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民医連新聞

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私がここにいるワケ 暮らしをささえる福祉用具 「ありがとう」が原動力 東京・福祉共同サービス足立営業所 福祉用具専門相談員 小早川 夏穂さん

 民医連で働く多職種の皆さんに、その思いを聞くシリーズ16回目は、東京・福祉協同サービス足立営業所で働く、小早川夏穂さん(福祉用具専門相談員)です。
(髙瀬佐之記者)

 事務所の1階は福祉用具の販売所で、この地域でも珍しい営業所です。店内には小早川さんの明るい声が響きます。
 小早川さんは福祉系大学で介護福祉士資格を取得。在学中の実習をきっかけに、在宅福祉に興味を持ちました。卒業後、当事業所へ入職。今年で4年目です。
 福祉用具専門相談員は、ケアマネジャーや介護職や家族などから相談・依頼を受け、利用者が安心して生活を営むための、総合的な住環境を検討します。
 福祉用具は、杖や車いすのほかに、浴槽で使用する浴槽台やポータブルトイレなど、多岐にわたります。提案、設置だけでなく半年に一度以上の点検を行い、利用状況に応じて、交換や回収も行います。また、手すりやスロープなど、住宅改修も業務のひとつです。利用者や家族の声に耳を傾け、一人ひとり違う住環境に目を向けて、その人に合った福祉用具を提案できるようにつとめています。

■地域をみつめて

 東京・足立区の柳原は、住宅が密集し、古い木造家屋が多い地域です。道路が狭く、家の前まで車を入れられないことや、狭小住宅も多いため、福祉用具が自宅内に入らないことも。エレベーターのない集合住宅だと、手押しでの搬入となり、大変です。住環境によっては、多職種で連携をはかり、代替え品などを検討し、設置します。
 「利用者が亡くなった後に、家族から『ずっと一人で介護をしていたので、福祉用具のおかげで介護がすごく楽になった。ありがとう』と言われたことがうれしい。福祉用具は利用者だけでなく、家族をもささえるのだと再認識した」と小早川さんは語ります。

■少ない女性相談員

 「車いすやベッドは20kg以上あるものも。重たいものを運ぶ機会が多いのが、女性の福祉用具専門員の少ない理由ではないか」と小早川さんは話します。当事業所では重いものを運ぶ際、男性職員と搬入できるよう、職員体制を調節したおかげで、活躍の幅がひろがっています。福祉協同サービスでは4年前から新卒採用を始め、女性の福祉用具専門相談員の採用は、小早川さんが初めて。「女性の相談員でも働きやすい環境をつくってくれている職場に感謝している。今年は7人中3人の女性職員が新卒採用になった」と小早川さんの声も弾みます。
 ある女性の利用者が、これまで男性職員には言えなかった、排泄時の悩みを打ち明けてくれたこともあったそうです。「高齢者は女性の割合が多く、今後の福祉用具業界では、女性が重要な役割を担うのでは」と語ります。

■利用者・従事者を守る制度に

 2024年の介護保険制度改定で、一部の福祉用具において「貸与・販売の選択制」が導入されました。背景には、介護給付費の削減の狙いがあります。しかし、利用者のADL変化は頻繁に起こるため、購入では状況に応じた支援ができなくなるのでは、との声もでています。「ニーズに応える支援をしたい。利用者には貸与を勧めています」と小早川さん。さらに、物価高の影響で、福祉用具の価格が高騰。上限を超えてしまう利用者が増えてきたといいます。また、重量物の搬入などで腰を痛める職員も多く、「利用者と従事者を守るためにも制度を充実してほしい」と今後を見据えます。
 「女性の福祉用具専門相談員はまだまだ少ない。現在も7~8割以上が男性職員。しかし実際には性別関係なく働けるということをひろめていきたい」と意気込みを語りました。

(民医連新聞 第1832号 2025年7月7日号)

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