診察室から 温かな職場環境で見つけた医療のやりがい
医療の現場にはさまざまな形があります。大きな病院での専門的な医療も、地域に密着した病院でのきめ細やかな医療も、どちらも患者にとって大切な存在です。私は2年前に和歌山県立医科大学リウマチ・膠原病科から当院へ転職してきましたが、この変化が自分の医師としてのあり方を大きく変えてくれました。
大学病院では早朝から夜遅くまでの勤務、土日出勤、月に10回以上の当直・待機と、常に走り続けるような毎日でした。診療の質を保つために必要な時間ではありましたが、心身ともに消耗していくのを感じていました。
当院に移ってからは、勤務環境が大きく改善し、体感では10分の1ほどの負担になりました。1人でリウマチ・膠原病診療を担当する責任は大きいですが、自分で判断し治療方針を決定していくことに、医師としての大きなやりがいを感じています。
和歌山県内で膠原病も診ることのできる内科系リウマチ専門医は10人程度しかおらず、専門医が常勤している病院も限られています。そのため大学病院からの転院依頼も多く、ときには重篤な患者の診療も担当します。地域医療の一翼を担う責任を感じる日々です。
なにより心が温かくなるのは、この病院の人間関係です。以前勤めていた大学病院では、同じ職場でも顔見知りでない人が多く、廊下ですれ違っても無言で通り過ぎることが日常でした。対照的に当院では職種を問わず、みんなが顔見知りで、必ず挨拶(あいさつ)を交わす温かい雰囲気に包まれています。
医療は技術だけでなく、人と人とのつながりのなかで成り立つものだと改めて実感しています。困ったときに気軽に相談できる同僚がいること、互いに尊重し合える環境があることが、良い医療を提供する土台になると信じています。
これからも地域の人びとの健康を守るために、温かな職場環境のなかで自分らしい医療を続けていきたいと思います。
(藏本伸生、和歌山生協病院)
(民医連新聞 第1832号 2025年7月7日号)
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