誰もが安心して受診、利用、働ける医療・介護の実現を
世界各地で性的マイノリティー(LGBTQ+)の権利向上を呼びかける6月の「プライド月間」。民医連は2023年、人権と倫理センターのもとに、SOGIE(※)コミュニティを結成。東京・代々木公園で開かれたTokyo Pride2025に、今年もブースを出展し、パレードに参加。前日のフェスからパレードまで密着しました。(松本宣行記者)
Tokyo Pride 2025に民医連も参加
同コミュニティは職員育成部とともに6月6日、東京・ラパスホールで「民医連SOGIEフェス2025~つながり、広げよう、アライの輪~」を開催し、全国から75人が参加しました。
フェスの前半はシンポジウム形式です。愛媛生協病院の水本潤希さん(医師)、長野中央病院の河野絵理子さん(医師)によるSOGIEコミュニティ研究の報告を受け、平成医療福祉グループの松本武士さん(作業療法士・公認心理師)をはじめとした当事者が発言。短編映画『スクリプト』を視聴後のグループディスカッションは、大いに盛り上がりました。各地のとりくみは、長野・松本協立病院、京都民医連あすかい病院、福岡医療団が報告しました。
隠された声くみ取る
6月7~8日は、約27万3000人(主催者発表)が、会場を埋め尽くしました。民医連はブース前でシールアンケート「医療機関で何か困ったことはありますか?」を実施し、民医連のとりくみを紹介しながら、付せんにメッセージを書いてもらい、当事者の声をくみ取る仕掛けです。
ブースを見学した一般来場者たちは「医療がLGBTQ+に協力的であっても、法的根拠のない同性パートナーは、緊急手術の同意などで壁がある」「医療がセクシュアリティをサポートしてくれるとは認識していない。相談体制が整ってくれたら」など、当事者の声を教えてくれました。
匿名を条件に取材へ協力してくれた民医連職員も。ある職員は「患者・利用者・職員・共同組織にLGBTQ+がいる。全職員を対象に教育をすすめてほしい」と期待を語ります。ある看護師は「LGBTQ+は人口の約8%と学んだ。これまで接した患者にも当事者はいたはずだが、認識していなかった」とコメントしました。
民医連のブースは、2日間で約700人が訪れました。
連携、参加、発信を
人権と倫理センター長の加賀美理帆さん(医師)は「これは社会全体の問題。民医連と各団体が連携して、全国でとりくんでほしい」と、ひろがりを期待します。
兵庫民医連の仁田勝大(かつひろ)さん(事務)は「参加したことで、無自覚に誰かを傷つけていたかもしれないと、ふり返りになった。もっと職員に来てほしい」と参加を呼びかけました。
民医連SOGIEコミュニティのメンバーで、北海道・勤医協札幌病院の長屋春香さん(社会福祉士・精神保健福祉士)は「全国の仲間とオンラインで連携し、準備をすすめた。ブースは参加型で、声を直接聞けてよかった。この活動を通じて、誰もが安心して受診、利用、働ける民医連にしたい」と今後の抱負をのべました。
差別解消を呼びかけ
2日目のパレードは、およそ1万5000人が参加。民医連の参加者たちは、性の多様性をあらわす様ざまな色のスクラブを着て、約2kmのコースを歩きながら、差別解消を呼びかけました。
パレードを歩いた岡山協立病院の植木綾さん(言語聴覚士)は「当院は『にじのかけはしプロジェクト』を2年前に立ち上げた。現場の活動をもっと全国的に共有できたら。患者・共同組織・職員への発信が必要」と訴えます。
リーダーを務めた茨城・城南病院の菊地修司さん(医師)は「SOGIEコミュニティはどんどんひろがっていく集まり。現在のメンバーを核として、全国そして多職種へと、ひろがってほしい」と希望を語りました。
※性的指向(Sexual Orientation)、性自認(Gender Identity)、性表現(Gender Expression)を組み合わせた言葉で、人間の性のあり方が多様であることを示す概念。
(民医連新聞 第1832号 2025年7月7日号)
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