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民医連新聞

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こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (16)輸入果実の残留農薬の実態は… 農民運動全国連合会 勝又真史

国産から検出されているのは、主にカイガラムシ防除に使われる有機リン系のメチダチオン

 普段、私たちが多く口にするかんきつ類は大量輸入されています。農民連食品分析センターでは、輸入かんきつ類などの残留農薬検査を行いました。
 図の通り、輸入かんきつ類からは国産の約5~20倍の残留農薬が検出されました。検出数値自体は1日摂取許容量を大きく下回っていますが、輸入かんきつ類は長期輸送の際に、腐敗やカビを防ぐため殺菌剤が散布されます。これが、ポストハーベスト農薬です。輸入品で多く検出されているイマザリルやチアベンダゾール、オルソフェニルフェノールはポストハーベスト農薬の一種で、船積み前に業者によって散布されています。ポストハーベストは輸送中に効果が切れないように、残留するように使用されます。その違いが大きな差となって表れています。
 表面に散布された果実のうち、一定量のポストハーベストが果肉にも浸透していることがわかりました。例えば、アメリカ産のオレンジでは残留しているイマザリルの約10%が果肉に浸透しています。果実を皮ごと洗っても残留農薬は消えません。
 日本はポストハーベストの使用を禁じており、前述の3種類の農薬は日本では使用していません。今回の検査でも国産のかんきつ類からは3種類は未検出でした。検出されたのは有機リン系農薬のメチダチオンでした。
 市販の国産みかんを調べると、ネオニコチノイド系農薬のジノテフランは、ミカンの果肉(中身)まで染み込んでいました。一方、同時に検出されたメチダチオンは、皮を除けばほぼ除去できる特徴の差がありました。農家にとって、浸透しないものの毒性の高いメチダチオンを散布するか、毒性は低いが、中身にまで浸透するネオニコ系農薬を散布するか、とても悩ましい問題です。
 一方で、高品質で安全・安心、おいしい果物を生産し、消費者に届けることは、生産者の誇りです。その誇りを共有しつつ、ネオニコ系農薬の使用削減を踏まえた新しい流れづくりに、市民の声を聞きながら、行政による支援や技術開発などで解決していくことが必要でしょう。


かつまた まさし
農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。 

(民医連新聞 第1826号 2025年4月7日号)

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