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声明・見解

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【声明2025.06.30】「いのちのとりで」裁判原告勝利の最高裁判決を高く評価し、国に対し、すべての原告への謝罪と早急な全面的救済を求める

2025年6月30日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛

 生活保護基準の大幅引き下げは「健康で文化的な生活」を保障した憲法25条違反であると訴えて、生活保護利用者が国と自治体に対しておこした「いのちのとりで裁判」について、2025年6月27日、最高裁は上告審において「保護基準引下げは『違法』」との統一判断を示し、原告勝訴の判決を言い渡した。
 全日本民医連はこの判決を高く評価し、国がすべての原告に対し謝罪して1日も早い被害の全面的な回復を図ること、違法な判断に至った事実経過と原因究明、再発防止、権利としての生活保護制度を名実ともに充実することなど、当事者が参加する話し合いを開始することを強く求める。
 この判決は、憲法25条のもとで、いのちの尊厳をかけて全国29都道府県で立ち上がった1000人を超える生活保護利用者の原告と、それを支援してきた弁護団はじめさまざまな支援団体や個人、国民の、10余年にわたる粘り強い運動の大きな成果である。全日本民医連も全国で生活保護実態調査にとりくみ、各地で記者会見や裁判での意見陳述を行い、当事者の実態から不当性を告発してきた。
 今回の違法な引き下げは、「生活保護費10%削減」を選挙公約に掲げて2012年12月に政権復帰した自民党・第2次安倍政権が、自民党議員らによる「生活保護バッシング」で世論誘導をしながら、強引に削減を推し進めたことが背景にある。厚生労働大臣は、その保護費引き下げのために、物価下落率を大きく見せる「デフレ調整」を行った。最高裁判決では、社会保障審議会の生活保護基準部会に諮らず、専門的な検討も行わなかった厚生労働大臣の裁量権逸脱と乱用があったと認め、生活保護法違反であると断罪した。また、国への損害賠償は認められなかったものの、生活保護利用者が生活保護費削減によって最低限度の生活が満たせない状態を強いられた「精神的損害」への慰謝の必要性を指摘し、少なくとも1万円以上の請求を認めるべきとした。
 「いのちのとりで裁判」は、生活保護基準に連動する最低賃金や就学援助、国民健康保険料の減免基準など、多くの国民生活に影響する重大なたたかいであり、生活保護利用者のみならずすべての国民の「健康で文化的な生活」を保障させる道筋にもなる。また、生活保護基準引下げは、社会保障と税の一体改革の名のもとに社会保障の解体を強引に進めてきた最初の施策であり、その誤りを断罪した意義は大きなものがある。
 全日本民医連は、引き続き、原告・生活保護利用者とともに、すべての国民にこの「いのちのとりで裁判」の意義、最高裁判決の内容を伝え、「生活保護基準引き上げ」を圧倒的な世論にしながら、国に対して憲法にもとづく権利としての生活保護制度への改善を求めて奮闘する決意である。

以上

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