診察室から ACPをとりくみやすくする不思議なトランプカード
Advance Care Planning(ACP:厚労省による愛称「人生会議」)をご存じの人は多いでしょう。人生会議は「人生の終末期において受けたい医療やケアについて、大切な家族や医療者とあらかじめくり返し話し合っておくプロセス」。この考えや実践をひろめるため、筆者らが運営する一般社団法人みんなの健康らぼ(みんらぼ)は、みんらぼカード™というトランプカードを開発し、啓発活動を行ってきました。
厚労省の調査によると、一般国民の約57%が人生会議をすすめることに賛成し、約52%が終末期医療・ケアについて考えたことがあると回答しました。しかし、約70%が家族などや医療・介護従事者と「詳しく話し合ったことはない」とし、その理由として「話すきっかけがない(約63%)」「何を話せばいいか分からない(約30%)」と回答しました。
そこで、行動経済学の理論を活用し、気軽に人生会議を始められるみんらぼカード™を開発。「人生会議しよう」と言われると警戒するかもしれませんが、「トランプしよう」と誘われれば気軽に参加できます。カードには「好きなものを食べたい」「静かな環境で過ごしたい」といった、前向きで自分らしさを探し求められる希望が記されており、ポジティブに人生会議をすすめられるのが特徴。過ごし方の希望がはっきりすれば、心肺蘇生や胃ろうに関する事項もおのずと導かれます。これこそ、みんらぼがひろめたいポジティブな人生会議。そして、人生会議の主体は患者自身であることもあらためて記します(現場で医療従事者が口にする「ACPをとりました」という表現は、本来の概念とは異なる誤用です―自戒の念を込めて)。
みんらぼは、全国各地で市民や医療・介護従事者、看護学生や医学生向けにみんらぼカード™を活用した講演会や体験会を実施し、「楽しかった」「これなら人生会議ができる」と高い評価を得てきました。盛岡医療生協による企画「いのちの章典」では、2年連続でみんらぼカード™体験会を実施し、その後、参加者が自発的に自身の班で人生会議を開催するなどの動きもみられました。
みなさんも医療従事者として、人生会議の大切さを共同組織の間でひろめたいと思いましたら、ぜひみんらぼカード™を手に取ってみてください。詳しくは下記サイトへ。
(杉山賢明、岩手・川久保病院)
(民医連新聞 第1827号 2025年4月21日号)
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