会話の入り口、きっかけづくり 職場のコミュニケーションツールに自己紹介新聞 大阪・耳原鳳クリニック
今は新入職員が入職する時期。職員同士の理解をすすめるためには、職員のコミュニケーションが大切です。自己紹介新聞「ハローこんにちは私だよ!」をコミュニケーションツールとして活用する、大阪・耳原鳳クリニック(職員50人)のとりくみを取材しました。(長野典右記者)
「あの時はどうしようかと悩んだ」と語るのは考案者で師長の野田由貴子さん(看護師)。新型コロナ感染症の拡大で、月1回の全職員集会も開かれず、新入、異動職員の紹介もできなくなりました。そこで職員が会話できるきっかけと、英会話教室にあった講師の紹介シートを参考に自己紹介新聞を管理会議に提案。野田さんら3人が内部コミュニケーションプロジェクトの担当になり、2021年4月から始めました。
統一性を保つために、A4サイズの紙に、名前、職種、職業を選んだ理由、性格や趣味、目標などを書いてもらいます。また「My Favorite」(私のお気に入り)の欄には、おすすめのカフェや食堂、レストラン、場所などを自由に書いてもらいます。野田さんが文章を再編集し、写真を張りつけます。写真はプロジェクトのメンバーが本人を撮影しますが、多くは本人が提供。幼いころや、兄弟の紹介、旅行先やペットの写真など複数枚集まります。透明なフイルムでラミネートし、職員専用の通路や各職場の控室に掲示します。ニュースは毎月更新し、これまで50人以上の職員を紹介してきました。新しく紹介する職員には「今月は私です」の赤い目印。
自己紹介新聞の第一号は所長の田端志郎さん。医師になった動機が各職場で話題となったなど効果が的中。また「新聞で紹介された店に行ってみて、感想を交流し、職員同士の会話がひろがった」とメンバーの高橋佳子さん(看護師)も注目は大きいと言います。「コミュニケーションの時間が少ないなか、自己紹介新聞の意義はある」と田邊佳子さん(事務)も語ります。
アンケートでも認知度上々
プロジェクトでは、自己紹介新聞がコミュニケーションツールとして有効だったかを検証するために、無記名式アンケートを実施しました。49人から回答がありました。「新聞を知っている」と答えたのは93・9%、「毎月読んでいる」「時々読んでいる」は81・6%。「新しい職員をどうやって知ったか」は49%が自己紹介新聞です。また「コミュニケーションや職員を知るために有効であるか」は「とても有効である」「有効である」が79・6%になりました。また、自由回答欄には、「仕事以外の違う顔が見えた」「話せるきっかけができた」「親近感がわく」「会話の幅がひろがった」などの記載がありました。
野田さんは「掲示の継続やアフターコロナでも発刊を継続したことが大きい」とふり返ります。また新聞に注目が集まり、「『私の順番はいつ』と催促されることもあった」と高橋さんは語ります。
人の本能引き出す力に
自己紹介新聞を張っている外来の控室でも話題性があります。「会話の入り口になるし、新聞をつくると自分自身をふり返るきっかけになる」と主任の溝口緑さん(看護師)。「親しみを感じ、『へ~知らんかった』と職員の意外な側面に驚く」と桧作(ひづくり)由子さん(看護師)も言います。
発刊を重ねるごとに、読者や筆者の意識が高まり、原稿の内容が凝ってくるようになりました。野田さんは「『交流したい』という人の本能が人の持つ力を引き出した」とふり返ります。「これからは、法人本部の役員や共同組織も自己紹介新聞で紹介し、法人組織や地域が見え、会話でつながるきっかけにしたい」と抱負を語りました。
(民医連新聞 第1826号 2025年4月7日号)
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