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民医連新聞

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いま、政治を語ろう  大軍拡やめ、ケアに予算を

参議院議員選挙 7月20日投開票

 7月20日、参議院選挙の投開票日です。全日本民医連は、「2025年参議院選挙にあたって、民医連は訴えます」を作成しました。今回の選挙の意義について、柳沢深志副会長に聞きました。
(長野典右記者)

「民医連の要求」柳沢会長に聞く

昨年10月、衆議院の解散総選挙がありましたが、政治はどのように変化しましたか。

 自民党と公明党の連立与党は選挙前279議席から64議席(自民党56議席、公明党8議席)を減らし、215議席に後退、過半数の233議席を大きく割り込みました。与党だけでは法律も予算も成立させられなくなり、憲法改正発議も困難になりました。
 6月18日、ガソリン税の暫定税率廃止法案をめぐり、野党側が提出した衆議院財務金融委員会の井林辰憲委員長の解任決議案は、衆議院本会議で野党側の賛成多数で可決し、井林委員長は解任。衆議院で委員長の解任決議案が可決されたのは、今の憲法のもとでは初めてです。野党が私たちの声に押されて動けば、少数与党が政策をゴリ押しできない政治状況をつくり出しました。高額療養費の一部負担上限額の引き上げがいったん見送られたことも、大きな前進でした。

軍拡予算賛成の一部の野党

 一方で、多くの国民の要望・要求がストレートに国政に反映するかというと、なかなか見えにくい状況も。一定の議席がある日本維新の会、国民民主党は、政権与党と政策的に似かよっています。あわせると過半数を超えてしまうため、結果的に従来の保険証が廃止されたり、軍事費の拡大や社会保障の削減の予算が成立しました。総選挙で大きな争点になった選択的夫婦別姓制度も、今国会では成立が見送られました。
 さらに、自公連立与党と日本維新の会は年間医療費4兆円削減で合意。1兆円の社会保障削減のために11万床の病床削減や、「市販薬と効能が似ている」との口実でOTC類似医薬品の保険外しをねらうなど、国民負担増や地域医療の危機を加速させています。

 

今、私たちの現場でおきていることは。

 低い診療報酬のなか、物価高騰など経費の上昇で、医療機関や介護事業所は、深刻な経営危機に。24年の医療機関の倒産数は64件で、リーマンショックの時期を超えました。日本病院会は「病院のおよそ7割が赤字。地域医療は崩壊寸前」「このままではある日突然、病院がなくなる」と訴え、国に対策を求めました。また訪問介護基本報酬の引き下げで、事業所の倒産・廃業は過去最多になりました。事業所がゼロの町村は全国で107になり(24年12月末)、介護保険を利用できない、提供できない機能不全に陥っています。
 石川・能登半島地震の被災地では、大幅に人口が減少しています。医療機関や介護事業所は元にもどっていません。また国は9月末まで医療費、介護利用料の一部負担金の免除を延長すると言いますが、石川県内の市町国保、後期高齢者医療の窓口負担の免除は6月までで終了し、このままでは医療や介護が必要な住民は住み続けられないのが現実です。

48事例の手遅れ死亡

 5月12日、全日本民医連は2024年経済的事由による手遅れ死亡事例調査の記者会見を行いました。全国から48事例の報告があり、「お金がないばかりにいのちを落とす事例は、一例もあってはならない」と訴えました。保険料や一部負担金の重さ、誰もが医療にアクセスできる制度への改善を要望しました。現場で起こっている悲惨な事態をなくすため、政策要望をすることが大切です。
 現場で働く職員にも経営困難で処遇改善がすすまないなか、明日が見えない不安がひろがっています。職員一人ひとりが困難をかかえ、生きづらさを感じています。民間企業では5%の賃上げがあっても医療現場では賃金は上がらない、介護職は全産業平均の8万3000円も低い実態があります。医療・介護労働者はなぜ賃金が上がらないのか、不満が渦巻いています。賃金が上がらない現実は、ケア労働そのものが社会的に認められていないのではと、仕事に自信が持てなくなります。

この間の私たちの運動でどのような変化が出てきていますか。

 私たちは地域で医療・介護の経営改善を求める運動をすすめてきました。地域の医療機関や介護事業所に共同を呼びかけ、自治体にも要望を行ってきました。
 日本医師会と日本病院会、全日本病院協会など6病院団体は、経営悪化を踏まえ、社会保障費削減の見直し、賃金、物価の上昇に適切に対応した診療報酬制度を求める合同声明を発表しました。民医連でも、「医療機関の事業と経営維持のための診療報酬の再改定、補助金などの財政支援措置を求める要請書(団体署名)」を全国の医療機関に呼びかけると、民医連の事業所も含め、2174から賛同署名が寄せられました。

介護事業所に支援策

 介護分野では、東京都品川区が、区内の訪問介護事業所に対する支援策を独自に講じると発表しました。2027年度に控える報酬改定までの臨時措置で、年間の給付額、1事業所あたり12万円から240万円程度を想定。新潟県村上市でも支援策が決まりました。
 山梨県で、「介護報酬の引き下げ撤回・再改定を国に求める請願」に民医連以外の法人が請願者に加わり、甲府市、山梨市議会本会議で採択、南アルプス市、上野原市では委員会で採択するなど介護ウエーブの運動がすすんでいます。私たちの運動が、一歩一歩政治を動かしています。

7月に参議院選挙が行われますが、民医連の要求とは。

 大きく訴えたのは「ミサイルよりもケアを」です。
 要求は、緊急要求と基本要求からなっています。緊急要求は、「物価高騰から、いのちとくらし、医療と介護・福祉を守る緊急政策の実施を」呼びかけました。

診療・介護報酬期中改定を

 最優先課題として、大企業や富裕層への課税強化と、膨張する軍事費の削減です。消費税ゼロをめざし、まず5%に引き下げること、診療報酬や介護報酬の期中改定で医療・介護の提供体制を守り、すべての人びとの医療・介護のアクセス権を保障することです。国の責任で、ケア労働者の賃上げと人員不足の解消、高額療養費の上限額引き上げの白紙撤回、従来の保険証の復活などをあげています。また米価格の高騰や米不足の解消のため、抜本的な農政転換を呼びかけています。
 基本要求では、憲法に基づく人権としての医療・介護の実現、9条を生かし平和な社会の実現、憲法、国際的な人権規範に基づく政治や社会の実現、気候正義や環境保全、食料自給率100%などを訴えています。

民医連の要求実現のために、私たちは何をすべきでしょうか。

 これまで選挙の機会に民医連の要求として、職員や国民一人ひとり、医療・介護の団体にも訴えてきました。医療・介護団体が要求を明らかにすることは、社会的にも大きなメッセージとなります。また、職員自身も一社会人として要求実現に向けて呼びかけをゆたかにすることが大切です。賃金が上がらないなか、物価高で生活費の上昇、重い奨学金の返済、子育て、教育の問題に職員の多くが直面しています。生きることが苦しい今の社会をどう変えていくのかが問われています。
 人権の問題では、ジェンダー平等、国連の女性差別撤廃委員会の勧告を受け止め、選択的夫婦別姓の実現、性の多様性を実現できる社会をつくりましょう。「いま、大軍拡をしている場合なのか」と、要求実現のために職場で大いに学習、議論をしてほしいです。

医療は政治の鏡

 「医療は政治の鏡」と言われるように、政策がどう変わるかで、医療や介護が変わってきます。外来患者や利用者、共同組織にも訴え、政治を語り、選挙に行って政治を変えることを訴えましょう。
 昨年10月の衆議院選挙の投票率は53・85%、3年前の参議院選挙は52・5%と約半分の有権者が選挙に行っていません。選挙に行かなかった結果が、今の政治になっているとも言えます。
 今回の参議院選挙も重要な選挙です。民医連の掲げる選挙の要求について、学習を深め、職員が1票を投じることで、主権者としての意思を示し、大軍拡をやめ、「ケアに予算を」の政治を実現させましょう。

(民医連新聞 第1832号 2025年7月7日号)

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