外科医は無罪、上告断念で確定 乳腺外科医えん罪事件差し戻し審で判決 東京高裁
手術直後の女性患者への準強制わいせつ罪に問われた乳腺外科医の差し戻し審で、東京高等裁判所は3月12日、無罪とした一審の東京地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却しました。
差し戻し審の東京高裁は、麻酔から覚めた患者の術後せん妄の可能性があるとして、地裁判決を支持、女性の胸から検出されたDNAは手術前の打ち合わせ時などで唾液が飛んだ可能性が否定できないとしました。乳腺外科医は一貫して無罪を主張してきました。
一審の東京地裁はせん妄の可能性を認め、無罪としましたが検察が控訴、東京高裁ではせん妄を否定して懲役2年の逆転有罪に。最高裁は有罪判決を破棄し、東京高裁に差し戻していました。
■遅すぎる無罪判決
判決を受けて開催した報告集会には、6人の弁護団とともに裁判をたたかった外科医師も参加し、会場は立ち見が出るほどの支援者で埋め尽くされ、報告者一人ひとりの言葉をみなで受け止め、喜びを共有しました。
弁護団からは、「『遅すぎる無罪判決』と表明したが、2016年の起訴から約9年が経過。2019年2月の一審無罪判決で決着がついていたはずであり、本日の判決も一審の判決が正しいとした。二審の高裁で有罪判決が出されたが、最高裁は差し戻しせずに(自ら)無罪とするべきだった。無罪に対して、検察が上訴することが問題」と報告しました。
主任弁護人の高野隆さんは、「遅すぎた判決ではあったが、無罪判決を迎えることができた。検察側の証拠に反論するため、さまざまな検査を資金の支援を受けながら実施してきた。お金がないと正義が実現できないことはあってはならないが、支援があって充実した弁護ができた。絶対に無罪は確定できる」と主張しました。
一方判決は、検察側の証拠とされた、科学捜査研究所のDNA定量検査で、DNA抽出液、定量データの破棄、検査記録の原本の書き換えがあったにもかかわらず、検査は信頼性があると判断。弁護団は疑義を唱えました。
■支援があったからこそ
最後に、東京・柳原病院の八巻秀人院長は「病院への不当な警察介入があったが、支援をしてくれる人がいればこそ、ここまで来ることができた。やっていないことはやっていない」とのべ、判決確定までの支援を呼びかけました。
3月26日、検察側は上告を断念し、無罪が確定しました。
(民医連新聞 第1826号 2025年4月7日号)
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