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民医連新聞

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こんなにヤバイ!! 日本の食料事情 (19)日本農業を衰退させる輸入米

 米の高値が続き、アメリカ産や台湾産の輸入米がスーパーなどで並ぶ機会が増えています。輸入米にはどんな問題があるのでしょうか。
 日本政府は毎年77万トンもの外国産米を無関税で輸入しています。これは「ミニマムアクセス(MA)米」と呼ばれ、世界貿易機関協定上、アクセス枠を決めて「輸入機会」を提供するというもの。日本政府が言うような輸入義務ではありません。アクセス枠を律儀に100%輸入しているのは日本だけで、他の国は半分程度です。
 77万トンは、新潟県の1年間の生産量59万2千トン、北海道の54万トンよりも多い数字です。MA米はアメリカ、タイ、中国などから主に輸入され、そのうちアメリカ産が最も多く34・6万トンで、全体の45%になります。MA米のうち約10万トンが主食用(SBS米)となり、それ以外は家畜の飼料用やせんべい、あられなどの加工用に回ります。
 MA米は飼料や海外援助向けだけでは原価割れの売買となり、保管・運送経費、カビの処理経費、売買差損などに毎年300億円以上も赤字を垂れ流し、大きな損失が生じています。
 こうした赤字の実態を反映して、2024年11月に財務省の財政制度等審議会が出した建議では、「MA米を活用するルールを設けるなどにより、政府備蓄米の備蓄水準・財政負担の減少につなげる工夫を」と提起し、MA米を主食に回すよう提言しています。
 輸入米は国家による貿易であるMA米のほかに、民間貿易により、商社などが1kgあたり341円の関税を納めて輸入する米もあり、今年は前年度の約4倍に増えています。国産米が高騰するなか、341円の関税を払って輸入しても、利益が見込めるという理由からです。
 トランプ関税発表直前の3月、アメリカの通商代表部は、「貿易障壁報告書」のなかで日本の米高騰の中での外米輸入拡大の動きに目をつけ、「アメリカ産米輸出拡大のチャンス」だとあおっています。日本政府もこれに便乗し、小泉農相は「備蓄米を全部放出したら、緊急輸入米やMA米を活用する。聖域はない」とのべ、石破首相は「国内の米生産量を増やせないなら、輸入を増やすのも一つの選択肢だ」と公言しています。
 輸入米は、食の安全上も不安がつきまといます。2008年には、大阪の米卸売加工会社が農薬やカビ毒に汚染された輸入米を“ただ同然”で買い付け、食用として不正に転売して暴利をむさぼっていた事件が発覚しました。事件の発端となったMA米制度が厳しく問われた事件でした。


かつまた まさし 農民運動全国連合会の常任委員。新聞「農民」の編集長も務める。

(民医連新聞 第1832号 2025年7月7日号)

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