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民医連新聞

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私がここにいるワケ 医療にアクセスできない人に生きる自信取り戻す 神奈川・うしおだ診療所 精神保健福祉士 清水 洋子さん

 民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ15回目は、神奈川・うしおだ診療所の精神科訪問看護で働く、清水洋子さん(精神保健福祉士)です。(松本宣行記者)

 清水さんは高校卒業後、横浜勤労者福祉協会へ入職。汐田ヘルスクリニック・精神科(現・うしおだ診療所)の医療事務として働いていたときに、転機が訪れます。

■もっと専門知識があれば

 患者が受付でこぼした本音を聞き、「患者とのファーストコンタクトで、もっと専門知識があれば、より患者の役に立つことができるのでは」と清水さんは考えました。職場と相談し、働きながら夜間大学に通い、社会福祉士に合格。通信教育で精神保健福祉士も合格し、職種転換しました。
 精神科訪問看護は、看護師・作業療法士・精神保健福祉士が患者を訪問し、疾病管理・内服調整・生活支援・指導を行います。清水さんは精神保健福祉士として、生活支援・指導、外出支援などでの生活リハビリテーションを主に担っています。
 患者の自宅が、いわゆる「ゴミ屋敷」の状態であっても、患者は整理整頓したいと考えていることもあります。「バリアになっているのはなにか。患者が外に出ることを恐れて、ゴミをため込んでいるのであれば、外出ができるようになるにはどうしよう」と、清水さんは患者と話し合います。

■患者と横並びで

 精神障害者向けGH(グループホーム)に勤務していたとき、入居者がGHと、医療機関の受診時では、表情が異なることに気づきました。「GHでは、きらきらした表情なのに、医療従事者の接し方ひとつで、病気の人の表情にしてしまっているのではないか」と清水さんは言います。精神疾患の患者にとって、医療従事者のちょっとした一言が重たくのしかかることがあり、患者によっては「具合が悪い様子を見せると、入院させられるかもしれない」と考え、症状を伝えられない人もいます。
 清水さんは「専門職は患者より専門知識がある。でも、患者の方がその病気の苦しみを知っている、苦しみの専門家。私は教えてもらうことを心がけ、医療従事者の気配を消して、患者と横並びでいたい」と語ります。

■鶴見と沖縄を結ぶ民医連

 同診療所がある横浜市鶴見区は、多くの沖縄出身者が暮らす地域です。沖縄の人たちは結びつきが強く、患者同士が知り合いということもよくあります。移民として沖縄からブラジルやコロンビアなど南米に渡り、鶴見を経由して沖縄に戻る人もいます。「沖縄に帰る患者を、沖縄民医連の事業所に紹介すると、民医連以外の病院よりも話が早く、対応も親切」と清水さん。

■暮らしやすい地域の一翼を

 精神疾患の患者は、不安とたたかっています。それでも支援が入ることで、患者の服装が変わり、閉め切っていたカーテンを開けるようになり、笑顔が戻る瞬間があります。清水さんは「患者が生きる自信を取り戻していく過程が見えることが、この仕事の魅力」とやりがいについて話しました。
 同診療所には、認知症初期支援チームがあり、アウトリーチに注力。清水さんは診療所の外に出て、医療にアクセスできない人たちが多く存在することを学び、診療所で待っていては出会えない人たちとの出会いがありました。
 「地域の活動をもっとひろげていきたい。高齢化がすすみ、人生の大先輩たちが認知症になったとしても、鶴見で暮らしていきやすいように、この地域を底上げしていきたい。その一翼を担えたら」。清水さんは仕事への抱負を語り終えると、自転車で患者のもとへ向かいました。

(民医連新聞 第1830号 2025年6月2日号)

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