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民医連新聞

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戦争の実相を学び未来へつなぐ 富山民医連

 富山民医連は、戦跡、証言、学習会などを通じて戦争の実相を学び、アイデアも出し合いながら、平和の実現をめざすとりくみを重ねています。(多田重正記者)

 戦後・被爆80年の今年は、原水爆禁止世界大会が広島(8月4~6日)と長崎(7~9日)で開かれます。記者が取材した6月は、世界大会に向けたとりくみの最中。世界大会の会場に向けて歩く県内の平和大行進(職員150人が参加)を終え、大会に派遣する代表(職員、組合員)に託す折り鶴を職員から集めているところでした。
 「街頭宣伝や署名活動だと参加しにくい人も。でも折り鶴なら匿名でできるし、ハードルが低くなると思った」と話すのは、富山協立病院の石井瑠華さん(作業療法士)。色紙の裏にメッセージを書いてもらい、折り鶴にして、広島・長崎に届けようとしています。
 昨年は、世界大会に向けた同様の企画として「ピースウオーク」を実施(4月28日)。前年に平和委員で富山市内の戦跡めぐりをしたことから、「他の職員にも戦跡があることを知らせたい」と行った企画です。やってみた感想を聞くと「楽しかった!」と同院医事課で県連平和委員の青山史さん(事務)。富岩(ふがん)運河環水公園のウオーキングコースを歩きながら、途中で平和に関するクイズを出題。職員と家族29人が参加しました。「子ども連れが多く、長い距離を歩き、運動にもなった」と青山さん。同企画では米軍が原爆投下訓練のため、同市に計4発を落とし、60人以上が亡くなった模擬原爆のモニュメント(運河沿いに模擬原爆が投下された)も見学。参加者で「平和の木」もつくり、観光地である同公園に戦争に関するモニュメントがあることに驚く声が出ました。

空襲体験者の証言を聞き取って

 富山大空襲(1945年8月2日)も忘れてはなりません。米軍は8月2日0時30分すぎから2時間で50万発以上の焼夷弾を富山市内に投下し、死者2700人以上、被災者11万人という、地方都市最大規模の被害を与えました。
 在宅福祉総合センターひまわりでは、事業所の教育社保委員会を中心に、利用者に大空襲の体験を聞きとってまとめました。きっかけは、全日本民医連第45期の介護・福祉責任者研修会で「地元の戦争被害を調べよう」との課題が出たこと。「調べるうちに、自分たちの街にかつて甚大な被害があったことに驚いた」とふり返るのは、当時施設長だった中田昌子さん(介護福祉士。現在は富山医療生協本部)。調べた内容を職員向けの学習資材にまとめた後、「戦争体験者は高齢化している。証言を聞けるのは今しかない」と動きました。
 「証言を聞く私の方が苦しくなることも」と話すのは須川ひとみさん(介護福祉士)。90歳の利用者(女性)は「当時小学生。校庭に防空壕を先生と生徒で掘った。助かると思って掘った防空壕なのに、入った人たちは蒸し焼きになって死んだ」と。証言のまとめを家族に渡すと「息子さんも知らず、びっくりしていた」と須川さん。

「楽しくとりくみ発信してほしい」

 ロシア、イスラエル、アメリカなどが国際法無視の暴挙を行い、日本も軍拡や改憲に向かっているいま、戦争の実相を学び、伝え、平和を実現する仲間を増やすことが大事です。富山協立病院薬剤科長の有賀絵里さん(薬剤師)は昨年、世界大会に参加。諸外国代表と、国内の若手活動家が一堂に会したことに感動し、「平和への思いはつながっていると感じた。まだまだ日本は終わっていない」と希望を語ります。有賀さんは、被爆者の証言をはじめ、大会で見聞きしたことを、県連内の会議・研修で報告し、平和の大切さを訴えています。
 ふれあい薬局の黒沼詩織さん(事務)も県連平和委員。いま力を入れているのは「子どもたちを引き連れて『9条の大切さ』を伝える」こと。様ざまな集会や平和学習、平和大行進にも子どもを引率してきた黒沼さんは「沖縄や福島にも行きたい。彼らが平和な未来を歩めるようにしたい」と目を輝かせます。
 富山民医連事務局長の宮腰幸子さんは「戦争体験を伝えることは重いことだけど、楽しい企画も交えてとりくみ、平和について学んで考え、発信してほしい」と、次世代の職員への期待を語りました。

(民医連新聞 第1832号 2025年7月7日号)

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