【声明2025.11.26】生活保護基準引き下げ訴訟の原告とすべての被害者の被害の完全回復と早期全面解決を求める
2025年11月26日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
2025年6月、最高裁判所は2013年から2015年の生活保護費引き下げは違法との判決を下した。11月22日、厚生労働省はその判決を受けて設置した専門委員会の報告書を踏まえ、対応について決定を公表した。
厚労省はこの決定で、新たな保護基準の減額改定を行い、原告とそれ以外の被害者には異なる基準を設けるとした。これは最高裁判決の軽視であり、判決の意義を真摯に受け止めた対応とは到底言えない。政府と厚労省に対し、原告とすべての被害者への全額補償を行い、被害の完全回復と早期の全面解決を図るよう強く求める。
最高裁判決は、厚労省が行った「デフレ調整」による引き下げ(-4.78%)は「違法」とした。それにもかかわらず厚労省は今回の対応で、低所得者の消費実態との比較による新たな水準調整を行うとした。最高裁判決の意義を矮小化し、減額した被害への補償を一部にとどめ、被害回復額を低く抑えるものである。このような紛争再燃につながる蒸し返しの減額改定は断じて許されない。
また、原告についてのみ、上記水準調整による減額分を「特別給付金」として追加給付するとしたが、原告は、すべての生活保護利用者に対し、2013年の改定前の基準に戻し差額を満額支払うよう求めていた。厚労省が設置した専門委員会でも、二つの基準を設けることに、委員の中でも反対意見が出されていた。最高裁が「デフレ調整」は違法であったとの判決を示したにも関わらず、それに代わる水準調整を行い、その上原告のみに「特別給付金」を給付し、原告とそれ以外の生活保護利用者の間に分断を持ち込むことなど言語道断である。
高市首相は国会答弁でお詫びを表明し、上野厚労大臣も厚労省での記者会見で「広く国民に改めておわびを申し上げる」と述べたが、原告への直接の謝罪は未だ行われていない。敗訴した厚労省が示したこれらの補償は、深い反省に根ざした対応とは到底言えない。
政府と厚労省に対し、最高裁判決に基づく真摯な謝罪と、被害の完全回復に向けて1日も早い全面解決を行うよう重ねて求めるものである。
以上
(PDF)
- 記事関連ワード
