定権限につき、同条2項を正しく解釈して裁量の範囲を限定したうえ、引き下げの主要な根拠とされた「デフレ調整」は、専門的知見との整合性を欠き、厚生労働大臣の判断の過程と手続に過誤、欠落があり違法と断罪しました。この違法な裁量権行使の背景は、誰もが生きるうえでの権利である生活保護の受給に対し与党の政治家が「恥」というレッテルを張り、尊厳を毀損するバッシングをひろげたこと、2012年の衆議院議員総選挙で自由民主党が「生活保護給付水準の10%引下げ」を公約に掲げ政権に復帰したという政治的背景に対し、厚生労働大臣が忖度し「法」を軽視した点にあります。
生活保護利用者の多くは高齢者や障害者であり、原告となった1027人のうち、10年以上の裁判の間に232人が亡くなるなど長期化の影響が大きくありました。原告や支援者は、国に対してすべての生活保護利用者への謝罪や、引下げ前の基準による差額支給など被害回復措置をただちに行うこと、再発防止のため原因究明を求めてきました。しかし、国は原告を参加させない専門委員会を設置し、最高裁判決で違法とされなかった「ゆがみ調整」の再実施や、新たに「デフレ調整」にかわる低所得者実態にもとづく減額(マイナス2・49%)を行い、原告には特別給付金を追加するという対応策をしめしました。この対応は、最高裁判決の意義を矮小化し、被害回復額を低めるものであり、判決の効力を無視するものです。高市総理や厚生労働大臣は「お詫び」の意思を表明していますが、今回の対応を強行すれば謝罪は言葉だけにとどまります。政府と厚生労働省は、この対応策を撤回し、生活保護利用世帯に対する真の被害回復を速やかに実施すべきです。
2023年8月、群馬県桐生市で発覚した生活保護行政問題は、「桐生市生活保護違法事件全国調査団」が結成され調査がすすめられました。その結果、保護開始率が異常に低い一方で、申請却下率や取り下げ率が著しく高いこと、母子世帯や稼働年齢層における保護率が不自然に減少していることなどが明らかになりました。さらに、家計簿の提出を強要する、ハローワークへの毎日の通所を求めるなど、実態にそぐわない過度な就労支援が行われていました。窓口には警察官OBが計画的に配置され、申請者に萎縮を与える対応も確認されています。扶養照会においては、実際には仕送りが行われていないにもかかわらず「収入がある」として申請を却下した例や、保護費を分割支給し、本来支給されるべき額を満額支給していないなど、複数の違法な運用実態が浮き彫りになりました。3人の受給者が原告となり「桐生市生活保護違法支給国家賠償訴訟」がたたかわれ、昨年11月20日に和解を勝ち取りました。被告の桐生市は生活保護行政において調査で明らかとなった違法・不適切な行為があったことを認め、深く謝罪すること、生活保護を利用する権利を軽んじていたことを認め、利用権の重要性を認識し、十分に尊重したうえで、生存権の保障に即した生活保護制度の運用を行うことを誓約。原告に1人40万円の解決金を支払い、適正な生活保護行政を計画的に実施するため25年12月までに健全化計画を策定すること、26年3月末までに法令順守の維持・機能をチェックするため外部の視点で恒常的な監視組織を設置することなど、11の具体的な再発防止策を定める画期的な和解です。この運動を通じ桐生市に「生活と健康を守る会」が結成されました。群馬民医連は、反貧困ネットワークぐんまの事務局を担い、この運動で大きな役割を果たしてきました。
(6)排外主義の克服と多文化共生へむけて
近年、低賃金や物価高、将来不安の拡大といった社会経済状況を背景に、外国人を問題の原因とみなす排外主義的言説が拡散しています。これらの言説は、選挙過程やSNSを通じて増幅され、社会的分断を深める要因となっています。国際的にも、難民の受け入れや人道支援を制限する政策が各国ですすめられており、難民保護制度そのものの後退が懸念されています。
排外主義は現在、「福祉は自国民に限定すべきである」とする福祉排外主義の形で表れています。これは、外国人による福祉給付や福祉サービスの利用を制限し、入国や社会保障制度へのアクセスを抑制することで制度を維持しようとする考え方です。福祉の維持・拡充を前提とするため、生活不安を抱える人びとの支持を得やすい一方で、社会保障制度が本来持つ普遍性や公平性を損なうリスクを内包しています。
日本においても、出入国在留管理庁が打ち出した「不法滞在ゼロプラン」(注20)に象徴されるように、難民申請者への管理強化や送還の拡大がすすめられています。難民申請の受理段階での制限や、送還後の安全が十分に担保されない事例の発生は、国内でくらす難民や申請者の生活の安定を損なうだけでなく、日本が批准している難民条約の理念との整合性という点からも検証が必要です。
一方、医療・福祉・介護分野をはじめ、外国人労働者はすでに地域社会をささえる重要な担い手となっています。外国人住民は一時的な存在ではなく、地域でくらし、働き、納税し、学ぶ生活者です。その排除や権利制限は、地域の持続可能性や公共サービスの安定的な提供にも影響をおよぼす可能性があります。
排外主義や福祉排外主義にもとづく政策ではなく、人権および国際的合意にもとづいた制度運用を徹底し、社会保障制度の公平性と普遍性を確保することが求められます。多文化共生は理念にとどまるものではなく、社会の安定と持続可能性をささえる現実的な政策課題であり、冷静かつ継続的な検討と実践が不可欠です。
(7)原発再稼働の急速な動きと矛盾のひろがり

2011年3月11日発生した東日本大震災により、東京電力・福島第一原発事故が発生、膨大な放射性物質が環境中に放出されました。健康影響の懸念から広大な避難区域が設定され、多くの人びとが避難を余儀なくされました。事故から15年がたとうとしていますが、復興庁の統計で県内避難者4966人、県外避難者1万9673人(2025年2月)、避難指示が解除された自治体の住民登録5万7517人に対して居住者数は1万8911人と4万人弱の住民は故郷に戻れておらず、廃炉のめどもたっていないもと「原子力緊急事態宣言」は今も続いています。
高市内閣は福島の現実を見ないまま、第7次エネルギー基本計画(注21)を具体化し、再稼働に奔走し深刻な矛盾を拡大しています。
北海道の鈴木直道知事が北海道電力泊原発(全3基)3号機の再稼働に同意を表明しました。泊原発は原発周辺の4町村の首長が既に同意を表明しており、鈴木知事の同意で「地元同意」は出そろったとされます。再稼働による電気料金の値下げに加え国策会社「ラピダス」(注22)の北海道進出などで電力需要が増加、投資、雇用が拡大するなどを再稼働の理由と説明しました。北海道電力は、検査合格の前提となる海抜19mの防潮堤建設をすでに着手し、2027年早期の再稼働をめざしています。しかし、積(しゃこ)丹(たん)半島の付け根に立地する泊原発は豪雪地帯にあり、積雪時に原発事故と地震や津波が重なる「複合災害」が起きれば、避難は困難を極め、避難計画の実行性はありません。11月には新潟県の花角英世知事が東京電力柏崎刈羽原発の再稼働容認を表明し、なしくずしの「原発回帰」により、再び安全上の懸念は放置され、経済が優先される社会、誰かの犠牲のうえに成り立つ社会に後戻りしています。
政府が、再稼働に前のめりするなか、浜岡原発3・4号機(中部電力)で想定する最大地震の揺れ(基準地震動)を過小評価していた疑いがあると公表しました。安全にかかわる審査データの捏(ねつ)造(ぞう)が発覚しました。原子力規制委員会は1月7日、再稼働審査を停止し、12年続いた審査を白紙に戻す考えをしめしましたが、規制委員会自身が元データを検証してこなかった現在の検査システム自身が信頼できないものであることが明らかになりました。原発回帰を進める国のエネルギー政策計画の目標達成には建設中を含む36基のほぼすべてを稼働させる必要がありますが、浜岡原発の3基が再稼働しなくなれば、達成は見通せません。
ロシアのウクライナ侵略戦争での原子力発電所を標的とした攻撃など世界で原子力関連施設への攻撃・威嚇は、1980~2025年までに12回も発生しています。ロシア軍の有事攻撃リストに東海村原子力関連施設を含まれるなど原発は戦争において標的とならないという前提は成り立たないシナリオとなっています。
原発ゼロ、省エネ、再生可能エネルギーの導入へと転換をはかることが未来への責任です(図6)。
第2節 戦争と分断に抗して地球規模の変化に合流を
(1)ルールにもとづく世界秩序への圧力と、国連を軸にした広範な国際連帯の重要性
①貿易秩序を揺り動かす「トランプ関税」
大国の対外政策が世界中の国ぐにへ大きな影響を与えています。貿易ルールを無視した「トランプ関税」は各国の経済や社会に新たな困難を引き起こしています。
一般的に、高関税にシフトした国では自国の税収が増え、国内産業の擁護と雇用の創出につながるとされている一方で、貿易摩擦や物価高を誘発する可能性があります。第二次トランプ政権が突如提起した高関税(トランプ関税)は、従来の数~数十倍にもおよぶ水準で常軌を逸している内容です。巨大な軍事力・経済力を背景に、トランプ大統領の独断で税率を恣意的に上下させるように見えるその経過は異様であり、これまで地道につくりあげてきた国際的な貿易ルールに大きな圧力がかかっています。交渉の結果、自動車関税は、当初の米国提案(25%)より引き下げられ(15%)たものの、元もとの税率(2・5%)から引き上げられたうえに、米国産コメ調達の増加、対米投資5500億ドル(73兆円)、液化天然ガス(LNG)を含むエネルギーの追加購入、防衛装備品や半導体の大量調達などの約束を強いられました。
こうした米国の振る舞いは断じて許されるべきでなく、同盟国を自称する日本には、より毅然(きぜん)とした対応が求められます。
②国連憲章・国際法に背く人道危機と、国連の存在意義の発揮
ロシアによるウクライナ侵略戦争は開始後丸4年を経過し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によれば、昨年9月時点で難民化した国民は人口の2割を超え、死者は1万4383人、負傷者は3万7541人にのぼっています。現在、アメリカの仲介で停戦へむけた模索が続いていますが、ウクライナの意向が一方的に無視された形ですすめられようとしています。米露が頭ごなしに策定した和平案の内容は、ロシアが暴力的にほぼ占拠したドンパス地方(ドネツク州、ルガンスク州)と2014年以降ロシアが実効支配しているクリミア半島を事実上割譲せよというもので、ウクライナ側がそのまま受け入れられるわけがありません。
侵攻開始後2年が経過したガザ地区に対するイスラエルの凄惨な暴力では、多くの一般市民を含む約7万人のパレスチナ人がいのちを奪われ、飢餓がひろがるなど、国連を中心に構築してきた平和の秩序が壊滅的な事態となりました。米国、エジプト、トルコ、カタールの仲介で2025年10月から停戦状態となったものの、その後もイスラエルによる攻撃が散発的に続き、420人以上が亡くなったと報道されています。
2年間のイスラエルによるガザ地区への行為について、国連人権理事会は「ジェノサイド(大量虐殺)」とその調査結果を公表し、国際司法裁判所はイスラエルによるパレスチナ占領政策を国際法違反とする勧告を発出しました。
年明けの現地時間2026年1月3日、アメリカ軍は周到に準備された軍事行動を開始し、深夜のベネズエラ首都カラカスに空爆を仕掛け、マドゥーロ大統領夫妻を拘束しアメリカに連れ去りました。言語道断の国際法違反であることは明瞭です。2003年のイラク戦争開始時、安保理決議の「お墨付き」を得るため様ざまな策を弄(ろう)するも叶わず「先制的自衛権」と強弁したことが想起されますが、今回は「お墨付き」を得る努力すらせず「麻薬戦争」という方便で凶行におよびました。さらには、同国の運営を当面アメリカが行うとまで宣言しました。第一次世界大戦以前の帝国主義のような蛮行を見ているかのようです。全日本民医連として、翌1月4日に会長声明「国連憲章違反のベネズエラ首都攻撃・侵略の即時中止を求める」を発出しました。
国連安全保障理事会は、常任理事国の拒否権という、今日の国際情勢に照らすと大きな制約とも言える仕組みを抱えています。そんななか国連の本来の役割を果たそうと、多くの国ぐにが懸命に努力してきたことから、私たちは重要な教訓を学ぶ必要があります。ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議や、ガザ地区への人道支援の制限撤廃や即時の恒久停戦を求める決議など、国連総会において加盟国の圧倒的多数がしめした意思は先行きの見えにくい現状のなかで、国際社会がよりどころとし得る希望の一端をしめすものとなっています。
国連憲章がうたう諸原則(「武力行使禁止」「紛争の平和的解決」「内政不干渉」「人権と自決権」「主権平等原則」など)を尊重した国際連帯こそが、世界平和を保証する確かな道であることを再確認し、日本が国際社会のなかで役割を果たしていけるよう、政府に働き掛けていくことが必要です。
(2)各国ではじまった新たなうねり
①欧米での新しい左派運動の萌芽
第一章でのべたように、経済格差や生活苦を背景に、欧米や日本では従来の中道右派・左派政権が支持を失い、排外主義的な右派ポピュリズムが台頭しています。一方で、反緊縮や公正、環境保全、ジェンダー平等、多様性尊重を掲げる新しい左派運動も各国でひろがっています。
ドイツでは、2007年結成の左翼党(注23)が極右AfDの伸長を背景に支持を回復し、前回の連邦議会選挙で64議席(8・8%)を獲得しました。特に18~29歳の若年層では最多得票となりました。ベルギーでは、工業都市アントワープで、差別に反対し連帯を訴える労働党が、言語の壁を超えた活動によって支持を伸ばしています。イギリスでは、元労働党党首ジェレミー・コービン氏が新党「ユア・パーティー」を結成しました。極右リフォームUKの台頭と、それに影響された労働党の支持低下を背景に、16~34歳では33%の支持を得ています。アメリカ・ニューヨークでは、民主社会主義者を自認するゾーラン・マムダニ氏が市長に当選し、家賃や交通費の軽減、教育・保育の無償化、最低賃金引き上げなどを掲げ、富裕層や大企業への課税強化を訴えて支持を集めました。
これらの事例は、経済格差が排外的感情を煽るなかでも、庶民や中間層、貧困層のニーズを的確に捉え、適切に応えることができれば、人権と公正、包摂と多様性を重視する方向へ多くの人びとを結集し得ることをしめしています。
②グローバルサウスの発展
2025年11月、南アフリカで開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、アメリカが欠席する中でも首脳宣言を採択し、G7中心の世界秩序が変わりつつあることをしめしました。開催国のラマポーザ大統領は閉会式で、アフリカとグローバルサウスの優先課題を議題の確信に据え、途上国経済にとって最重要の課題に重点的にとりくんだとのべました。具体的には、気候変動による災害が直撃する途上国への対策費用の大幅な拡充や、再生可能エネルギーなどに不可欠な重要鉱物について生産国が正当な利益を得られる供給網の構築を訴えました。アメリカは反発していますが、ラマポーザ氏の「首脳宣言は単なる言葉ではない。世界中の人びとの生活をよりよくする具体的な行動への約束だ」という発言には、国際社会の新たな可能性がしめされています。
グローバルサウスとは、アジアや中東、アフリカ、中南米などの新興国・途上国の総称で(中国をグローバルサウス入れるのかどうかには諸説あります)、国際通貨基金(IMF)によれば、世界のGDPに占める割合は約4割に達し、人口では世界の約7割を占めていますその中核をなすBRICS(注24)は、2024年に中東などの主要国が加わり、エネルギー・経済圏としての存在感を高め、世界の経済・政治に大きな影響をおよぼす集団へと発展しています。近年は中国やロシアが、アフリカ諸国などへの経済支援を通じて関係を強めており、国連総会におけるウクライナ侵略をめぐる決議で、多くのアフリカ諸国が棄権に回ったことにも、その影響が表れています。こうした動きは自国利益を背景としつつも、グローバルサウスとG7諸国との対立構図を強めています。一方で、多くのグローバルサウス諸国では急速な経済成長の半面、貧困と経済格差が進行するなど新しい課題に直面しています。産業の多角化がすすまず雇用が安定しないといった課題が解決できず混迷を深めている国が少なくありません。
日本国憲法前文で「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏からまぬがれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」とうたうように、日本はグローバルサウスに対して、重要鉱物の供給相手などの位置づけでなく、戦後復興の教訓を生かした適切な支援を行っていくことが重要です。
(3)気候危機の打開へ向けて 分断の中でのCOP30の成果
気候危機はこの2年間でさらに深刻化し、2025年も世界各地で洪水や山火事などによる甚大な被害があいつぎました。2024年には、世界の平均気温上昇が産業革命前比で単年として初めて1・5℃を上回り、危機が現実のものとして突きつけられています。こうしたなかで開催されたCOP30は、アメリカの不参加という分断状況のもとで行われました。脱化石燃料をめぐる合意は後退を余儀なくされましたが、異常気象被害への「適応」分野では、途上国支援の資金拠出拡大など一定の前進も見られました。困難な条件のなかでも合意に至ったことは、国際協調の可能性をしめすものです。一方、日本のエネルギー・温暖化対策は国際的潮流に逆行し続けており、その政治的責任は厳しく問われています。世界では「持続可能な環境は人権である」という認識がひろがり、政府に対して対策強化を求める司法判断や国連決議も積み重なっています。私たちは、こうした国際的な到達点と草の根の実践に学び、政治の責任を問い続けるとともに、「気候正義」を求める運動により積極的に連帯していく必要があります。分断と後退に抗し、いのちと人権を守る立場から、気候危機打開へのとりくみを強めていくことが47期の重要な課題です。
第3章 46期の概要と47期の各分野のとりくみ
46期、民医連は平和と社会保障に対する大きな逆流にさらされながらも、「非戦・人権・くらし」を掲げ、国民要求に応える事業と運動を展開してきました。併せて、ケアの倫理を学び、深め、ジェンダー平等と多様性を尊重する組織風土の確立にとりくんできました。誰もがケアを必要とし、同時にケアへの責任も負っているという事実の気づきから出発するケアの倫理は、個人の尊重・尊厳の視点からジェンダー平等、多様性の尊重へとつながり、「すべての人が等しく尊重される社会をめざす」民医連綱領とも響きあい、平和の問題を考えるときにも一人ひとりのくらしや幸福という視点を研ぎ澄ませてくれました。こうした実践は、民医連を鍛え、次の発展を保証する主体的な力を醸成することにつながっています。
一方で、世のなかの動向は歴史の歯車を後戻りさせているかのような深刻な事態がひろがり、様ざまな不条理がまかり通っています。大国による無法が人びとの人権を著しく脅かし、民主主義の形骸化がすすんでいます。生活苦や不平等感から排外主義に傾倒する雰囲気が拡大し、国民に分断が持ち込まれています。
いまこそ、第2次世界大戦の反省をふまえて確立された世界人権宣言(注25)、日本国憲法に立ち戻る必要があります。人権の考え方の基礎は「個人の尊厳」であり、個々の権利は、世界人権宣言、国際人権規約をはじめとした人権諸条約(注26)に定められています。また、国連人権理事会の「ビジネスと人権に関する指導原則」(注27)では、多様化する企業活動において年齢、性別、障害、性的指向、人種・国籍などにかかわる人権侵害を回避するために、「個人の尊厳」を強調しています。これらの理念を実現するために、市民社会、医療・介護事業所にも大きな役割があります。
現在、日本の医療・介護事業所は、私たち民医連も含めかつてない経営難にあり、これを覆すほどの国民運動の高揚が無ければ、将来に禍根を残す危機的状況です。
47期私たちは結束を強め、より広範な連帯を形成することで現状の困難を乗り越えなければなりません。特に、人権の視点で社会保障を守るために、憲法の理念を日々の仕事で生かす創意工夫を凝らしたとりくみを、共同組織との協同の力ですすめるとともに、現状の変革へ主体的に行動できる職員育成を推進します。一人ひとりの職員は、日進月歩の知識と技能を吸収し、学術活動にも積極的に参画することで、患者・利用者のニーズに応え得る適切な医療・介護サービスを提供できるよう専門職としての力量を高めましょう。そして組織全体として、職員の個人の尊厳を守り、ジェンダー平等と多様性の尊重をいっそう前進させます。
活動の重点は、①国連憲章・国際法に則った平和構築に向けて、憲法を生かし、地域で対話をひろめ、戦争させないための具体的行動に臨むこと、②医療・介護の公共性と非営利性を重視し、他の個人・団体との大同団結で、人権としての社会保障を守り、象徴たる国民皆保険制度を堅持すること、③地域の実状と住民の要求に応え得る事業体系を構築し、連携を進化させ、地域社会と事業所経営を守り抜くこと、④自己責任論を乗り越え、ケアとケア労働の価値にふさわしい水準で、ケア労働者の処遇改善を実現し、看護・介護従事者の確保で前進することです。
第1節 一人ひとりの尊厳を大切にする医療・介護活動の発展を
コロナ禍とその後の経済環境の悪化のなかで、日本の医療・介護を取り巻く状況はかつてない複雑な困難さを呈しています。社会保障費抑制政策の継続、物価と人件費の高騰、受療行動の変化、医療・介護職の確保難と離職の増加、地域間格差の拡大といった構造的課題は、民医連の各事業所にも深刻な影響をおよぼし、厳しい経営状況・人員不足・過密労働の三重苦が現場の余裕を奪ってきました。
こうした困難な時代であるからこそ、日本国憲法と民医連綱領の原点に立ち返り、人権尊重、ケアの倫理、社会的包摂(注28)、住民とともに歩む医療・介護という立場をいっそう鮮明に掲げる必要があります。私たちは経営基盤の再建という現実的課題に正面から向き合いながらも、日常業務を着実に積み重ね、地域とともにある医療・介護活動の質を深めていく必要があります。
(1)人権・ケアの倫理・社会的包摂を基礎として、2つの柱をさらに輝かせよう
2020年代に入り、コロナ禍とそれにひきつづく政治・経済の混乱のなか、民医連の掲げた2つの柱は、常にわたしたちのすすむべき方向をさししめす旗印でした。そしてケアの倫理と出会い、学びを深める中であらためて事例を大事にし、事例から学ぶことの重要性を再認識しました。
誰かをケアするということは、その人の生きることを尊重し、関係性を維持し続けるよう努力することです。ケアのネットワークのなかで社会的包摂が実現され、ケアしケアされるなかで無差別・平等や人権、さらには医療・介護安全や倫理も保たれます。47期は「人権・倫理『タイムアウト』」、「気になる患者カンファレンス」、「SVSカンファレンス」、「倫理Café・人権Café」など、日常的に倫理観や人権感覚を磨く場を定着させていきましょう。
「2つの柱」を旗印に、地域のネットワークの再構築、生活困難層との伴走支援、住まい・就労・福祉との連携、多文化支援などを含め、よりひろい射程でとりくみを展開することによって社会的包摂の拠点としての役割を明確にし、「この民医連事業所がここにあってよかった」と思われるような事業所をめざしましょう。
(2)医科・歯科・介護の連携でフレイルを予防し、食支援の体系化をすすめよう
高齢化と孤立の進行する地域社会において、フレイル対策は民医連が重視すべき最重要テーマの一つです。フレイルの起点には低栄養、口腔機能低下、社会的孤立、そして貧困があり、これらは医療・介護活動だけでは解決できない複雑な問題を孕んでいます。起点の一つである低栄養に関しては、厚労省は「リハビリテーション・栄養・口腔の三位一体アプローチ」を提唱しています。診療報酬上の評価は急性期病棟が中心ですが、地域で支援が必要なのは制度の手前にいるフレイル予備群です。
第17回学術運動交流集会では、食と多職種協働の重要性が再確認され、新潟大学の井上誠教授は教育講演でミールラウンドと継続性の重要性を強調しました。今後は、医科・歯科・介護の連携をより強め、民医連のとりくんできた多職種協働や共同組織活動の特徴を生かした、訪問リハビリテーション、在宅歯科、栄養ケアステーション(管理栄養士などを配置し地域住民に対して栄養ケアを提供するための拠点)、保健室活動、班会・地域での健康チェックなど、地域住民に対して栄養ケアを提供するための拠点などを統合したフレイル予防モデルを構想する段階です。法人・県連単位で食支援の体制化をすすめ、食(栄養・食事)を入口にして、医療・介護・福祉・生活支援を横断的につなぎ、地域でくらし続けることをささえるための多主体連携の仕組みともいえる「食と生活支援の地域プラットフォーム」の設置も検討しましょう。
物価高騰などにより、貧困と格差が拡大するなかで、口腔保健の課題が地域のなかでますます重要となっています。歯科受診から遠ざけられた人びとが拡大していくなかで、医科や介護の患者、利用者だけでなく、地域のなかで声をあげられずにいる人びとへのアウトリーチが求められています。病院や施設、在宅では、簡便なアセスメント(注29)(例:OHAT)などを提案、発信し、多職種が日常的かつ継続的に歯科領域と連携する仕組みづくりを行いましょう。
社会とのつながりの喪失や貧困もフレイルの起点の一つです。日常的な人と人とのつながりが重要であり、保健室活動や班会活動、地域での健康チェックなど、共同組織と職員が積極的に地域にかかわる必要があります。業務内容を調整し、職員の地域活動を業務として位置づけられるよう検討をすすめましょう。これらはヘルスプロモーションの実践であり、ゼロ次予防としてのまちづくりとも重なる領域です。また、無料低額診療事業の地域への積極的な広報、行政や共同組織との連携もすすめましょう。
(3)事業活動とコミュニティ活動の協働をすすめ、まちづくりを発展させよう
全国の民医連法人では「地域包括ケア部」「まちづくり支援部」「健康まちづくり推進部」など、事業と地域組織の狭間をつなぐ新しい部門を設けるところが増えています。これは住民参加型の地域づくりが医療・介護と不可分であることがひろく認識され、経営的側面も含めて医療・介護の将来像を見据えた結果と考えられます。47期は、これらの動きをふまえ、事業活動(医科・歯科・介護)とコミュニティ活動(共同組織・地域活動)を統合的に位置付けるとりくみを強めましょう。具体的には、地域診断をもとに経営戦略と地域戦略を統合させ、地域ニーズに応じた事業所の役割を明確にすること、フレイル予防・子育て支援・多文化支援などの横断プロジェクトを共同組織とともにすすめることなどです。社会保障の縮小が続き、地域共生社会、新たな地域医療構想が提起されるなか、まちづくりは医療・介護事業所の生き残り策ではなく、地域のくらしと健康をささえるための戦略です。まちづくりを通じて複合化する生活課題に伴走する地域組織としての存在感を高めていきましょう。
(4)医療・介護の一体的提供を事業展開・経営管理の視点から推進しよう
「医療・介護の一体的提供」は、事業展開・経営管理としての一体的提供、「総論」としての現場レベルでの一体的提供(医療職・介護職の相互理解、心理的安全性など)、「各論」としての現場レベルでの一体的提供(各事業所・場面での実践課題)、のレベルで展開することが考えられます。
このうち「事業展開・経営管理としての一体的提供」は、医療と介護の複合ニーズをもつ高齢者の増加と生活困窮・社会的孤立のひろがり、2040年に向けた政府の政策動向を背景に、地域の中長期的な医療・介護需要に応える「事業体系と方略づくり」(第44回総会方針)をすすめていくうえで、法人、法人グループの中心課題となっています。地域・エリア(自治体や日常生活圏域)を単位として、医科法人、社会福祉法人、薬局法人などのグループ間で、地域の実態・要求にこたえる運動やまちづくりの課題とともに、職員体制や経営状況などの主体的力量、医療と介護、生活支援を一体的に提供する事業活動上の課題を明らかにすることが求められます。貧困・格差と社会的孤立がひろがるなかで、相談機能・アウトリーチの強化をいっそう強めることも必要です。行政責任を明確にした新たな社会資源づくりを地元の社保協、住民団体と協力してすすめましょう。中重度者に対応する介護サービスとしては、介護保険施設や訪問看護のほか、(看護)小規模多機能、定期巡回型訪問介護・看護サービスなどの地域密着型サービスが事業展開上の課題となります。自治体の第10期(2027~2029年度)介護保険事業計画を分析し、条件に応じて新規事業の受託を検討しましょう。入院病床の機能再編・縮小をはじめとする「集約化」がはかられるなか、病院で働く医療スタッフの在宅医療や介護部門へのシフト、働き方の転換による事業所間の相互支援は、今後の実践上、経営上の課題となります。様ざまな事情で事業所の廃業、統合などを余儀なくされる場合も生じます。民医連の事業所が地域に存在する意義をあらためて確認しながら、地域住民のいのちとくらしを守るため、どのように事業(所)を再編・再構築することが地域の要求に応え、経営的にも見通しが立つのか、「縮小」ではなく「縮充」の視点での総合的な検討が必要です。
(5)医療活動
①「新たな地域医療構想」における民医連事業所の対応の視点
2027年度から開始される「新たな地域医療構想」は、従来の病床再編を超え、外来・在宅・救急を含む医療提供体制全体を最適化し、地域の医療機関の果たす役割を明確化し「治す医療」と「治し、ささえる医療」を区別するとしています。民医連事業所の多くは「治し、ささえる医療」を担う中核として、生活と医療の橋渡し役を担うことが想定されます。
外来や在宅医療への政策的誘導でのシフトがすすむと、急性期病院は中等症以上の救急患者の診療と在宅で実施不可能な検査や処置を行う場として短期間利用する施設となり、入院適応の厳格化と在院日数削減の圧力がさらに高まると考えられます。制度的、時間的圧迫のなか、急性期医療を必要とする人すべてに適切な医療が提供されるように、私たち自身の力量を高め維持していく必要があります。それと同時に、私たちの引き受けるべき医療の範囲も見極め、治療の適切な時期を逃さぬように配慮する必要もあります。手術用ロボットや各種ICTデバイスなど先進機器の導入が課題となる場合は、医療の質の向上や後継者獲得のメリットと費用負担のデメリットをよく考慮する必要があります。
民医連の病院で急性期拠点機能を担う病院数は少ないものの、その地域での医療機能上求められる役割、医師をはじめとする研修などのうえでは非常に重要な役割があり、可能なところは機能維持をめざしましょう。自院で担えない機能については法人内外の地域資源を活用し、地域連携の力で乗り切ることが大切です。多くの病院は高齢者救急・地域急性期機能や在宅医療等連携機能として入院・外来・在宅をささえる総合的ケアを担う地域包括ケアシステムの中核をなす拠点としての役割を果たしましょう。そして、まちづくりの拠点にもなり、診療以外でも保健室活動や共同組織との様ざまな活動を通じて地域とのかかわりを強めましょう。
診療所は、生活の場にもっとも近い医療・介護の入り口として、対面やオンラインでの診療と健診活動、多職種による訪問診療、地域のつながりづくりや健康づくり(相談活動、保健室活動、アウトリーチなど)などを通じて地域の健康と生活をささえる拠点です。また、診療だけでなく、共同組織とともに訪問・相談活動や保健室活動などの地域活動を通じて人びととのつながりを育み、困難な人びとの支援をする社会的包摂の拠点でもあります。さまざまな創意工夫あふれるとりくみを展開しましょう。
保険薬局では調剤業務の自動化、オンライン化がすすみ、在宅医療のひろがりを背景に、患者宅への配薬対応が増加すると想定されています。調剤以外の健康増進支援活動は、診療所とのとりくみと重なる部分も多くなるため、連携をすすめましょう。
②医療DXへの対応
医療分野のデジタルトランスフォーメーション(医療DX)が大きくすすみはじめています。電子カルテのみならず、予約・決済システムを含むオンライン診療、オンライン問診票など、適切な形で取り入れていくことは、外来の事務作業や救急医療の負担軽減にもつながると考えられます。また、健康管理に関するさまざまなデジタルツールやスマートフォンのアプリなども開発されています。班会や健康チェックの場面での活用を検討しましょう。ウェアラブル端末や各種測定機器の小型化、ICTの発達などを考えると、入院や外来で行われていた医療の一部が在宅に移行し、在宅医療の内容が徐々に高度化していくと考えられます。民医連内事業所でもランサムウェア攻撃をうけた事例が報告されており、サイバー攻撃に対する対策も急がれる課題です。IT関連の課題は、どこまで対応をはかるか方針を明確にもち、法人・事業所の予算をきちんと位置づけることが大切になっています。現場際での対応はシステムエンジニア(SE)などの職員が担っており、顔のみえるSEのつながりをつくろうと、AIの活用の具体例、自社運用の仮想サーバ構築と費用についてなどをテーマにオンラインサロンを開催しました。医療DXの導入の利点は大きいと考えられますが、同時に、デジタル弱者への配慮、個人情報保護、利用者の理解と同意をどうすすめるかなど、多くの倫理的課題も伴います。あくまで医療アクセスの向上、人権尊重、ケアの質向上のためのツールと位置づけ、民医連らしい倫理ガバナンスが必要です。
③認知症のとりくみ
認知症基本法(共生社会の実現を推進するための認知症基本法)(注30)が2024年1月から施行されています。認知症になったら何もできなくなるのではなく、認知症になってからも住み慣れた地域で仲間とつながり、希望をもって自分らしくくらし続けていくことができるという認知症観の転換がはかられ、認知症施策を推進するための基本計画の策定が国と都道府県・市町村の責務とされました。事業所・職員のなかで新しい認知症観の理解・浸透をすすめるとともに、施策を推進するための十分な財政的保障やそれぞれの自治体のとりくみが基本法に則したものになるよう求めていく必要があります。認知症に対する国の政策や各自治体の計画、それぞれの地域の実情・要求をふまえ、法人・県連として認知症に対する総合的な方針・政策をもち、とりくみ全体をいっそう強めていきましょう。認知症委員会として「認知症実践ハンドブック改訂版」を発行します。
④QI事業
「2つの柱」の医療の質の向上に関連し、ひきつづき重要な分野です。2025年1月からは、従来のQI指標をVER.6に改定しました。指標の細部の見直しに加え、参加事業所のとりくみの向上もあり指標を廃止したものもあります。QI事業がスタートして10年、とりくみがひろがり、民医連の医療の質の公表と整備がすすんできたと評価されますが、一方でPDCAサイクルを十分に回しきれない事業所と、QI指標の積極的活用で医療内容の改善に繋がっている事業所と2極化している傾向や、さまざまな理由で指標の提出ができないところも出てきています。あらためて、現場の担当者をはげましながら、QI事業を活用して医療の質の向上につなげる管理部の役割が必要です。厚生労働省の補助事業である医療の質向上のための体制整備(公益財団法人 日本医療機能評価機構への委託事業)や京都大学のQIP事業にも結集しながら、QI事業の発展にも貢献していきます。
⑤労働者の健康をめぐって
労働者の健康をめぐる問題は、民医連医療の原点です。じん肺、振動病や化学物質による発がんといった従来からの労災職業病の課題は、ひきつづき対応が求められる課題です。アスベストについては、とりわけ建物の解体が2030年にむけてピークを迎えるなか、ひきつづき新しい労災や環境暴露の危険を強めており、労働者が安全に働けるように環境被害もふせぐ立場で、労働組合とも連携を深め運動を強める必要があります。さらに、パワハラ・セクハラ・カスハラなどとも重なる労働者のメンタル疾患のひろがり、高齢者の働き方や熱中症などの課題など新しい働くものの健康課題もひろがっています。
こうした課題に、一人ひとりの検診や労災の申請、治療や療養に民医連として向き合い続けてほしいとの要望が労働組合などから寄せられています。働くもののいのちと健康を守る全国センター(いの健全国センター)に結集する労働組合や研究者とも連携しながら、民医連として応えていくことが大切です。
自主研究会である振動病交流集会が継続されるなどの努力のなかで、複数の事業所で、新たに振動病検診をスタートさせ、検討がはじまっています。そうした事業所の経験や教訓を共有し、全国での振動病検診などの対応をひろげていきましょう。じん肺診査ハンドブックの改悪の動きについては、全日本民医連労働者健康問題委員会としての意見書も提出しました。46期は、委員会として『労働衛生・社会医学分野の後継者確保と育成について』を発表し、議論を呼びかけました。ひきつづき後継者の育成についての議論をすすめ、働くものの健康課題について、各地域でいま何が焦点で、何ができるのかを議論し、一歩でもとりくみを前進させましょう。全国的にも、現場でも、あらためて働くもののいのちと健康を守る全国センターの位置づけを高めること、労働組合や弁護団などとの顔の見える関係をあらためて構築し、労働者健康問題のとりくみを強めましょう。
(6)介護活動
①介護実践~「2つの柱」のとりくみ
低介護報酬のもとでの経営困難、厳しい職員体制のなか、各事業所・現場では「民医連の介護・福祉の理念」(注31)の学習を深めながら、介護ウェーブ、介護報酬改定対応と介護実践、経営改善、職員の確保と養成、職場づくりに全力でとりくんできました。また、「ケアの倫理」の学びを通して、運動課題や日々の介護実践の意義についてあらためて捉え直すことができたことも特徴です。「民医連の介護・福祉の理念」と「ケアの倫理」は互いにひびき合うものです。日常の活動を「民医連の介護・福祉の理念」、「ケアの倫理」の視点からひきつづき深め、「人権としてのケア」を実践と運動の両面で追求していきましょう。
病院における介護福祉士の専門性、役割を明確にし、発揮すること、それにふさわしい制度上の呼称や報酬上の位置づけについて政府に見直しを求めることが必要です。地域では療養・生活のうえでさまざまな困難・課題を抱えている高齢者が増えています。「まずみる・寄り添う、支援する、なんとかする」の視点で、無差別・平等のケア実践をひきつづきすすめていきましょう。
ケア(介護)にかかわる権利として、「ケアする権利」「ケアを受ける権利」の2つを基本に、「ケアしない権利」(=ケアすることを強制されない権利)、「ケアを受けない権利」(=不適切なケアを受けない権利)があげられます。ケアは非暴力の実践とも言われています。ケアする人、ケアを受ける人の人権を守ることがケアの質を高めていくことにつながります。この4つの権利に照らし、認知症ケアや終末期のケア、ヤングケアラー問題などをふくむ家族介護者への支援、虐待や身体拘束防止など、日常のケア実践の課題を「ケアの倫理」の視点からあらためてとらえ、深めていきましょう。
厚生労働省は「生産性の向上」について製造業と同様に「より少ない人数・時間で成果を得ること」としたうえで、介護では同時に「質の向上」を目標とし、業務の省力化などで直接ケアに充てる時間を増やし、職員育成やチームケアの強化をすすめると説明しています。しかしそもそも公的対人援助サービスに市場の論理をあてはめた「生産性」という考え方をもちこむこと自体が矛盾をはらんでいます。その点に問題意識を持ち続けながら、「生産性向上を通した質の向上」を追求していきましょう。その際は利用者の人権やQOLに十分配慮することが必要です。人員配置基準の切り下げなど、給付削減を目的とした「効率化」の動きに対してはひきつづき反対の声をあげていきます。
②事業基盤の強化
医療機関と同様、介護事業所もかつてなく困難な経営環境に置かれています。2024年度報酬改定は不十分なプラス改定でしたが、収支差率は低く留まっており、予算未達の法人も多数を占め、利用者確保が計画通りすすまないなど依然として厳しさが続いています。特に、訪問介護では基本報酬が引き下げられたことによる経営上の苦戦が続いています。他方でヘルパーを確保し稼働を増やすことで予算を達成している法人もあります。他法人の経験・教訓にも学びながら、経営改善を図っていきましょう。
経営改善に向けて、経営状況をリアルにつかみ、必要利益にこだわること、利用者の確保と報酬改定対応を両輪ですすめること、時間外労働や適正人員の配置など費用管理を重視することが必要です。医療との連携を強め、一体的な展開の中で経営改善をはかる視点が重要です。さらに、職員の配置や働き方の見直しをふくめた事業の再編、中長期計画の策定が求められます。全職員参加と共同組織の協力・共同などの民医連の「強み」を生かし、地域の困難や要求に寄り添い、行政の役割を明確にさせる運動と地域・団体との協力・連携で経営的な課題を克服していく視点が必要です。
(7)歯科
①歯科医療・歯科口腔保健を人権として位置づけよう
現在、通院困難な患者の増加が固定化する一方、未処置のう蝕を持つ人びとが約4000万人にのぼると推定されるなど、「かかりたくてもかかれない」患者が潜在的に多数存在し、健康格差が拡大する可能性があります。だれも取り残さない、公正平等な「人権としての歯科医療の実践」をすすめましょう。
『歯科酷書-第4弾-』では、国外発信を目的に初めて英語版を作成し、WHO健康開発総合研究センター(神戸市)へ届け、日本における口腔崩壊の実態を伝えました。現在は『歯科酷書-第5弾-』の作成に向け、準備をすすめています。歯科署名強化Weekの広報や訪問活動を通じて、口腔問題に加え、患者の生活や社会的背景に関する気づきを収集し、64件の事例が集約されています。今後は診療現場や日常生活の中での小さな気づきを共有し、さらなる実態把握につなげていきます。
摂食嚥下障害や口腔機能低下症への対応、糖尿病や心疾患など医科領域と関連する病変について、多職種連携を強化します。小児や障害者への対応、多職種カンファレンスの定例化などにもとりくみ歯科医療におけるさらなる柔軟な対応力と総合力を拡大しましょう。
②歯科医師をはじめとした職員の確保と育成のとりくみを具体化しよう
職員の確保の困難さが深刻になっています。歯科医師数抑制政策、歯科衛生士の役割の拡大に伴う給与相場の上昇、歯科技工士のなり手不足・離職問題の加速といった社会的背景の影響に対し、「民医連の歯科医療」を伝えていくことが職員確保と育成の基本です。
歯科奨学生は各歯科事業所の条件をもとに受け入れることが多く、民医連歯科医師の確保育成に十分な対応であるとはいえない状況があります。就職説明会は各研修施設でも行っていますが、今後は、状況の把握と歯学生への情報発信の工夫が課題です。県連の歯科中長期計画をたてて歯科奨学生の獲得目標をもつなど県連をあげての歯科学生対策は学生に民医連の理念をひろめる力をえることにもつながります。県連や法人の高校生職業体験などに「歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士」も組み入れて将来の担い手づくりを行っていきましょう。
青年歯科医師会議は2024年10月に、歯科奨学生会議は歯科衛生士奨学生の合同で2025年3月に開催し、経済格差がすすむなかでSDHを考える機会として大阪・釜ヶ崎地域をフィールドワークし、街の歴史や地域一体となった支援活動などを学び交流をはかりました。中堅歯科医師交流集会は、長崎にて平和をテーマに交流を行いました。歯科医師臨床研修については、定員割れや施設返上などの厳しい現状があるものの、「民医連らしい臨床研修」を強みに選ばれる臨研施設をめざしとりくみましょう。
「民医連歯科衛生士の基本となるもの」は民医連の内外での共有が行われ、歯科衛生士の養成大学の教官からも、チーム医療としての考え方やSDHを基にしたアセスメントなどの内容、何より歯科衛生士が主体となって作成したことについて高い評価を得ました。ひきつづき民医連の歯科医療への確信と実践、患者の生活状況の把握や多職種連携のツールとして活用をすすめましょう。また、確保と育成においても「基本となるもの」は民医連の歯科医療を表現し、そして伝達できる有効なツールとして、「全日本民医連職員育成指針2021年版」と併せて、活用のさらなる拡大にとりくんでいきましょう。
歯科技工士は女性歯科技工士が増加傾向にあることをふまえ、長く働き続けられる職場環境の整備が課題です。地協内での協力による育成や、民医連歯科技工士の魅力発信を継続します。
10年ぶりに新任歯科事務長研修会を開催し、歯科医療の歴史や理念、チーム医療のあり方を学習しました。事務長が果たす責任と役割を再確認し、同じような課題を持った事務長同士の交流もはかることができました。
③『民医連歯科読本』の改定で、「全県連に歯科を」のとりくみをすべての地協の課題に位置づけよう
16年ぶりに改訂される『民医連歯科読本』は、内部向けにはアイデンティティの再確認と教育ツールとして、外部向けには医療連携や社会的課題解決への架け橋として位置づけられています。 2025年1月に、歯科の空白県であった岐阜民医連にすこやか診療所歯科が開設しました。開設に向けては、近畿、東海・北陸地協の歯科事業所での研修受け入れなどが行われました。
④無差別・平等を掲げ、非営利・協同の民医連歯科医療を実践するための必要利益を確保しよう
2024年度は、民医連歯科の75・4%にあたる86事業所が黒字を確保し、全体でも経常利益9・8億円を計上して14年連続の黒字を達成しました。しかし、黒字比率は後退し、患者数減少や職員体制の課題が顕在化しています。外来患者は減少傾向にある一方、訪問診療は拡大しています。しかし、歯科衛生士などの欠員による体制の不安定さが診療縮小を招いており、人材確保が経営に直結する最大の課題となっています。
今後の経営に関する重要課題は、人材の確保と定着では育成支援や環境改善による中長期戦略、患者数の確保ではキャンセル対策や中断者への再案内、診療報酬の戦略的活用では施設基準への対応や診療報酬改定対応などによる収益確保の3点です。また、民医連綱領を実践するためには、職員配置や教育、設備投資を賄うための「必要利益」の確保が不可欠です。全職員参加型の予算作成や、中長期経営計画の策定を通じて、安定した経営基盤の構築をめざしましょう。
⑤「保険でより良い歯科医療を」求める請願署名の運動を、私たち歯科医療従事者の要求として、新たな視点でのとりくみにしていこう
今回の署名は全体で20万5128筆を集約し、前回を上回る結果を残しました。福岡、広島などでは保険医協会との統一行動がメディアに取り上げられ、学生も運動に参加するなどひろがりを見せました。ひきつづき、診療報酬引き上げや窓口負担軽減、歯科医療従事者の処遇改善をめざし、運動を推進していきます。
第2節 共同をひろげ、平和とくらしを守り、人権としての社会保障へ前進を
(1)憲法を力に、地域から非戦・人権・くらしを掲げ、改憲許さず、戦争させない運動にとりくもう
ロシアのウクライナ侵略戦争、イスラエルのガザ地区でのジェノサイド、アメリカのベネズエラ侵略など、世界で戦争がひろがっています。日本でも大軍拡で「戦争する国づくり」がすすみ、国民のいのちとくらしを守る社会保障費が圧迫され続けています。
民医連は、あらゆる戦争政策に反対し、個人の尊厳、基本的人権の尊重に根ざしていのちを守る医療・介護実践を行う組織です。断固戦争させない運動を一段と強め、平和な日本と世界を求める声を大きくしていきましょう。各県連や地協の平和学校や戦跡めぐりのフィールドワーク、平和を求めるスタンディングや9条改憲許さない宣伝・署名活動、核兵器禁止を求める運動など、すべての職員と共同組織、地域の人びとに呼びかけ、地域から平和運動をひろげていきましょう。
46期、憲法闘争本部は「憲法まもりたい!民医連ネットワーク(略称:まも憲ネット)」に改称し、連続憲法学習会や「憲法・平和守るイチオシのとりくみ交流会」を開催し、日々のくらしや医療・介護現場と憲法のかかわりも深めました。各地では憲法9条の碑建立もすすんでいます。自民・維新連立政権や他の政党の改憲の動きに対抗し、憲法を守り生かす大きな運動が求められます。47期、あらためて憲法の大学習運動にとりくみます。医療・介護現場の事例を人権の視点でとらえ、全職員が共同組織とともに憲法を学び、守りいかす運動にとりくみましょう。
(2)いのちとケア、社会保障拡充に予算を使う国への転換を
多くの国民の切実な願いは、物価高騰対策とくらしの安定、いのち守る政治です。わたしたちの税金は、敵基地攻撃能力、人を殺傷する武器整備のためではなく、生活の安定・向上、所得の再分配、経済の安定の3つの機能を持つ社会保障の充実にこそ使うべきです。国が税金を集め、使う際に守るべき基本原理である憲法の財政原則に則って税金の使途に意見が言える主権者となり、いのちとケア、社会保障拡充に予算を使う国へ転換させましょう。憲法と人権、社会保障制度についての学習と深い理解を重視し、世代間に分断を持ち込む「高齢者優遇論」(注32)を乗り越え、すべての世代の社会保障拡充をめざしましょう。
(3)人権・受療権を守る制度改善に向けて
①国民皆保険制度を守り、医療制度改悪を許さないとりくみ
自民、公明、維新の3党合意の医療費4兆円削減をストップさせましょう。「いつでもどこでもだれでも」「必要充足」「応能負担」の国民皆保険制度を維持し、一部負担金や利用料、高過ぎる保険料引き下げを求め、将来的には窓口一部負担金ゼロをめざします。2025年12月2日で従来の健康保険証使用が中止されましたが、いまだにマイナ保険証の利用率は37・4%(2025年10月現在・厚労省)です。国民皆保険制度のもとで、国には保険証を全国民に無条件交付する責任があります。健康保険証を、任意取得のマイナンバーカードと一本化することは、保険証取得の自己責任化であり、憲法の理念に反し、国民皆保険制度を根幹から崩壊させる重大な受療権、健康権侵害の問題です。国の責任を明確にし、従来の健康保険証復活を求める運動を強めます。
2026年通常国会に、高齢者の保険料・一部負担金に金融資産を勘案するための改正法案が提出される予定です。今後、全世代の個人情報がマイナンバーで政府や自治体、企業に利活用される動きに注視する必要があります。
高額療養費制度は、難病やがん患者、長期療養が必要な患者の命綱です。自己負担限度額引き上げも外来特例改悪も断念させましょう。高額療養費の外来特例見直しだけでなく、後期高齢者医療の窓口の一部負担割合や保険料、介護保険料の引き上げもねらわれ、物価高騰や年金目減りなど高齢者の負担増は生活全般におよびます。受診控えや中断、必要な薬や検査をあきらめるなど、いのちにかかわりかねません。全日本民医連の75歳2割化実施後のアンケート調査(42県連、1万5735件)に寄せられた「これ以上切り詰められない」「受診できなくなる」という切実な声を国会に届け、これ以上の高齢者への負担増は中止させましょう。
OTC類似薬の保険外負担(特別の料金)の仕組みなど、制度改悪はやめさせましょう。医療法改正による11万床病床削減や、国民民主党が掲げる尊厳死の法制化、参政党が求める終末期の延命措置医療費の全額自己負担化も許してはなりません。
国保保険料・窓口負担引き下げの実現、特に子どもの保険料(国保均等割)をなくし医療費一部負担をなくす運動、国の制度として18歳までの子ども医療費無料化実現などにとりくみます。
②いのち、人権を守るとりくみ
いのちのとりで裁判は、政府・厚労省に対し、最高裁判決にもとづく全面解決を求めます。桐生市事件に学び、県連、事業所のある地域の生活保護行政の点検をよびかけました。生活保護のしおりチェックと改善の運動にもとりくみましょう。日弁連が提唱する権利性を明確にした「社会保障法」を学び、全日本民医連でも実現に向けた運動にとりくみます。
事例調査で外国人医療をめぐる実態を明らかにし、全日本民医連として厚労省や法務省、入管庁との懇談、申し入れなどにとりくみます。
無料低額診療事業について、青年事務の会が主体的に学習し、職場の先輩や共同組織、町会議員の力も借り、議会に要請して薬代助成を実現した岩手の青年職員の経験を『民医連医療』誌連載の「現場の気づきからはじめるソーシャルアクション」に掲載しました。全日本民医連として、無料低額診療事業の対象拡大(訪問看護・介護、保険薬局など)や、公的医療機関での実施拡大、無保険など全額自費となる場合の財政支援などを厚労省に要請をします。各都道府県や自治体に向けても、無料低額診療利用者の薬代助成を求めて運動しましょう。
③「人権の砦たる民医連事業所」としてのとりくみ
(現場の気づきからはじめるソーシャルアクション・社保運動にとりくもう)
多職種共同で患者に寄り添う最初の一歩として人権・倫理の「タイムアウト」(注33)にとりくみましょう。忙しい中でも、気づきや違和感を意識できるようになることが大切です。日々短時間でも気づきを語り合うことを職場で定着させて、医療・介護現場や職場で人権を意識できる組織をめざしましょう。とりくみ推進のため、幹部や中堅、職責者向けの学習も提起します。
共同組織との地域訪問、退院患者訪問や未収金訪問など、一職場一アウトリーチで地域の困りごとをつかみ、自治体キャラバンや自治体・国会への要請など政治に働きかけるソーシャルアクションに踏み出しましょう。全日本民医連として、自治体キャラバン実施マニュアルや重点要求項目案を作成します。大阪の淀川勤労者厚生協会は、2024年共同組織月間を契機に、職員が共同組織といっしょに地域に出て困りごとを聞く1職場1アウトリーチを継続しています。共同組織や地域の団体・個人と共同して、人権が守られるまちづくりをすすめましょう。猛暑が続くなか、熱中症調査をもとに自治体に対策を要望したり、事業所の一部をクールスポットとして開放したりする実践もあります。生活保護利用者のクーラー購入費などの助成は対象・内容とも限定的で、生活保護利用者以外の高齢者や困窮世帯への支援も必要です。自治体に対策を要求しましょう。
2024総選挙、2025参議院選挙では、民医連の選挙要求を掲げ、県連や法人でも要求や選挙争点のチラシなどを作成し投票を呼びかけました。選挙では「民医連の要求」を掲げて、実現のために何ができるか考えましょう。
(「人権の砦(とりで)たる民医連事業所」の力を高めるために、県連、地協での交流を)
県連や法人・事業所の社保委員会は運営上の困難や悩みも少なくありません。三重民医連社保委員会は、「もっと仕事が楽しくなる社保委員会」をキャッチコピーに、毎回社保委員が持ちまわりで、自分の興味あるテーマで準備する15分の「社保Q学習会」にとりくんでいます。中四地協では青年職員主体で社保交流集会を開催し、楽しみながら参加をひろげています。47期も「楽しくなければ社保じゃない」を合い言葉に社保活動の活性化をめざし、職員育成と一体に「現場の気づきからはじめるソーシャルアクション」にとりくみます。地元の運動課題の学習やフィールドワークも取り入れ、活発な社保(平和)委員会活動にしていきましょう。
(4)全日本民医連としてのとりくみ
2024年手遅れ死亡事例調査は、全日本民医連の記者会見後、11県連(2025年11月現在)が記者会見を行いました。ひきつづき2025年調査にもとりくみます。
また、46期全日本民医連社保セミナーは、第1クールは水俣、第2クールは各地協で、人権の視点でフィールドワークを行い、第3クールは受講生自身のアクションプランを作成しました。プランの実践報告で演題応募し、47期学運交で再会することをめざします。国政選挙が行われる際は、民医連の選挙要求をバージョンアップし、政策チラシなどを作成して投票を呼びかけるとともに、県連、法人・事業所の社保委員長や職責者を対象にした社会保障や情勢・人権に関する学習会開催も検討します。
(5)医療・介護労働者をケアする政治への転換と地域医療を守り、患者の受療権を保障するための連帯とたたかい
医師をはじめ、看護師、介護職員など日本の医療・介護従事者の絶対的な不足は、地域における医療・介護の提供体制を根底から揺るがす極めて深刻な事態を招いています。46期は、ケア労働者の処遇改善を求め、地域の医療・介護を守るための国民運動にとりくみました。47期はこの運動をさらに大きくひろげていきます。
①医師・医学生署名と80/80ドクターウエーブ
2023年12月から2025年3月まで「医師・医学生署名をすすめる会」とともに医師増員をめざす運動を展開し、8370筆の請願署名と国民向けのWEB署名1万4940筆を提出しました。今回の運動は医師の働き方改革がスタートし、現場での矛盾は深まっているものの、「医師偏在」のみが問題とする政府の世論づくりなど逆風も強く、2008年に2万筆を超えた医師・医学生署名の到達にはおよびませんでした。民医連が立ちあげた推進本部では、「医師増員なくして偏在解消なし」の立場で、全県連での推進本部の設置と学習などを呼びかけ、学習を深めた県連ではシンポジウムの開催や地域医療機関への働きかけがすすみました。また、医学生自身が多くの署名を集めた経験もあった一方、3~4割の県連は十分な動きになりませんでした。2025年2月に発行した全国の医学生との対話で出された疑問に答える80/80パンフレット「まやかしの『医師偏在』~医師不足の解消を」は、「絶対的医師不足」の認識をひろげる役割を果たしました。一人ひとりと対話をすること、そして情勢の変化もふまえ何度でも対話を重ねれば共感につながること・署名がひろがることが、この運動を通じて明らかになりました。
署名提出後、80/80ドクターウエーブを提起し、医師・医学生のアンケートは299の回答が寄せられ、現場の声を国会議員に届けました。2025年11月に衆議院厚生労働委員会で行われた、医師偏在対策を強化することや医療機関の病床削減をすすめる「医療法等の一部を改正する法律案および修正案」にかかわる参考人質疑で、全日本民医連医師部長が意見陳述を行うとともに、80/80パンフレットとアンケート結果を配布し、現場の実態と医師偏在対策の根本的な問題点について陳述しましたが、同法律案は賛成多数で成立しました。同時期に開催された政府の「医師養成課程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」では、2027年度の医学部総定員について「削減」と明記され、また同年12月に政府に出された「建議」では、医学部定員数の抑制がすすまない場合には国家試験の合格率により医師の供給数をコントロールすることも検討すべきと踏み込みました。働き方改革に伴って、見せかけの時間外労働の削減がなされているなかで、医師数を削減することは、政府が今後も医師の自己犠牲的な長時間労働を放置することを表明するものです。一方、長野県議会では、11月定例会にて、地域の医師不足解消を求める意見書が全会一致で採択されるなど、地方から医師増員を求める動きもうまれています。
②ナース・アクション
2024年1月の看護師・保育士による白衣の国会行動以降、全国各地でさまざまなナース・アクション行動がとりくまれました。5月の「看護の日」に合わせて“ハッシュタグ・アクション”“わたしの声”を集め楽曲「ナースコール今、ここから!」が誕生、各地で駅前や商店街でのアピール行動がくりひろげられました。看護学生実態調査(2024年・955人回答)では、経済的状況は厳しさを増し、アルバイトによる学業への影響などがわかりました。民医連の看護専門学校学生自治会は、国会議員とのWEB懇談、要請行動で動画メッセージなど声をあげ、全国各地から集められた高等教育無償化を求める署名41万筆を提出しました(2025年5月)。日本の高等教育予算はOECD(経済協力開発機構)のなかでも「最低水準」で、学費の7割は家計がささえているとされます。また国際人権規約は、無償の高等教育を漸進的に導入する措置を国に義務付けており、参院選では主要政党が「無償化」「負担軽減」を公約しています。声をあげ続け、無償化への道を拓きましょう。
全国ナース・アクションWEB実践交流会を、46期は3回開催し、「就学支援新制度の概要と問題点」「看護師確保対策と予算(地域医療介護総合確保基金のしくみ)」や各地での実践を学び合いました。2025年10月、厚生労働省より「看護師養成施設」「病院内保育所」事業補助金の標準単価の引き上げが通知されました。これは、長年に渡る私たちの粘り強い運動の成果です。このことに確信を持ち、ナース・アクション2025年冬からのとりくみとして以下3点、①看護職確保対策(養成と教育・労働環境整備・復職支援など)の拡充、②高等教育無償化で経済的不安なく医療看護介護職をめざせる制度、③経営危機が深刻な地域の医療機関の事業と経営を守る緊急の対策が柱です。ひきつづき職能団体、民医連外の医療介護事業所との懇談を重ね、看護師の養成、処遇・労働環境の改善などを国・行政に求めましょう。
③介護ウエーブ
(この間のとりくみ)
前期にひきつづき、「3つの丸ごと」ウエーブ(地域丸ごと・民医連丸ごと・ケア丸ごと)をすすめてきました。訪問介護基本報酬の引き下げに対して改定直後から地域の訪問介護事業所を対象にした独自の調査が各地で実施されました。このとりくみは、国に報酬引き下げ撤回を求める自治体の意見書採択(2025年12月現在363自治体)や、訪問介護事業所に対する自治体の独自支援策を実現させる大きな力になりました。地域の居宅介護支援所を対象に実態調査にとりくんだ県連もありました。2024年介護請願署名は多くの法人・事業所で目標を超過達成し、23万筆(全体で34万筆)を通常国会に最終提出しました。
(私たちの基本要求)
第1に、「三大改悪」案をはじめ、提案されている制度改悪を全面的に阻止することです。「利用料2割負担の対象拡大」について、全日本民医連の緊急影響調査(2025年10~11月)では、在宅サービス利用者(回答1702人)の3割強が「サービスの利用回数や時間を減らす」「サービスの利用を中止する」と答えており、「今まで通り利用を続けるために家計を切り詰める(食費などを削る)」という回答も3割を占めました。物価高騰で経済状況が悪化しているなか、これ以上費用負担を引き上げることは許されません。
第2に、2027年度改定を待たない期中改定、事業所支援と大幅な処遇改善の実施です。処遇改善については、全額国費によりすべての介護従事者の賃金を早急に全産業平均水準に引き上げることを重ねて求めます。介護事業所に対する政府の処遇改善支援策(2025年度補正予算)ではケアマネジャーなどこれまで対象外とされていた職種を初めて含むものとなりました。処遇改善を目的とする期中改定も6月に実施されます。全体としては不十分な内容にとどまっていますが、現場の実態や要求を反映した改善の一歩となるものです。
第3に、「機能不全」状態に陥っている介護保険制度の改善・立て直しです。「必要充足」原則、「応能負担」原則にもとづく制度の改善を求めていきましょう。介護保険財政における国庫負担割合(現在25%)の段階的な引き上げが不可欠であり、重ねて強く要求します。
(今期の課題)
要求実現に向けて、ひきつづき3つの「丸ごと」ウエーブをひろげていきましょう。法人・県連が総合的な方針をもつことが必要です。「緊急行動」や看護、医師分野との共同、障害・保育分野、認知症の人と家族の会などの当事者団体との共同を追求しましょう。利用者の実態・要求が介護ウエーブの出発点です。事例検討会のような、まとまった時間を確保できなくても、現場でのさまざまな気づきを日常的に職場で共有する人権・倫理の「タイムアウト」のとりくみをすすめましょう。
現在の日本社会は、公的に保障されるべきケアが著しく不足している社会です。ケアの価値が貶(おとし)められ、ケア労働者の賃金が低く抑えられている背景に、ケアは誰にでもできるという考え方を前提に、主に女性(主婦)が家庭で無償労働として担うものであり、職業化しても家計の補助労働で構わないと捉える根深いジェンダー規範があります。それを仕組みとして制度に組み込んだのが介護保険であり、介護報酬は低く固定化され、給付水準は家族介護者がいることを前提に設定されています。全産業平均水準への給与の引き上げ、介護保険給付の拡充は、ジェンダー平等の実現と政府の全世代型社会保障改革を押し戻す重要な一歩になります。「介護の社会化」で問われているのは、介護(ケア)に対する責任と費用をどう公正に配分するかということです。ケアニーズを社会の中心に置き、それを満たすことが何よりも重視される「ケアが大切にされる社会」、「人権としてのケア」が保障される制度の実現をめざす介護(ケア)ウエーブをいっそう大きくひろげていきましょう。
④ファーマウエーブ
2025年11月に「ファーマウエーブ」を提起しました。OTC類似薬の問題、薬剤師の業態間・地域間偏在、医薬品供給問題などを通じて、薬剤師の専門性と役割を可視化し、患者本位の医薬品政策への転換を求めるとりくみです。第1弾としてOTC類似薬の保険適用除外問題を取りあげました。本質をわかりやすく伝えたチラシ作成、普及、他団体の機関誌などでの執筆などとりくみをすすめています。医療費削減の大きな課題として医薬品がターゲットになっており、選定療養の拡大やOTC類似薬をめぐる問題点を今後も運動のひろがりを見据えた発信を継続していきます。
(6)核兵器廃絶、辺野古新基地建設反対のとりくみ
核戦争の危機が歴史上かつてなく深刻化するなか、自らの被爆体験を語り核兵器廃絶を訴えてきた日本原水爆被爆者団体協議会(日本被団協)(注34)がノーベル平和賞を受賞しました。2024年11月には、日本被団協、原水爆禁止日本国民会議、日本原水協による3団体共同アピール「被爆80年を迎えるにあたって―ヒロシマ・ナガサキを受け継ぎ、ひろげる国民的なとりくみをよびかける」を力に、署名の共同提出行動が行われるなど、被爆者を中心とした前進が築かれました。
昨年は、被爆80年を迎え、被爆者健康手帳所持者は9万9130人(2025年3月)、平均年齢は86歳となっています。被爆者の体験と声、被爆の実相を学び継承することは、非戦と核兵器廃絶の実現に直結します。「高校生の描いた原爆の絵展」や「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ被災パネル」展示をひろげるとともに、被爆者健康手帳の取得、介護手当申請、原爆症認定、「黒い雨」被爆者、長崎の被爆体験者、ビキニ被ばく船員など、核被害者の国家補償を求めるたたかいを共同で支援します。日本政府に核兵器禁止条約(TPNW)への署名・批准を求める署名は、民医連では、目標100万筆に対し約29万8000筆です。ひきつづき署名運動を強化し、政府に条約参加を求める自治体意見書決議のとりくみをすすめます。2026年、4月のNPT再検討会議(注35)、8月の原水爆禁止世界大会、国連総会、11月TPNW再検討会議を節目に、核兵器廃絶の国際的な共同行動を発展させます。
沖縄では米兵による犯罪がくり返され、日米地位協定のもとで毅(き)然(ぜん)と対応できない日本政府への怒りが高まっています。日米地位協定の改定は待ったなしです。辺野古新基地建設を中止させ、基地のない平和な沖縄を求める運動に連帯したたかいを継続します。辺野古支援連帯行動にはこれまでに2898人が参加しており、名護市長選挙、沖縄県知事選挙を重要な節目としてひきつづき連帯します。あわせて、全国ですすむ自衛隊基地増強と大軍拡に反対する運動にとりくみます。
(7)福島第一原発事故から15年、原発再稼働を許さず、再エネ転換で原発ゼロと気候危機の克服をすすめよう
福島第一原発事故から15年を迎えても、なお多くの人がふるさとに戻れず、廃炉の見通しも立たないなど、福島の復興は道半ばです。政府はエネルギー基本計画で原発回帰に舵(かじ)を切り、住民の声を顧みず再稼働をすすめていますが、福島の事故を直視すれば到底容認できません。
原発再稼働を許さず、再生可能エネルギーへの転換と原発ゼロの社会を、市民の共同で実現していきましょう。各地の再稼働反対・原発ゼロの運動を福島の真の復興と結びつけ、原発ゼロと再エネ転換を求める
請願署名や3・7全国集会、3・11のとりくみを大きく前進させます。
日本の気候危機対策が遅れている最大の要因は、原発や石炭火力に依存し、再生可能エネルギーの導入を後回しにしてきた点にあります。原発および石炭火力発電をゼロとし、再生可能エネルギーを電力利用の最優先とする体制を確立する必要があります。各地の民医連事業所では、火力発電所計画ストップの共同した運動への参加や事業所での再生可能エネルギーの活用・拡大などとりくまれています。また、気候変動の深刻化により、熱中症や感染症などの健康被害が増えることが懸念されるなか、医療界の脱炭素をすすめようと一般社団法人「みどりのドクターズ」(注36)の活動などもひろがっています。47期、全日本民連として気候危機分野のとりくみをすすめられるよう各地のとりくみの交流、とりくみの方針化をすすめます。
(8)PFAS問題
PFAS問題は全国各地にひろがっている新しい公害であり、環境分野の課題であると同時に健康被害をおよぼす社会的要因の一つとして位置づけられます。
今期、全日本民医連としてPFAS問題委員会を設置し、2024年9月に第1回のPFAS問題交流会を開催し、39県連、282人が参加しました。さらに具体的なとりくみにしていくため、第2回交流会を2025年3月に開催し、28県連200人が参加しました。PFAS血液検査の実際、相談外来の開設と実情、自治体交渉、学習会のすすめ方をテーマに学び、交流しました。
民医連の全国組織の強みを生かした調査・研究活動として、「全都道府県でPFAS血中濃度を調査し、新たな高濃度地域の有無を明らかにするとともに、生活様式や疾患との関連性について検討する研究」(全日本民医連PFAS疫学研究)を提起し、具体化されています。
いまだに日本政府はPFASによる健康被害を認めておらず、PFASの曝露状況と有病との関係を明らかにすることをめざします。すべての都道府県でとりくまれることが重要です。全国各地で、米軍基地の泡消火剤の流出、企業の廃棄物などが汚染源と考えられる実態が徐々に明らかになってきている昨今、住民の運動に連帯し、民医連は自治体や国にむけて汚染源の調査、検査の実施や公費補助、健康被害の把握などを求める活動に参加しています。大阪ではダイキン淀川製作所に対して全国初の公害調停が始まりました。ひきつづき、地域住民のいのちを守る立場で、住民の不安や要望に応える活動を来期も行っていきます。また、前述の研究結果を47期中に公表し、日本政府や自治体への働きかけを強化していくこととします。
(9)水俣病に対するとりくみ
2023年9月のノーモア・ミナマタ近畿訴訟の判決は、128人の原告全員を水俣病と認める画期的なものでした。しかし、後に続いた2024年3月の熊本地裁判決では対象原告144人中25人のみを水俣病にり患していると認め、除斥期間の経過を理由に全員の請求を退けました。同年4月の新潟判決も認めたのは原告45人中26人のみという不当判決でした。
医師集団は、専門性を発揮し、裁判所に意見書を提出、医師証人として証言台に立つなど訴訟をささえています。2024年5月に「メチル水銀曝露による健康障害の研究方法」シンポジウムを開催し、9月には新潟での水俣病検診を支援、2025年1月には、環境省2回目の健康調査あり方検討会に高岡滋医師が参加して意見をのべています。
2025年は新潟水俣病の公式確認から60年、2026年は熊本水俣病の公式確認から70年を迎えます。高齢化する原告らを一刻も早く救済し、すべての被害者を救済しましょう。
第3節 高い倫理観と変革の視点を育む職員の確保・育成の前進を
綱領の実践、事業と運動の継続において職員育成活動は、すべての分野の土台です。46期に生まれた変化や教訓を47期の活動に生かしましょう。
(1)46期の職員育成活動の特徴
1)総会方針学習・評議員会方針学習の工夫と定着への努力
第46回総会方針学習は、職責者の読了は60・6%(45期61・2%、44期59・1%)で、ひきつづきトップ管理者を中心にすべての職責者の読了が求められます。学習会6649回、参加者数のべ4万8625人の到達でした。香川では、継続的なとりくみのなかで、方針読了後に職員全員の感想文提出が定着し、医局でも全員が総会や評議員会の方針を読了。福井でも、総会方針、評議員会方針の学習を全職員対象に位置づけるなど、各地で活動をすすめる大きな力となっています。
2)戦後80年「非戦・人権・くらし」つらぬく育成活動
46期の基調である「非戦・人権・くらし」は、職員育成活動にもつらぬかれました。地域の戦争被害を学ぶフィールドワーク、核兵器廃絶、沖縄の歴史と基地問題、原発再稼働反対、社会保障や地域医療を守るたたかいなど、すべての活動が職員育成の場となっています。
3)「ケアの倫理」Café~ケア労働が評価される社会をめざす民医連への確信
「ケアの倫理」Café(2025年4~10月)の開催数はのべ2万4570回、参加者数のべ14万7531人。日々のケア実践や価値観を見つめる機会となり、ケア労働が評価されるためにも政治を変える必要があることなどが語り合われました。また、資本主義、家父長制やジェンダー(性別役割分業規範)などの社会構造が「女性へのケア負担の偏り」を生み、ケア実践が社会的評価から排除され、その抑圧の根源的システムを理論として獲得したのがフェミニズムであること、他者への応答というケアを「実践」ととらえるいとなみが研究対象となり「ケアの倫理」が生まれたことへの理解が深まりました。
「ケアの倫理」の学びは、「高い倫理観と変革の視点」を養う育成活動そのものであり、「無差別・平等の医療・介護・福祉を追求してきた民医連の活動はケアの倫理を体現している」など確信が深まりました。47期も職員をつなぎ、地域をつなぎ、ケアがめぐる社会へ、学習と対話を重ねましょう。
4)「7つの具体的指針」(注37)の相乗的な実践の豊かなひろがり
「職員育成指針2021年版」の「7つの具体的指針」が「Café」と相乗的に実践されました。
①対話による職場づくり~「ケアがめぐる職場へ」
「対話によりケアされ、Caféは職場づくりそのもの」「相談しやすくささえ合える文化が利用者の笑顔につながる」など、対話が相互理解やチーム力の向上につながることが実感されました。これまで学習が位置づかなかった職場でも、対話型のとりくみが多くの職場を変えています。長野のある介護の職場でも、ケア実践で抱えている思いや悩みを言葉にすることでコミュニケーションが深まり、「Café」の時間が楽しみになった経験が報告されています。
②人権尊重の多職種協働と心理的安全性
多職種協働は、基本的人権を実現する医療と福祉の実践です。「指針」は、心理的安全性の高い協働のなかで、各職種の役割が発揮できること、そのためにも人権の尊重、民主主義が大切であることを強調しています。「Café」では、職種や立場を超えて思いや葛藤を語り合い、違いのなかで理解し合う工夫がひろがりました。山口では、全職員を対象にした「ケアの倫理カンファレンス」を定期開催し、参加者が「自分に引き寄せ、言語化し発表者をケア」することで、「それぞれのこころをケアしていく」とりくみを続けています。「Café」では医局や診療所などでも対話を深める経験が各地で生まれました。これらの流れを、総会方針学習をはじめとするすべての職員育成活動に生かしましょう。
③制度教育~「誰も取り残さない」
コロナ禍をへて、制度教育のあり方を見直した県連もあります。群馬では、教育ラダーを再構築し、職責者・青年育成・多職種研修を体系化し制度教育を全職員にひろげました。母国語が日本語でない職員にルビ付きの総会方針を活用するなど「取り残さないとりくみ」が行われ、「Café」を通して署名や宣伝行動などへ参加も増えました。山梨では講師養成講座にとりくみ、受講生らを講師に「ケアの倫理」について制度研修が開催されました。
④地域のなかでの職員育成
各地で職員育成委員会と他の委員会が協働し、共同組織や他団体、地域のなかでの職員育成がすすめられています。熊本では、フィールド研修を制度教育に位置づけ、水俣病、ハンセン病、被災者支援、優生保護問題の学習と裁判傍聴など、教育学習委員会、社保平和委員会、被災者支援委員会がコラボし、地域のなかで学びあっています。地域の運動やまちづくりを育成の機会とし、「1職場1アウトリーチ」にもとりくみましょう。
⑤青年職員の支援体制の強化
青年職員の育成は、民医連の継承・発展のうえで不可欠の課題として、各県連で強化されています。京都では、青年委員会の「平和塾」やジャンボリーへの支援を強化し、近畿地協ジャンボリーでの交流を深めるうえでも管理者が役割を発揮しています。新入職員を対象にピア・サポートにとりくむところも増えています。青年委員会などへの支援体制を強化しましょう。
⑥幹部育成~事業と運動の継続の課題
事業と運動の継続が大きな課題となり、幹部育成の課題は切実です。長野では県連の教育活動要項を理事会で確認し、経年的に将来の各職種の幹部として必要な人数に見合った候補者の研修参加を追求し、介護幹部養成講座も2025年2月から開始しました。事務幹部養成アカデミアは2期目を開催し、民医連の歴史と綱領、情勢を学び、全国的な仲間との連帯を大いに深めました。当初の方針である3回開催の通り、47期も事務幹部養成アカデミアを開催します。各地協、県連でも事務幹部養成学校が継続して開催されています。
⑦職員育成活動の推進体制
「総合的に推進するにふさわしい構成による職員育成委員会の確立・強化」は、「ケアがめぐる職場づくり」の要です。トップ幹部の責任で、推進体制を確立しましょう。
青森では県連教育委員会と各法人の学習推進担当で体制を確立し、総会方針や優生保護問題の学習などをすすめ、「Café」でも報告がない職場には声かけを大切にしました。岐阜では、法人中長期経営計画達成にむけ、職責者が目標管理計画(職員育成、地域貢献、経営改善など)をもち実践評価の交流を3年間とりくみ、部署・事業所を超えた職場づくりがすすみました。今期、全ての地協で、職員育成代表者会議や委員会、交流会が開催されました。
(2)47期のとりくみ~「ケアの倫理」の学びを生かし、「職員育成指針2021年版」の実践を
1)総会方針学習 すべての職員が参加し対話を重視しよう
「Café」を通して生まれた声や変化を大事にし、「7つの具体的指針」にもとづいて職場づくりを発展させましょう。総会方針学習は、総会前から計画を立てましょう。代議員の役割を明確にするとともに、学習動画、「民医連新聞」の活用なども含め、すべての職員が総会後すみやかに学習できるようにしましょう。その際対話を重視し、朝礼や職場会議でも学習、対話の時間を持ちましょう。
2)民医連の綱領と歴史、日本国憲法の学習をつよめよう
新入職員研修をはじめ、全職員を対象に学習ブックレット「民医連の綱領と歴史」を学ぶ機会をもちましょう。民医連が「なんのために、誰のために存在するのか」という原点を、今日的な課題や現場の実践と結びつけて理解を深めることが大切です。また制度教育などに憲法学習を積極的に位置づけましょう。「民医連新聞」など機関紙誌の活用、「憲法まもりたい! 民医連ネットワーク」(まも憲ネット)の学習会(動画)など学ぶ機会を増やしましょう。DVD「医の倫理と戦争」で戦争加害について学ぶとりくみを呼びかけます。
3)ケアの倫理の学びを継続しよう
ひきつづきケアの倫理を学びましょう。とりくめていない職場にはこれからでも声をかけましょう(ホームぺージに紙面掲載)。制度教育にも位置づけ、すべての職員が系統的にケアの倫理を学べるよう工夫しましょう。社保運動・政策部から提起された人権・倫理の「タイムアウト」を取り入れ、業務のなかで人権や倫理に関する気づきを交流する時間をとりましょう。
4)人権と共同のいとなみ(注38)への理解と実践を
「指針」は、「高い倫理観と変革の視点」を養う職員育成の大きな力となるのが「人権と共同のいとなみへの学びと実践」であることを強調しています。トップ幹部や職員育成委員会が中心となり、「旧優生保護法下の強制不妊手術問題に対する見解」の学習をはじめ、「国際基準の人権」にもとづき、共同のいとなみを基盤として行動する組織文化の醸成につとめましょう。貧困のとらえ方も絶対的貧困から相対的貧困、そして社会的排除と視野が段階的にひろがってきました。幸福追求権が阻害されている状態を「貧困」とする視点で、現場や身の回りの出来事をとらえ直しましょう。
5)「ケアがめぐる職場へ」仕組みづくりを
①どの職場も取り残さない育成活動~「職場をケアする活動」
「職場会議がされていない部署のフォローをどうしたらよいか」などの悩みが寄せられています。一方で、「Café」を通して「どの職場もとり残さない育成活動」が「職場をケアする活動」としてとらえなおされています。医局や病棟でも職場責任者を中心に工夫した職場では対話による変化が生まれています。これらに共通しているのは、県連や法人で推進体制を確認し、職員育成委員会がその役割を発揮していることです。声かけやニュースでの感想交流など、職場や職員をつなぐ努力がされています。県連や法人の育成担当者が悩んでいる場合は、県連事務局長やトップ幹部とともに「指針」の内容を確認し、職員育成活動を自分たちのものにしましょう。
②職場責任者へのケア~「ケアする人へのケア」
また、経営や人員体制の困難などで大変な思いをしている職場責任者こそケアされる必要があります。職場責任者がその役割を果たせるよういっしょに考える仕組みづくりが大切です。「指針」では、法人・事業所のトップ幹部が、職員育成委員会とともに職場責任者に適切な指導・援助を行うことを呼びかけています。一例として、「育ちあいの職場づくりに必要な8つの視点」(注39)を活用して職場診断にとりくみ、職場責任者の声を聞きとってともに考える職場が増えています。あらためて「指針」の実践をトップ幹部の課題としてよびかけます。「7つの具体的指針」をもとに必要な議論を尽くし、「ケアがめぐる」仕組みづくりにつとめましょう。
6)「健康で働きつづけられる職場づくり」~経営課題としても重視を
今期、「健康で働きつづけられる職場づくり」2024年改訂版パンフレットが発行されました。労働安全衛生の基本、小規模事業所や介護事業所、在宅分野での安全衛生活動、「ノーリフティングケア」、メンタルヘルス対策、多様性などに配慮したヘルスケアなどについて整理しています。
ケアの倫理の視点は、パンフの活用の意義をいっそう深めています。未曾有(みぞう)の経営危機の背景には、ケアの価値が評価されず、低すぎる診療報酬・介護報酬、効率化を求める新自由主義があります。余裕のない勤務環境が職員の精神的不調や離職・休職を招き、職場環境の悪化やハラスメントの温床となる可能性もあります。
職員健康管理委員会は、これまで「健康職場の5つの視点」(注40)や「健康職場づくりの7つの課題」(注41)を提唱し、職員の健康を守る交流集会(2025年)では、改訂ポイントのひとつである「ハラスメントのない職場づくり」をテーマとしました。ハラスメントによる心の傷は深く、長い時間をかけなければ回復が難しいことが多くあります。また、職員の健診受診と要精査・治療者の確実なフォローアップ、職責者を含め労働時間の適切な管理、喫煙・飲酒などの依存への対応を、法人・事業所ですすめましょう。
健康で働きつづけられる職場づくりは、職員の健康といのちを守る活動であり、事業と運動の継続、経営の課題です。ひきつづき、「健康で働きつづけられる職場づくり」パンフレットの学習と実践を呼びかけます。県連における健康管理委員会の確立、法人における労働安全衛生体制の確立と強化をめざしましょう。
7)全国青年ジャンボリー
第41回全国青年ジャンボリーは2025年11月27~29日、兵庫県神戸市で集合開催されました。「『今何しとう?会って話そうや』~6年ぶりの再会、県を越えて出会い仲間と笑顔で埋め尽くそう」のスローガンのもと、約530人の青年職員らが参加。阪神淡路大震災の災害支援の教訓を学ぶ講演やワークショップ、震災遺構のフィールドワークなどを通して民医連の活動を知り、未来を描きながら交流しました。
コロナ禍でもWEB開催によって継続してきた全国青年ジャンボリーは今期、9回の実行委員会を重ねて全国の青年職員の心をつなぎ、成功をおさめました。各県連で報告会やアフター企画を開くなど工夫し、青年育成の機会として生かしましょう。次回は2027年に福岡で開催予定です。ひきつづき青年職員一人ひとりに寄り添い、各県連、各地協でのジャンボリー活動を支援しましょう。
8)各職種のとりくみ
(看護分野)
新卒確保は、2024年911人(目標達成率75・9%)、2025年850人(71・4%)ときわめて厳しい結果となりました。新卒のうち奨学生率は約半数を維持していますが、奨学生全体数は減少傾向にあります。既卒看護職員採用数も年々減少傾向にあり、直接応募採用に対して紹介会社経由の採用が年々増加、今回の調査では採用者数の49・7%(前年比3・3ポイント増)と約半数を占めています。必要人員の確保ができず、やむなく人材紹介会社を利用する法人が増え、紹介会社への紹介料支払い額も増加しています。民医連の看護職全体での離職率は13・2%(前年比2・1ポイント増)と、過去10年間でもっとも高い結果となりました。その厳しい状況のなかで今期『看護学生委員会活動の基本となるもの~高校生からかかわり、育て、民医連の看護の継承・発展させよう~』を発行(2025年5月)。「奨学生は民医連を発展させともに未来をつくっていく仲間、法人・事業所のトップ幹部がしっかりと認識し、重要な課題として位置づけ」るよう強調しています。
また、地域包括ケアの現状と課題をふまえ、民医連がめざす「無差別・平等の地域包括ケア」の実現に向けて、看護の専門性と視点を据え提言書を作成しました。少子高齢化の進行や独居世帯の増加、支援が届きにくい人が増えているなかで、看護はくらしと医療をつなぎ、人をささえる大切な役割を果たしています。民医連の看護の3つの視点・4つの優点(注42)をよりどころに、人権を基盤とした「ケアの倫理」を重視し「人権を守り公正で命が大切にされる社会」を実現するために共同組織とともに医療・介護・福祉、行政が協力し一体的なとりくみをすすめましょう。『民医連のめざす看護とその基本となるもの~その継承と発展に向けて~』は、2026年3月改訂予定です。
47期も看護幹部研修会を開催し、民医連の看護を継承し新たな時代を切り開く看護幹部の育成をめざします。看護幹部は経営をリアルに掴む力と、経営幹部としての覚悟が重要です。職員、共同組織に寄り添い、依拠しながら、経営の先頭に立って奮闘しましょう。
第17回看護介護活動交流集会は、2026年10月に神奈川で開催します。メインテーマは「憲法でアクション!! ~ケアに満ちた社会を切り拓く~」です。ケアの倫理の学びを生かし、民医連の看護・介護の豊かな実践を持ち寄り、交流しましょう。
看護師特定行為(注43)は議論が開始された当初、全日本民医連は安易な看護師の業務拡大には反対の立場をしめしました。そもそも医行為である業務を看護師が実施することの倫理的課題や安全性、事故が起こった場合の責任の所在、民医連らしいチーム医療に特定行為がなじまないのではないか、といったさまざまな課題について議論を重ねた結果です。しかし保助看法改正などにより研修を受けた看護師が、医師の包括的指示のもとで、一定の医療行為を主体的に行えることとなったため、2015年5月に全日本民医連理事会は、県連・法人・事業所として方針を検討する際の留意点をしめしました。その後2020年第44回全日本民医連総会方針で、あらためて多職種による合意形成と県連・法人で方針を持つことを呼びかけました。医行為であった特定行為を実施するには、医師との協働抜きにはすすめられません。特定看護師は「診療の補助」と「療養上の世話」という看護の業を十分に発揮されているのかという視点をもち、医師の指導のもと、検討した方針に則って実施します。民医連らしい、それぞれの県連・法人らしい協働とは何かを集団的に模索し方針を持ちましょう。
(介護分野)
厳しい職員体制が続くなか、共同組織とも協力した紹介活動、地元養成校とのつながりの強化、中学生・高校生の介護体験、初任者研修の開催など各地でさまざまな対応がはかられています。「介護の魅力・やりがい」「法人の特徴」を効果的にアピールできるよう、SNSの活用など法人の発信力を高めていきましょう。
民医連においても外国籍の介護職員の受け入れが増加傾向にあります。受け入れの際は介護職員と同時に生活者であることを前提に、日本語習得のサポートをふくめ、習慣や文化(宗教)の違いをお互いに理解し、日本でくらしていくための適切な環境を整えることが何よりも重要です。有料職業紹介会社を利用せざるを得ない状況が続いています。高額な紹介料が事業経営に大きな影響をおよぼしており、一方でかならずしも定着が思わしくない実態もあります。紹介手数料の上限設定など必要な社会的規制をひきつづき政府に求めていきます。
「民医連の介護・福祉の理念」を自分の言葉で語り、実践する職員の養成に向けて、全日本民医連として「民医連介護職のラダー」(入職から中堅までを対象とした「キャリアラダー」、職責・管理者向けの「マネジメントラダー」)を作成しました。特にマネジメントラダーは、役職となった際、経営・職場づくりだけでなく、制度改善やまちづくりのとりくみを牽引(けんいん)していく役割を意識できるよう作成しています。2つのラダーを参考にしながら、県連・法人でのラダーの作成、見直しに活用しましょう。地協・県連で管理者の養成をすすめましょう。ひきつづき、全日本民医連として「法人介護・福祉責任者研修会」を開催します。
職員不足が加速するなか、年齢、職業経験、家庭の事情、国籍など、介護現場は働く人や働き方が多様化しています。ICT機器の活用や勤務時間の見直し、健康で長く働き続けられる環境整備などさまざまな工夫で多様性を尊重することが職場の革新につながります。さらに、お互いにねぎらい、励まし、ささえ合う機会をもつなど、職場のなかでケアの関係性(お互いにケアしケアされる関係)を築く、「ちょっと気になる」を気軽に話せる機会(人権・倫理の「タイムアウト」など)をもつなど、ケアの視点からの職場づくりも重要です。「働きやすい職場」「働き続けられる職場」「働き続けたい職場」づくりをひきつづきめざしていきましょう。
2024年11月、厚労省のケアマネジメントにかかる諸課題に関する検討会が「ケアマネジャーの業務の在り方」などについて報告書をとりまとめました。全日本民医連として報告書に対する考え方を整理し、5年ぶりに実施した実態調査結果もふまえながらあらためて民医連ケアマネジャーの役割、課題を提起しました。ケアマネジメント分野での総合的なとりくみの推進に向けて、県連・法人としてケマネジャー政策づくりをすすめましょう。
いま、介護(ケア)の本質が真正面から問われています。「生産性」や「効率性」の追求、政府が掲げる「自立」(介護が不要な状態)支援の促進、データやアウトカム評価の重視などの流れが強まっています。こうした政策の動きのなかで、利用者、介護現場の実態、その背景にある制度の問題点と合わせて、ケアの社会的な価値や本来の制度のあり方、介護の専門性や専門職の役割などを日常の実践を通して明らかにしていくことが求められています。「民医連の介護・福祉の理念」「ケアの倫理」の視点から深め、大いに発信していきましょう。
(薬剤分野)
薬剤師を取り巻く問題として、薬剤師の業態間の偏在や地域偏在など、複合的な課題があります。とりわけ病院薬剤師においては、病棟薬剤業務のさらなる充実、医薬品の適正使用の推進、医師を含めたタスクシェアなど今後いっそうの役割拡大が求められています。しかし、第8次医療計画にしめされている通り病院薬剤師の人員体制は依然として厳しく対応に苦慮している現場は少なくありません。こうした状況は、薬剤師をめざす学生にも大きな影響をおよぼしています。薬学部が6年制へ移行して以降、国公立大学では6年間の学費が約350万円、私立大学では900~1400万円に達しています。その結果、経済的理由から薬学部への進学を断念せざるを得ない高校生がいるとの報告もみられます。
ワクチンや医薬品をめぐっては、製薬企業の利益優先により安全性が脅かされる事態を再びくり返さないため、副作用モニターや新薬評価のとりくみを強化していきます。被害者の訴えに可能な限り寄り添い、被害救済をすすめる立場から、2024年・2025年の薬害根絶デーに結集し、薬害根絶デー民医連学習交流集会を開催しました。また、産婦人科医療委員会からの提起を受け、小児医療委員会とも連携しながらHPVワクチンに関する協議をすすめてきました。国民の医薬シンポジウム実行委員会の再開に伴い、今後もその議論に参加していきます。
さらに、病院薬局の厳しい人員体制により全国集会への現地参加が難しい実態をふまえ、オンラインによる薬局長交流集会やサロンを開催し、つながりを実感できる場を整備しました。あわせて『病院薬局長ハンドブック』を作成し、薬局長の役割の明確化やチェックリストの更新にもとりくんでいます。
保険薬局については、加盟法人数は75法人と変わらないものの、薬局数は約4%減少し、赤字法人は2023年度の25法人から2024年度には35法人へと増加しました。統一会計基準の改訂や経営調査、学習会の開催などを通じて経営課題への対応をすすめるとともに、QI事業への参加呼びかけるとともに項目更新を行い、薬局機能と質の向上を図ってきました。
このほか、薬剤関連の諸課題や診療報酬改善を求めて厚生労働省交渉を実施し、社会的困難を抱える患者の実態調査を通じて、格差と貧困の深刻化も明らかにしてきました。
46期で明らかとなった課題やとりくみを踏まえ、結束を強めて前進をめざしましょう。
(事務分野)
事務育成委員会では、「民医連事務集団の3つの役割」(注44)の実践を呼びかけてきました。前期に続き開催した民医連事務集団「3つの役割」実践交流集会は149人が参加、事務職員が活躍するフィールドや学び、成長の場が無限にあることを再確認しました。「実践が評価されたことで活動への確信が深まった」などの感想や、現場からも「日常でも成長がみられ、『3つの役割』を意識したとりくみを県連でもすすめたい」との声があります。地協や県連でも「3つの役割」をテーマにした交流会も増えています。
一方、事務職員の確保と育成の困難はより深刻となっています。事務の新卒確保は、処遇面で他産業と競う土台にも立てない状況下で年々厳しさを増し、応募者ゼロという県連も複数あります。経営困難のなかで、求められる役割や実務が増し、具体的な対策に動き出せない県連も増えています。こうしたなかでも、各地で大学や専門学校との連携による就職企画、インターンシップや奨学金など制度の充実、内定者のつどいなど就職前から働きかけが積極的にすすめられています。また、県連事務委員会への若手の配置、事務総会・事務交流集会の定着、世代会開催による離職防止などによって、確保と育成を重要課題とした実践が実りつつある県連もあります。民医連で働くすべての事務職員の実態や変化を把握するため今期、「事務実態調査」の準備をすすめました。事務職員の確保と育成の到達、課題を整理し「民医連事務育成指針(仮称)」につなげていきます。困難がつづく時代だからこそ「3つの役割」に意識的に立ち返り、実践を深めていきましょう。
(リハビリ分野)
医療・介護については、事業所の倒産や経営困難が深刻化するなか、収益部門として経営改善への学習やとりくみをすすめながら、HPH、社保活動などリハビリ部門としてさまざまなとりくみを行ってきました。
2024年度診療報酬改定では、急性期リハビリ加算が新設され、発症直後からのリハビリの必要性が評価された一方、回復期リハビリ病棟では体制強化加算や運動器リハビリの算定上限の設定等経営への対応や体制づくりなどの検討を行ってきました。介護分野では事業ごとのセラピスト数は、全国平均より少ない事業所が多いですが、さまざまな加算の取得やLIFEの対応、リハビリ会議、サービス担当者会議などの他事業所、他部門との連携など、リハビリ業務のみならず、事業所の運営に大きく寄与しており、介護の質という意味でも重要な役割を果たしてきました。
リハビリ技術者委員会ではいままで実態がつかみきれていなかった精神科のリハビリ、小児リハビリ、介護分野のリハビリについて調査を行い、精神医療委員会、小児医療委員会の医師とも懇談しリハビリ県連法人代表者会議で問題提起を行いました。またリハビリ部門の経営管理、職場管理の必要性から職責者研修会、予算管理学習会を開催してきました。
47期は次世代の幹部養成のための「リハビリ技術者幹部講座」開催、多職種協働とリハビリの質の向上、医療介護連携などにとりくみます。
(SW分野)
SW委員会は、各地協や県連の実践を共有し『あの街この街かわら版』で発信してきました。
北海道・東北地協は、初任者研修を実施しました。近畿地協・全日本民医連SW委員会共催の初任者研修では、生活アセスメントを学びました。2025年6月には全国企画で生活アセスメント研修会を開催し、事例を生活問題としてとらえ深めることで社会問題に行きつくことの気づきを共有し、「憲法を原点に、その人の幸福追求権を考えたい」などの感想が出されました。
今後、46期SW現状調査やSW部会員調査結果も踏まえて問題提起し、「全日本民医連SW政策指針」見直し案も提案します。
体制上、部会運営が困難な県連もありますが、47期も地協でささえ合いながらとりくみをすすめます。46期学運交にはSWが積極的に演題応募しました。日ごろの実践を多職種とも共有し、今後もさまざまな機会での発信をよびかけます。
旧優生保護法の最高裁判決に学び、当事者とともに差別や偏見のない社会の実現が求められます。いのちのとりで裁判も最高裁判決をふまえた全面解決までたたかいが必要です。47期も憲法25条の理念のもと、国際人権規約など「国際基準の人権」水準をめざし、人権の担い手としてのSWの役割を自覚し、権利としての社会保障制度を守り発展させながら、患者・利用者の人権擁護にとりくみます。
(放射線分野)
放射線部門委員会では、46期総会スローガンであるケアの倫理を深め、「2つの柱」の全面実践で「人権の砦」たる民医連事業所を守り、発展させることを念頭に会議をすすめとりくみました。継続する3つの課題(人材確保と育成、医療安全、経営問題)に追加してタスク・シフト/シェアの推進について意見交換や論議をすすめました。さまざまな課題が山積していますが、地協・県連と連携しながら解決の糸口を模索しています。
2024年11月に東京にて「第15回全国放射線部門代表者会議」が6年ぶりに集合開催しました。全国から約90人の参加者がテーマ「~ケアに満ちた社会へ~これからの民医連の放射線技師に求められるもの」に沿って多くの課題や経験を共有し学ぶ機会となりました。
また、画像診断加算依頼取得、フィルムバッジ価格や遠隔読影料などについて比較のための情報を集約し、収益増加策や費用削減法の検討考察を行っています。
47期もひきつづき「3つの課題」(職員確保と育成、医療安全、経営問題)とタスク・シフト/シェアを整理し前進するとりくみを行います。また課題である「技師政策の改訂」を検討します。強みである「地協・県連との連携強化」と将来に向けた「告示研修受講と運用」を重要事項とします。
(検査分野)
タスクシフト・シェアについては、体制が厳しいなかでも可能なとりくみをすすめてきましたが、「これ以上どのようにすすめればよいか」といった課題も浮かびあがっています。こうした状況に対しては、管理部門として明確な方針を持ち、他職種とも連携しながら合意形成をはかり、とりくみをさらに前進させていくことが重要です。RPAの導入やAIの活用による業務効率化については、全国の先進事例を積極的に共有し、現場での実践につなげていきます。
また、『民医連にはたらく臨床検査技師活動指針2021』を踏まえ、各県連で検査技師政策の策定をすすめるとともに、検査技師の確保と育成にも力を入れていきましょう。
なお、2025年11月には熊本で第19回検査部門交流集会を開催しました。次回は2027年秋に宮城での開催を予定しています。
(栄養分野)
2024年診療報酬・介護報酬・障害福祉サービスなど報酬の改定では、多くの栄養関連事項が見直され、新たな加算も新設されました。それらの項目に対して各事業所では学習や討議を行い、加算取得に向けて対応してきました。食材料費の高騰に対して患者の自己負担増のない『入院時食事療養費改定の要望書』を厚労省に提出しましたが、30年ぶりに増額されたものの患者の自己負担という結果になりました。ひきつづき経営面や患者の生活を守るためにも患者自己負担増のない改定を訴えていく必要があります。
人員不足に関しては、各地協・各事業所などで職員育成について学習や討議を継続し、前期に続き調理師学習交流会を開催しました。病態について学び、事業所のとりくみを報告し意見交流を行い、病院給食は単なる食事ではなく治療の一翼を担っていること、調理師もチームの一員であることを共有しました。また、栄養部門の活動を他部署にアピールする「栄養委員会ニュース」を発行しました。
地域包括ケアシステムが推進され在宅支援体制の整備が求められるなか、栄養情報提供や訪問栄養食事指導の実施など前進的にとりくみました。学術・運動交流集会テーマ別セッションでは在宅での食支援のとりくみを報告し、食支援のニーズや連携などについて多職種と意見交流しました。
第47期は、46期のとりくみを引き継ぎつつ、(1)人員不足対策と人材育成、職場づくり、(2)在宅医療・地域連携の強化、(3)多職種連携やチーム活動のとりくみ、を重点課題とします。また、ひきつづき患者負担増のない入院時食事療養費の改定も訴えていきます。
(保育分野)
院内保育所は、夜間・休日保育や学童、病児保育など多くの役割を担い、医療・介護現場で働く保護者の就労をささえています。全国では2840カ所(前年比マイナス87)(厚生労働省2023年調査)と減少傾向で、民医連の院内保育所も定員充足率の低下や夜間保育実施率は減少傾向ですが、待機児童が多く受入れきれない保育所や、夜間・休日保育のみを運営している保育所もあり、地域によって保育ニーズは様ざまです。認可保育所は、保育運動によって保育士配置基準(4、5歳児)が76年ぶりに前進、処遇改善もすすめられましたが、民医連の院内保育所の8割が認可外保育所であり、保育所運営はますます厳しい状況です。そのなかで2025年10月地域医療介護確保総合基金制定されてから11年据え置きだった院内保育所運営費補助金の標準単価が上がりました。国へ実態調査結果をしめしながら年に何度も要請を積み重ねてきた成果です。今後も国として「安心・安全な子どもの保育」のための予算措置を求めて要請行動を継続します。
保育の専門性を民医連運動のなかにいっそう生かし、子どもの発達のニーズに応えたより良いケアや支援が行える保育の発展的役割を発揮するためには、保育と医療とのさらなる連携が欠かせません。継続的に途切れなく「子どもが生きやすい社会づくり」に役割を発揮し貢献します。
第4節 医学対活動を飛躍させるとともに、時代にふさわしい民医連の医師集団づくりをすすめよう
(1)全職員・共同組織とともに、医学生と学び合い対話を重ねる活動を
1)第2回評議員会で提起したもの
第2回評議員会にて、医学対活動が困難に直面しているとの現状認識を行い、困難の要因を6点あげました(注45)。その後の新歓活動では、滋賀や福岡などで幹部が先頭に立ち、組織全体でとりくみ奨学生を誕生させていますが、新1年生の到達は全国で32人(2025年12月現在)にとどまっています。新歓期に医師が医学生にかかわれなかった県連が2割、事務幹部がかかわれなかった県連が3割と、担当者任せの活動から抜け出せていません。第3回評議員会では栃木の評議員から「現在のコロナ後の未曾有(みぞう)の経営危機のなかで、経験のある職員や幹部が経営対策に忙殺(ぼうさつ)され、学生対策がおろそかになると懸念されます。(中略)後継者育成の経験の蓄積や継承が今以上にとぎれて、この先にさらなる多くの困難をもたらすことにならないだろうか」との問題意識が出されました。医学対活動は今が分水嶺であり、この困難は医師と幹部が現状をリアルに捉え、医学対活動を組織の最重要課題と位置づけること、事務の人事政策上も医学生担当者の配置強化を位置づけること、そして医師および担当者がいきいきと活動できる状況をつくりださない限りは、突破することは決してできません。
2)「ケアの倫理と人権の視点の医師養成時代における医学対活動方針案」の提案
①医学対活動の新たな発展をめざして
現在の医学対活動の困難の要因を受け、今日的な医学対活動方針案を第46期医師委員長・医学生委員長合同会議にて提案をしました。これまでの方針は医学対活動の2つの柱(①医学生のさまざまな自主的な活動を援助し、医学生の民主的成長と運動の発展を促す、②民医連運動の後継者を確保する)を基本路線としてきました。今回、医学対活動の2つの柱をケアの倫理・人権の視点で見つめ直し、あらためて全職員・共同組織とともに活動できるよう、医学対=「医学生対策」ではなく、医学対=「医学生と学び合い対話を重ねる」活動と再定義するとともに、新たに医学対活動で大切にしたい視点を3点にまとめ、議論を呼びかけました。
(医学対活動で大切にしたい視点)
●民医連との出会いの場をつくる
すべての医学生を対象とし、ひとりでも多くの医学生が民医連・社会と出会う場(民医連の医療・介護の現場、当事者との出会いの場、価値観を交流する場)を全職員・共同組織とつくる。
●医学生運動との協力共同
より良い医療の実現を求める医学生の主体的な学びをささえ、医学生運動に多くの医学生が合流できるよう促すとともに、医学生運動を牽(けん)引(いん)する医学生の成長を援助する。医学生が民主的に成長することと医学生運動の発展のために協力共同する。
●奨学生をはじめ民医連運動を担う後継者の確保と育成
民医連とつながる医学生(地域枠の学生を含め)との学び合いと対話を通し、医学生とともに育ちあうなかで、民医連への理解と共感を深め「民医連の未来をともにつくるパートナー」である奨学生の確保と育成をすすめる(地域枠の学生は奨学生にはなれなくても義務年限終了後を視野に入れ)。また、県連レベル・全国レベルでの仲間づくりを行う。そのことを通じて奨学生活動で成長した医学生(奨学生だけでなく)100人を新卒医師として迎え入れる。
また、医学対活動とその責任を医学生委員長や担当者のみに負わせることなく、全職員の活動となるようケアし合う・育ち合う・力を合わせる仕組みづくりを職場ですすめること、子育てや介護をしながら、また自分自身を大切にしながら、心理的安全性が保たれている職場で働いている姿を医学生にみせることが大切と呼びかけました。そのことが、他の医療機関との差となり魅力になるとともに、担当者が医学生とともに育ち合うなかで信頼関係を深め、医学生の心を動かすことにつながります。この提案は積極的に受け止められ、全国で前向きな討議がスタートしています。
医学対活動の目的は民医連の医師確保にとどまらず、すべての人が等しく尊重される社会に向けて行動する医師・医学生を育てることにあります。この活動をすすめることは民医連綱領の実践にほかなりません。栃木の新1年生の奨学生は「今年の夏の思い出は民医連」と語りました。多忙な大学生活のなかでも積極的に企画に参加し、つどいや医ゼミが学び合える全国の仲間づくりの場になっています。北海道では、高校生一日医師体験の内容を「私たちが本当に伝えたいことは何か」と事業所の職員といっしょに検討し、困難事例を伝える内容に変更したことで「このような医療を担っていきたい」と奨学生が誕生しました。民医連の人権を守るさまざまな運動そのものが、医学生との出会いをつくる場・医学生が民医連に共感する場にもなっています。
医学生と学び合い対話を重ねる活動のなかで、私たちも医学生から学び、個人として組織として成長できます。医学対活動には困難はつきものですが、夢と未来のある運動であり、喜びのある運動です。
③医学対活動は医師集団の大切な仕事のひとつ
「大切文書」(注46)では「私たち民医連の事業所に多くの医学生が参加してくれるよう働きかける活動は医師の大切な仕事のひとつ」とあり、医学対活動を前進させるためには、医師集団のかかわりが決定的に重要です。しかし、医師体制の厳しさもあり、医学生に充分にかかわれていない現状があるとともに、医学対活動が一部の医師の活動にとどまってはいないでしょうか。業務保障を行うなど、医師が積極的に活動できる体制づくりと「医学対活動が医師集団にとって重要」と認識し合う組織文化の醸成が必要です。
④全職員・オール民医連の力で新歓活動の飛躍を
2024年度常勤医師実態調査において、常勤医師は3514人となり、10年ほど横ばいの状況が続いていますが、青年医師の専門医取得やキャリアプラン形成を理由とした退職が増加していることもあり、平均年齢は50・8歳(日本の医師の平均年齢とも2022年で50・8歳)、民医連においても医師の高年齢化が進行しています。常勤医師採用や多様な働き方の医師のささえもありながら、現状の医療活動を維持していくことを考えれば、各年代80人以上の医師が必要となります。この間、全日本民医連は奨学生500人、新卒医師受け入れ200人、後期研修開始100人の数値目標を提起してきました。初期研修から後期研修(専門研修)に継続した医師は修了後も7~8割が民医連運動を担う医師として活躍している状況、そして奨学生であった医師の継続率が高いことが明らかになっています。今こそ、全職員・オール民医連の医学対活動をあらためて重視し、1・2・3大作戦(注47)を各県連で推進し、毎年冬から春にかけての新歓活動で、多くの医学生と出会い、学び合い対話を重ねる活動を飛躍させましょう。
(2)医師養成
1)臨床(初期)研修~「民医連で研修してよかった」から「民医連で働き続けたい」へ
①民医連らしい研修のために必要なこと
奨学生数が減少傾向であることを反映し、民医連の病院にマッチングする人は2022年度までの180人台から2023年度から150~160人台と減少しています。二次三次募集の努力で新入医師は170人台となっていますが、臨床研修の内容がその後の継続にとっていっそう重要となっています。民医連らしい研修については、2023年に開催した都道府県医師研修委員長・プログラム責任者会議において、「日常診療のなかの民医連らしい患者観」「困難な患者さんを民医連だからこそ診ることに価値がある」「患者さんの真の問題解決へ、SDHの視点、多職種連携、地域コミュニティや行政、さらに政治や平和、これらがつながっているとわかるかどうか」と提起しました。新入医師オリエンテーションで、徳田安春医師(群星沖縄臨床研修センター長)は、日野原重明医師から受け継いだ「医師にとって一番大切なことは戦争させないこと」というメッセージを伝えています。研修医がそうした視点を持つために、医師も他の職員と同様に教育・研修の機会を受け、共同組織とかかわり、「どんな医師になるのか、求められるのか」を問われる機会を持ちましょう。そして、共同組織や上級医・指導医・管理医師をはじめ全職員が自分の言葉で「いっしょに民医連で働き、この地域をささえてほしい」との思いを率直に研修医の心に届けましょう。
②尼崎医療生協病院のたたかい
基幹型臨床研修病院である尼崎医療生協病院の定数が2025年から0人になりました。定員の復活を求める署名は2万筆を超え、県当局や地域医療対策協議会などへの働きかけを行っていますが、定員配分の評価は大規模病院に有利な項目とされ、また、どのような議論をへて決定されているのかもわかりません。今後、他県でも理不尽な定数削減が懸念され、臨床研修の理念と民医連臨床研修病院の定数を守るたたかいが求められます。また、広域型連携プログラム(注48)が2026年度からスタートします。医師偏在対策のなかに位置付けられ、「医師多数県」の臨床研修病院定数の評価基準に突如位置づけられた都道府県もあり、対応が求められます。
2)質にこだわり地域基盤の専門(後期)研修を
民医連内の基幹型専門研修プログラムは、内科28、総合診療70、精神科4、整形外科・麻酔各2、外科・救急科・病理・臨床検査各1となっています(2025年12月現在)。民医連の臨床研修から民医連の専門研修へすすむ継続率は2018年の新専門医制度開始後3割前後、専門医制度から民医連へ合流する人を含めた数は50人後半から70人弱と大きな変化はありません。「医師多数県」ではシーリングによって、定数削減が厳しく迫られる状況があり、初期研修と同様にフルマッチをめざすとりくみが必要です。46期はじめて新専攻医・後期研修医オリエンテーションを開催し67人が参加しました。専門研修から民医連に合流した医師からも評価され、民医連医師としての専門医像を考える場・仲間づくりの場として来期も継続します。
総合診療プログラムの専攻医受け入れには濃淡があります。民医連の総合診療医は2018年の37人から2024年250人と増加し、今後も増加が見込まれます。診療所後継所長配置の課題は切実で、病院においても「コミュニティーホスピタル」「地域密着型多機能病院」が今後求められるなかで、家庭医療PGや病院総合医PGへの接続、在宅・リサーチなどのフェローシップ制度づくりなど、生きがいを持って働き、学び続けられる環境整備が重要です。総合診療PGの質の向上のため交流や学びの場を設定していきます。
また、民医連外で専門研修を行っている帰任予定の医師へのフォローも重要です。県連や領域別・自主研究会の企画などへの参加・発表を促し、変わらず仲間として成長を期待しているメッセージを集団で届けましょう。民医連の活動などを研究に結びつけること、そうした志を持つ職員のサポートも大切です。近畿地協と福岡民医連は、SDHにかかわる課題のエビデンスを発出し社会的な制度改善につながることをめざす「京都大学大学院医学研究科社会的インパクト評価学講座」の設立に寄付協力しました。
領域別専門研修については、オール民医連ですすめるとりくみを求める声もあります。今後、自主研究会代表者会議などでの検討が必要です。
(3)医師集団づくりと真の医師の働き方改革の実現に向けて
1)医療構想と医師政策
医療構想と医師政策は民医連医師養成の車の両輪であり、民医連運動を担う後継者の確保と育成の前提となります。新潟では医師委員長を中心に、全医師面談を行い、各医師が何を大切にしながら民医連で働いているかとの対話を深め、「コケコ宣言(注49)」として、医師集団の思いをまとめました。そのようなとりくみが医師集団づくりにつながります。現在、リポジショニングが迫られている時だからこそ、地域に目を向け、地域に何が求められているのかを確認しあい、「なんのために誰のために」私たちは医療を行うのかを問い、ていねいな議論をしなければなりません。
2)真の医師の働き方改革の実現に向けて
真の働き方改革を実現していくためには、ケアの倫理を深めていくことと「医師の人権」を守る視点が極めて重要です。自己犠牲的な医師の業務構造を転換することを呼びかけていますが、道半ばであり、たたかいと対応、そして日常の様ざまなケアへの気づきが求められます。医師はケアを実践すると同時に、診療のなかでは患者から、職場のなかでは他職種から、ケアされることも多い存在です。また、医師と医師が勤務調整などで互いにささえ合うなかにもケアが存在しています。お互いのケアを自覚し合うことが権威勾配のない心理的安全性の高い職場づくりや、人間関係をつくり出します。一人ひとりの医師の多様性や多面性に配慮した、安心して働き続けられる医局づくりをめざしましょう。また、労基署対応の働き方改革から、本質的な働き方改革に着手するための議論が必要です。大事な視点は一人ひとりの医師の人権を尊重することです。自己犠牲的な働き方を誰かに強いることを前提とした医療体制は、政府の政策によって形づくられてきたものです。できる対応はしながらも、ジェンダー平等を柱にした人間らしい働き方を抜本的に実現するためには、診療報酬の大幅な引き上げ、余裕のある医療提供体制、そして絶対的な医師不足の解消が必要です。真の医師の働き方改革を実現するために、引き続き地域から仲間とともに声をあげていきましょう。
(4)領域別委員会のとりくみ
①外科医療委員会
外科医療委員会では、年1回の外科懇話会で人事交流や後継者育成、他施設研究などの課題を議論し、若手外科医の集団化を第一義的課題に据えています。2024年に沖縄協同病院外科専門研修プログラムが発足し、2025年度4人の専攻医を受け入れました。
②整形外科医療委員会
46期は整形外科の後継者対策および整形外科・リウマチ懇話会の準備を中心に活動を行いました。勤医協中央病院のPGには2人の専攻医が参加しています。今後も整形外科を希望する研修医の情報の共有を行い、民医連内での専門医獲得をめざします。8年ぶりの集合開催となった整形外科・リウマチ懇話会は、九州沖縄地協の若手医師を中心に企画を練り、医学生の参加を呼びかけて福岡で開催しました。また、全国の整形外科医のグループチャットを開設しました。47期はこの連絡網を生かして、情報交換をすすめていきます。
③産婦人科医療委員会
45期にひきつづき、HPVワクチンやSRHR(性と生殖に関する権利)、女性の貧困などについて学習や討議を継続し実践してきました。オンライン産婦人科医師交流集会を毎年開催し、研修医や医学生にも参加を呼びかけ、講演会や女性差別撤廃委員会総括所見の学習の他、経験交流会や小グループ交流を行いました。民医連医療で連載「働く女性のからだと健康」を担当、現在も継続中です。HPVワクチンについて、新しい見解案を小児医療委員会や薬剤委員会など多領域・多職種による協議をすすめ作成中です。地域のなかで個人の尊厳や人権に関する包括的性教育に多くのスタッフが携わって貢献しています。来期も事業所内外で多職種共同を展開して、人権尊重や共同のいとなみの視点を養う機会をすすめていきます。
④精神医療委員会
第8回精神科病院代表者会議、第25回精神医療・福祉交流集会を開催するとともに、精神科看護師の横のつながりづくりの要望を受け、精神科病院看護交流会をWEBにて初めて開催しました。また、精神医療・福祉交流集会では、総合病院の精神科にスポットをあて、民医連の一般病院精神科の地域での立ち位置と役割について深め合いました。2006年から若手精神科医を中心に毎年開催している精神科研修交流集会は、専攻医および精神科をめざす初期研修医・医学生が参加し、相互の対話を重視しながら、民医連精神科の後継者育成の場として発展しています。今期、自主研究会扱いから精神医療委員会主催とすることを確認しました。近畿、東海・北陸、中国・四国地協では、精神科医の定期的な交流を行っています。また今期は岩手で精神科が開設されました。
⑤小児医療委員会
2024年2月に「民医連の小児医療の発展にむけて」を発信し、小児医療の発展のための議論への活用および小児医療に直接かかわらない職員や共同組織の人びとにも文書をひろめてもらうことを呼びかけました。全国からも意見が寄せられ、「地域の急性期医療をささえる視点」などを補強した追補版を2026年春に発信します。また、子ども医療全国ネットと共闘し、小児科医の立場から、子ども医療費無償化に向けた発信を行いました。
第5節 岐路に立つ民医連経営、「たたかいと対応」の前進で医療経営構造の転換を
いま、民医連の経営は大きな岐路に立っています。物価高騰、人件費増大、診療報酬の抑制、深刻な人材不足などにより、全国の医療・介護現場はかつてない厳しさのなかにあります。薬局法人や社会福祉法人含め、資金繰りに困難を抱える法人も少なくなく、医科法人のなかには、存続が危ぶまれるほど厳しい状況に置かれているところもあります。
「必要利益」(注50)に基づき、組織として決めた予算利益は、必ずやり抜きましょう。予算利益は、医療・介護を守り続けるための組織全体の約束です。一人ひとりが経営の担い手として考え、行動し、全職員参加の経営で、必ずやり抜く、その覚悟を持ちましょう。
第47期は、医療・介護経営の危機を正面から見据え、「たたかいと対応」を本気でやりきる正念場の期であり、同時に、民医連の未来を切りひらく期でもあります。
(1)民医連は「事業」と「運動」が一体のもの
民医連綱領実現をめざす私たちの組織は、目的達成のために運動をすすめる組織であるとともに、医療・介護の担い手として事業と経営を行っている組織です。その意味で、民医連運動は、経営を離れては存在しえません。また、経営は目的ではなく、民医連運動前進のためになくてはならない手段です。別言すれば、民医連運動の社会的存在形態が経営であるのです。民医連経営の危機=民医連運動の危機ということです。
私たちの経営は、公的資金と国民の支払う社会保険料により運営していることや、医療機関・介護事業所はなくてはならない社会的共通資本であることなどから、どんな困難があろうとも、健全な経営を維持する社会的使命を持っています。自明のことですが、健全な経営がなければ民医連運動の前進も医療・介護の提供もできないことを自覚し、最大の努力を払い続けることが求められます。
(2)民医連医科法人経営の現状
2024年度の医科法人決算(137法人、2法人未提出)では、償却前経常利益は184億円、収益比2・8%にとどまりました。これは当初予算で見込んだ4・5%を大きく下回り、約113億円の未達となっています。さらに、約半数の法人で賞与が予算より減額されており、実際の差は数字以上に大きいと考えられます。前年と比べても状況は悪化しており、全法人合算では、償却前経常利益率は3・3%から2・8%へ低下、経常利益率はマイナス1・5%と、2年連続の赤字です。償却前経常利益がマイナスの法人は24法人(17・5%)に増え、7%以上を確保できた法人はわずか13法人(9・4%)にとどまっています。
この結果、資金の流出が深刻化しています。2024年度は91法人(約3分の2)で現預金が減少し、188億円、前年比マイナス16・3%もの資金が減りました。これは前年度に続く2年連続の大幅な資金流出です。キャッシュフローを見ても、事業で生み出した資金は収益比3・2%で、借入返済は同マイナス3・2%、リース支払いは同マイナス0・6%であり、事業キャッシュで返済+リース料を賄えていない法人は74法人もあります。その結果、債務超過の法人が15法人、利益剰余金がマイナスの法人が51法人にのぼり、財務状況も非常に厳しい状態です。
こうした状況は、「必要利益」を確保できていないことが大きな原因です。そもそも予算段階で必要利益に届いていない法人もあり、決算のふり返りや予算差異分析が十分に行われていたのかが問われます。「なぜ予算通りにいかなかったのか」を整理し、次の予算に生かすことが不可欠です。
2025年度上半期も、改善は見られるものの十分とは言えません。償却前経常利益率は3・6%と予算を下回り、約7割の法人が予算未達です。資金流出も続いており、金融機関の対応は一段と厳しくなっています。このまま損益改善がすすまなければ、今後は賞与資金の借入すら難しくなる法人が出てくる可能性があります。事業を継続するためにも、必要利益の確保を最優先課題として、経営と予算管理を立て直すことが強く求められています。
(3)2026年度予算編成と利益確保のための予算管理の成否が未来を決める
第46期で、予算利益(必要利益)を確保できていない現状を、私たちは重く受け止めなければなりません。赤字解消と必要利益の確保は、中長期利益・資金計画を持ち、必要利益と現状との差を明確にすることから始まります。そのうえで、法人全体の必要利益を確認し、事業所ごとの目標利益と改善額を明示することが不可欠です。必要利益を確保できない状況が続くことは、事業と経営の維持が危機に瀕(ひん)していることを意味します。必要利益に到達しない予算を、その後の見通しもなく容認してきた責任は経営トップにあります。予算論議のあり方そのものを見直し、これまでの延長線ではなく、現状を飛躍的に改善するとりくみをやり抜かなければなりません。経営構造の転換と、見通しある26年度予算の確立は、補正予算や診療報酬改定をあてにすることなく、必要利益に徹底してこだわる経営管理を実践する決意で臨みましょう。
①中長期利益・資金計画を欠いた経営は「漂流経営」に陥ります。必要利益を明確にした実効性ある中長期経営計画を持ち、構造転換を次つぎと実行することが不可欠です。計画は、人員数・人件費の管理や賃金・労働条件改善も視野に入れた実践的なものとし、経営の決断力をささえる羅針盤として確立しましょう。
②26年度予算は、診療報酬改定を織り込まず、26年3月末までに必要利益を確保する内容で確定するようにしましょう。改定待ちの暫定予算は構造転換を先送りする危険があります。改定による増収があれば、その後に修正予算で反映します。
③最低限確保すべき安定的利益指標として、償却前経常利益7%以上、経常利益3%以上を据えます。病院・診療所とも単体で経営が回る構造への転換が不可欠であり、「赤字縮小」や「トントン」でよしとしない議論が求められます。
④「全職員参加の経営」をすすめるためには、予算管理テキスト(注51)の活用が欠かせません。また予算作成様式、中長期経営計画、決算予想の統一フォーマットは、全国の実践と知恵の結晶です。単なる提出書類ではなく、学び合いと経営力強化のための共通基盤として活用し、26年度予算編成で質的向上をはかりましょう。
(4)全国の教訓を生かして
①管理の改善と経営トップの役割
経営危機の背景の一つに、管理の不十分さや組織としての意思決定の弱さがあります。危機を直視せず、現実から目を背けた経営からは、改善の知恵も行動も生まれません。資金がいつ尽きるのか、必要利益までの距離はどれほどかを、経営幹部が、足元が震えるほどリアルに把握し、職員に率直にしめすことが全職員参加の経営の出発点です。
同じ報告をくりかえし、決まらない会議が続く状態では、危機を乗り越えることはできません。誰が決め、誰が実行責任を負うのかを明確にし、検証→意思決定→実行の管理サイクルを機動的に回すことが不可欠です。とりわけ、危機局面では、経営トップが「経営者」としての自覚と責任を持ち、根拠ある方針を明確にしめし、幹部集団が団結して実行にあたることが求められます。管理機構と経営力量を立て直せるかどうかが、法人の存続と未来を分ける決定的な分岐点です。
②「全職員参加の経営」を全力ですすめよう
経営を立て直す力は、現場にあります。職場で働く職員は、「なぜ忙しいのか」「なぜ無駄が生まれているのか」「どうすればもっと良くなるのか」を日々の仕事のなかで実感しています。そうした一つひとつの「違和感」や「気づき」は、経営改善につながる大切なヒントです。「全職員参加の経営」は、まず幹部が経営の現状を正面から受け止め、課題を率直に伝えることから始まります。職員はそれを「自分ごと」として受け止め、職場から工夫や提案を出し合います。この積み重ねこそが、民医連の最大の力です。民医連統一会計基準(事業所独立会計を含む)や部門別損益管理など、これまで積みあげてきた管理会計の仕組みが、全職員参加の経営として本当に生かされているのか、あらためて点検することが求められています。
(5)「たたかいと対応」で、民医連の未来をつくる
2024年6月、「今こそ『オール地域』で『たたかい』の前進を」を提起し、経営実態調査や賛同団体署名、地域医療機関との懇談、住民への発信にとりくみました。全国で1289施設から経営状況アンケートの回答が寄せられ、深刻な赤字や人員不足の実態が明らかになりました。2025年3月には6病院団体が厚労省へ要望書を提出し、「このままでは地域から病院がなくなる」と国民に訴えました。
こうした危機を社会全体の共通認識とし、2025年6月に「地域医療崩壊を食い止める緊急行動」を提起、100万筆を目標とする国民署名にとりくみました。9月には中間提起を行い、運動の意義と目標を再確認しました。全日本民医連の資金状況アンケートでは、7割が赤字、4分の1が年度内の資金繰り困難と回答し、切実な声が多数寄せられました。署名は11月に22万筆を国会に提出し、紹介議員は幅ひろい政党・会派にまたがる43人にのぼりました。県や自治体議会による国に財政支援を求める意見書採択もひろがっています。
「オール地域」および「緊急行動」のとりくみは各地で医師会や病院団体などとの、かつてないひろがりをつくり、また医療界の大同団結とも呼応して国を突き動かしたことは大きな確信にしましょう。社会保障拡充の政治への切り替えの運動に、幅ひろい国民運動を巻き起こす契機とするにはさらなる工夫と日常からの学習や情報発信、共同が必要です。「対応」だけでは経営危機からの脱却ははかれません。「たたかい」のなかで職員一人ひとりも組織も学び成長しながら、地域住民の信頼と共同をひろげ、「無差別・平等の医療と福祉の実現」をめざしましょう。
(6)2025年度補正予算の評価とたたかい
国は2025年度補正予算で「医療・介護等支援パッケージ」と「重点支援地方交付金」を措置しましたが、両制度を合わせても資金流出を止める水準には達していません。加えて、自治体ごとの対応の遅れや支援格差が、地域医療崩壊を加速させています。
「医療・介護等支援パッケージ」の物価高対策は、病院1床あたり11万1000円程度で、事業収益の0・5~0・8%、救急加算があっても1・5%程度にとどまります。医療分野1兆368億円のうち、賃上げ・物価高への直接支援は約半分で、病床削減や融資支援が大きな割合を占めています。
「重点支援地方交付金」では、実績の最大値「1床あたり4万8000円」であっても、「医療・介護等支援パッケージ」物価上昇に対する支援の半分にも満たしていません。全国の7割の病院が赤字、倒産も過去最多となるなか、現行の支援は一時的措置にすぎず、より大胆で直接的な経営支援が不可欠です。
①賃上げ分は医療機関に裁量権を
「医療・介護等支援パッケージ」では、賃金分が表記されましたが、現行の「ベースアップ評価料」の仕組みと同様に、事業所ごとや職種ごとに支給額が異なる運用となることが懸念されます。こうした不均衡な仕組みは、現場の混乱と分断を招きかねません。
賃上げ分の配分については、現場の実情を最も把握している医療機関の判断を尊重し、柔軟な運用が可能となる裁量権を明確に保障することを要請しましょう。
同一法人内で、事業所や職種によって賃上げ原資に差が生じることは、職員の団結を著しく損ない、チーム医療・ケアの基盤を弱めることにつながります。少なくとも法人内において、職種間で差が生じない仕組みとすること、最低限、法人内においては職種による差が生じない賃上げが可能となる制度設計とすることを求めましょう。
②現在の支援スキームに対する問題点
「重点支援地方交付金」は自治体判断に委ねられており、結果として、支援額、事業対象の範囲、実施時期に大きな地域格差が生じています。これは医療・介護という社会的共通資本において、あってはならない仕組みです。
地域医療は、申請・交付までに時間を要すれば、倒産・廃業が先行するという重大な局面にあります。民医連法人も含めて地域医療機関が「支援が届く前に倒産する」事態が現実に起きかねません。都道府県が先頭に立ち地域の医療・介護を守る速やかな対応とさらなるとりくみをすすめることを、共同組織をはじめとする地域住民とともにすべての県連で要請しましょう。
(7)診療報酬改定へのたたかいと備え
①2026年度改定の受け止めと次なるたたかいへ
2026年度診療報酬改定では、本体改定率3・09%、「30年ぶり3%台」のプラス改定が決定しました。これは、物価・賃金上昇が続くなかで、医療機関の経営危機が社会問題化するもと、医療界の強い要請と世論のひろがりが一定反映された結果です。軍拡と社会保障費削減の流れのなかで、医療界が求めてきた「本体部分での賃上げ・物価対応」が、数値としてしめされた点は、たたかいの成果といえます。
一方で、この改定が経営の赤字を解消する水準には達しておらず、物価高騰の実態、人材流出の深刻さを踏まえると、持続可能性を担保する改定には力不足です。厚労省の経営実態調査では、一般病院の平均利益率はマイナス7・3%、国立大学病院長会議も「歓迎しつつも、経営改善にはぎりぎり」と評価し、医療機器更新や人材確保への十分な投資は困難と指摘しています。医療界の現場からは、「5%は必要」「2年に1回の改定では追いつかない」などの声が続いています。
今回の3・09%の内訳には、過年度分の不足補てんが半分以上含まれています。これは、「これまでの改定が明らかに足りなかった」ことを政府自身が事実上認めたという点で、極めて重要です。また、2025年度補正予算による緊急対応、2027年度での再調整・加減算の明記など、インフレ下での“途中修正”を前提とした仕組みが盛り込まれた点もこれまでにない特徴です。「改定は決まって終わり」ではなく、継続したたたかいが前提であることを意味します。これらは、医療団体・現場の継続的な声、署名・要請行動、世論喚起の積み重ねがあってこそ実現したものであり、「声をあげ続ければ政治は動く」という重要な教訓をしめしています。地域の医療機関の経営実態、病院・診療所の資金実態、患者負担増による受療権侵害など、具体例をしめしながら、さらなるたたかいを組織していきましょう。
②賃上げ財源を確実に職員へ
3・09%のうち、賃上げ対応分は1・70%(26年度1・23%、27年度2・18%)とされ、「医療現場での生産性向上のとりくみ」と合わせ、両年度でそれぞれ3・2%分のベア実現を後押しするとなっています。看護補助者、事務職員は他産業との人材獲得競争にあり、上乗せ措置による5・7%分のベアをめざすとされています。しかし、2025年春闘の賃上げ率は、大手企業で平均5・39%(経団連最終集計)、中小企業で平均4・50%(連合集計)であり、診療報酬改定の内容では他産業との格差を縮めるものになっていません。
また、ベースアップ評価料などを通じて人件費にまわす仕組みでは、届け出・報告の煩雑さ、事業所間の不公平感、職種間の不公平感といった課題が依然残したままとなっています。評価料の簡素化・一本化や幅ひろい職種を対象にした処遇改善などを求めると同時に、賃上げ分の配分については、現場の実情をもっとも把握している医療機関の判断を尊重し、柔軟な運用が可能となる裁量権を明確に保障することを要請しましょう。
③経営と機能の再構築を
「入院医療」では、機能分化・連携・集約化をさらに明確化する方向が打ち出されました。地域に必要な医療機能を守り抜くための病院機能の再編の流れを主体的に把握し「オール地域」の視点で民医連病院の対応をすすめましょう。
「外来医療」では、量から質への転換がより強く求められています。現状の外来診療を漫然と継続しているだけでよいのか、総合的視点での見直しをすすめましょう。かかりつけ医機能を軸に、疾病管理、重症化予防、生活背景を踏まえた継続的支援へと役割を再定義する必要があります。外来機能の整理・重点化をすすめ、入院医療や在宅医療との役割分担を明確にすることで、医師・看護師などの人的資源を最適に活用する視点をもって転換をはかるなどのとりくみをすすめましょう。
また、「在宅医療・訪問診療」は、急変時対応、看取り、介護・福祉との連携を含めた地域包括ケアの要であり、今後の地域医療をささえる中核機能となります。24時間対応体制や多職種連携の構築をすすめ、外来・入院との循環を意識した医療提供体制へと再構築することが課題となっています。
診療報酬改定を単なる「外圧」として受け身で捉えるのではなく、地域医療を守り、持続可能な医療提供体制を再構築するための戦略的ツールとして使いこなす視点も、今強く求められています。
地域における患者や利用者の動向や圏域内の医療・介護事業所の状況は大きく変化しており、看護師や介護従事者をはじめとする医療・介護従事者の確保においてもかつてない困難な状況があります。国の政策動向に対する「たたかいと対応」の視点とともに、環境の変化を踏まえた民医連事業所としての医療・介護構想と経営戦略の再構築が求められています。
経営的な厳しさから、事業の再編、縮小もありますが、地域ニーズがあり前進が可能な分野には機敏かつ積極的に対応する視点も重要です。地域の運動のひろがりを事業的な連携と結び付け、地域の困りごとを事業的にも継続して対応していくことが重要です。民医連の事業と運動は別々のものでなく、総合的にとらえとりくみましょう。
(8)地協・県連経営委員会の役割の発揮を
医療・介護を取り巻く情勢が大きく変化するなか、法人単独の努力だけでは事業の維持・発展の展望を描けない局面がひろがっています。人材不足、働き方改革、診療報酬改定、物価高騰などが重なり、従来の延長線上ではすべての法人が立ち行かなくなりつつあります。今求められているのは、法人の枠を越えた再編と経営戦略を構想し、実行することです。全日本民医連経営部も情勢に対応した機能強化をすすめます。
地協・県連経営委員会の機能強化は、今後の経営危機を乗り越えるための鍵です。事業の統合や譲渡による規模縮小も含む法人内の統廃合や人材の配置、共同購入の強化など、法人を越えた再編・強化は、個々の法人の事情だけで判断できるものではありません。県連・地協の場で経営情報を共有し、相互の経営への影響を踏まえ、共同組織とも連携しながらすすめることが重要です。民医連運動の前進という総合的視点で知恵を結集し合意形成をはかる力量が求められています。
とりわけ、経営幹部は、民医連運動に自覚的に結集し、法人を越えた再編や支援をすすめ、地域に必要な医療・介護を守り抜く決意が求められます。
(9)全日本民医連北海道勤医協対策委員会のとりくみ
対策委員会が設置された2025年1月以降、6回の対策委員会を開催し、対策委員長、副委員長を中心に現地入りを継続しながら、現地幹部集団とともに改善に向けた検討と実践をすすめてきました。この間、理事会や事業所の管理者、職員の奮闘によって、入院収益を増収させるなど、2025年度決算予想では前年から損益で6億1000万円の改善が見込まれています。しかしながら、依然として多額の資金が流出する構造が継続しており、現在も経営危機の状態にあります。2026年度へむけて事業所の廃止も含む事業再編や病院群の構造転換に向けて奮闘中です。経営危機の克服と中長期の医療構想・事業計画と経営計画の確立へむけた支援にとりくみます。
対策委員会のとりくみは、県連経営委員会の機能と議論水準の向上につながっています。法人の枠を越えて相互に率直な指摘を行い、成功例だけでなく失敗や困難からも教訓を学び合うことで、経営課題への認識と対応力が確実に高まっています。こうした過程を通じて、単なる情報共有にとどまらず、連帯と団結の力が実践として発揮されており、県連経営委員会が経営改善を前進させる中核的な役割を果たしており、重要な教訓となっています。
第6節 私たちのあらゆる活動のパートナー、共同組織の前進を
(1)あらためて地域に踏み出した46期のとりくみ
46期はあらためて「民医連のあらゆる活動のパートナー」である共同組織の前進めざし、地域に出てつながりをひろげ、地域要求に応えるとりくみや、職員の共同組織活動への参加と『いつでも元気』購読の重視などを掲げました。千葉では医学生委員会が友の会と相談して開催した企画に医学生や看護学生、高校生が参加。「地域に目を向けられる医師になりたい」という医学生に友の会の会員が期待の声を寄せるなど、共同組織が後継者確保・育成でも大いに力を発揮しました。コロナ禍にフードバンクなどで新しいつながりがひろがった経験もいかし、新しいひとたちと出会ってつながる地域戦略を立てること、共同組織担当者の育成方針の検討、育成の「戦略と計画」づくりも提起しました。
①共同組織委員長会議の開催
共同組織委員長会議(2025年6月)では、地域で孤立がひろがるなかで、「今こそ共同組織を強化・拡大し、地域に出て困っている人とつながろう」と提起しました。また、経営困難突破やまちづくり推進のための戦略的課題として、法人トップを先頭に共同組織の強化・拡大、『元気』の拡大にとりくむことも呼びかけました。
②国際HPHカンファレンスでの共同組織の実践報告
2024年11月、国際HPHカンファレンスが広島国際会議場にて日本で初めて開催されました。共同組織全国連絡会の代表の報告を通じて共同組織の活動紹介が旺盛(おうせい)に行われ、地域住民自らの地域の健康や暮らしを守るヘルスプロモーション活動として、国際的にも大いに注目されました。
③共同組織拡大強化月間
2025年「月間」は、思い切って地域に出ようとよびかけました。「地域住民の医療を受ける権利を保障するために医療機関の維持存続への支援を求める請願署名」も位置付け、「短期間で署名が増えている」(島根)、「どこに行く時も署名を持って行って集めている」(福岡)など、共同組織に大いに励まされました。山梨・富士川町では友の会と県連で請願し、議会で地域医療守れの意見書が全会一致で採択されました。
バス旅行や健康まつり、健康フェスタなどの企画のなかでも、会員拡大を追求しました。また、地域に出にくい医局とのペア支部が医局訪問してすいとんを振る舞うなど(長野)、工夫して職員と共同組織が交流した経験もありました。岐阜では、12月まで月間を延長し社保協のキャラバン行動にも参加しました。
東京では「仲間増やし」と「地域医療を守ること」を2つの柱として提起し、「減らさず増やそう」と月間中8000人の仲間増やしをよびかけました。長野・上伊那では「拡大の日常化・通年化」を掲げて、純増する経験も生まれました。大阪では物価高騰で出資金引き出しが増えるなか、「片手に署名、片手で元気と仲間増やし」とよびかけ、職員の『元気』読者拡大や、班会や職場で『元気』を読むことをすすめています。
④共同組織と『いつでも元気』の現勢
2025年の月間は、会員拡大では新規加入がある一方で退会などもあって純増にならず、月間中8758減、11月末現勢は343万240(速報値・未報告5県連)、『元気』は10月末(12月号)91部増、11月末(1月号)107部減でした。『元気』の職員読者比率は27・3%(2025年12月現在、2024年は28・3%)、50%以上は5県連(福井、滋賀、福岡、熊本、宮崎)でした。
(2)全職員が文字通り「あらゆる活動を共同組織とともに」を実践しよう
コロナ禍や「地域医療守れ」の緊急行動を通して、共同組織が「自分たちの事業所」として病院・診療所を守りささえてくれていることを実感しました。あらためて共同組織と民医連の歴史、「共同のいとなみ」とは何か学び直しましょう。事業所の再編や閉鎖に際しては、地域の共同組織の活動が継続できるよう、ていねいな懇談や方針提起が求められます。
地域全体が高齢化するなかで、地域の医療や介護を守ること、地域の足の確保など、既存の町内会などとも共通する課題での協力が重要です。安全・安心のまちづくりに向けて、地域に必要な存在として協同をひろげましょう。共同組織構成員の高齢化や、担い手不足も課題です。「機関紙配布や共同組織の企画に参加している人に、日常的な活動にも携わってもらえるように働きかける」「住みやすいまちづくりのとりくみのなかで、新たな出会いをめざす」など、現在の会員への積極的な参加の働きかけとともに、新しい人たちとの出会い、現役時代から要求や地域の活動でつながり、退職後に共同組織の会員になってもらうといった工夫も必要です。地域マップづくりなどで地域住民の層や要求を把握し、活用可能な社会資源も明らかにしましょう。そのためにも、職員の共同組織の活動への参加は重要です。すべての役職員が共同組織について学ぶために共同組織の学習パンフレットを改定します。全職員が文字通り「あらゆる活動を共同組織とともに」を実践していく2年間にしましょう。
①毎月地域で1職場1行動を
1職場1アウトリーチと結びつけ、毎月地域行動にとりくめるよう、共同組織とともに事業所や職場でできることを考えましょう。
②健康づくりの課題と、医療・介護、社会保障拡充、平和守るとりくみ
職員が班会で医療・介護、社会保障や平和について講師を担い、ともに学びましょう。共同組織とともに、健康相談会や青空健康相談、街かど健康チェックで地域に健康づくりをひろげましょう。また、医療・介護、社会保障拡充など、一致できる要求で自治体キャラバンもともに参加しましょう。戦争する国家づくりが加速する情勢のもとで、憲法や平和の課題もいっしょにとりくみましょう。
③共同組織の強化・拡大、『いつでも元気』の普及
共同組織のゆたかな活動を地域にひろげ、担い手づくりにつなげましょう。全世代に対応した組織づくりを意識し、ゆるいつながりを大事にして仲間増やしをしましょう。『いつでも元気』の毎月増誌をめざしながら、職員の購読率5割も達成しましょう。入会金や会費問題についても、全日本民医連「共同組織実態調査」の結果などを情報提供します。
④日常的な共同組織との情報共有の重視
法人や事業所の管理会と共同組織の定期懇談や、事業所利用委員会の開催などを通して、共同組織の声が法人・事業所運営に反映されるように工夫しましょう。事業所がつかんでいる地域要求や、支援を必要としているひととつながることなど、共同組織と情報共有しましょう。
⑤第17回共同組織活動交流集会in東京
2024年、6年ぶりの対面集会となった第16回共同組織活動交流集会in岡山は1700人が参加し、コロナ後で悩み苦労しながらも、いきいき楽しくとりくんでいる姿が伝わり、同じ思いで実践していることへの共感と学び合いがひろがりました。
第17回共同組織活動交流集会は、2026年9月27~28日に「人にも地球にもやさしい、平和な社会を共同の力で実現しよう~医療・介護を守り、安心して住み続けられるまちづくりのために~」をテーマに、東京ビックサイトで2000人の参加をめざして開催します。
第7節 民医連(全国組織)の強みを生かし、より良い運営に向けて
(1)「県連の備えるべき7つの役割」と県連機能の強化、地協の役割
全日本民医連は46回総会方針で、すべての県連が標準的に確立する機能として第35期第2回評議員会で提起していた県連機能ミニマム(案)を「県連の備えるべき7つの役割」として各県連の機能強化の方針とすることを確認しました。それらの機能とは、①全国方針の討議・具体化、理事会機能と機構の整備、②県連長期計画の策定、経営の掌握と指導・援助、共同事業の推進、③県を代表する運動組織、④共同組織の拡大交流、『いつでも元気』の普及、⑤職員育成、教育事業の推進、⑥医師問題での前進、医師養成の地協的共同、⑦民医連組織を守る、であり、すべての県連が自らの県連機能と照らし合わせ課題を明確にし、あらためて強化に向けてとりくむことを呼びかけます。県連機能強化の観点から、県連の役員や事務局員の位置づけ、配置を法人としてしっかり一致させることも重要です。綱領と方針に結集する県連の機能と仕組みの整備をすすめましょう。地協運営委員会や地協事務局長会議では、「県連の備えるべき7つの役割」について、それぞれの県連の機能の点検、活動を交流し、レベルアップをはかりましょう。平和、人権をめぐる情勢はまさに激動であり、それらはすべて県を代表する運動組織である県連にとって重要なテーマとなります。経営、人材確保など事業活動を取り巻く環境も厳しさを増しており、事業所・法人だけでは突破できない県連的課題です。対応する課題の大きさによっては地協的課題と位置づけ対応することも重要です。さらに、全国的なスケールメリットを生かしたとりくみについてのいっそうの検討も行います。
民医連綱領改定から44回総会までの歴史をまとめた『無差別・平等の医療と介護・福祉』(仮称)の編さんが終了しました。47期の早い時期に刊行します。
(2)ジェンダー平等、多様性を尊重した組織へ
ジェンダー平等、多様性の尊重は世界の人権保障の流れであり、組織の持続可能性からも民医連こそめざすべきです。「国際基準の人権」を原則とし、「ケアの倫理」やSDHの視点からも現場や地域で直面する人権侵害を社会に訴えながら、自らの組織が人権尊重責任を果たしているか問い続けましょう。それは旧優生保護法問題における「なぜ気づかなかったのか」という反省をふまえた実践でもあります。46期は、専門部会の時間内開催や評議員会の土曜日開催などより参加しやすい会務運営を心がけました。また、ジェンダー平等・多様性のある全日本民医連の役員構成をめざし、各地協、県連と協力してとりくみました。引き続き、とりくみを具体化しましょう。
(人権と倫理センターからの発信の強化)
人権と倫理センターからの学習企画やニュース発信などにより、46期のケアの倫理の学びが全国にひろがりました。来期も、「ケアの倫理」「国際基準の人権」の学びの継続を呼びかけます。国連が日本に対し繰り返し勧告している人権保障に不可欠な3つの基盤整備(注52)など、幅ひろい団体と連携し、日本政府が国際人権の立場に立つよう発信を強めます。国連では高齢者人権条約の制定作業が開始されています(注53)。日本高齢者大会でも提起された「高齢者人権宣言」(注54)に学び、早期制定を求めましょう。人権や倫理に関する組織内外の課題へ対応するため体制も強化します。
(あらためて「見解」の学習と当事者と共同したとりくみを)
あらためて「旧優生保護法下における強制不妊手術問題に対する見解」の学習にとりくみましょう。合わせて最高裁判決や基本合意の意義と内容、障害者権利条約と総括所見(2022年9月)について学び、障害観(社会モデル・人権モデル)や障害者の人権、当事者の視点について理解を深めましょう。当面の焦点は被害者への補償です。新たな補償法の申請が少数にとどまっているなか、福岡、熊本県連では障害者団体、サポート弁護士と協力し、学習会や申請に必要な診断書作成への支援がすすめられています。きょうされんなど地域の障害者団体、支援者組織との連携を強め、学習や補償法の申請支援、都道府県に補償法の周知を求めるなど共同したとりくみを追求しましょう。優生思想に基づく差別をなくし、個人の尊厳と多様性が尊重される社会の実現をめざし、当事者とともに行動していきましょう。
(ジェンダー委員会の設置)
今期、人権と倫理センターの下にジェンダー委員会を設置、その後四役直轄となりました。多職種から構成され、女性差別撤廃委員会総括所見をふまえた答申を提出するとともに、全日本民医連の四役・理事会におけるパリテの実現を提案しました。家庭内でケア責任(育児・介護など)を担いやすい職場づくり、柔軟な会議設定、活動のあり方などさらに職場改革が必要です。47期もひきつづき、総括所見の全面実施を国に求め、組織内にも「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(注55)にもとづく包括的性教育、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見や思い込み)を取り除くための学びなどをよびかけ、学習資材も準備します。
(SOGIEのとりくみをひろげよう)
SOGIEコミュニティは、「誰もが安心できる医療・福祉」を発信し、「SOGIE Comm.Times」の定期発行、HP開設、職員限定オープンチャット(LINE)を整備し、今期「SOGIEとりくみ交流集会」を初開催しました。2年続けてブースを出展したTokyoPrideでは、来場者の声を付箋で集めた掲示板が反響を呼びました。民医連職員への意識調査(回答6395件)は学術的価値から国際誌掲載が決定し、現状と課題を科学的に把握する基盤となりました。トランスジェンダーへの適切な医療にかかわる医療従事者のすそ野をひろげることを目的に「トランスジェンダーの健康と医療に関する研究会」が設置されました。関東や北関東では地協単位で交流イベントを開催しました。さらに各地協で交流をひろげましょう。各県連や事業所でも、SOGIEに関する委員会などが設置され、プライドパレードへの参加、問診票やトイレ改善、制服や福利厚生の見直しなどがされています。各県連で委員会を確立するなど位置づけを明確にしましょう。LGBTQの人びとの人権を守るアドボケート(擁護、代弁)活動を展開しましょう。
(3)災害対策強化のとりくみ
(能登半島地震から2年・豪雨災害から1年3カ月)
能登半島地震発生から2年経過しました。公費解体はようやく完了の見通しですが、インフラ本復旧は2026年度に食い込む想定です。山間部や沿岸部など復旧されないまま捨て置かれたような地域も少なからず存在します。著しい人口流出は医療・介護の全面再開にも影を落とし、狭小仮設住宅での生活は被災者の健康状態にも大きな影響をおよぼしています。仮設住宅の入居期限は3年に延長されましたが、災害公営住宅の着工はごくわずかです。入居できるころには高齢でとても独居は無理、自宅跡地は危険区域とされて再建不可、わずかな損壊程度の差で補助をまったく受けられないなど、先の見えない不安と機械的な線引き施策により被災者間で分断される構図となっています。災害関連死の認定は2024年12月26日時点で475人、犠牲者総数は703人となりました。
発災から5カ月間で全国からのべ321人が医療・心理・事務支援および訪問活動に参加しました。同年9月に発生した豪雨災害にものべ351人が支援に参加し、のべ239人が秋の訪問行動に参加しました。継続した活動のなかで、支援者であり被災者でもある被災県連職員へのケア、支援受け入れ負担を軽減する現地コーディネーターの重要性なども明らかになりました。2024年11月には石川で被災地県連懇談会を開催し、被災者の声を聴き、ニーズに応答し、地域ぐるみの制度改善運動や長期支援の必要性とともに災害の経験を教訓化し継承することの重要性を阪神・淡路大震災から30年を踏まえて確認しました。
石川民医連は、2025年6月末で打ち切りとなった医療費窓口負担・介護サービス利用料免除の再開を求めて諸団体とともに署名や実態アンケートにとりくんでいます。昨年末までに署名は2万5000筆を超え、受診の我慢や中断、通院のために生活費を切り詰めるなどの実態や切に免除再開を求める声も多数寄せられました。能登3市3町議会では免除再開への支援を国に求める意見書も採択されました。住み続ける権利を保障し、いのちと暮らしをささえるのは自治体と国の責任です。石川民医連は、石川県および国に対して免除再開を求める署名の提出と要請行動を予定しています。権利侵害の実態や運動課題を教訓に、長期的な構えで、各地で起きうる災害への備えとすることが求められます。
(46期のMMAT委員会のとりくみ)
46期MMAT委員会は、能登半島地震(2024年1月1日)、日向灘地震(2024年8月8日)、能登半島豪雨(2024年9月21日)、大船渡森林火災(2025年2月)、カムチャッカ地震(2025年7月)、熊本の大雨(2025年8月)や、台風や線状降水帯による被害など、全国で相次ぐ災害への対応と支援にとりくんできました。
2024年8月の日向灘地震では、初の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表され、臨時のMMAT委員会をへて備蓄・非常電源・連絡体制・EMIS環境などの点検を全国に呼びかけました。2025年8月、記録的大雨により県内で大きな災害が発生した熊本民医連は、早急に災害対策本部を設置し、社協からの依頼を受けボランティアセンターでの救護活動や住民支援を展開し、のべ121人が活動に参加しました。2025年10月には南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模な広域災害をテーマとした学習・交流集会を開催し、32県連72人が参加しました。揺れや津波からいのちを守るための行動、耐震化による直接死の防止、避難所環境改善による関連死の防止の重要性が報告され、ハザードマップを用いた地協ごとのワークショップでは災害想定や支援・受援のあり方、広域災害を想定した対策や経験交流をすすめていくことの重要性が確認されました。
2025年12月8日、青森県東方沖で発生したマグニチュード7・5、最大震度6強の地震で、日本海溝・千島海溝沿いで大地震が発生する可能性が相対的に高まったとして、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が初めて発表されました。震源に近い八戸の事業所では、発災時の職員・利用者・共同組織の安否確認など、BCPに沿った対応が実施され、防災のとりくみとして地域のハザードマップ掲示などもすすめられました。MMAT委員会は、地域のハザードマップや避難所の確認をうながす通達を発出しました。防災対応を呼びかけるとともに、現実的なBCPとBCM構築、県連レベルの情報統制、自治体避難計画の確認も急務となっています。
(47期にむけて)
この間、各地で様ざまな災害が発生し、被災された人びとの生活再建に向けた権利保障が重要な課題となっています。被災者の人権を回復するためには、長期的な視点に立った災害支援が求められます。生活再建に関する制度、医療費窓口負担に伴う受診控えやアクセスの問題、社会保障制度と災害救助法、生活再建支援制度などに内在する構造的課題については、災対連などと協力しながらとりくみを継続していきます。自治体では、大規模災害の発生を見据え、被災地の復旧方法をあらかじめ定める「事前復興計画」の策定がすすめられています。しかし、2025年7月末時点(国土交通省報告)では計画を策定した自治体は2%(33地方公共団体)、着手率は67%となっています。事前復興計画は、復興まちづくりの基本方針や実施方針を定める重要な計画であり、各自治体のとりくみ状況や計画内容を確認し、必要な要請を行うことが求められます。
南海トラフ地震や首都直下型地震など、今後発生が想定される大規模災害への備えとして、全日本民医連本部機能、地協、県連における災害対応力の強化が必要です。また、この間の災害対応を踏まえ、民医連にとっての災害救援活動は、『困ったところに民医連あり』の民医連綱領の実践としての確信とともに、全日本民医連の災害救援活動指針やMMAT活動基本方針の改訂をすすめ、各県連・事業所で得られた経験や教訓をつなぎ、被災地県連の懇談と交流を継続していきます。
(4)病院長会議
46期の病院長会議は、4カ月に1回、全5回、病院長に加えて事務長、総看護師長(病院看護部長)も加えた病院三役を対象に開催し、全日本民医連理事会方針の共有と全国の経験の交流をはかり、国会議員要請行動を行い、現場の実態を伝えました。病院委員会は、すすんだとりくみを学ぶことを目的に、富山協立病院、京都民医連中央病院、佐久総合病院(JA長野厚生連)を訪問しました。47期も全国の病院幹部を対象にした企画を検討します。
(5)共済活動
全日本民医連共済では、新たに『民医連の共済』パンフ2026年版を発刊します。民医連共済では、法人と職員の会費で、災害で被災した職員の見舞金などの給付と職員の健康増進や交流活動、慰労金給付の事業を行っています。法人の幹部集団の世代交代がすすむなかで、設立当事者である民医連と民医連共済の関係、民医連運動における共済活動の意義と役割を、あらためて確認しながら継承していくことが求められています。共済パンフの学習を通して、共済の理念・目的・歴史をあらためて共有し、2026年度に提案予定の慰労金制度改定案への理解を深めましょう。そのために共済事業で連帯と団結をひろげていきましょう。
(6)国際活動
46期は交流のある海外の医療機関、団体、個人との交流、また国際的な人道危機に対する支援の呼びかけを中心とした活動を行いました。韓国からは定期総会、民医連全国青年ジャンボリーの参加の他、学生、職員の研修受け入れ7回、WEBでの交流、学術・運動交流集会テーマ別セッションでの発言、原水爆禁止世界大会民医連参加者交流集会での現地交流など活発な交流が行われ、韓国社会的医療機関連合会の総会、学術大会への参加などで役員が訪韓しました。キューバ視察は2019年以降中断していましたが、2025年6月役員4人が訪問、交流しました。また、元ベトナム政治囚健康診断実施の依頼があり対応しました。ECSOC(国連経済社会理事会)へ2024年1月に4年ごとの報告書を提出しました。
高齢化がすすむ韓国での歯科訪問診療制度の検討状況を参考に、民医連歯科と健康社会のための歯科医師会で訪問歯科のシンポジウムをオンラインで行いました。今後も訪問歯科制度の改善に向けて交流を行っていきます。
(7)広報活動
広報部は公式X、Facebook、インスタグラムを活用した情報発信、ホームページのリニューアルを実施しました。課題別に動画を作成してSNSで活用しました。10についてはCEOであるイーロン・マスク氏の姿勢や資質を踏まえ参加の是非を検討しましたが、そういった媒体のなかで民医連の立場での発信をすることの意義を確認し継続しました。フォロワー数は、X6102、Facebook1921、TiKTok999、インスタグラム596です。メールマガジンの配信も新たに開始し、現在毎月メディアを含め139件へ送信しています。47期は公式SNSの質量ともに発信力の充実、ホームページの運用の課題、メールマガジンの活用などにとりくみます。そのためにも、各地の活動と全国での民医連の活動を結びつけること、発信・拡散する人を大幅に増やすとりくみをすすめます。
おわりに
今、戦後国連を中心に提起され国際社会が獲得してきた規範や日本国憲法の理念が危機にさらされている社会状況のなか、医療や介護が、これまで経験したことのない切り捨てにさらされ、社会保障を権利として認めない動きが強まっています。
「困っている人がいたら、見て見ぬふりはできねえべ」。
この言葉は、1966年1月に設立された岩手県内初の働く者の医療機関、盛岡民主診療所の初代所長・吉田久さんの口ぐせでした。岩手の医療・介護運動、そして民医連運動は、どんなに困難な情勢のなかでも、この言葉を座右の銘として歩んできました。『盛岡医療生協40年史』にも、その姿勢が記されています。
農民や地域住民とともにたたかい、1955年には岩手県内の全市町村が全国に先駆けて国民健康保険を実施しました。さらに1960年には沢内村で、65歳以上の国保10割給付(外来)を実現し、翌年には60歳以上と乳児へと対象をひろげ、1962年には乳児死亡ゼロを実現してきました。これらの歩みは、私たちが追い求めてきた「いのちの平等」と重なり合うものです。
2026年は憲法公布80年の節目の年です。第46期、全国のなかま、そして共同組織のなかまと手を取り合い、いのちと暮らしを守る私たちは、戦争という愚かな行為を拒み続けてきた誇りある社会を守り抜いてきました。無差別・平等の医療と福祉をめざし続けてきたその喜びを、必ず未来のなかまたちへと紡いで、次期48回総会の開催地、大阪に集いましょう。
以 上
運動方針案解説
注1 排外主義…外国人や異なる文化・価値観を持つ人びとに対する一方的な不安から、非合理的・感情的な嫌悪や敵意に基づき、その人々の存在・尊厳・人権を認めず、排除・排斥しようとする考え方。
注2 DEI…Diversity:ダイバーシティ(多様性)、Equity:エクイティ(公平性)、Inclusion:インクルージョン(包摂性)のこと。多様性を認め、誰もが公平な扱いを受け、受け入れられる社会や組織をめざすこと。近年、国際的にこのDEIのとりくみがひろがっており、日本企業でもとりくむ例が増えている。
注3 MAGA(Make America Great Again)…「アメリカを再び偉大な国に」という意味の選挙・政治スローガン。トランプ政権のシンボルで「アメリカ第一主義」「自国優先主義」の政策の背景にある。
注4 モンロー主義…1823年アメリカのジェームズ・モンロー大統領が提唱した外交原則。「アメリカは欧州の争いには関与せず、欧州も南北アメリカ大陸に干渉しない」という、西半球におけるアメリカの優位性を求める概念。「アメリカの孤立主義」とも呼ばれた。
注5 50年勧告…1950年10月に社会保障制度審議会が内閣総理大臣に提出した「社会保障制度に関する勧告」。憲法25条(生存権の保障)の理念に基づき、社会保障制度の全体像と体系をしめしたもので、この勧告に基づき、その後の生活保護法(1950年制定)をはじめとする様ざまな社会保障関連法が整備された。国民の生存権に対する政府の責任を明確にしめしたことが特徴。
注6 ケア労働(再生産労働)…再生産とは人が生まれてから死ぬまでの生命の再生産にかかわる家事、育児、介護、看護などすべての人間的諸活動を意味し、それにかかわる労働は再生産労働とも、ひろくケア労働とも呼ばれる。
注7 WHOの提言…WHO(世界保健機関)は、新型コロナのパンデミックの教訓を踏まえ「強靭で将来に適した保健システム」を構築し、「健康関連の持続可能な開発目標」を達成するよう呼びかけ、医師・看護師などの保健人財の確保は目標達成に欠かせず、「適切な技術をもった人材が適切な場所に、適切な数、働いている」ことが必要な条件とされる(第14次総合事業計画2025~2028年)。
注8 2020年代の4課題…●平和、地球環境、人権を守る運動を現場から地域へ、そして世界に、●健康格差の克服に挑む医療・介護の創造と社会保障制度の改善、●生活と人生に寄り添う切れ目のない医療・介護の体系と方略づくり、●高い倫理観と変革の視点を養う職員育成の前進。
注9 緊急事態条項…戦争、内乱、大規模な自然災害など、平時の統治体制では対処できない非常事態において、国が基本的人権を一時的に制約し、特別な措置を講じることを可能にする憲法上の規定。戦前の日本では大日本帝国憲法に同条項が定められ、戦時体制づくりのために権力が濫用され、国民の基本的人権の制約や人権弾圧が行われた。戦後、その反省に立ち日本国憲法には、民主政治を徹底し、国民の権利を十分に守るために緊急事態条項を設けていない。
注10 スパイ防止法制…「国家機密」の漏洩(ろうえい)を防ぎ、違反した人に刑事罰を科す。自民、維新、参政党、国民民主などが早期成立をめざしている。「スパイ防止」のために、国民を監視する機能の強化も検討されている。言論を弾圧し、戦争国家体制づくりをねらったものとして批判されている。1985年に自民党政権が提出したスパイ防止法案は、最高刑が死刑だった。
注11 非核三原則…日本政府は核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずという3つの原則のこと。沖縄返還前の1971年11月「非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する衆議院決議」により、政府はこの非核三原則を遵守するとともに、沖縄返還時に適切なる手段をもって、核が沖縄に存在しないこと、ならびに返還後も核を持ち込ませないことを明らかにする措置をとるべきである、として国是としている。なお、核兵器の製造や保有は、原子力基本法の規定でも禁止され、さらに核兵器不拡散条約(NPT)により、非核兵器国として、核兵器の製造や取得をしないなどの義務を負っている。
注12 存立危機事態…2015年に成立した安保法制において新設された「存立危機事態への対処」の3要件の一つで、「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」、そしてこの事態を排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないことが確認された場合には集団的自衛権を発動し、自衛隊による武力行使が可能になるとされている。
注13 核の傘…核兵器がもつ破壊力により、核兵器をもっている他国を脅し、核攻撃を思いとどまらせ、自国防衛に利用するのが核抑止の考え方。このとき防衛する範囲を自国だけでなく、自国と軍事同盟を結んでいる国にまで拡大することを拡大抑止と言い、「核の傘」はその通称。
注14 武器輸出三原則…次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策。①共産圏諸国むけの場合、②国連決議により武器等の輸出が禁止されている国むけの場合、③国際紛争の当事国またはそのおそれのある国向けの場合。(佐藤栄作総理〈当時〉が衆院決算委(1967・4・21)で答弁)
注15 第二次安倍政権の「防衛装備移転三原則」…2014年4月1日、「国家安全保障戦略」にもとづき、防衛装備の海外移転に関して、武器輸出三原則等に代わる新たな原則として、策定したもの。
注16 国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)…女性差別撤廃条約(Convention on the Elimination of Discrimination against Women)は、男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女性へのあらゆる差別を撤廃することを基本理念としている。女性差別撤廃委員会は毎年会合を開き、締約国が提出する報告(同条約の履行のための立法上、司法上、行政上の措置等に関するもの)を検討し、勧告を行っている。
注17 第6次男女共同参画基本計画案…国は男女共同参画社会基本法にもとづき、5年ごとに基本計画を改定している。第6次男女共同参画基本計画案(2026年度~2030年度予定)は、2025年12月に答申案が出され閣議決定される予定だったが、専門調査会で議論されたことがなく、原案にはなかった「旧姓(通称)使用の法制化」が盛り込まれたため、批判が噴出し、今後の予定は未定(2026年1月現在)。自民党と日本維新の会との連立合意書には通称使用の法制化法案を通常国会に提出することが盛り込まれていた。
注18 Tokyo Pride…NPO法人東京レインボープライドが企画・運営するLGBTQ+関連イベント。プライドパレードやフェスティバルを中心に、関連企画やプログラムが実施され、アジア最大級とされる。さまざまな団体、行政、企業などとともに考え、偏見や差別の解消につながるきっかけをつくり、多様な声と課題を発信している。Tokyo Pride2026は6月に開催予定。(同法人HP参照)
注19 基本合意…2024年7月の最高裁判決を踏まえ、同年9月、旧優生保護法下の強制不妊手術や人工妊娠中絶の被害回復、旧優生保護法問題の全面的な解決をめざし、原告・弁護団との間で結ばれた。このなかで、①国は人権侵害に対する責任を認め、深く謝罪するとともに、障害者への偏見・差別と優生思想を根絶し、個人の尊厳が尊重される社会へ全府省庁をあげて全力をつくす、②すべての被害者の補償に向けて、相談窓口、広報、補償を届けるなどの施策を実施する、③謝罪広告など名誉回復措置、真相究明のための第三者機関の設置、障害者差別根絶のための法整備、教育・啓発を行う、④原告団、弁護団、訴訟をささえてきた支援組織と国との定期協議を実施する-などが確認され、新しい補償法の制定など、その後の施策の土台となっている。
注20 不法滞在ゼロプラン…「ルールを守らない外国人により国民の安全・安心が脅かされている」として、出入国在留管理庁が、難民認定申請の抑制や審査の「迅速化」、強制送還を加速する「対応策」として2025年5月に策定した施策。策定後、強制送還があいついだ。日本弁護士連合会は声明で、ゼロプランについて「保護されるべき外国人の人権を侵害するおそれが高く、国際人権法に反する」と強調している。
注21 第7次エネルギー基本計画…国のエネルギー政策基本法に基づき、3年ごとに見直すエネルギー政策。昨年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、東京電力福島第一原発事故以降掲げられてきた「原発への依存度を低減させる」という文言が削除され、「原子力を最大限活用する」方針が明記された。
注22 国策会社「ラピダス」…日本の半導体産業の再興をめざして2022年8月に設立された企業。次世代の最先端半導体の国産化を目標とする「国策プロジェクト」として、日本政府から多額の支援を受けている。
注23 ドイツ「左翼党」…新自由主義政策をすすめるドイツ社会民主党幹部に異議を唱えた党内左派勢力が離党して結成した政治勢力(WASG:労働と社会的公正のための選挙オルタナティブ)に、旧東ドイツのドイツ社会主義統一党の後継政党(民主社会主義党)が合流する形で2007年に結成。
注24 BRICS…ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで創設した国際会議。アラブ首長国連邦、イラン、インドネシア、エジプト、エチオピア、サウジアラビアが加盟し、計11カ国に。
注25 世界人権宣言…第2次世界大戦後、国際社会は悲惨な戦争を繰り返さないように誓い、国連憲章に沿って、1948年に世界人権宣言を採択した。第1条は「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神を持って行動しなければならない」とのべている。
注26 国際人権規約をはじめとした人権諸条約…世界人権宣言を法的な拘束力を持たせたものが国際人権規約(社会権規約と自由権規約)。「人権諸条約」とは、国際人権規約に加え、人種差別撤廃、女性差別撤廃、拷問等禁止、子どもの権利、障害者の権利など国際条約の総称。国際人権規約は、人権諸条約の「柱」となる条約群。
注27 ビジネスと人権に関する指導原則…2011年、国連人権理事会で承認された企業活動などにおける人権尊重に関する原則。「人権を保護する国家の義務」「人権を尊重する企業の責任」「救済手段へのアクセス」の3つの柱で構成。「ビジネスと人権に関する作業部会」は2023年8月、日本政府、自治体関係者、企業、市民社会組織、業界団体、労働者など広く面談し課題を公表。マスコミは「ジャニーズ性加害問題」を大きく扱ったが、「女性、障害者、先住民族、技能実習生、LGBTQの人びとなど、リスクにさらされているグループへの不平等と差別の構造を多岐にわたり指摘した。日本は「ビジネスと人権に関する行動計画」(2026-2030)を改訂予定。
注28 社会的包摂…年齢、性別、性的指向、性自認、
障害の有無、人種、国籍などにかかわらず、誰もが社会の一員として排除されず、互いにささえ合える社会をめざす考え方。貧困や孤立、差別などにより社会から疎外される社会的排除の反対の概念であり、すべての人の尊厳が尊重される環境を社会全体でつくることを目的とする。
注29 簡便なアセスメント…OHAT(Oral Health Assessment Tool)は、高齢者の口腔健康状態を簡便かつ客観的に評価できる国際的なスクリーニングツール。口唇・舌・歯肉・唾液・義歯など8項目を3段階で採点し、口腔の問題を早期に発見できる。2005年オーストラリアで開発され、その目的は、誤嚥性肺炎などのリスクを早期に把握し、適切な口腔ケアや歯科介入を促すことにあるとされている。
注30 認知症基本法…2024年1月1日施行。認知症になったら何もできなくなるというとらえ方から離れ、認知症になっても希望をもって自分らしくくらし続けることができるという「新しい認知症観」をしめしたことが特徴。「7つの基本理念」(認知症の人の権利、認知症に関する正しい知識と理解、障壁の除去、参画と個性・能力の発揮、継続的な保健医療、福祉サービスの提供、家族への支援、社会参加と研究成果の享受、総合的なとりくみの推進)を掲げ、その実現に向けた具体的施策推進のための計画策定や、国、地方自治体をはじめとする関係者の責務が規定されている。認知症の人に限らず、国民一人ひとりがその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつささえ合う「共生社会の実現をめざす」としている。
注31 民医連の介護・福祉の理念…2012年12月の理事会で確認。以降日常のケア実践や職員養成、介護ウエーブなど、介護・福祉分野の活動の礎となってきた。綱領の実現と憲法が輝く社会をつくるために、地域に生きる利用者に寄り添い、その生活の再生と創造、継続をめざすことを掲げ、「利用者のおかれている実態と生活要求から出発する」「利用者と介護者、専門職、地域との共同のいとなみの視点をつらぬく」「利用者の生活と権利を守るために実践し、ともにたたかう」の「3つの視点」を土台に、「無差別・平等の追求」「個別性の追求」「総合性の追求」「専門性と科学性の追求」「まちづくりの追求」の「5つの目標」をしめしている。
注32 高齢者優遇論…税制や年金制度、医療費の自己負担割合など、社会保障制度において高齢者が優遇されているために、現役世代が負担を強いられている、とする主張。全世代の社会保障への公的負担(特に医療費)を抑制して、大企業の税制優遇や軍事費拡大をすすめたい政府や財界の思惑により流布され、世代間の分断や対立を生んでいる。しかし、低年金や医療費負担増などによって、高齢者の生活実態は決して優遇されているとはいえない。税金の使い方を改め、社会保障への公的負担をふやし、すべての世代が安心してくらせる社会保障制度を実現することが求められている。
注33 人権・倫理の「タイムアウト」…第46期人権としての社保運動交流集会で提起した、社保運動・政策部の造語。本来、「タイムアウト」は、患者の安全確保のために、手術前の短時間、手術チームの全メンバーがいっせいに手を止めて、患者や手術の部位などを最終確認することを意味する。医療・介護の現場での気づきを共有することは、社保運動の大切な第一歩であり、日常業務のなかで「おや?」「なぜ?」と気づいたことを、職場で共有し対話して、人権・倫理に意識を向ける時間をつくろうという提起。その気づきからソーシャルアクションにつないでいく。第46期医療介護倫理交流集会や、第46期介護・福祉責任者会議、第46期職員育成活動全国交流集会でも提起している。
注34 日本原水爆被爆者団体協議会…1956年結成。広島・長崎で原爆の被害を受けた被害者の生存者(被爆者)によって都道府県ごとに結成されている被爆者団体が加盟している全国組織。
注35 NPT再検討会議…NPTは1970年発効の核兵器の不拡散に関する条約
(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons:NPT。核不拡散と核軍縮、原子力の平和的利用の3本柱。日本を含む約190カ国が加盟。再検討会議は5年に1回開催し条約の義務や過去の合意の実施状況、将来の行動計画などについて議論し最終文書の採択をめざす。
注36 一般社団法人「みどりのドクターズ」…気候変動と健康の関係に注目し、地球環境に配慮した医療を提唱する医療従事者を中心とした団体。温暖化対策や脱炭素の重要性を発信するなどの活動をしている。
注37 7つの具体的指針…「職員育成指針2021年版」第2章「民医連における職員育成の具体的指針」では、「担当する委員会・部署の役割がきわめて重要であると同時に、職員育成の責任はトップ幹部集団にあり、組織の根本にかかわる課題として位置づけたとりくみが大事」として、次の7つの具体的指針を提起している。①各職場を職員育成の拠点に~職場教育と職場づくり、②多職種協働による育成と各職種のとりくみ、③全職員を対象にした制度教育、④地域とのかかわりのなかでの職員育成、⑤青年職員の育成、⑥トップ幹部の育成、⑦職員育成活動の推進体制。
注38 共同のいとなみ…医療・福祉における権利の主体は患者・住民にあり、その権利(健康権)を全面的に行使することを医療・介護・福祉従事者が専門的に援助し、患者、家族がいっしょに疾病とたたかうことと、そうした医療を保障するためにともに運動をすすめるという、2つの意味がある。
注39 育ちあいの職場づくりに必要な8つの視点…①患者・利用者、人権を守ることが中心にすわっている。②使命や目標が明確になっている。③決めたことをやりぬくことが重視され評価される。④地域・職場の状況が共有される。⑤変革の志がある。⑥信頼と規律がある。⑦個人と集団の責任が明確になっている。⑧学習が重視されている。
注40 健康職場の5つの視点…①適度な質的量的負担となっている。②安全・安心が保たれている。③技術的に保障されている。④使命が明確で評価されている。⑤少数意見が保障されコミュニケーションが向上している。
注41 健康職場づくりの7つの課題…衛生管理者の専任化と管理部の連携、相談室や「職場復帰チーム」の設置など。(詳細は、「健康で働きつづけられる職場づくり」24年改訂版)
注42 民医連の看護の3つの視点・4つの優点…3つの視点「患者の立場に立つ」「患者の要求から出発する」「患者とともにたたかう」。4つの優点「総合性・継続性」「無差別性」「民主性」「人権を守る運動」。
注43 看護師特定行為…看護師特定行為とは、診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる38行為。2025年までに10万人台の特定看護師養成を目標としていたが、2025年3月現在、1万1840人(厚生労働省)。育成促進のため、2020年に認定看護師教育に特定行為研修が組み込まれた。
注44 民医連事務集団の3つの役割…第1に、正確な実務と統計・情報管理を担い、それを通して全職員参加の医療・介護事業と経営の前進に貢献すること。第2に、無差別・平等の医療と介護の深化・発展のために、民主的な多職種協働と人づくりをささえること。第3に、日本国憲法の立場から平和と社会保障拡充の運動を積極的にすすめ、共同組織とともに安心して住み続けられるまちづくりの活動の推進者となること。
注45 医学対活動の困難の要因…第46期第2回評議員会にて、医学対活動が困難に直面しているとの現状認識を行い、困難の要因を6点(①コロナ禍での活動制限から、担当者配置が縮小、②マッチング定数削減により特に都市部では定員が埋まりやすい傾向があり、奨学生確保に消極的な声がある、③卒後の進路に制限のある地域枠入学者の増加により、奨学生対象者の減少、④事務職員の育成・採用の課題、配置後の組織的フォローの不足、⑤医師体制の厳しさ・多忙さ、医師の医学対活動への参加困難、⑥経営難、医療構造の転換期において、幹部が目の前の課題に終われ、長期的な視点・オール民医連の視点に立てない)あげた。
注46 大切文書…第43期運動方針で医師政策策定の提起として作成された「未来に向かって民医連の医師と医師集団は何を大切にするのか」の略称。「大切文書」は、1998年の「民医連の医師・医師集団は何をめざすのか」からの約20年の医療をめぐる変化と民医連運動、私たちの現在地を確認し、これから何をするのか、そのためにどのような医師集団をつくるのかを提起した。
注47 1・2・3大作戦…2023年度医学生委員長会議の問題提起で、今後の奨学生獲得に向けた運動として提起された。各県連の奨学生空白学年が多いことから、まずは1学年ゼロ人を克服し、その学年に「1人」の奨学生を誕生させること。基幹型臨床研修病院を有する県連は1学年に最低「2人」、そして学生は集団で成長することから「3人」の奨学生集団とすることを提起。
注48 広域型連携プログラム…2026年4月から実施される医師臨床研修のプログラムで、政府の医師偏在対策の一つ。「医師多数県」とされる基幹型臨床研修病院に採用された研修医が、「医師少数県」とされる県などにある臨床研修病院で24週以上研修するプログラム。対象人数は「医師多数県」の募集定員上限の5%以上。
注49 コケコ宣言…新潟民医連医師集団のとりくみ。医師が増えない危機感を管理部で共有し、医師不足の原因分析と魅力を高めるために必要なものは何かという議論から出発。全医師面談から導き出された特徴をもとに、よりよい医療を実現するために新潟民医連の医師が大切にする3つ(①心のこもった診療を行います、②健全な組織風土を醸成します、③後継者育成に力を入れます)の頭文字をとってコケコ宣言とした。
注50 必要利益…法人・事業所を継続的・発展的にすすめていくために必要とする利益水準のこと。「必要利益」は、法人が中長期的に必要とする資金需要等を考慮して策定した中長期経営計画(利益計画と資金計画)にもとづき算定される。算出方法は、経営維持に必要な資金残高(手持ち現預金)を確保するために、まず資金支出である資金の使途を認識し、資金繰りの観点から確保すべき利益を逆算的に算定する。したがって、中長期経営計画の策定なしに真の「必要利益」を算定することはできない。
注51 予算管理テキスト…「事務職員の手引き」の続編として2022年2月に発行した、全職員に予算管理の意義やしくみを理解してもらうためのテキスト。民医連統一会計基準がすべての法人・事業所が従うべき基準とされて以降、実践のなかで積み上げられた、民医連の予算管理の到達点でもある。この間、経営のための「基礎的課題」のひとつとして、法人・事業所での予算管理の見直しを含む活用を呼びかけている。
注52 3つの基盤整備の実現…①国内人権機関設立、②国際人権諸条約の選択議定書批准、③包括的差別禁止法制定のこと。国内人権機関は政府から独立した人権機関で、人権条約実施の推進、立法や行政への提言、調査・救済などの役割がある。日本は国連から幾度も勧告されながら実現を怠ってきた。選択議定書は各人権条約を実効性のあるものにするため個人が人権侵害を委員会に直接訴える「個人通報制度」などを追加する付属条約。包括的差別禁止法は人種、性別、障害、性的指向などによる差別を職場・学校・地域・家庭など社会のあらゆる場面で禁止し、救済措置も設ける法律。複雑に絡み合う差別の実態に対応する包括的な枠組み。
注53 高齢者権利条約の制定作業…国連において、女性、子ども、障害者につづき、高齢者の権利条約制定に向けた作業がすすめられている。2025年4月、ジュネーブで開催された国連人権理事会で、高齢者の人権に関する国際的に法的拘束力のある文書(=国連条約)を起草するための政府間作業部会(IGWG)を設置する決議が採択され、2026年2月、7月、10月に作業部会が開催される予定。日本国内ではこうした国連の動きに呼応して「高齢者人権宣言」が策定され、学習と実践が呼びかけられている。
注54 高齢者人権宣言…2022年12月の第35回日本高齢者大会(京都大会)で確認された。憲法に立脚した高齢者人権保障の基本原理として「尊厳」「独立」「参加」「ケア」「自己実現」の5つを掲げ、「年齢による差別の禁止・女性高齢者など、差別を受けやすい高齢者への平等な権利保障」をはじめ、高齢者に保障されるべき23の具体的人権を提起しており、その実現に向けた国・自治体・企業の責任を明記している。
注55 国際セクシュアリティ教育ガイダンス…ユネスコやWHOなどが作成した科学的根拠に基づく「包括的性教育」のための国際的スタンダード(標準)。「人間関係」「価値観・人権・文化・セクシュアリティ」「ジェンダー」「暴力と安全」「健康とウェルビーイング」「からだと発達」「セクシュアリティと性的行動」「性と生殖に関する健康」の8つのキーコンセプトにより多角的に学ぶ。日本では学習指導要領の「はどめ規定」により「受精に至る過程」や「妊娠の経過」を「取り扱わないものとする」とされ、科学的で人権に根ざした包括的性教育を実施できない現状がある。





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