【声明2025.11.28】医療法等の一部を改正する法律案および修正案の衆議院本会議での可決に抗議し、廃案を求める
2025年11月28日
全日本民主医療機関連合会
会長 増田 剛
昨日、衆議院本会議にて、医師偏在対策の強化や医療機関の病床削減を進める医療法等の一部を改正する法律案および同修正案が、自民党、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党、公明党などの賛成多数で可決された。絶対的な医師不足との認識に立つことなく、医学部定員削減を進めながら医師偏在対策を進めること、厳しい経営状況におかれている医療機関の経営の安定を図る手段として、病床削減をすすめる医療機関に補助金で支援することは、地域医療のさらなる崩壊を招きかねない。このような法案に反対を表明する。
政府は、「医師偏在指標」を用いて「医師多数県・医師多数区域」「医師少数県・医師少数区域」と分類し、経済的インセンティブと規制的手法を用いて対策を強化しようとしている。しかし、「医師偏在指標」は、医師の絶対的な充足状況を示すものではなく、あくまでも相対的な偏在の状況を表すものである。実際に「医師多数県」とされる都道府県の知事たちが政府に対し、「必要な医師を確保できない実態があり、指標は実情を表していない」と指摘している。「医師需給推計」では、2029年に医師需給が均衡するとしているが、この推計においては、OECD単純平均では46万人必要な医師数を36万人と低く設定するとともに、年間960時間の過労死水準の時間外労働を許容し、医師の働き方改革や女性医師が増加することなどが考慮されているか甚だ疑問である。
病床数削減の支援事業については、病床削減を病院経営の安定を図るための手段とすること、医療費4兆円削減の一環で行うことに反対する。基準病床数は国民が安心できる医療提供体制が担保されていることが前提である。コロナ禍の教訓である平時からの提供体制の「余裕」が必要である。経営の厳しさから各病院が病床削減に手をあげることで、過剰な病床削減がおこれば、将来に必要な医療提供体制が維持できず、患者の受療権侵害につながる。また、電子カルテ普及率約100%を目指すことも医師の高年齢化と経営難のなかで、地域の診療所等の閉院につながることを危惧する。
参議院において、①医療機関の経営を根本から支える診療報酬の増額をおこなうこと、②「医師需給推計」の見直しを行うこと、③「医師偏在指標」を基にした「医師偏在対策」をあらため、地域の医師不足を解消するため、医学部定員を増員すること等、徹底した議論を尽くすことを求める。そのうえで、本法案の廃案を求める。
以上
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