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民医連新聞

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憲法施行78年 ともに学び、語り、向き合う「私の」平和と人権を未来へ

 5月3日は憲法記念日、日本国憲法の施行から78年がたちました。各地の民医連では、平和学校や人権ゼミなどを通じて反核・平和や人権について学び、一人ひとりが憲法を身近に、自分事として深めるとりくみを続けています。

ゼミ生が主体的に学び語り、行動をめざして
鳥取民医連 平和・人権ゼミ

■多彩なテーマで14期目

 鳥取民医連の教育青年委員会では、若手職員を対象に「平和・人権ゼミ」を運営しています。2009年に立ち上げ、現在14期です。職場から選出される受講者は、5人以上10人未満というところ。年間学習テーマに沿って、持ち寄り学習を重ね、フィールドワークを経て、県連の学術・運動交流集会で報告して修了。これまで、在日米軍基地、核廃絶、水俣病、格差と貧困、SDH(健康の社会的決定要因)などを学びました。目的と獲得目標は別項のとおりです。

■どんな風にすすめているか

 月に1回2時間で開催(勤務時間内)するゼミには、担当の教育青年委員とゼミ生がいるだけで、綿密な学習計画はありません。
 すすめ方は、例えば「格差の拡大と貧困」を学んだ2022年は、初顔合わせで年間の学習テーマを決定(写真上)。2回目にテーマの総論を外部講師に依頼。「わからないことがわからない」状態から知識の土台をつくる目的です。総論での学びから深めたいことを出し合い、持ち寄り学習を数カ月…と考えていたら、総論が高度で、3回目は補論で「地元・鳥取にある貧困」を教育委員が話すことに。そこから、ゼミの関心は県連でとりくんでいる食料無料市と、その舞台の公営住宅へと向かいました。
 持ち寄り学習は、ネット検索が定番ですが、家族や職場の先輩に助言を求めるメンバーもいます。日常診療を通じて実感していること、身近な話題も出ます。フィールドワークは食料無料市で、来場者の住環境と血圧などの健康調査になりました。血圧の高い人ほど生活面での困りごとが多い傾向がありました。この報告は、全日本民医連の学術・運動交流集会にも持っていきました。

■今後の課題

 修了回に受講生にゼミの目的と獲得目標を軸に、自己採点してもらいます。「目的には到達したけど、『自分の言葉で語れる』とか『行動』に至っていない…」という声が大半です。そこで、14期は獲得目標を意識した折り返しが中間点でできるよう、半年ほど開催期間を延ばしてとりくんでいます。
 卒業生には学生担当や、教育委員会の青年担当として力を発揮しているメンバーもいます。完璧な学びではないかもしれませんが、世代の近い仲間と話し合い、自力で物事をすすめていくゼミが貴重な経験になってほしいと思います。(鳥取民医連教育青年委員会)


鳥取民医連「平和・人権ゼミ」の目的と獲得目標

 目的(1)「平和」「人権」をテーマにした学習を通じて、民主主義と人権感覚を身につける、(2)小集団の自主的・継続的な学習を通じて、「学ぶ力」も身につける、(3)共に学びあいながら、民医連綱領を担う職員集団として成長する
 獲得目標(1)参加者が、「平和」「人権」について自分の言葉で語れるようになる、(2)「平和」「人権」を守るためにはどうしたら良いか、周りの人たちと一緒に考えられるようになる、(3)自分たちでできることは何か考え、行動できるようになる


体験を仲間と共有し「表情が変わる」10カ月
神奈川民医連 平和学校

■社会をつくるのは私たち

 神奈川民医連では、今年で24期となる県連平和学校で8人の受講生が学んでいます。各法人、職場の協力のもと、毎月の講座に参加。10月の開校から10カ月間のカリキュラムで学び、7月の県連「ピースフェスティバル」で卒業発表をします。おおよそ入職1~6年目までの職員が対象で、今期は20~40代の、精神保健福祉士、作業療法士、介護福祉士、看護師、事務の多職種が集まっています。
 3月28日の講座は、同月に3泊4日で実施した沖縄現地学習のふり返り。2班に分かれ討議し、報告し合いました。受講生の小西漠さん(川崎協同病院・作業療法士)は、「(米軍の新基地建設のために)日本人同士が対立させられている辺野古を訪れ、誰の、何のための基地なのか、と思った。基地は必要ない。率直な気持ちを伝えていきたい」と語ります。
 「政治に興味がなかったが、ここで学び、歴史が今につながり、私たちが生きる社会をつくるのは私たち、と考え方も変わっていった。それを共有できる仲間もいる。職場のことも共有し、高め合えた10カ月間が楽しかった」と話すのは、23期卒業生で、今期の運営委員を担う降籏(ふりはた)萌理さん(汐田総合病院・看護師)。運営委員として卒業生がかかわるのも、神奈川民医連の平和学校の特徴です。

■地元・神奈川を知る機会も

 4月21日の講座では、海洋環境活動家の武本匡弘さんのヨットで横須賀沖に出て、沖縄に次いで米軍基地が集中する神奈川の実態と気候危機について学びました。
 出港後まもなく、「あの一見緑豊かな丘はすべて弾薬庫。今日はちょうど弾薬を運び出している。あの赤い旗が目印」と武本さん。弾薬庫のトンネル入り口に受講生の視線を導きます。近くで同じ赤旗を立てている漁船をみつけ、「民間漁船に日当を払い監視させて、地域経済に貢献していると言っている」と憤りをのぞかせました。
 沖に出ると、米海軍のイージス艦が。「あの1杯(隻)との作戦行動で、私が住む逗子・葉山、人口10万人規模のまちを壊滅させられる」と武本さん。さらにヨットをすすめ目撃した、巨大な原子力空母ジョージ・ワシントンには「乗員5600人、日当一人1万円としても毎日5600万円がかかり、そのほか膨大な運航費は計り知れない」と解説しました。受講生らは時折大きく揺れるヨットの上で、真剣な表情で解説に聞き入っていました。
 港に戻った後も武本さんの講義は続きます。海上で採取したマイクロプラスチックを観察し、気候危機による世界の実情、日本での理解度の低さや政治を変える必要性、より多く家事を担い矛盾を知る女性が政治の場に少ないことと気候危機対策の遅れの連関、世界の軍事行動によるすさまじいCO2排出量などを学びました。

■卒業生は300人に

 「受講生を見ていると、入学時と卒業時で、全然表情がちがう」と話すのは、運営委員長の上田幸志さん(メディホープかながわ・事務)。体験と仲間との討議を通じて、戦争の被害と加害の歴史と今を学ぶ、神奈川民医連平和学校。卒業生は今年で、300人にのぼる予定です。(丸山いぶき記者)

県連を越えてつながり平和・人権を問い直す
北海道・東北地協

■沖縄の痛みに向き合う

 平和とは何か、人権とはどこまで守られているのか―。
 沖縄や福島を訪れたとき、その問いは遠いものではなく、自分自身の問題として立ち上がってきます。北海道・東北地協では、地協単位でも、反核・平和・人権について学び合うとりくみを続けています。
 中でも沖縄訪問は、2017年から当地協の事務幹部学校の一環として、3回実施してきました。のべ90人余りが参加。参加者は、戦時中に住民が避難した「ガマ(自然壕)」や、地上戦の痕跡が残る場所を歩き、証言者の声に耳を傾け、衝撃を受けています。戦争によって壊されたいのち、奪われた日常、戦後も続く過重な基地負担など、それらを肌で感じたとき、「なぜ沖縄ばかりが犠牲になるのか」「なぜ同じ日本でここまでの差があるのか」と、強い疑問と痛みを抱いた参加者も少なくありません。
 沖縄の問題をどこか「他人事」として受け止めてきた自らの無関心に気づき、深い自省へとつながった、という感想も多くありました。戦争の記憶は過去のものではなく、今もなお人びとの暮らしのなかで続いている現実なのだと、実感させられます。

■復興程遠い福島で

 福島の原発事故をめぐっても、人権の問題が根深く残っています。これまで、看護師長研修や事務長研修など、さまざまな企画で福島を訪問してきました。自由な移動が制限される生活、補償による分断、終わりの見えない廃炉作業―。それらは今なお、現地の人の生活を脅かしています。
 「復興」という言葉の裏には、語られない真実が多数あり、「インフラの復旧はすすんでいても、心の復興には程遠い」という訴えが、現地の人からくり返されました。十分な除染が行われないまま放置された地域、戻れないまま時が止まった故郷。そうした現実のなかで、「生きる権利」や「安全な環境で暮らす権利」が軽視されている現状は、深刻な人権侵害であると言えます。

■仲間とともに未来へ

 こうした学びの機会は、単に知識を深めるだけではありません。北海道・東北地協という民医連の仲間が出会い、語り合い、ともに考えることで、県を越えたつながりと連帯が生まれています。「平和」や「人権」といった普遍的なテーマを、自らの足元から問い直していくことが、今、私たちに求められていると感じています。
 これからも、沖縄や福島など多くの現地に足を運び、現地の声に学ぶ研修を継続して実施していきたいと考えています。過去から学び、現在の社会に向き合い、そして未来へと希望をつなぐために、平和と人権の学びを絶やさずひろげていければと思います。(吉田裕也、岩手民医連・事務)

(民医連新聞 第1828号 2025年5月5日号)

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