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民医連新聞

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こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (7)2年連続、時給10円の稲作

 コロナ禍や生産資材価格高騰のもとで米、酪農をはじめ、日本の農家は所得の異常な低下に直面しています。
 稲作経営農家の1戸当たり平均農業所得は、2020年が18万円でしたが、ついに21年、22年には1万円に。交付金などの受け取りを除けば完全に赤字で、時給に換算すると10円です。他産業の平均時給(1669円)をはるかに下回っています。
 農水省の資料によれば、農業収入と補助金を含む農業粗収益は21年約350万円、22年は約378万円。農業経営費は21年約349万円、22年約377万円で、差し引きの農業所得は1万円。これを自家農業労働時間でそれぞれ割ると、2年連続で時給10円になります(表)。
 この現状に全労連議長の小畑雅子さんは、「『米つくって飯食えねえ』という不条理とも言える状況を、国民のいのちとくらしに責任を持つべき政府がつくり出してきました。これでは自給率向上など遠のくばかりです」と危惧しています。農家からも「この状況で子どもたちに『農業を継いでほしい』とは言えない」「時給10円では国民の食料をささえることはできない」と声があがっています。
 アメリカでもヨーロッパでも、農家に対する価格保障、所得補償は政策の基本です。日本では、現行「食料・農業・農村基本法」のもとで、価格は市場原理に任せるという新自由主義政策が吹き荒れ、食糧管理制度を廃止し、価格保障制度の改悪を強行してきました。その結果、現在のような農家の所得低下を引き起こしています。せめてスイス並みに、1戸あたり100万円の直接所得補償があれば、1000時間で割って時給1000円。やっと労働者の最低賃金水準に近づきます。
 米価暴落・畜産危機、後継者不足を打開するには、生産コストを償う価格・所得の実現が求められています。一方で農産物価格が生産コストを大きく下回っている現状では、価格転嫁だけでは「食べたくても食べられない」「高い農産物は買えない」という人びとの苦難に応えることはできません。農民連は、市場原理に任せるのではなく、国や自治体の責任による価格保障、価格転嫁、直接所得補償、学校給食などの公共調達による買いささえなどの対策を要求しています。


かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。

(民医連新聞 第1805号 2024年5月6日号)

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