こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (17)大豆畑トラスト運動 農民運動全国連合会 勝又真史
良質な植物性たんぱく質が豊富で「畑の肉」といわれる大豆は、私たちの健康維持に貢献しています。豆腐や納豆、みそ、しょうゆなどが日本の食文化として親しまれています。
1996年に遺伝子組み換え大豆の輸入が解禁されました。国産大豆の当時の自給率は2%。日常の食卓に上がっていた大豆食品の原料のほとんどを輸入大豆に依存していました。そのため、当時の消費者は、外国産の遺伝子組み換え大豆に置き換わることに危機感を持ちました。
そこで国頼みではなく、市民自らが国産の安全な大豆栽培にかかわろうと、大豆自給運動が始まりました。そのしくみは、大豆の作付け前に農家と契約(トラスト)し、その年に収穫された大豆を受け取るというシステムです。大豆は1年1作、天候にも左右され、確実な収穫量は見込めませんが、そのリスクを消費者が負うことで、農家に大豆栽培の継続を保証します。
こうした努力の結果、大豆の自給率は6%程度に上がりました。まだ十分とは言えませんが、この運動が、安心・安全な国産大豆の生産を保証するだけでなく、遺伝子組み換え大豆の国内での作付けを阻止し、日本の食卓を守ることに貢献しています。
2023年の世界の大豆の栽培面積は1億3900万ヘクタール。そのうち遺伝子組み換え品種の作付面積は1億ヘクタールで約72%。日本は、遺伝子組み換え大豆の作付割合が98~80%のアメリカ、カナダ、ブラジルからほぼ全量輸入しており、日本の食卓に上る大豆食品・加工品の9割以上は遺伝子組み換えになります。
いまフードテックが話題になっていますが、自然から切り離された工業製品と言えます。「大豆ミート」の原料のほとんどが輸入大豆であり、遺伝子組み換えです。
大豆畑トラスト運動によって、種まき、草取り、収穫作業、みそづくりなどに消費者が参加する交流が各地で行われています。地域で育まれた在来大豆、秘伝豆を栽培することで、種子を守る運動にもつながっています。
年1回の全国交流会では、消費者と生産者が一堂に会し、大豆の郷土食、伝統食を味わいながら、生産者の苦労や日本農業の現状を学ぶ機会になっています。日本の食文化を守り、国産大豆の生産を高めるためにも大豆畑トラスト運動の継続・発展が望まれます。
かつまた まさし農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。
(民医連新聞 第1828号 2025年5月5日号)
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