副作用モニター情報〈637〉 イメグリミンとメトホルミン併用による乳酸アシドーシス
イメグリミン(ツイミーグ錠(R))は、2021年に発売された、新しい糖尿病治療薬です。作用機序として、グルコース濃度依存的インスリン分泌促進作用およびインスリン抵抗性改善作用により、血糖降下作用を発揮する薬剤で、その作用機序はミトコンドリアへの作用を介するものと想定されています。
本剤は、メトホルミンと類似の構造を持ち、一部では作用機序も同様な部分があると添付文書に記載されています。メトホルミンの先発品(メトグルコ錠)とイメグリミンは同じ製薬会社で開発されています。メトホルミンの重大な副作用に「乳酸アシドーシス」がありますが、イメグリミン発売前の併用投与試験では、大きな問題はなかったとされています。
しかし、今回、イメグリミンとメトホルミン併用による乳酸アシドーシスが報告されました。
症例)70代 男性
メトホルミン750mg/日とイメグリミン2000mg/日を併用して6カ月経過したところで、患者に吐き気が発現。2週間くらいでさらに悪化し、食事摂取が不可能に。内服中止し、受診したところ、採血で乳酸アシドーシスが認められ、入院となった。
内服はいったん中止し、高血糖に対してはインスリンを使用。脱水に対して、補液を行い、アシドーシスに対してメイロン(炭酸水素ナトリウム水溶液)で対応。3日ほどで改善傾向。5日目から流動食開始し、10日目から内服を再開。副作用を起こしたと思われるイメグリミンは再開せず、メトホルミンは再開した。
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イメグリミンは、ビグアナイド系薬剤とされていませんが、類似薬です。単独でも乳酸アシドーシスを起こす可能性もありますが、元々乳酸アシドーシスの副作用を持っているメトホルミンとの併用では、さらに可能性が上昇すると考えられます。吐き気などの消化器症状は乳酸アシドーシスの初期症状と考えられるため、そのことに留意が必要です。一般的に、併用後1~4週間後に症状が出てくることが多いですが、今回のように半年以上かかって乳酸アシドーシスの症状が出る場合があるので、併用後は注意が必要です。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1829号 2025年5月19日号)
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