相談室日誌 連載579 患者の意欲引き出す支援 慢性疾患外来でのSWの役割(沖縄)
2021年12月に沖縄医療生協は初めて、クリニックにソーシャルワーカーを配属しました。中断3回目からSWが介入するシステムとしました。特に多いのが精神症状を患った患者の中断事例です。
ある50代後半の患者は、シングルマザーで就労歴がなく、生活保護を利用。次女の高校卒業をきっかけに生活保護廃止。実家に身を寄せ、兄から医療費をもらう生活になりました。娘たちも母には無関心で、中断による心筋梗塞、脳梗塞を次々に合併するも通院中断。SWは高次脳機能障害の障害年金取得の支援を検討し、娘に精神科受診を支援してもらい、半年後に2級を取得。遡及分でアパートへ転居、一人暮らしを開始し、就労A型作業所で勤務。生き生きとした暮らしをしています。
ある40代前半の患者は一型糖尿病。インシュリンが欠かせませんが、不規則な食生活でインシュリン管理が難しく、治療を何度も中断し、救急搬送をくり返しました。主治医より厚生障害年金支援の依頼で介入。SWは「発達障害が見え隠れし、病状理解が欠落している」と判断し、同行支援で3級を取得。面談をくり返し、「生活実態と本人の要望」とのギャップをすり合わせる支援を実施し、インシュリンの管理ができるようになって、資格取得のための生活リズムつくりにとりくんでいます。
ある30代前半の知的障害の患者は、家族の障害年金を要求し、家賃や光熱費の滞納など多くの課題が。SWは「金銭要求は障害者虐待」の視点で、本人の世帯分離を検討。SWにメールで日常の不安や愚痴などを送ってもらうことにしました。委託事業所の支援でグループホーム入所と生活保護を利用。「ごみ屋敷化」問題は、訪問看護や施設職員の協力でごみを捨てるよう習慣化しました。間食を減らし、ウオーキング、最高HbA1c14・2から、9・8まで改善。就労B型作業所で活躍しています。
慢性疾患の患者の背景に、社会的弱者となる原因があり、本人だけの問題ではないと思います。福祉職の視点「社会的背景」を多職種と共有し、連携し、同じ方向での支援が患者の意欲を引き出し、通院や生活への意欲を醸し出し、成し遂げた結果だと思います。患者の笑顔のために奮闘します。
(民医連新聞 第1826号 2025年4月7日号)
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