フォーカス 私たちの実践 健診から二次受診を すすめるとりくみ 埼玉・所沢診療所 介入の4割が慢性疾患の治療へ健診結果への注目が習慣化
健康診断(以下、健診)の二次検査を、受診につなげるとりくみは、どこの事業所でも苦慮しています。埼玉・所沢診療所では、チェックリストから事前検査、当日検査の成果として約4割が慢性疾患の治療へつながりました。第16回看護介護活動研究交流集会での、平井千鶴子さん(看護師)の発表です。
当診療所には、昨年の健診結果から受診勧奨の電話をかけても、受診せずに健診を受けに来る受診者がいました。そこで、健診の結果を分析し、要精密検査、要治療の受診者の二次精査率を上げることを目的とし、健診結果について、医師が指示を出しやすい仕組みをつくることをめざしました。
■事前チェックで検査指示
(1)介入対象を抽出するために、医師と看護師で相談して、声がけする検査異常値項目と値を決めました。(2)異常項目に対しての指示と金額を入れたチェック表を作成しました。健診結果が異常値の受診者用の「健診当日のチェック表」(表)と二次精査の受診者用の「健診二次受診時のチェック表」の2種類を準備しました。
事前のカルテチェックで前年の健診結果を見て、該当項目に印をつけて準備します。
健診当日に問診で、二次受診したかを確認し、未受診の場合は結果説明の予約を勧めました。医師は受診者に説明し、希望を聞いて検査指示を出しました。
二次受診の予約が入ったら、異常値項目にチェックをして準備しました。問診で異常値を説明し、本人の気づきや生活習慣を聞きました。診察後、不明点は医師に確認しました。栄養相談を受けなかった場合、生活の工夫について、看護師から話をしました。
画像検査の読影で、要精査のときは、医師が検査を記入します。看護師が電話で受診を勧め、希望があれば、検査を予約。当日は診察後に検査をしました。
とりくみの結果、健診当日に医師指示が出た受診者は、2021年度34件(15%)、2022年度56件(23%)、二次受診で指示が出た受診者は2021年度の半年間は39件(68%)、2022年度半年間では75件(83%)です。当日の指示、二次受診ともに増加しました。
■看護師がスキルアップ
看護師からは「受診者の生活背景を聞くことが増えた」「前回の結果の異常が問診前にわかり、精査したか聞くことができた」「健診当日に声をかけることで、受診につながった」との意見が。医師は異常値が見やすく、問診後は診察で話しやすいと評価します。
濱ノ園真樹ほか「人間ドック」(2014年29巻3号)の『追跡対象者の精密検査受診行動に関連する促進要因の分析』で「受診行動の促進要因は、〈結果報告〉〈他者からの受診勧奨(特に医師による結果説明)〉〈本人の認識〉〈医療機関体制〉であることがわかった」とのべています。チェック用紙を活用し、対象者と異常値項目を明確にして話ができました。受診といっしょに検査を予約して、二次受診当日に検査ができて満足したとの声もありました。二次精査率は確実に上がりました。
2022年度、新規の慢性疾患登録患者の約4割が、健診結果からつながっています。
今回のとりくみは、地域住民の健康を守りました。看護師も健診結果に注目する習慣がつき、スキルアップと質の向上につながりました。毎年健診は受け、要治療でも治療拒否する人たちがいます。特に「家庭血圧は低い」と話すケースでは介入が難しく、受け入れてもらえるアプローチが課題です。
(民医連新聞 第1827号 2025年4月21日号)
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