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民医連新聞

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相談室日誌 連載583 自宅全焼の身寄りない患者 情報共有で迅速な支援を(静岡)

 近年、身寄りのない患者の対応が増えています。リハビリ目的で当院に転院してきた70代男性は身寄りがなく、自宅の火災で持ち物がすべてなくなってしまいました。前医で手続きの調整をした健康保険証のみを持参。今後の見通しもまったくたっておらず、何からスタートしていいやら途方に暮れる状態でした。
 自宅は全焼したため、本人と相談し、退院後は施設入所をめざすことに。まず、自宅の管理会社へ連絡し、火災保険の手続きを依頼しました。その後、施設入所に向け、経済面を確認しました。本人はおおよその年金の金額はわかっていましたが、預貯金はあまりないとの話。通帳もカードもないため銀行へ連絡したところ、通帳やカードの発行には、本人が銀行へ出向き、マイナンバーカードなど、顔写真付きの身分証明書の提示が必要とのことでした。
 身分証明書となるものは健康保険証しかないため、マイナンバーカードの再発行について市役所へ問い合わせると、「本人が窓口に来れば申請は可能だが、発行のための書類の宛て先は住所地でないとできない」と。事情を説明し病院への発送を依頼しましたが、宛て先の変更はできませんでした。自宅の管理会社に連絡し、自宅のポストの有効期限を確認し、本人と市役所へ手続きに行きました。同時に介護保険申請、年金証書の再発行申請を行いました。
 その後、火災保険申請のため、罹災(りさい)証明書が必要となり、管轄の消防署に手続きへ行きました。他の手続きも必要で、さらに2カ所の市役所の窓口に行きましたが、どこの窓口でも、経過を一から説明しなければならず、市役所内で共有してもらえないものかとつくづく感じました。個人情報の管理が大事なのはわかりますが、身寄りがなく入院して身動きが取れない人の諸申請は難渋します。関与する複数部署の連携は弱く、患者の負担が大きくなります。迅速な支援ができず、患者が必要なサービスにつながらない事態も発生します。
 医療と行政の間で情報共有や連携をすすめ、患者一人ひとりのニーズに応じた柔軟なサポートを実現できれば、身寄りのない患者が適切な支援を受けられ、暮らしやすい社会になると思います。

(民医連新聞 第1830号 2025年6月2日号)

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