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民医連新聞

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副作用モニター情報<634> ニンテダニブ(オフェブ錠)による創傷治癒遅延

 肺の線維化進行を抑えるニンテダニブ(以下、NIB)は、主に線維芽細胞上の血小板由来増殖因子、線維芽細胞増殖因子のレセプターおよび血管内皮細胞増殖因子VEGFに対する、チロシンキナーゼ阻害剤の作用を有しており、もともとは抗VEGF作用を軸に抗がん剤として開発された製剤です。下痢(61.6%)などの消化器症状や肝障害(17.7%)の副作用に目を奪われますが、今回は抗VEGF作用が関係する創傷治癒遅延の症例を紹介します。
 
症例)70代前半男性。体重71kg。飲酒あり。
発症1年前:近医からの紹介で受診、悪性関節リウマチでメトトレキサート服用中。
発症9カ月前:血管炎を伴う関節リウマチと診断。
発症6カ月前:メトトレキサート中止。
発症5カ月前:呼吸器科で特発性肺線維症の診断にてNIB150mg(1日2回)で開始。以降、併用薬として常時プレドニゾロン10~15mg(1日あたり)。
発症3カ月前:IL‐6阻害剤トシリズマブ(TCZ)点滴静注560mg(4週あたり)で開始。
発症1日目:右足外果(外くるぶし)部に感染の可能性のある1円玉大の皮膚潰瘍を確認、TCZ投与を中止し、抗生物質製剤で3週間治療。以降、浸出液は少々あるものの、潰瘍は浅くなるが1円玉大の皮膚欠損状態のまま完治せず。感染をくり返すため、TCZは状態に応じて断続的に投与。
発症495日目:新規配属された外来担当の薬剤師によりNIBによる創傷治癒遅延の可能性が指摘され、呼吸器科とリウマチ科の医師が相談の上、NIB中止を決定。
発症550日目:中止決定後もNIBの残薬を内服し続けてしまい、この日からNIB中止。
発症578日目:潰瘍は改善傾向。
発症606日目:潰瘍はピンホール状になるまで改善。
発症644日目:外果の潰瘍の治癒を確認。TCZ再開。

* * *

 NIB服用中は潰瘍の大きさは不変、NIB中止後から改善がみられ、約3カ月で完全に治癒しました。NIBを中止しなければ永久に治癒しなかったと思われます。
 余談ですが、NIBが高額ゆえ、保険薬局が在庫を残さない日数で調剤を実施し続けたため残薬が生じていたこと、もったいないからと患者が服用を続けた、という事情が重なり中止時期が遅れてしまいました。高額薬剤の罪は重いのです。
全日本民医連医薬品評価作業委員会

副作用モニター情報履歴一覧

(民医連新聞 第1826号 2025年4月7日号)