副作用モニター情報〈639〉 ビベグリン錠の尿閉
ビベグロン錠(商品名:ベオーバ)はβ3アドレナリン受容体を選択的に刺激し、膀(ぼう)胱(こう)平滑筋を弛緩させることで膀胱容量を増大させる薬で、過活動膀胱における尿意切迫、頻尿、切迫性尿失禁を効能効果としています。
主な副作用は尿路感染(膀胱炎など)、残尿量増加、重大な副作用には尿閉、特に、下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大など)を合併している患者では、尿閉、排尿困難などの症状が悪化する可能性があり、下部尿路閉塞疾患の治療を優先させるよう注意喚起されています。
当モニターにも2024年10月までに9例の報告があり、泌尿器関係では尿閉2例、排尿困難3例、膀胱痛、尿路感染各1例となっています。
今回は尿閉の症例を紹介します。
症例1)90代男性
シロドシン4mg、フィナステリドで治療中。PSA(前立腺特異抗原)6.0ng/ml(基準値70歳以上で4.0ng/ml)と高値のため前立腺がんを疑い、フィナステリドを中止しビカルタミドに変更。
1年後:ベオーバ追加。
開始2日後:尿がぴたっと止まってしまったため中止。
中止後1日で改善。
症例2)70代女性
夜間1時間おきに頻尿あり、ベオーバ開始。夕食後に服用し、翌朝、腹部膨満あるも自尿なし。ベオーバ中止。残尿450ml、導尿2回で610ml。
中止後2日目:自尿あるもわずか。夜間8回自尿あり。
中止後3日目:ベオーバ再開。自尿ごく少量。
再投与3日目:導尿3回で1100ml。
再投与4日目:自尿わずか、導尿360ml。ベオーバ中止、尿道カテーテル留置となる。
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前立腺体積が大きい場合、高齢者に投与する場合には、急性尿閉のリスクが高いことが知られています。抗コリン薬との併用投与の要否は、尿閉の発現状況なども考慮して慎重に判断してください。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1831号 2025年6月16日号)
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