県連全医師の思いを結実 『ドクターズコケコ宣言』 自分の役割が発揮できる魅力ある医局、病院づくり 新潟・下越病院
医師の確保と養成は、民医連が事業を継続させていくための喫緊の課題です。医師確保のとりくみと魅力ある職場、医局づくりについて、新潟・下越病院(職員599人・261床)を取材しました。(長野典右記者)
「職員は増えても医師が増えない。危機感でいっぱいだった」と語るのは院長の山川良一さん。山川さんは2018年4月に院長に就任。現在の常勤医は43人ですが、当時は28人でした。管理部では、危機感の共有と医師不足の原因分析、魅力を高めるために何が必要か、議論を始めました。
県連全医師面談を実施
県連の医師委員会では、全医師面談プロジェクトを立ち上げました。同委員長の岩田真弥さん(医師)は入職14年目。2023年3月に医師委員長になり、「就任前から医師集団づくりのために全医師面談を実現したかった」と語ります。
全医師面談の実施期間は2023年5月1日~12月31日。対象者50人のうち35人の医師、歯科医師と面談し、アンケートで4人が回答。30人の面談は勤務時間内に行い、面談は医師3人と事務4人で分担し、1回あたりの面談時間は約50分。「大変なこと、心配なこと、困っていることは何ですか?」「うちのいいところ、悪いところはどこですか?」「悪いところはどうしたらよくなりますか?」など優先質問項目は7つです。
面談から、「自由な雰囲気」「軍事費増額反対など共通の認識はある」「困難患者を受け入れている」などの評価の一方、「コミュニケーション不足」「医師の高齢化」「後継者育成」「債務超過」などの課題が見えてきました。
5つの特徴を3つに
同委員会では意見を5つの特徴にまとめました。1つは後継者、2つ目は組織風土、3つ目はコミュニケーション、4つ目は患者対応、最後は経営。医師委員の酒泉裕さん(医師)は「3年目以上の医師が増えることが医師養成の成否にかかわる」と言います。面談で、「学ぶ場所の提供だけなら技量を取得するだけで残ってくれない。自分の役割が発揮できる場所になることが大切」と感じました。
そこで同委員会が、5つの特徴を「私たち医師集団が大切にする3つのこと」にまとめたのがドクターズ「コケコ宣言」。(1)コ:心のこもった診療を行います、(2)ケ:健全な組織風土を醸成します、(3)コ:後継者育成に力を入れます、から名付けました。「別の名称も考えましたが、『コケコ』と聞くと言葉の意味を探り、むしろ定着しやすい」と、「コケコ宣言」にした理由を事務次長の大口歩さんはふり返ります。「コケコ宣言」のポスターとフラッグを作成し、医局はじめ全事業所に配布しました。山川さんは、「コケコ宣言」が「医師の生の声を吸い上げ、患者目線、職員目線で、病院の質の向上をめざす思いに合致した」とふり返りました。
医局の雰囲気にも変化
魅力ある病院づくりに向け、教育研修センターの設立、学会活動の強化、オプション研修で初級プログラミングコースの新設、全医師合宿や若手医師との交流、多職種の若手交流会などの職員同士のコミュニケーションの充実をはかりました。またハラスメントのない職場づくりのための防止方針を作成し、問題が起きたら素早く対応するようにしました。「質の向上にはトラブルに対応する力が必要」と山川さんは言います。
医師関係事務課課長の塩原伸子さんは「研修医の1年目、2年目がたすきがけを含めそれぞれ7人に増え、3年目以降の定着に向けて、『コケコ宣言』を実践していきたい」と言います。
岩田さんは「研修医にも面談をして意見をまとめ、魅力ある病院づくりにつなげ、病院に残ってもらうとりくみをすすめたい。医局会議も報告中心の運営から、本音で語れ、交流できる雰囲気づくりをめざしたい」と、今後の目標を語りました。
(民医連新聞 第1828号 2025年5月5日号)
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