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民医連新聞

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副作用モニター情報<635> イムノブラダー膀注用による ライター症候群

 イムノブラダー膀注用は、膀胱(ぼうこう)内注入用の乾燥BCG(BacillusCalmette‐Guérin)製剤で、筋層非浸潤性膀胱がんの治療および再発予防の標準療法とされています。結核ワクチンとして知られるBCGを膀胱内に注入し、膀胱粘膜の免疫反応を介して抗腫瘍効果を示す治療法です。
 2006年に報告された市販後調査成績では、副作用は66%と高率に認められています。主な副作用は排尿痛、頻尿、血尿などの膀胱刺激症状や、発熱、感冒様症状です。多くは一過性で軽微ですが、BCG感染、萎縮膀胱、ライター(Reiter)症候群などの重篤な合併症が発生する可能性があります。
 今回は、BCG膀胱内注入療法でライター症候群を発症した症例を紹介します。
 
症例)70代女性
 膀胱がん術後4カ月目の検査で再発を認め、BCG(イムノブラダー80mg)療法を開始。
開始21日目:BCG療法4回目施行
開始28日目(中止1日目):39度台の発熱、眼球結膜充血、左膝関節痛が出現し歩行困難となった。血液検査でCRP、白血球上昇を認め、ライター症候群と診断
 レボフロキサシン(LVFX)点眼、トアラセット配合錠、LVFX点滴250mgで加療開始。
中止15日目:いったんは軽快し退院
中止17日目:左足関節の腫脹が再燃し再入院
中止30日目:抗菌薬治療で炎症反応は改善傾向、イスコチン(INH)400mg/日と左膝痛が残存したためプレドニゾロン(PSL)10mg/日を開始
中止38日目:その後症状は軽快し、
PSL15mg/日、INH 600mg/日の内服継続で退院となった

* * *

 ライター症候群は無菌性・非化膿性関節炎を主徴とし、結膜炎、非感染性尿道炎、粘膜皮膚病変などを伴う自己免疫性疾患です。発症機序は、結核菌成分の一部がヒト滑膜プロテオグリカンと免疫学的に交叉することが原因として考えられています。治療開始10日前後、または4~8週で発症することが多く、特に結膜炎症状が初期症状として現れやすいとされています。発症頻度は0.1%とまれですが、重篤な症状を引き起こすことがあるため、早期発見が重要です。

(全日本民医連医薬品評価作業委員会)

副作用モニター情報履歴一覧

(民医連新聞 第1827号 2025年4月21日号)