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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 認知症患者に対するQOL向上のとりくみ 岐阜・みどり病院 身だしなみ整えBPSDを緩和

 身だしなみを整えることは自然な行為であり、人間の基本的な欲求です。しかし、認知症患者は自らの力で欲求を満たしにくく、その場合BPSD(行動・心理症状)の悪化につながります。そこで、岐阜・みどり病院の回復期リハビリテーション病棟では、認知症患者に対し身だしなみの援助を行いました。第14回看護介護活動研究交流集会での看護師・鬼塚美生さんの報告です。

 岐阜・みどり病院の回復期リハビリテーション病棟は、2017年4月~18年2月までに153人の患者が入院。平均年齢は79・9歳と高齢で、65歳以上の割合は89・5%でした。その中で認知症と診断された患者は13・7%でした。
 65歳以上の認知症患者は462万人(12年現在)で、65歳以上の高齢者の7人に1人です。2025年には700万人に達する予想で、これは5人に1人が認知症患者という計算です。

■身だしなみに着目

 認知症患者のBPSD悪化の要因について、看護研究者のヴァージニア・ヘンダーソンは「人間の身だしなみは、姿勢と同じく、その人の生きようが外に現れたひとつのしるしである」と述べています。身だしなみを整えることで基本的欲求のニードが満たされ、BPSDが緩和しQOLの向上につながるのではないかと考え、身だしなみの援助に着目して看護実践を行いました。
 対象者は入院中で長谷川式スケール(HDS―R)が20点以下の患者18人。期間は17年9月11日~11月28日の約2カ月間です。対象者に、くし・手鏡、男性は電動ひげそりを用意してもらい、毎食前と10時、15時のお茶会の前、リハビリ前に整髪の援助を実施。整髪後は患者自身に手鏡で容姿を確認してもらいました。
 評価は、研究開始前または入院時と、研究終了後または退院時に、阿部式BPSDスコア(表1)を用いて行い、必ず同じ看護師が測定することとしました。

■自ら行動するように

 結果は、患者13人がすべての項目において点数を減少させました(表2) 。身だしなみに対する意識の向上もみられ、自らくしを手に取り、鏡を見て髪を整える姿がありました。また、点数の増加はみられなかったことから、身だしなみがBPSDを和らげるのに有効と感じます。
 点数が変わらなかった患者5人のうち2人は長谷川式スケールが10点以下という共通点がありました。ひとりは入院時から暴言、介護拒否といった、強いBPSDがあり、もうひとりは、コミュニケーションが困難で、活動性が低下していました。また共通して、身だしなみの援助に強い拒否があり介入が困難でした。拒否を見せる患者は、身だしなみの欲求自体を持てなかったため、点数が減少しなかったと考えられます。

■環境の変化で安定を

 浜松医科大学の鈴木みずえ教授は「BPSDは生活環境や看護師との人間関係、ケア不足など周囲の環境が関係して起こることが多い」と述べています。
 BPSDの発現にはさまざまな要因があります。今回の身だしなみの援助は整容の欲求が満たされ、生活リズムを改善させたと考えられます。
 また、整髪の援助後に鏡で自分自身の姿を見ることで、自分に興味を持つことや自立的に行動することに刺激を与えることができました。その結果、気持ちの安定につながり点数が減少しました。

* * *

 今回は、身だしなみに焦点を絞り援助を行いました。しかし、認知症患者はほかにも自身で満たすことができない欲求を抱えています。認知症患者が求める欲求をとらえて、看護を提供していきたいです。

(民医連新聞 第1684号 2019年1月21日)